「いやぁしかし、召喚者不明の転移者かぁ……え、神様とかと会ってたりしないの?」
「しねぇ……てか、お前こそ会ってねぇのかよ。転生者なんだろ?」
ルグニカ王国王都の街道をオレたちは三人で歩く。
エミリア、スバル、オレの並びだな。
今はオレとスバルの世にも珍しい異世界人同士の会話をエミリアが何もわかってなさそうな顔で興味津々に聞いている構図だ。
「いやぁ、オレってば転生者なんだけど、別に幼少期から記憶があったわけじゃなくてぇ、ていうか、むしろ自意識が芽生えたのは最近というか? ついさっきというか? 物心ついたの昨日なんです、バブぅー的な?」
「は? それマジでいってんのかお前!? あんな堂々と登場しといて記憶喪失!?」
「……てへ! そうみたい!」
「男がやっても可愛くねーよッ!」
てへぺろしてみたけどダメだった。
というか、記憶がないのはマジだしな。
そうそう、記憶喪失なんだよね。
っべーよねぇ。
突然昨日、リーファウスなんたらで一人記憶が戻ったかと思えば、なんでか『原作』の知識だけあって、その始まりがもうすぐだってことを理解した。
んで、王都に密入国というか不法侵入して?
スバルが居そうな路地裏を探し回ってさっきのシーンに至るわけだ。
「ナギサ……記憶喪失なの?」
「おん。てなわけで、今はちゃんと覚えてるけど、また記憶すっぽりなくして忘れちゃったらごめんね? エミリアさん」
「ごめんねだなんて、謝る必要ないわ。むしろ、大丈夫なの? 原因とかわかってないの?」
純粋って尊いけど、ここまでくると罪悪感覚えちゃうよ、オレってば。
「うん、全然。ありがとね、心配してくれて。優しいエミリアさんにオレは感謝感激だよ。人の記憶喪失をツッコミで茶化そうとする男だけじゃなくて安心したよオレは」
「悪かったって! んな、突然言われたら冗談か何かだと思うだろうが! 悪かったよ、悪かった! 謝る!」
「いぃや許さないね! 許してなんかやんない! 一生、罪悪感覚えてろバーカ!」
「俺お前に何かしましたかねぇ!? 俺への当たりなんか強くねぇ!?」
オレだけ罪悪感覚えるなんて不平等だろうが!
お前も一生、罪悪感を抱いて生きろ!
「っと、スバルなんかの話はいいんだよ。
オレはエミリアさんの話が聞きたいんだ。
なんか、困ってるんじゃない?」
「……うん、実はそうなの」
「なんかってなんだ、って……え、そうなの?」
「うん。実は……」
そう言って、エミリアは今の自分の境遇について話した。
境遇つっても、普通に『徽章』を盗まれたことについてだけだけど。
そう、スバルはまだ彼女がこの国の王選候補者だとは知らないのだ。
さすがのオレもそんなネタバレをここでする気はない。
オレは常にKYだが?
ほら、オレってば『原作』ファンだから、ってか、スバルくんのファンだから?
スバルくんがびっくら仰天する機会を逃したくないわーぁけ。
似非ピエロ風に言えば、オレの心境はそんなとこ。
「要するに徽章を盗んだ女の子を探してるわけだ。知ってるぜ、フェルトだろ?」
「フェルト……?」
「そうそう、フェルトちゃん。貧民街の
「……お前、昨日目覚めた記憶喪失の癖になんでそんなこと知ってんだ?」
「……ん? んんんんん~~?」
おっとぉ?
こぉーれは墓穴掘ったかぁ?
「そもそも、転生して記憶喪失のお前が、街中で同じ日本人の俺を見つけるって、どんな確率だって話だ。お前、それってめっちゃ怪しくね?」
「……ハイ、ごめんなさい。白状します」
っべー、どうやって切り抜けよう。
おん、そうだ。
困った時、摩訶不思議なことがあった時は全部、世界のせいにしちまえばいい。
つまぁり、『加護』のせいにしちゃえばいいのさぁ!
「オレってば記憶喪失だけど、『加護』があるんだ。あ、『加護』ってのは生まれついて授かってる特殊な力のことな」
「そうなのか? エミリアたん」
「うん、珍しくはあるけど『加護』を持ってる人はそれなりにいるはずよ……たん?」
「ほぉん、それで?」
「おう、それでな。オレが持ってる『加護』は……」
「『加護』は……?」
っべー、なぁんも考えてなぁい。
『予兆の加護』?
『予測の加護』?
『原作の加護』じゃない、『原典』でもない。
っべー、ってふざけてる場合じゃない。
マジにやべーぞ。
「おい、何黙ってんだよ」
っばい、ここでスバルに不信感持たれるのはヤバすぎる。
はぁ……もう、しょうがないか?
オレが二次創作的な転生者だって明かす……いや、そりゃねぇわ。
それやっちまったら、オレの存在意義が歪む。
すぅー……うし、しらばっくれよう。
真実に嘘を混ぜちまおう。
……嘘つきの
「オレが持ってる『加護』は、『従者の加護』だ」
「従者だぁ?」
これは事実。
オレは『従者の加護』を持っている。
「『従者の加護』の力は自分の主君たる人間に施されている状態異常……スバルに分かりやすく言うならバフとデバフを一緒に受けることができる加護だ」
「バフとデバフの、共有……?」
「そ。」
ここまでは真実。
「ここからがこの加護の副作用的な使い方でな? じゃあ、そもそもオレたる『従者』が仕える『主人』はどこにいるのかって話だ。だろ?」
「お……? まぁ、たしかに」
「仕えるべき主人がいなきゃ、従者たるオレは無能。つまり、この加護にはオレの主人たりうる存在を見つける力も備わってるわけだ」
大ウソつきにも程があんなぁ、おい。
当然、そんな便利な副作用はない。
先に言った能力は真実。
この副作用は嘘。
だが、これを見抜くのは異世界初心者のスバルには無理。
世間知らずのエミリアにも無理。
「で、でもよ! それと俺の居場所を見つけたことになんの因果が……あん?」
さて、ここで究極の二択だ。
オレが探していた主人を、――『王選候補者』であるエミリアとするか。『異世界人』であり『主人公』であるナツキ・スバルとするか。
まぁ、『加護』の特性上、そしてこれからのナツキスバルの物語の都合上、二つに一つだな。
「――そう、お前こそがオレが探し求めた『ご主人様』だ。よろしくな? 菜月昴、もとい我が主人よ」
「え、えええぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!?」
……よし、なんとか乗り切ったか。
っぶねー、初手で致命的にミスるところだったぁぁぁぁ!!!
ちなみに、『従者の加護』は、フェルトを知っていることの理由には一切なっていない。
どうしよこれ。どうしようもねぇーわ。
え、どうしよ。
んー……。
「?」
一方で、まったくわかってない様子のエミリアたんがいた。
今、リゼロ三期見ながら書いてるんだけど、リゼロクソおもろいな! やっぱ!
てか、音楽がいいわぁ。声優がイイ! レグルスにラインハルトにカペラって! おい!最高かよぉ! クルガンの声だけは解釈不一致だったけど。しゃーないね。