Re:ゼロからオリ為す異世界生活   作:萎える伸える

28 / 33
転生したら大罪司教だった件
最低最悪のクズ肉野郎、大罪司教になるってよ


「あ、思い出した」

 

 そう思った時にはもう手遅れだった。

 俺は鬼族として生まれ、ご近所さんには鬼族の神童とその双子の妹がいた。

 

「……いや、まじかぁ」

 

「?」

 

「ああ、ごめんね。なんでもないよ、レム」

 

「♪」

 

 俺は彼女らと同い年だが、少し早く生まれたためお兄ちゃんだ。

 俺も彼女らを妹のように思っている。

 何故か、彼女らに対して()()()()()感情を持つことがない。

 おかしいな。生まれ変わる前は普通に好きなヒロインの一人だったんだけど、如何せん幼すぎるせいかもしれない。俺も、彼女らも。

 

 俺の名前はナギサ。今世でも前世でも同じ名前だ。

 今は生まれて五年。つまり五歳だ。

 レムも五歳、彼女の姉も五歳。

 まだ子供も子供。

 だけど……

 

「「「おお……!!」」」

 

「――」

 

 目の前で彼女の姉が滝つぼの水を操って畑にまく光景を見る。

 なるほど。これは天才だ。

 というか、もうすでに大人顔負けな思考力をしている。

 

「おつかれ」

 

「ん、ありがとう」

 

 俺は一仕事終えて帰ってきた返ってきたラムに労った。

 すると、隣に座っていたレムが立ち上がって、ラムに抱きついた。

 

「おねえちゃん!」

 

「……! ――レム」

 

「えへへ♪」

 

「……ふふ」

 

「レムは甘えん坊さんだね」

 

 見ての通り、今のところ双子仲は良好だ。

 特段、レムがラムに嫉妬している様子はない。

 いいことだ。

 

 スバルでさえ見ることができない、幼い彼女らの尊いやり取りに俺は胸を温かくさせた。

 

 

◆◇◆

 

 

 鬼族の隠れ里での生活は平穏だ。

 唯一の不満は森の外に出させてくれないことか。

 

『ならん。ここは鬼族最後の隠れ里。万が一でも”外の敵”に見つかることはまかりならん』

 

 里長はそう言っていた。

 ――だが、じゃあどうするというのだろう。

 まさか、鬼族だけでこのまま隠れてこの森で過ごすとでも言うのだろうか。

 それはあまりに荒唐無稽だ。

 この広い世界で、自分達から閉じこもって過ごすなんて。

 

「……そんな風に思うのは俺だけなんだろうか」

 

「私もそう思うわ」

 

「え、」

 

「なに、その顔は? ラムがここにいちゃダメなの?」

 

「いや、べつに構わないけど……」

 

 ラムが水をばらまいた滝つぼの上、そこに俺はいた。

 そして、いつの間にかラムもいたようだ。

 いつから?

 まだあまり日は動いていない。

 来たばっかりだろうか?

 それは何とも、ピンポイントな。

 独り言を聞かれてしまったようだ。

 返ってくるとは思ってなかった返事に少し動揺してしまった。

 

「そう思ってるって……」

 

「……ここは、レムにとってあまりいい場所じゃないもの」

 

「そう、だね」

 

 そうだ。それはその通りだ。

 でも、それは――。

 

「ここには、(ラム)がいるから」

 

「………」

 

 一つ、風が吹いた。

 靡く彼女の桜色の髪は綺麗だった。

 彼女の桜色の瞳がこちらを向く。

 

「私たちを連れ出してくれない?」

 

「――なん、で」

 

 なんで俺に?

 なんで突然?

 なんで、そんな………心細そうな顔をして?

 俺が知ってる姉様はもっと強くて、傲岸不遜で、堂々とした……。

 違うのだろうか。

 俺が知っている姉様と、目の前にいる少女は。

 ここがリゼロの世界ではない?

 ――いいや、それはない。

 じゃあ、目の前にいるか弱い一人の少女は?

 俺が知っている彼女は、何?

 

「……いえ、いいわ。気の迷いだった」

 

「え、」

 

「……はぁ、私も焼きが回ったわね。もう戻るわ、それじゃ」

 

「……」

 

 ラムはふらりと滝つぼから飛び降りて……遥か下の地面をなんでもないかのように歩いて進んでいった。向かっている先は家だろうか。

 

「……はぁ、そんなこと急に言われたって……」

 

 彼女が発言を撤回したのはきっと正解だったのだろう。

 俺は、彼女が発言を撤回したことに、確かに安堵してしまっていたのだから。

 

 俺は、いくじなしだ。

 

 

◆◇◆

 

 

 俺は、何をしていたのか。

 俺は、なんで、何もしなかったのか。

 鍛えることも、逃がすこともなく、漫然と日々を過ごしてた。

 

 知っていたのに。

 ちゃんと、知っていたのに。

 こうして、隠れ里がめちゃくちゃになるまで――俺は何をしていた。

 

「キャァアァアアァアアア!!!!!??」

 

 甲高い悲鳴が聞こえる。

 

「ゥ! ぉ、っ」

 

 断末魔の声さえ上げられず絶命する男たちを見る。

 

「っ! ッ!」

 

 そうして、無表情で黒ローブの男たちを――否、“魔女教徒”を斬り刻むラムを見る。

 まだ、ラム以外にも戦っている男衆がいる。家に隠れて生き残っている女衆がいる。

 なら、俺は何をしている。

 

「ぁ……」

 

 動け。何してる。動け。動けよ。

 なに、震えてんだよ。

 なに、やってんだよ。おいっ!?

 そんなこと、思ってる場合じゃないだろ!?

 ――ビビってんじゃねぇぞ!?

 なに、やって。おい、なんで動かない!

 動けって! ()()()幼馴染が襲われてんだぞ!?

 おい、おいって!? ――もう一人の俺!

 

「ぇ、いや、だって……こんなの、俺にはどうしようも……」

 

 戦えよ! いや、ああ、わかってる!

 お前はまだ十四歳の子供だって!

 でも、わかるだろ!? 今止めなきゃ、――ラムは『角』を失う!

 今止めなきゃ、手遅れになる……!

 

 角が生える。

 二本の白く光り輝く角だ。

 鬼族の証。

 鬼族の誇り。

 

 それが――。

 

「うわぁぁぁああぁぁぁぁぁああああ!!??」

 

 ――逃げ出す為に使われていた。

 

 おい!? 馬鹿野郎!

 どこ行く気だ!

 どこに、おい!? ――逃げる気か!?

 お前、十四年も一緒に過ごした幼馴染を見捨てて、逃げるのか!?

 

 ――怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。怖い。怖い。怖い。

 

 こんのッ、馬鹿が!

 お前の命なんてどうでもいいだろうが!

 救えよ! 今すぐに戻ってラムを救え!

 ラムが角を失うくらいなら、お前が死ね!

 お前が代わりに切られろ!

 何の力もないお前でもそれくらいできるだろ!

 なぁ!? おい!!

 

「いやだっ、いやだぁぁぁぁあああ!! しにたくなぁぁぁああああぁぁぁぁああい!!!」

 

 このッ……………真性の、クズ野郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし、貴方はもしかして――『傲慢』ではありませんか?」

 

 

 斯くして、俺は生き残った。

 俺だけが、何も失わずに、生き残った。

 『俺』なんて、死ねばいい。

 生まれたことを後悔して、死ね。

 最低最悪のクズ野郎。 

 

 

◆◇◆

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。