【完結】機動戦士ガンダム実況_カルト教祖プレイ   作:すも

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今回は番外編となります。



【】内の台詞はテレパシーで交信している設定です。


閑話②<カイ・シデンのレポート~salus教団〜>

<カイ・シデンのレポート~salus教団〜>

 

 

 

―先ほど連邦政府より声明が出されました!地球に接近していたコロニーの残骸は衛星軌道上に展開していた連邦軍艦隊により破壊され、コロニーが地球に落ちる心配はなくなったという事です。地球に住む連邦市民の皆さんはパニックにならず、落ち着いて警察や連邦軍の指示に従ってください。繰り返しお伝えします……―

 

「やれやれ、デラーズ・フリートめとんでもない事を企んでたもんだ。コロニーをまた地球に落とそうとするなんて」

 

宇宙世紀0083年。デラーズ紛争も終盤に入った頃、フォン・ブラウンに観光に来ていたカイ・シデンは街頭テレビの速報を見ながらぼやいていた。

 

(今回は防げたからいいが、もしコロニーが落ちていたら大勢の罪の無い人達が死んでいた。大義の為なら虐殺してもいいのかよ……連中は気にしないか)

 

「月に落ちてくるかと思ったら、まさか地球を目指すコースとはなぁ。ジオンの奴等め俺達を巻き込まないでくれよ」

「全くいい迷惑だわ!シェルターに避難するのに大混乱だったし!」

「落ち着けって、折角のデートが台無しになって怒るのはわかるけどさ」

 

「コロニー落としが失敗してよかった。連邦軍もよく頑張ってくれたよ」

「ソロモンで艦隊が壊滅して大変だっただろうにな。お宅の息子さん大丈夫だったのかい?」

「息子は偶々非番でね、観艦式には参加してなくて無事だったんだ。でも息子の同僚が大勢死んだらしくて素直に喜べないよ」

 

「なあ、これってまた増税になるのか?」

「そりゃあ……宇宙艦隊は壊滅してるし、崩壊したコロニーのデブリが宙域に残っていて撤去にも費用がかかるから増税は確定だろ」

「はあ、ったく勘弁してくれよ」

 

「しかしコロニーを破壊したのはデラーズ・フリートとは別のジオン残党らしいけど、どうして仲間の計画を邪魔したのかしら?」

「あれ知らないの?ジオン軍は派閥抗争が酷くて、戦後も派閥の対立が続いてるんだって。ミリオタじゃ有名な話だよ」

「はあ?馬鹿なのその人達?というかそんな連中に連邦軍はやられちゃったのね」

 

同じように街頭テレビを見ていた群衆の会話を聞きつつカイは思考を続けていた。

 

(どの道デラーズ・フリートはお終いだ。宇宙艦隊を壊滅させコロニーを落とそうとしたテロリストを連邦軍が許すわけない。徹底的に排除されるだろうな……しかし後始末が大変だぞ。デブリの撤去もあるが艦隊の再建にどれくらい時間と費用が掛かることやら)

 

「ねぇママ、今日もお祈りに行くの?」

「もちろん!今日は教祖様がいらっしゃる日だから絶対に行かないと!」

 

(ん?あれは……salus(救済)教団の信者か)

 

ふと視界に入った親子連れを見て思考を中断する。

 

salus(救済)教団、フォン・ブラウンで設立された新興宗教。アナハイムをパトロンにして急速に勢力を拡大中で、月だけでなく各サイドにも信者が大勢いるらしいな)

 

巷で話題となっている教団が気になったが、それよりも考えなければならないことがあるのを思い出した。

 

(明日地球に戻る予定だったんだが……シャトル便は当分動かないだろうなぁ。運行再開は何時になることやら。大学には連絡を入れたし、事情が事情だから向こうも配慮してくれるだろうけどよ)

 

一時の気の迷いで観光旅行なんかするんじゃなかったとカイは後悔するのであった。

 

 

 

数年後、大学を卒業したカイは紆余曲折あってフリーのジャーナリストとして活動していた。

 

salus(救済)教団に深入りするな、ですか?」

「ああ、先輩として忠告するぞ」

 

とあるバーで世話になっている先輩ジャーナリストと会話していると教団についての話題になった。

 

「いや忠告は嬉しいですけど、いったい何故?」

「深入りした結果信者になっちまうからだよ」

 

何の冗談かと思ったが真剣な表情で忠告してくる先輩を見て冗談ではないと悟る。

 

「調査していた同業者が何人も信者になっている。例えば……あのアースノイドの嫌味なイケメン眼鏡とか」

「あー、あの嫌な奴ですか」

「アイツ無神論者でリアリストだったのに、先月あった時は信者になってて神の愛がー!とかラブ&ピース!って熱心に話してたんだ。気味が悪かったぞ」

「ええ?」

 

実際に同業者が信者になっていると聞き困惑する。

 

「洗脳でもされたんですか?」

「……あり得るだろうな。それもただの洗脳じゃない、お前も聞いたことがあるだろう?教団の教祖はニュータイプだという噂を」

「ええ、そりゃあ聞いたことがありますけど。いやでもニュータイプってそんな便利な存在じゃないですよ」

「伝説のWBのクルーだったお前が言うと説得力があるな。でも俺はあの噂は本当だと思う。いくらアナハイムがパトロンについているとはいえ教団の拡大速度は異常だ。何か尋常じゃない手段を使ってないと説明がつかない」

 

 

 

「とりあえず今日はお開きとするか。一応忠告はしたが教団について調べたいなら好きにすればいい。フリーのジャーナリストなんだし自己責任だ」

 

バーを出て先輩と別れたカイは今後どうするか考える。

 

(先輩も警戒し過ぎだろ、ニュータイプは神様じゃないんだぞ?しかし教団が急成長しているのは事実だ。どういう手品を使っているのか気になるな)

 

ジャーナリストとして興味が湧いたカイは教団について調査することを決めたのだった。

 

 

 

サイド2にあるホーリー・モーレスの生まれ故郷に来たカイは早速調査を始めた。シャトルを降りてタクシーに乗り移動する。

 

「あれが教団の教会か、大きいな」

 

遠くから見てもわかるほど巨大で荘厳な造りの教会を見て思わず驚く。

 

「写真で見たことはあったが、いやはや」

「すごいでしょう。2年ほど前に教祖様生誕の地ということで一際立派な教会が建てられたんです。各サイドから巡礼の方が大勢来ていつも賑わってますね」

「確かに人が多い。土産物屋や飲食店も多くてまるで観光名所だ」

「アハハ、まあ否定できませんね。でも巡礼者の方達がお金を落としてくれるおかげでこのコロニーは潤っています。私も運転手として稼がせてもらってますよ」

「地元の住民もあそこで祈るのかい?」

「いえ、いつも混雑してるので地元民はコロニー内にある別の教会に行きますよ。小さいですがしっかりした造りの教会があるんです」

 

タクシーの運転手と他愛もない会話をしつつ情報収集を行う。

 

「でも大教会に行かなくていいんですか?」

「観光に来たわけじゃないんでね。ジャーナリストとして地元の人間の声を聞きたいのさ」

「わかりました、そういうことなら」

 

 

 

地元住民の取材を終えたカイはカフェで一休みしつつ情報をまとめていた。

 

「こんなものか、住民が協力的なのは助かった。まあ取材慣れしてるんだろうな、教団について週刊誌やテレビ番組が何度も特集を組んでいるし」

 

(でも目新しい情報はほとんどなかったな……既に知られている情報ばかりだ。これではスクープにはならない)

 

あまり成果があがらなかったことに落胆するが、気を取り直して次の取材に向かうことにした。

 

「次はフォン・ブラウンに行くか。あそこには元ジオン兵の信者がいる。彼らから貴重な情報を入手できるかもしれない」

 

 

 

フォン・ブラウンにて地道な調査を続けた結果、市内に住む元ジオン兵信者の纏め役に取材することができた。

 

「初めまして、本日はお時間をいただきありがとうございます。フリーのジャーナリストとして活動しているカイ・シデンです」

「ケリィ・レズナーだ。あの有名なWBクルーに出会えるとは光栄だ……ラトーラ、茶を出してくれ。ジェーンは母さんと遊んでいろ」

 

左腕が義手になっている男は元ジオン軍の大尉であり、一年戦争時に左腕を失ったということだ。気難しい男でマスコミの取材を基本的に受け付けないらしい。

 

(今回特別に取材を受け入れてくれたのは俺がWBのクルーだからかね?あの経歴もこういう時役に立つもんだな)

 

貴重なチャンスを無駄にはしないとカイは取材を始めるのだった。

 

 

 

「……なるほど、貴方はソロモンの悪夢と面識があったと」

「ああ、奴とは戦友だった。デラーズ紛争の時には参加を促すビデオメッセージをもらったよ。まあすぐ警察に通報したがね。しつこく事情聴取されて暫くの間は警察の監視が続いて面倒だったが、あの程度で済んでよかったと思うべきだろうな」

 

どうやら目の前の男はアナベル・ガトーと知り合いだったようだ。スクープの気配に内心興奮しつつ表向きは落ち着いた態度で質問を続ける。

 

「貴方が教団に入信したきっかけは?」

「一年戦争が終わって一年程経過した頃だ。フォン・ブラウンに流れ着いてラトーラの世話を受けていた俺は終戦を受け入れられずにいた。俺の戦争は終わっていないと。そんな時に同じ市内に住む元ジオン兵から誘いを受けてな。正直胡散臭いと思ったが気まぐれで参加した」

「そして今は熱心な信者としてフォン・ブラウン市内の元ジオン兵を纏めていると」

「そうだ、それに妻と子を養うためにアナハイム系列の整備会社で働いている……今思えばくだらない未練だった。女々しく敗戦を受け入れられず全てを失ったと思い込んで死に場所を探してたんだろう。俺の目を覚ましてくれたモーレス様には感謝しているよ」

 

(この男も教団の集会に参加して入信したのか。市内に住む元ジオン兵信者達と同じだな)

 

取材を続けながら教団の集会について興味を持つ。

 

「教団の集会では何が?」

「気になるか、なら実際に体験したらいい。今週日曜の礼拝でモーレス様がおいでになるからそこで確かめてみろ……心配するな、別に怪しい儀式じゃない」

 

(教祖が参加する礼拝ねぇ。まあ実際見てみないとわからないのは確かだ。参加してみるとするか)

 

半信半疑に思いつつもカイは礼拝に参加することを伝えた。

 

 

 

「ははあ、デカいドームだね」

 

日曜礼拝の日となり集合場所に来たカイは目の前にある礼拝ドームの大きさに感嘆する。

 

「5万人を収容できる大型ドームだ。信者からのカンパとアナハイムの援助によって建てられた」

「それはそれは」

 

宗教が儲かるっていうのは本当なんだなと思いつつ、続々と集まってくる他の元ジオン兵信者達と雑談をする。フォン・ブラウンでの調査によって顔見知りとなった元ジオン兵もいたため、カイは彼らに受け入れられていた。

 

「また会ったなシデンさん。アンタも入信する決心をしたのかい?」

「いや、そういうわけじゃなくて見学に来たのさ。レズナーさんに誘われてね」

「そういうことか。でも丁度いいタイミングだったねぇ」

「シデンさんは運がいい、教祖様のありがたいお言葉を直接聞けるなんて幸運ですよ」

 

「へぇ、ここに集まってくるのは元傷痍軍人が多いのか」

「五体満足な元ジオン兵達は別のグループだな。ここにいる人間はケリィさんに多かれ少なかれ世話になっている」

「俺もケリィさんに仕事を紹介してもらったんだ。相方と一緒に真面目に頑張った結果、職場の女性と結婚して子供もできた。……戦争で両脚を失って敗残兵となった時はもう人並みの生活はできないと諦めてたけど、世の中捨てたもんじゃないよ。なあグレゴリー」

「そうだなフリオ。生きてれば何とかなるもんだ」

 

「しかし礼拝までまだ時間があるのに続々と人が集まってくるな。ドームに入り切るのか?」

「無理無理、いつもの礼拝なら大丈夫だけど今日はドームの外にも信者で溢れるだろうね」

「モーレス様がいらっしゃる時はいつもこうさ。だから俺達は早めに集まったわけだ。まあドームの外でもモーレス様のお声は聞けるけどな」

 

「あちらに集まっているのが連邦軍の信者達か」

「そうそう、歩兵や士官候補生とか現役のMSパイロット、駆逐艦の艦長など多種多様さ」

「噂じゃティターンズにも信者がいて、お忍びで礼拝に来る奴もいるらしいよ」

「実際にいたぞ、ソイツは上層部にバレて僻地に飛ばされたようだな」

「可哀想に、ただモーレス様を信じていただけなのにね」

 

 

 

雑談をしながら時間を潰し礼拝の時間となった。祈りと賛美歌から始まり、いよいよ教祖であるホーリー・モーレスの登場となる。

 

(さあて巷で話題の教祖様のお話とはどんなものか……アムロみたいなテレパシーかねぇ?)

 

アムロの声に導かれてア・バオア・クーから脱出した記憶を思い出す。あの時の不思議な体験を知るカイはこれから起こることを冷静に見極めようとし……

 

「えっ?」

 

周囲に星々の輝きが瞬いていることに気づく。礼拝ドームにいるはずがいつの間にか不思議な空間を漂っているのだとわかった。

 

「えっ、は、ええっ!?」

「落ち着け」

 

隣にいたケリィに注意されて我に返る。ふと周囲を見渡せば信者達はこの状況に慣れているのか落ち着いており、モーレスの言葉を聞き逃さないと彼を見つめていた。

 

 

 

【天にまします我らの父よ……】

 

(頭の中に声が!やはり彼はアムロと同じニュータイプなのか……!?)

 

カイが混乱している間にもモーレスの話は続いていく。

 

【僕は憂いています。地球の将来を、人類の未来を……】

 

モーレスの憂いや悲しみを感じ取る。

 

【世界に平和が訪れるためには皆さんの協力が必要です……】

 

彼が本気で世界平和を望んでいるのがわかる。

 

【皆さん、祈りましょう。人類の未来に……】

 

彼から発せられるオーラに安らぎを覚える。

 

(これがホーリー・モーレス、救世主と呼ばれる男なのか……!)

 

 

 

「どうだ?実際にモーレス様の御力を経験した感想は」

「……とても得難い経験でした。かつてア・バオア・クーでアムロが似たようなことをしたが彼は桁が違う」

「ほう、やはりアムロ・レイもモーレス様と同じ本物のニュータイプなのか。愚昧な地球連邦政府が彼を恐れて軟禁するわけだ」

 

礼拝が終わり信者達が帰路につくなか、カイはケリィと会話をしていた。

 

「これでわかっただろう。教団がスペースノイドに支持される理由が」

「ええ、よくわかりましたよ」

 

(教団の異常な拡大速度の理由がわかった。教団を調べていた同業者が何人も信者になるわけだ。あの力を経験したら奇跡としか思えないだろうな。俺も呑まれそうになったが踏みとどまったのは根が捻くれ者だからかね?)

 

「モーレス様は世界平和の為に尽力されている。現在地球圏が落ち着いているのはあの御方のおかげさ」

「……そうですね」

 

(確かにそうかもしれない、だがニュータイプの力を堂々と使うのは大丈夫なのか?連邦政府がこのまま見逃すとは思えない)

 

 

 

ケリィ達と別れたカイは教団の今後について考えを巡らせる。

 

(ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプの一人が宗教を立ち上げて民衆の心を掴み一大勢力を作り上げた。地球連邦軍やティターンズにも信者がいて彼を信仰している……政府からしたら悪夢だな。どんな手を使ってでも排除しようと考えてもおかしくない。彼はどうするつもりなんだ?)

 

「考えてもきりがない、直接聞いてみるとするか。駄目元でやれることは全部試してみよう」

 

モーレス本人へ取材をしようと決意したカイは、自分が持っている伝手をフル活用しようと準備を始めるのであった。




ガトー『ケリィ、お前の力を貸してほしい!』
ケリィ「うわぁ……」(哀れみつつも警察に通報)



地球連邦軍「ふええ……軍内部で信者がどんどん増えてるよぉ。再建を進めてる宇宙艦隊にも大勢いるし」
ティターンズ「アホを見つけたけどコイツ一人だけじゃないよなぁ、何人潜んでいるか考えたくねーわ」

政府上層部「ヒエッ……(恐怖)」



更新速度は遅くなりますが頑張って投稿していこうと思います。
感想くれると嬉しいです。
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