転生ハイエンドのヒーローアカデミア   作:雑多書き

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普段より1.5倍くらい長い分1日遅れたので初投稿です。


2話

 日もとっぷり暮れて街の喧騒が徐々に静かになる中、俺は髪型も含めてすっぽり覆い隠した覆面とフードの付いたパーカーを鱗で形成して身に纏い、屋根から屋根に飛び移りながら走り回っていた。

 

「思ってたより見当たらないな……まあ、ホントならその方が絶対いいんだけど」

 

 この辺は噂によるとかなり治安が悪く、(ヴィラン)犯罪が多いって聞いたんだがな……噂をききつけたヒーローに狩り尽くされたか?

 

 だとしても……初日からこれはしょっぱいな。やっぱヒーローが多いリスクを考えてでも大阪や東京みたいな大都会にいくべきだったか……

 

 と、俺は先程から(ヴィラン)が見当たらないことに少しばかり焦燥感を感じ始めた時、そう遠くない場所からなにやら言い争うような声が聞こえてきた。

 

「……!あっちの裏路地の方か」

 

 それを耳にした瞬間、俺は筋力強化を発動させてすぐさまその場に駆けつけて屋根からこっそり様子を伺うと、そこには明らかガラの悪いゴロツキ4人組に異形型のリーマンらしき男が絡まれていた。

 

「おい、おっさん金出せよ。お前みたいな化け物が持ってても意味ないじゃん。人間の俺らが有効活用やるからよ」

 

「そうそう。どうせ異形型の個性の奴なんて犯罪者ばっかなんだから先に慰謝料よこせよ」

 

「な、なんなんだね!君たちは……!」

 

「は?なに?化け物のくせに人間様に口答え?こいつ死刑でよくない?」

 

「いいねいいね。ヒーローの代わりに駆除してやろうぜ」

 

 うん、これはもう確定でいいだろう。恐喝もそうだが、異形型の個性への差別を理由に4人揃って今にも殴り掛かろうとしてるし。

 

 こういう時のためのヒーローだが彼等も暇じゃないし、こうも突発的に起きた事件にまで対処するとなるとどうしてもリソースが足りない。

 

 とはいえこのままだとあのリーマン男性はリンチにあって金を毟り取られてしまうだろう。

 

 最も、そんなことにはならないだろうけどな。

 

 まず俺はなるべく音を立てないように屋根から飛び降りてスウっと奴らの背後に近寄っていく。このまま奴らの背後をとってそこから鱗化で形成した触手で頸動脈を一気に締め上げて気絶させれば……

 

 ん?おいおいおっさん、そんなに派手に驚くんじゃねえ。ゴロつきに気づかれるだろ。ああっ!?だからやめろって……!アンタ表情豊かだから分かりやすいんだってば……!ちょ……おま……

 

「あ?なに驚いてん……って!なんだお前!いつの前に!」

 

「もしかして幽霊でも出……うわっ!本当になんかいる!」

 

 くそ……気づかれたか。まあいいや。ポジティブにいこう。奇襲にしろ、真っ向からにしろ、どの道やることは同じなのだから。

 

 とはいえその前に……まずはあのリーマン男性を助けないとな。人質にされたりしたら厄介だし、なによりただでさえ怖い思いしただろうに更にここから巻き込まれて怪我なんてしたら可哀想だ。

 

 そう気を取り直して狼狽えるゴロつき共の間を縫うように指から高速で鱗を伸ばしてリーマン男性を球状に包み、一気にこちらへと引き寄せる。

 

「うおっ!?」

 

「手荒ですいません。巻き込んじゃいけないのですぐにここから逃げてください」

 

「あ……ああ、わかったよ。でも君は……」

 

「ん?…………少なくともヒーローじゃないです。ですけど、安心してください。あなたが逃げ切るまで、絶対にアイツらを通したりしませんから」

 

 短くやりとりを終えた後、彼が何か言う前に鱗化超再生で巨大で分厚い鱗壁を一瞬で形成して俺とゴロつき達/リーマン男性という風に分断する。

 

 これは彼を攻撃や流れ弾から守るためなのは勿論だが、それと同じくらい()()()()()()を見られないようにするためというのも大きい。

 

 そうして準備を整えたことで奴らへと向き直ると、どうやら奴らも動揺が収まったようで4人揃ってこちらに強い敵意のある視線を向けていた。

 

「なんなんだぁテメェはよ……急にしゃしゃり出てきて()()()()()()()かぁ!?いいぜ!そんなに死にたいなら望み通りお前ら2人纏めてぶっ殺してやる!!」

 

 怒気を発しながら喚き散らした後、4人揃って個性を発動させるゴロつき達。

 

 ふむふむ、手を岩のように個性、髪を刃物状にする個性、口がワニのようになる個性、手がトゲみたいになる個性……か。

 

 最前者と最後者はまず脅威にならないが、他2人は念のためマークしておいた方がいいかもな。ないとは思うが俺の鱗が断ち切ったり、噛み砕いたりする出力があったら少し面倒だ。

 

 そんなことを考えつつ、俺はこちらへ向けて一直線に突っ込んでくる四人組に人差し指を向ける。

 

 相手は4人、念のため注意する個性が2人、ただし相手は個性を持て余したゴロつき……この分なら人差し指だけの出力でも十分対処出来るはずだ。

 

 そう判断した俺は指から夥しい量の鱗触手を形成し、それら総てをゴロつき達へと向かわせる。

 

「うおっ!?な、なんだこりゃ!?触手か!?うげぇ……気色悪ぃ!こ、この……!離せ!!」

 

「か、硬てぇ……なんだこの触手……こんなに細いのに切れる気配が全くねぇ……!?」

 

 そりゃ硬いよ。なんたって鱗触手は単体でも鋼以上の強度を誇る俺の鱗を繊維のように束ねて形成してるんだからな。

 

 さらに制御一つで手足同然に動かせる柔軟性や鞭のようなしなやかさも兼ね備えてる以上、プロヒーローならいざ知らずそこらにいるゴロつきが引き千切るのはほぼ不可能だ。

 

 一応万が一を警戒して少し多めに出したが…… あの反応からして鱗触手を突破するほど高い出力はないようだし、どうやら杞憂だったらしい。

 

 今もなおしぶとくもがき続けているゴロつき達を眺めつつ、俺は仕上げとしてまずは彼らの関節を強く締め上げて抵抗力を奪う。

 

 そして碌に動けなくなった彼等の首に鱗触手を巻き付けて頸動脈を一気に締め上げることであっという間にその意識を刈り取った。

 

 少々残酷ではあるが、()()()()()()()もあってコイツらに暴れられたり喚かれたりするのはかなり都合が悪いからな。

 

 こうしてゴロつき達4人を戦闘不能にした俺は彼らをひとまとめに拘束して鱗製猿轡をかませた後、念のためスキャンを使って周囲の物陰や建物の中に人がいないことを確認する。

 

 たまーに遅れてやってきた奴とかが辺りに潜んでて終わったと一息ついたら後ろから攻撃してくる……なんてこともあるからな。

 

 無論超再生があるから大抵は大丈夫だけど、それはそれとして攻撃されるのはウザい。加えて()()()()()()()もあって人がいないかを入念に調べて用心するに越したことはないだろう。

 

「……よし、誰もいないな。あの人(異形型のリーマン)も無事逃げてくれたみたいだし、さっさと済ませるとするか……」

 

 一通りスキャンして辺りに自身とゴロつき達以外しか人はいないことを確認した俺は───

 

 

 

 

 

 

 ──奴らの財布を鱗触手で抜き取り、中身を物色し始めた。

 

「……思ってたより持ってたな。てっきり恐喝なんてしてたくらいだから端金しか持ってないと思ってたが……まあ、お金は多いに越したことないか」

 

 そう呟きながら俺は慣れた手つきでゴロつき達の財布からお金を抜き取って自分の財布に移し替えていく。大体全部で……二万円くらいか。

 

 一回でこれだけ稼げたなら上等だろう。何度か稼いでいけば今月も生きていくことが出来そうだ。

 

「………………ヒーロー気取り、かぁ」

 

 もし、この場に先程までの俺の動向を全て見ているものがいたとしたら、あまりの行動の一貫性の無さに混乱するだろう。

 

 なんたって少し前まで恐喝されて今にもリンチにされそうな人を庇うというヒーローみたいなことをしておいた矢先に、今のように他人の財布からお金を抜き取る(ヴィラン)そのものの行動をしてるのだから。

 

「……そう考えると俺の行動が矛盾だらけだな……一体何をしたいんだか……」

 

 ドブ底に沈めて蓋をしていたはずの前世の価値観や倫理観が浮かび上がってくるのを感じながらボソリとそう呟いた。

 

 ……前にも話したと思うが、俺のような異常な存在(転生者かつ脳無)がこの世界で真っ当に生きていくことは非常に難しかった。

 

 まず前提として俺には戸籍がない。そのためアパートやマンションの契約は出来ないし、働き口も非常に限られてる。

 

 かといってヒーローや公的機関に頼って住処や働き口を見つけたとしても、ほぼ確実に(ヴィラン)が襲撃してくるため迂闊に助けも求められない。

 

 そのため【異常】な存在である(脳無)は誰の助けもなく独りで前世みたいな【普通】に生きて、なおかつ()の追手から逃げ続ける必要があった。

 

 そうするにはせめて他者の【普通】を害さんとするゴロつきや(ヴィラン)をぶっ倒してお金をぶん奪るという手しか思いつかなかった訳さ。出自上、戦闘力は高かったからな。

 

 が、それらはあくまで俺個人の都合で社会のルールとは無関係なわけだ。

 

 だからいくら事情があろうともこうして無許可で個性を使用したり、ゴロつきや(ヴィラン)からお金を奪うことは紛れもなく犯罪行為であり、犯罪に手を染めてしまった自分はどうあれ(ヴィラン)のそれとなんら変わらんということも……ある程度理解してる。

 

 理解してるからこそ、普段は前世の価値観や倫理観と共にドブに捨てて可能な限り考えないようにしているのだ。そうでもしないとやってけないし、生きていけないから……

 

「……中途半端に秩序と無秩序を反復横跳びしてるからややこしいんだろうけど……現状どちらかに偏らせるのはまず無理そうだからな……」

 

 まず、悪人に偏らせようにも俺は自身と違ってなんの罪も犯してない真っ当な人間を害する気にはなれなかった。

 

 ほら、やっぱりさ……普通に頑張って生きてる人達を酷い目に遭わすのは違うじゃん?みたいな感じに純粋にやりたくない。

 

『真っ当に生きる一般人には何があろうと絶対に手は出さない』というのは生きる為にと前世で培った価値観や倫理観を捨ててきた俺に残された最後の防衛ラインでもあるのだ。

 

 こればっかりはゴミ捨て場にある残飯を漁る生活や山で文明から離れて野人みたいな生活をしていても超えることはなかった。

 

 が、もしこの一線を超えてしまえば……俺は身も心も本当の意味でただの化け物に堕ちてしまう……そんな確信がある。

 

 逆に善人になるには……真っ当に生きたければ……まずは大前提としてこれまで自身のやらかしたことを精算しなければならないだろう。

 

 そしてまっさらな身になったらどうにかして戸籍を登録し、どうにかして真っ当にお金を稼げる仕事を探して、どうにかして()からの追跡を振り切らなきゃならない。ならないが……

 

 少なくとも今の俺はそれらを成し得るアテも余裕もないし、現在進行形で追われてる以上、他の誰かや場所に頼ることも出来ない。

 

 そもそも仮に自首したところで出所した瞬間に追手の(ヴィラン)に捕まるのがオチだろう……

 

 改めて考えれば考えるほどどん詰まりすぎて憂鬱になってくるなぁ……マジでこれから先どうしたらいいんだか……

 

「いや、考えるのはよそう。どうせアレコレ自己弁護したり考え込んだりしたところで何も変わらんしな。お金も回収し終えたし、さっさとここから離れよう。……ヒーローも来たっぽいし」

 

 深掘りするほど気分が落ち込む一方だと判断した俺は一旦考えるのを中断した後、遠くから迫ってくる足音や声の主達に見つからないために筋力強化を発動させて直ぐにその場を立ち去るのだった。

 

 ★

 

「さーて……今日は何食おっかなー」

 

 あの裏路地からひたすら走り続けてしばらく経った今、俺は気を取り直して今日の晩飯を求めて歩道を歩いていた。

 

 知っての通り脳無とは本来複数の個性に適応出来るよう改造された死体なのだが、何故か俺は何も食べないとお腹が減るのだ。理由こそ定かではないが、それでも食事を楽しめるのは嬉しい。

 

 とはいえ生活が生活なので時にはエグいものを食べざるを得ない場面もあって変形で味覚や触覚を遮断することも度々あるが。

 

 今日は肉の気分だなー……なんて思いながら適当な飯屋を探していた俺だが、ふと後ろを振り返ると大型トラックが走ってくるのを目にした。

 

 それだけならなんてことないが、あのトラック、走る速度がやけに速いしなんかこう……時折左右にフラフラしてるので見てて危なっかしい。

 

「おいおい危なっかしいな……ここ高速じゃなくて普通の道だぞ。フラフラしてるのもそうだが、速度も80km以上は出てないか……?」

 

 まるで高速道路を走るような勢いで走り続ける大型トラックに眉を顰めつつ前に向き直ると、その先は大通りになっており、大量の車がいくつも通ってるのが目に入った。

 

 なんとなくだが……嫌な予感がした。

 

「い、いやいや……いくらなんでも流石にそれはないだろ……」

 

 膨れ上がるような嫌な予感に俺は思わずそう言って顔を引き攣らせる。その言葉は、もはやそうであってほしいという願望に他ならなかった。

 

 が、残念ながら悪い予想が当たっていたようで、トラックは速度を減速することなく、むしろ速度をどんどん上げて大通り目掛けて突っ込んでいく。

 

 あっ……………………これはマジでやばい奴だ。

 

 頭にそう過った瞬間にはもう既に走り出しており、俺の頭の中は色々なものでグルグルしてて今にも溢れそうだった。

 

 が、それ以上にここから起き得る最悪の事態……あのトラックの追突を起点に起こる連鎖衝突事故や大量の一般人の轢殺を防ぐことを必死に考えていたのでそれどころではなかった。

 

 まず始めに俺は筋力強化鱗化を駆使して直ぐ様トラックに追いついた後、その車体に鱗の鉤爪を使ってしがみつくことで運転席の中をスキャンする。

 

「チッ……厄介な……」

 

 中をスキャンした結果、正直かなり厄介な事態になっていたため、思わず舌打ちしてしまう。

 

 どうやらこの運転手は心臓が不整脈を起こしていて、そのせいか失神してるようだ。そしてその拍子にアクセルをベタ踏みしてしまったらしい。もしかするとAEDによる処置が必要かもしれない。

 

 もう一つ厄介なのがこの運転手の個性の暴走したせいなのか、単なる故障なのか、ブレーキペダルが潰れて効きづらくなっていることだ。

 

 完全に死んだ訳じゃなさそうだが、この速度では出力の問題であまり頼りになりそうにはない。

 

 となると……俺は一刻も早くこの80km超えで走行する大型トラックを人的被害なし+自身の力のみでどうにかしなくてはならない、という訳だ。

 

「……やるしかないな」

 

 自身のミスで大勢の人が死ぬかもしれないという吐きそうなプレッシャーの中、そう決心した俺はまず始めに運転手を鱗で包んで自身の背中に背負う。

 

 これは今からやろうとしてる方法がかなり荒っぽいので下手したら中の運転手が死んでしまうかもしれない、と思ったからだ。

 

 ひとまず運転手の安全を確保した俺はトラックの屋根の上で飛び乗った後、鱗化超再生を組み合わせることで一瞬で巨大な鱗の腕を二対形成し、トラックの走行を引き止めるようにガッシリと掴む。

 

 サイズからもはや巨人のようでありながら、自身の腕とほぼ同様に動かせるソレを準備した俺は深く深く深呼吸をした後、トラックの進行方向とは全く逆の方に向かい……

 

「こんの…………!!止まれええええええ!!!!!」

 

 (ハイエンド脳無)の身体能力と筋力強化を組み合わせて全力で引っ張る事で俺自身がブレーキとなり、無理矢理減速させようと試みた。

 

 マジで脳筋極まりない方法だが、現状確実に出来て有効な手段がこれかトラック自体を待ち上げるくらいしか思いつかなかったし、人命が掛かってた以上、手段をどうこう言ってられなかったのだ。

 

「はぁ……はぁ……よし、これで最悪の事態は防げたはずだ。後はこの人に応急処置を……」

 

 そうしてしばらく全力で引っ張り続けたことが功を成したようで、トラックを大通りに辿り着く前に完全に減速させて停止させる事に成功した。

 

 が、背中に背負っている運転手に応急処置を行うために引き続き油断せず一度彼を寝かせて呼吸の有無を調べたり、何度か呼びかけるなど自身の知ってることを行っていく。

 

「呼吸は……見たところ普段通りじゃないな。次は……おいアンタ!大丈夫か!?意識があるなら返事しろ!おい!」

 

「……」

 

 返事はないようだな……そう判断してひとまず胸骨圧迫を始めようと彼の胸に両手を添えた時……

 

「おい!そこの君!通報があって急いで駆けつけたが、そこで一体何をしている!少し話を聞かせてもらおうか!」

 

 突然大声で話しかけられたため、すぐに振り返るとそこには派手なデザインの服を見にまとった男性……ヒーローが立っていた。

 

 普段なら足音や話し声で事前に気づいてさっさと筋力強化で走って逃げてるが、どうやらその辺まで気を回す余裕がなかったせいか、今の今まで気づかなかったらしい……

 

 とはいえ今回は運がいい。本職のヒーローならこういったことへの対応も慣れてるだろうからな。俺の知ってることを話してさっさと離脱しよう。

 

 俺は害する気はないことをアピールするために手をあげてゆっくり後ろに下がった後、ある程度ヒーローと運転手から離れた位置で自身の知ってることを可能な限り話した。

 

「……その人、心臓が不整脈を起こして気絶してますよ。心臓の鼓動がなんだか変でしたし、呼吸も普段通りじゃないし、何回か呼びかけても反応がなかったですから。なので胸骨圧迫やAEDが必要だと思います。怪我の方は少し探ったところ、骨折も含めて目立ったものはありませんでした」

 

「………ほう」

 

 一通り知ってることを話し終えると、ヒーローは少し目を見開き、その後ほんの数瞬ほど考え込んだように見えた。

 

 おそらく怪しい奴()に対処して運転手を確実に救助するか、怪しい奴()を一旦放置して運転手の救助を優先するかを秤に掛けたのだろう。

 

 なんせ向こうからしたら俺は推定(ヴィラン)だからな。隙を見せて2人揃って殺されては堪ったもんじゃないだろうし、慎重になるのも無理はない。

 

 ただ、その推定敵はわざわざ救助対象の状態を細かくヒーローに教え、自らヒーローと救助対象から離れて人質に取る絶好の機会を不意にしたのだ。

 

 その点からおそらく彼は俺が今すぐには襲ってこないものと判断して…… 要救助者を優先するはずだ。

 

「…………情報提供感謝する。ヒーローたるもの人命は何よりも優先すべき事項だからな。君から話を聞くのは後にしよう」

 

 そういって彼はすぐに病院に連絡して運転手に駆け寄り、手慣れた様子で胸骨圧迫を始めた。

 

 よし、これで俺に出来ることは一通りやったはずだ。後のことは彼に任せてさっさと退散しよう。

 

 そう判断した俺は筋力強化を発動させて一瞬でその場を後にしようとした瞬間だった。

 

「これはあくまで独り言だが……遅くなってすまなかった。君が頑張ってくれたお陰で彼の命を助けることが出来そうだ。本当にありがとう」

 

 …………何か聞こえた気がしたが、俺は気にせずその場から立ち去るのだった。

 

 ちなみにこれは余談だが、この救助活動をしていたヒーローの元にめちゃくちゃ早くAEDを持ってきた奴がいたそうだ。

 

 個人的な意見だが……やはり良いヒーローにはどうにかして協力したいって奴が出てくるものなのだろう。

 

 そして……ありがとうと言うのは俺の方だよ、ヒーロー。




評価、感想、ここ好き、誤字脱字指摘などをくれると喜ぶしモチベも上がるのでどうぞよろしくお願いします。

もし物語の展開に何か矛盾やん?この展開おかしくねぇか?ってなることがあれば指摘してくださると助かります
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