Re:ゼロからオリ為す異世界生活   作:萎える伸える

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『熱烈の壱』

 

 

 貧民街に訪れた三人プラス一匹。

 

 ホムラが堕落し生きる努力をしない転落者や乞食に対して苦言を呈し喧嘩を売ったり、それを聞いた貧民街の者が売られた喧嘩を買ってホムラにボコボコにされたりと色々あったが、あぁ、まぁ、特に問題なくフェルトの住処を知ることができた。

 

 エミリア一行は三人でフェルトの住処へと向かったのだった。

 

 

◆◇◆

 

「もう、あんな風に喧嘩しちゃダメじゃない」

 

「悪いのは私ではなく、まっとうに生きることをせずその身を堕落させ盗人や乞食、山賊に成り下がるような信念も矜持もないあの者らだ。私悪くない」

 

「おいおい、あの人たちにも何か壮絶な過去や生い立ちがあってのことかもしれねぇじゃねぇか。お前さんはちょっと堅すぎるんじゃないか? もっと気楽にいこうぜ?」

 

「はっ、何が堅すぎるものか。己を律せない自らの愚鈍さに見て見ぬふりをして人としての最低限の努力もせず、ただ生きるだけの者になんの配慮が必要なものか、私は悪くない。あの者らはそう他者に言われるだけの生活を送っている、生半可な善人面などただの自己満足の憐みと大差ない」

 

「確かに、お前の言うことも一理ある」

 

「ちょ、ちょっとスバル」

 

「──でも! でも、それでもだ」

 

「……」

 

「生きてるだけじゃ価値がないとか、そういうことじゃないと俺は思う。一文無しで働いたこともない俺が偉そうに言えることじゃないが、それでも、生きていることには意味があると思う。例えば、俺みたいな奴が今日、お前と……ホムラと、エミリアたんに会えたことだって、生きていたから出来たことだ」

 

「……そうだな。その通りだとも」

 

「ホムラ……」

 

 スバルの言い分を認めたホムラに、ほっと息を付きその名を呼んだエミリア。しかし、すぐさまその安心は覆ることになる。

 

「そうさ、当然、生きているだけで──罪となる者もいる」

 

「ッ!」

 

「……?」

 

 きっと、ホムラはエミリアのことを言ったわけではない。それでも、その言葉はエミリアの心に棘のように刺さった。

 その一連の動きを見て、スバルは理解を得なかった。

 

「──例えば、性犯罪者。例えば人殺し。例えば盗人。例えば、その気はなくとも当人の無力が、無知が、無謀が、その者の最愛を死に至らしめることもある。生きているだけで迷惑な悪がこの世にはいくらでもいる。消えた方がいいクズなんて腐るほどいる。私は私の信念においてそのような人ならざる(バケモノ)を処断することを厭わない。だからこそ私は間違えない。間違えさせない。まだ人であるうちに、引き戻してやらねばならない。

 ──ナツキスバル、貴様がやっているのは『善意による配慮』ではなく、『無関心による見捨て』だ」

 

「……そう、かもしれない」

 

「……スバル」

 

 ホムラのキツイ言い分に、スバルは肯定を返した。

 スバルは過去を振り返り、自分がそんな高尚な人間でないことを思い返す。

 その場の思い付きと機転で口論して負かすにはホムラの意思は硬すぎる。

 それだけの想いに、闇雲に言葉を返すのは得策じゃないと考えた。

 

 そんな風に落ち込むスバルを見て、少々ショックを受けてその考えをただ受け止めていたエミリアが今度は返した。

 

「……私は、生きているだけで悪いなんて、そんなことはないと思う。悪い人は確かに悪いことをしたかもしれない。でも、悪いことしたら、はいさよなら、なんてそんなの間違ってるわ。誰だって一度は間違えるものでしょう? それを咎めて処罰するんじゃなくて、ちゃんと何が悪かったのか教えて、反省させて、謝ってもらうの、そうでなくちゃ、生きにくいもの」

 

「綺麗事だ。人の行いは取り返しのつかないものがほとんど、それを笑って赦せるような狂人を善人と履き違えるな。赦されないんだよ、悪は。滅ぼさなければ死ぬのは私でもお前でもない、無辜の民だ。私も、お前も、誰も、神などではない。ただの人だ。救える数には限りがある。反省を見届けるにも限度がある」

 

「……だがよ、それをお前の基準で裁くってのは、それこそ神気取りの傲慢ってやつなんじゃねぇの? ちゃんと話し合えば分かり合える間違いだってあるはずだ。それを諦めてお前は──」

 

「──赦せる悪、赦せない悪、そんな取捨選択こそ傲慢そのものだ。

 ……もういいだろう。何を言われようと私の信念は変わらない。──例え恩があろうと、悪は滅さねばならないのだ」

 

「……ホムラ」

 

 齢十四という若さで、どうしたらここまでの堅い意思を持てるというのだろう。自身より幼い少女の危うげな苛烈さにスバルはどうすればいいかわからず、エミリアもまた同じだった。

 

 

 そうして、そうこうしているうちにフェルトの住処へとついた。

 

 

◆◇◆

 

 

「なんだあんたら、ってあんたはっ!」

 

「そう、あなたなのね、私の徽章を盗んだのは。──私の徽章を返してちょうだい!」

 

 フェルトはエミリアに気づき、距離を取ろうとする。

 対しエミリアは氷を発生させ、逃げようとしたら対処しようと画策する。

 

「──おい」

 

 そこへホムラが声をかけた。

 

「あ! ──ホムラじゃねーか! あんたがこいつらをここへ連れてきたのか!?」

 

「はぁ、やはりお前だったか……──残念だ」

 

 ホムラはそう言って両手に炎を構えた。

 

「な、なんだ? 知り合いなのか?」

 

「貧民街の端っこで野垂れ死にし掛けてたあんたを拾ってやったってのに! その仕打ちがこれかよ!」

 

「一宿一飯の恩は確かに感じている。──しかし、それはそれだ。盗んだものを大人しく返せ」

 

「──はっ! あんたが頭の固い正義の奴隷だってのはわかってんだよ! 返したところであんたがアタシを見逃すわけない!」

 

「よくわかってるじゃないか。なら、さっさと逃げることだな──アルゴーア!」

 

「っ!」

 

「──アルヒューマ! ──ちょっと! あなた、あの子を殺す気!?」

 

「ちっ、あれは脅しだ。あいつはこの程度の魔法避けられる、『風除けの加護』を持っているからな」

 

「……えっ? 風除けの加護を……?」

 

 ※地竜がもってるやつ。

 

「あ、あっぶねー……今のはちょっと危なかったな……ほんと容赦のねぇガキだな」

 

「…………」

 

 三者が動く中、スバルだけがどうすることもできない。

 それどころか巨大な熱の塊と巨大な氷柱が空中で吹き飛ばす余波だけで飛ばされた。

 戦力にならないどころか足手まとい。

 

 仕方がない、スバルには力がない。

 仕方がない、スバルにはこの世界の知識も何もかも足りていない。

 仕方がない、スバルは、人と戦ったことすらないのだから。

 

「──仕方がないで、済ませるかよっ!」

 

 それでも、男子(おのこ)は立ち上がった。

 

 

「──アルイーラ」

 

 

(──ッ!!)

 

 ──同時。

 足が、止まった。

 止まってしまった。

 日和った。ひるんだ。怖気づいた。

 その死を錯覚する熱に。

 

(お、オレは……っ!)

 

 それこそ、普通の高校生には仕方のない、否、どうしようもない現実であった。

 

「うぇっ! それはシャレになら──っ!」

 

「もうっ! アルヒュー──」

 

 

「──違うッ!」

 

 

 叫んだのは──スバル。

 足を止めたスバルだからこそ気づいたその()()()()()

 ホムラの狙いは──

 

「──ッフェルト、後ろだッ!!!」

 

「──はっ──?!」

 

 咄嗟に気づく、その背中に迫る『死』の気配に。

 避けることのできない必中の間合い。

 ──そこに銀線が煌めいて。

 

「──させるか! 燃え尽きろ!」

 

 それよりも先に、ホムラの灼熱が影を消し去る。

 

 

 ドゴガガァァァァァァアアンッ!!

 

 

 着弾と同時、大爆発が起きる。

 凄まじい威力に大量の土砂が飛び散り周囲を砂幕が覆い尽くす。

  

 スバルも、エミリアも、そうしてフェルトも、何も見ることができない。

 そんな中で、ホムラだけが反応した。

 

「……むっ」

 

「──あらあら、あらあらあら。

 とても容赦がないのね? 

 ──素敵だわ」

 

 砂に黒いシルエットが映り、妖艶な女の声が響き渡った。

 

「争っていたようだし、仲間じゃないと思ったのだけれど……どうして助けたのかしら? それにこの威力で巻き込みもなし、相当自信があるのね。マントがなかったら危なかったわ」

 

「……ミーティアか」

 

「えっ、え? ホムラっどういうこと?」

 

「あんたはッ」

 

「誰だこの別嬪女は……どう見てもまともじゃねぇな」

 

 煙が収まり、現れたその黒い服装の女に、その顔に、その手に持つ凶器に、一様に反応する四人。

 その中でも、一際その女について知っている者がいた。

 

「取引相手のお姉さんじゃねーか……いったいどういうつもりだ?」 

 

「どういうつもり、はこちらのセリフだと思うのだけれど? 取引時間の前に辺りを散策してみればこの有様。あなたは盗んだ相手と交戦中。これで大人しく見ていられるほど私は我慢強くないの」

 

「だからッ、アタシを殺して目当てのものだけ持ち去ろうってか!」

 

「ええ、それが一番手っ取り早いかと思って。──なのに、防がれた。あの小さな炎使いの子に感謝することね。ああ、面倒なことになってしまったわ」

 

「このイカレ女がっ」

 

「──。」

 

 ナイフを構えるフェルトに、再び氷を生成するエミリア。少なくとも敵は三人。その警戒態勢に彼女は──

 

「──あぁ、残念、残念だわ。こうなったら全員殺さないといけないわね。──せめて楽しませてくれると嬉しいのだけれど」

 

 黒い女もまた特殊ナイフを構えた。

 

 戦いが──

 

 

「──我が名はホムラ。真意を見極めるもの。あの者の正体を悟れ、閻魔」

 

 

 ──静かに火蓋を切られ始まった。

 

 

◆◇◆

 






 す、すばるがんばれー
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