Re:ゼロからオリ為す異世界生活   作:萎える伸える

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 どうか人生を謳歌してくださイ


顔が熱い

◆◇◆

 

 

「──はっ、この暖かい感触は間違いなく美少女の……!」

 

「ボクだよ?」

 

「ぎゃー!」

 

 

 はっと目を覚ませばスバルは巨大な人型猫の膝でおねんねしていた。何を言っているがわかんねぇと思うが俺の方が分からない。

 

「えーっとぉ……やべっ思い出せねぇ、何がどうしてどうなったんだっけ?」

 

「それはねぇ……ちょっと耳を貸してみ?」

 

「お? おう……」

 

 言われた通り耳を猫の方へ寄せたスバル、素直である。

 

「ごにょごにょごにょ」

 

「ほんほん」

 

「にゃんにゃんにゃん」

 

「ほうほうほう」

 

「……ってなわけなのさ!」

 

「──どういうわけなのさ! さっきからごにゃごにゃ言ってるだけじゃねぇか!」

 

 ごにゃごにゃ言ってるだけだった。

 

「あっはっは! キミ面白いね! そんなにいいツッコミしてくれたらボクもボケがいがあるってもんだよ」

 

「笑ってる場合か! まじで気絶する前のことあんま覚えてねぇんだ、って──まずお前どこの誰だよ!? えっ!? 猫がしゃべってる! 俺猫と喋ってる!? ていうかデカっ!? こんなでけぇ猫初めて見たぞ!? ちょっと怖ぇな!」

 

「今更!? あっはっはっは、だめだめっ! 笑わせないでおくれよ! ははっ、キミほんと興味が尽きないね! ひぃ、ふぅ……ボクはパック、可愛くてキューティーで実は結構偉い精霊だったりするよ」

 

「せ、精霊……そんなんがいるのか。これはまじに異世界転移説出てきたな……、えっとパック、さん?」

 

「パックでいいよ」

 

「おけおけ、パック。頼む、教えてくれ、嘘偽りなく、だ」

 

「ほほん?」

 

「──俺、気絶する前に変なこと言ってなかったよな?」

 

「変なこと~?」

 

「誤魔化すな、だから、その、す……」

 

「す?」

 

「だからっ、好きとか嫌いとか愛してるとかアイらぶらぶラブラブらぶらぶユーとか、血迷って口走ってたりしてませんでしたよね!? ね!? 夢ですよね!?」

 

「なんだ、ちゃんと覚えてるんじゃないか。ボクに許可なく娘に唾かけた挙句なかったことにでもしようものなら、ボク何してたかわかんにゃかったよ」

 

「……お、おう、ちゃんと覚えてます。責任取ります、お父さん! 娘さんを僕に下さい!」

 

「うん、千年早い! 賢者になって剣聖と龍と友達になって魔女を殺してから言うんだね!」

 

「ん~詳しく知らないでもわかる無理難題ッ! 賢者に剣聖に龍、挙句には魔女と来たかッ! くっ、まさかついに俺の隠された力が発揮される時が来たのか!?」

 

「隠された力? 誰に?」

 

「誰って……神様?」

 

 いつまでもくだらない話をする奇妙な凡夫とふざけた猫をガン無視していたホムラはその言葉に反応し、口を開いた。

 

 

「──この世に神などいない」

 

「お?」

 

 

 ようやっと口を開いた少女の存在にスバルは今気づいたようだ。そこにいたのは紛れもなく、先ほどスバルに死の未来予想を齎した恐ろしい少女。

 

 銀髪に近いが微妙に緑の色が混ざっている、かなり薄い緑髪に長髪の少女。親がどんな髪色をしていたらこんな透き通るような美しい頭髪に出会えるのかいささか疑問である。

 

 少女は綺麗な髪を顔の両横で束ねツインテールを作り、その付け根にはなにか妙な装飾の施された猫耳型? のアクセサリーを飾っている。その相貌はかなり、いや、凄まじく整っていてそんな美顔に似合わぬキツイ目つきが絶妙にスバルに親近感を与えた。

 

 キリっとした目がスバルに向けられている。スバルを観察し、その心の奥底まで見透かそうとしているかのようだ。

 スバルもまた観察する。

 

 他に見るべきところといえば、その特徴的な服だろう。

 

 

「随分と地味なローブ着てるんだな? せっかくすげぇ顔整ってるんだし、そんなもさっとした服よりもっと似合う服があるんじゃねぇか……? ん~例えば赤いチャイナドレスとかどうだろうか! うん! 似合いそうな気がする!」

 

「──戯言を抜かすな小僧」

 

 

 返答はその鋭い瞳に違わず厳しかった。

 

 

「私はどんな服だろうとドレスだろうと似合うに決まっているだろう。私、可愛いから」

 

「「……」」

 

「私、可愛いから」

 

「「あっはい」」

 

 

 二度言われた圧に男と猫、一人と一匹は屈したのだった。

 

 

「はぁ、これはここに来る途中の水浴の際、盗人に服を盗まれた挙句燃やされ仕方なくその盗人をコロッ、ウ゛ッうんッ! ……とっちめて奪ったものだ。故意ではない」

 

「……今殺したって言いかけなかった?」

 

「言ってない」

 

「言ってたよ?」

 

「……言ってない」

 

 

 ぷいっ

 

 

 眼をそらした。子供かっ

 

 

「ふん! それより、さっきからあっちで顔赤くして固まってる純情女を説得してくれ。悪いのは私ではなくさっきのチンピラどもだとな」

 

「露骨に話し逸らしたな、って、なに? 顔赤くして固まってるって……え?」

 

 

 スバルが横を見れば、そこには顔を覆い隠して地面にしゃがみこんでいるひとめぼれの少女がいた。かわいい。……かわいい。大事なことは二回でも三回でも言うべきだ。かわいい。

 おまけにもひとつ、

 

 

「かわいい」

 

「ひゃい!?」

 

「うえっ!?」

 

「……あ、え、えっと、えっと……か、覚悟しなさい! 私、今からあなたに酷いことしちゃうんだから! だから、その、かわいいとか、そういうこと言うの禁止なんだから! わかった!?」

 

 そうスバルに指をさすエミリア、と名乗っていた少女。

 その赤らめた顔、照れ隠しのような勢い任せの言動、振る舞い、すべてが──。

 

「か、かわい──」

 

「めっ! 悪い子っ」

 

「え、か、かわ──」

 

「めったらめっ!」

 

「あががが、かわ、かわいすぎるッ!」

 

「も、もうっ!」

 

 

 無限ループに入った。

 

 

「……なにしてんだこいつら、馬鹿なのか? 悪なのか?」

 

「んにゃ~、ボクの娘ちょっとチョロインすぎるよ~、育て方間違えたかなぁ」

 

「あれじゃ悪い男に捕まるの待ったなしだろう。親としてどうにかしてやったらどうだ? ほら、現に今目つきの悪い男に絡まれてる」

 

「そうだね~スバルの心を覗いた感じ邪なことは考えてなさそうだったけど~、とはいえ満月みたいに綺麗な女の子見たらす~ぐ狼になるのが男だからねぇ~、ちょっとここらで止めておこうか。──おーい、リア~」

 

「はぁ、なんなんだこの茶番は……チンピラも逃がしてしまったし、あのやたら強力な精霊も離れたことだし……帰っていいか?」

 

 

「──逃げたら、末代まで、追っかけるからねぇ~!」

 

 

 そう曲がり角に隠れるようにして逃げようと動きながら、本当に小さな声で呟けば、すぐさま返答は返ってきた。

 

「地獄耳。閻魔もびっくり、面倒な」

 

 ──あいつが四大精霊が一体──『火の大精霊』じゃなければとっくに逃げてるのに。

 

 ホムラはそう、まだ教えてもらっていないはずの情報を理由にこの茶番に付き合うのだった。

 

 それだけじゃない。

 いったいどうやってホムラはエミリアがハーフエルフであることを知ったのだろうか。

 

 

◆◇◆

 

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