Re:ゼロからオリ為す異世界生活   作:萎える伸える

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日照り

◆◇◆

 

 

「……どうして私があんたらに付き合わなきゃいけないんだ」

 

「まぁまぁ、そう言うなって、な?」

 

「な、じゃない。私には私のやるべき使命がある。──この世のありとあらゆる悪を殲滅しこの世から消し去り、この不浄の世に天下泰平を齎すという使命がな」

 

 ※天下泰平……世が平穏無事で平和であること。

 

「思ったより壮大だな!? ……というかお前いくつだよ、見た目まんま少女なのに言葉遣いと言い身なりと言いさてはただもんじゃねぇな? ふ──推理小説で鍛え上げられた俺の目はごまかせねぇぜ?」

 

「ほほう、では問おう。私は貴様にはいったいいくつに見える?」

 

「こ、これは……女性に聞かれて一番困る質問……! 実年齢より上に答えても適齢を答えても機嫌を損ね、あまつさえ下に答えることを強要する悪魔の質問……! ──くっ、俺は屈するしかないのか! いいや! 俺は一人の探偵としての矜持を捨てない、真実はいつも一つ! ──十八だ!」

 

「──十四だ。……というかまるっきり屈してるじゃないか、恥を知れ凡夫」

 

「…………ぱーどぅん?」

 

「だから十四だ。あんたの三つ下だ」

 

「な、なにぃ!? これだからっ、これだから異世界はっ!」

 

「……イセカイ?」

 

「俺より年下の……! それも女の子が、俺よりも遥かに強くて、すでに助けてもらってるとか情けねぇにもほどがある……! ……っと、そうだった。危うく忘れるところだった」

 

「今度はなんだ?」

 

「あ、えっと、その、えっとですね、そのぉ」

 

「なんだ、きもいな、はやく言え」

 

「女の子がきもいとか言うもんじゃないよ!? 俺の心が泣き喚いちゃうでしょーが! ──じゃなくて!」

 

 

 ──ありがとうな。

 

 

「──。」

 

「助けてくれて、ありがとう。マジ助かった。ほんと、初めは向こう見ずなガキだと思ってたし、その後あの子とごたごたがあったりして言い損ねてたけど、ほんとに感謝してるんだ。俺、実は結構本気で困ってて、そんな時にあいつらに絡まれてて誰も頼れる人なんかいないし、誰も助けてくれないんじゃないかって、そう思ってた」

 

 ──でも

 

「お前が来てくれた。……すっげぇ嬉しかった。まぁ、俺ごと燃やし尽くしそうな勢いだったし、本気で死を覚悟すらしたけど……うん、超怖かった、超怖かったけど、でも! お前が本気で助けてくれようとしてたことだけはちゃんとわかったから。ほんとありがとうございました! はい! それだけ!」

 

 言葉は上手くまとまらなかった。

 長い間人と話していなかった弊害だろう。

 とにかく勢い任せにお礼を言った。

 

 ちょっと恥ずかしくて顔が見れない。

 見れない見れない、けど見ちゃう。

 

「──え」

 

「──っ!」

 

 すると、少女は──ホムラは炎みたいに真っ赤っかに頬を染めていた。

 全力のでれでれであった。

 まさか、お礼を言われ慣れてないのだろうか。

 

「え、照れてる?」

 

「っ! 照れてないっ、馬鹿を言うなうすらぽんこつ善人!」

 

「え、えぇ、侮辱の言葉が柔い! めっちゃ柔らかくなってる……」

 

 これまでなかなか堅い言葉遣いで話していたホムラは、顔を赤くしたままふにゃふにゃした言葉でスバルを罵倒した。いや、それはもはや罵倒というのだろうか。善人って言ってるし……

 

「ははっ、お前もかわいいところあるんだな! おうおう、何度でも言ってやるぜ。ありがとうな、ホム──」

 

「──もう一回言ったら燃やす。……いいな?」

 

「ア、ハイ。」

 

もう一度告げようとしたスバルはしかし、ホムラが手をこちらに向けて目前に火の玉を生成したことで踏みとどまった。

 

 ──こ、こいつ、照れ隠しが物騒すぎるっ

 

 スバルが内心戦々恐々としている間に、ホムラは一息ついて心を落ち着けた。

 

「……ふぅ」

 

 ちらっ、とスバルを見る。

 

「……?」

 

「……私は、正しかったか?」

 

「お、おう?」

 

 スバルは質問の意図を掴みかねた。

 だが、勢いのまま肯定を返してしまった。

 別段それが間違った答えだとも思えなかったが……

 

「……そうか──よかった」

 

「……」

 

 ホムラはそう安心したように微笑えんだ。

 自信ありげで強気そうな今しがたの態度とはどこか違うその様相に、スバルは戸惑いと、少しの理解を得た。

 彼女は何かをとても恐れていて、強い不安を抱えている。感謝に飢えていて、子供らしくない言葉遣いをする、いや、言動に似合わず子供らしいというべきか。

 少しだけ、ホムラという女の子のことを知ることが出来た。

 

 

「──スバル! ホムラ! 盗んだ子の情報が見つかったわ!」

 

 

「おー! よっしゃこれで一歩前進だな! ──いこうぜ、ホムラ!」

 

「……はぁ、なぜ私がこんなことを……」

 

 そう悪態をつきながらも、渋々付いて行くのだった。

 

 

 

 

 

「それで、得られたのはどんな情報だ?」

 

 スバルはエミリアに聞いた。

 

「えっと、巻き込んでおいてなんなんだけど、ほんとうにいいの? 二人とも。手伝って貰っちゃって……」

 

「おうとも! こちとら天涯孤独の一文無し! 全力で恩を売らせてもらうぜ!」

 

「あ、あんまりへんてこりんなお願いしたらダメなんだからねっ?」

 

「へんてこりんってきょうび聞かねぇなぁ、ま、そこは安心してくれ、ナツキスバル流安心サポートつきご返済プランでいくから」

 

「それって、全然安心できる気がしないんだけど……ホムラもいいの?」

 

「……嫌だが?」

 

「そ、そう……」

 

 なんでそう露骨に残念そうにするのかこの少女は……まったく、これが演技だったら大したものだ。

 

「はぁ、いいだろう、手伝ってやる。私は正義の味方だからな。それで? 得られた盗人に関する情報は?」

 

「えっとね、貧民街っていう低層区にいる“フェルト”って子がスバルの言っていた容姿と一緒らしいの」

 

「おぉ~、俺ってば超役立ってる! おっしゃ、ってことはこれから貧民街に直行ってことだな!」

 

「……フェルト?」

 

「お、どうしたホムラ。知ってるのか?」

 

「何か知ってるの?」

 

「…………いや、まぁ、何でもない。それよりあんまり時間をかけたくない。さっさと貧民街とやらに行って盗まれたものを取り返しに行くぞ」

 

 そう言って、ホムラは一人先に歩いて行ってしまった。

 まるで貧民街への道は知っているかのように。

 それに多少の疑念は覚えども、スバルもエミリアも追及することなく後に続いた。

 

「よし、いくか!」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 そうして歩き出して。

 スバルは今更とある違和感を覚えたのだった。

 

 

「あれ? 俺あの子に年教えたっけ……?」

 

 

◆◇◆

 

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