【完結】機動戦士ガンダム実況_カルト教祖プレイ   作:すも

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初投稿です。今回は番外編となります。


閑話⑤<シャア・アズナブルの後悔>

<シャア・アズナブルの後悔>

 

 

 

―皆さん、地球圏は連邦政府や皆さん達の尽力によって少しずつですが着実に復興が進んでいます。これは大変喜ばしい事です―

 

上司であるブレックス・フォーラ連邦議会議員の演説を傍で聞きつつクワトロ・バジーナ第一秘書……シャア・アズナブルは地球圏の行く末について思いをはせる。

 

(一年戦争の傷跡は大きいな……仕方ないか、あの戦争で総人口の半数が死んだのだ。完全に回復するにはどうしても時間が必要だ)

 

―アースノイドとスペースノイドの対立、各サイドのインフラ整備、経済格差……まだまだ課題は残っていますが我々が力を合わせれば必ず解決できると信じています―

 

(現在の地球圏は安定している。各サイドの再建が一段落し流通網も復活したおかげで経済も順調に発展、戦前の経済規模には及ばないが終戦直後に比べたら雲泥の差だ。治安についてもジオン残党が壊滅し宇宙海賊による襲撃被害も年々減少傾向にある)

 

―子供達の為にも共に力を合わせて輝かしい未来を作りましょう!―

 

(未来、か。今の落ち着いた地球圏の様子を見るに()が目指している未来が何であれ、彼に任せておけば問題ないだろう)

 

ブレックス議員の演説が終わり拍手が上がる中でシャアはそう結論づけた。モーレスならば人類を導いてくれるはずだと。

 

 

 

「お疲れ様です先生。後の雑務については私が対応いたしますのでお休みください」

「うむ、ありがとう。君には苦労をかけるな」

「いえ、これくらい大したことではありません」

 

演説終了後シャアはブレックス議員の秘書として雑務の処理を行う。議員秘書の仕事は多忙であったが、シャアは持ち前の才覚で上手く立ち回り周囲には敏腕秘書として評価されていた。

雑務処理も終わり一段落したシャアはブレックス議員と雑談をしていた。

 

「君にはいつも助けられているよ。軍人としてだけでなく秘書としても有能だとは凄いものだ」

「ありがとうございます」

「周囲の人間も君の働きを高く評価している。私が君を後継者に指名しても誰も文句は言わないだろう……しかし本当にいいのかね?サイド3に戻らずルナリアンとして生きるとは」

「その件ですか。以前申しましたが私には荷が重すぎます」

 

ブレックス議員から暗にキャスバル・レム・ダイクンに戻らないのかと問われたシャアは苦笑しつつも否定する。

 

「あの赤い彗星がジオン・ズム・ダイクンの遺児だったとわかればサイド3の人達も熱狂的に迎え入れてくれるだろう。君の手腕とカリスマがあればサイド3の掌握も簡単だろうさ」

「買い被り過ぎです。私にそんな器量はありませんよ。帰ったところで政治家に利用されて客寄せの道化になるのが関の山です」

「そう自分を卑下しなくてもいいだろうに」

「いえ、自分の器量については自覚しているので……こうやって先生の補佐をしているのが身の丈に合っています」

 

それはシャアの本心からの言葉であった。

 

(そうだ、私は組織のトップにふさわしくない。私は現場で働くのが性に合っている……思えば一年戦争でもそうだったか。前線に出てMSパイロットとして出撃する方が気が楽だった。副官達には悪い事をしたな)

 

「ジオンが敗北し残党達も壊滅した結果ジオニズムは過去の遺物となりました。今更ダイクンが出てきた所で余計な混乱を引き起こすだけです。後はモーレス殿にお任せすればいいでしょう」

「モーレス様か、確かにあの御方ならば人類をより良い方向へ導いてくれるだろうな」

「ええ、私と違い真のニュータイプである彼ならばそれが可能です」

 

話を続けるうちにモーレスが率いる教団について話題が移る。

 

「この10年で教団はスペースノイドの半数を信者にしました。これほど急成長した組織は過去に存在しないでしょう。モーレス殿の求心力は凄まじいものです」

「うむ、あの御方のカリスマや献身的な活動もあるが、状況が味方した部分もあるのは確かだ」

「どういう意味ですか?」

「……生き残ったスペースノイド達は縋りつく相手が欲しかったのさ。こんな言い方はしたくないが、一年戦争が起きたからこそ教団は急拡大したのだ」

 

 

 

「先の一年戦争では総人口の半数が死んだ。その大部分がスペースノイドであり、サイド3とサイド6以外の各サイドはジオンの攻撃によって壊滅状態となっていた。あの地獄を生き残っても心に傷を負った上に家族や知人が死んで自分達の故郷は壊滅。戦後になってもジオン残党や海賊が跋扈し連邦政府は頼りにならず先は見通せない……そんな状況では何かに縋りつきたくなるのも無理はない」

「……」

「そして心に不安がある人間が縋りつく先として宗教は最適だ。自分達と同じ戦争の被害者であるモーレス様が起こす奇跡を体験すれば崇拝するのも当然だろう」

「自分達を救ってくれる救世主だと信じるわけですな」

「ああ、実際にモーレス様は人類を救おうと尽力されておられるし、その思いをテレパシーで感じ取れば安心するだろうさ。あの御方に任せておけば全て上手くいくとな」

 

ブレックス議員の話を聞いてシャアは大衆の無責任さに苛立ちを覚えた。

 

(自分で動こうとはせずに他人任せとは……いや、私がそれを言う資格はないか。私も彼に任せておけばいいと思っているだろうに。私も所詮愚民なのだな)

 

しかしすぐに自分も同じ穴の狢だと自覚し自嘲する。

 

(かつての私はララァに縋りついていたが、それが今はモーレス殿に代わっただけか。我ながら情けない男だ……ララァ、君が今の私を見たら笑うだろうか?)

 

かつて自分が見出したニュータイプの少女についてシャアは考える。

 

(ララァ、君と出会ったのは私にとって幸運だったが、君にとっては不幸だったのではないか?)

 

―なぜララァを巻き込んだ!ララァは戦いをするような人ではなかった!―

 

(……ああ、そうだ。彼の言った通りだ。私は何故彼女を戦場に連れ出してしまったのだ)

 

ララァについて考えるなかでアムロの言葉を思い出す。あの時の自分は気付かない振りをしていたが彼の言う事が正論であったと。

 

(ララァのような真のニュータイプなら別の方向でニュータイプ能力を活かせたはずだ。いや、当時劣勢だったジオンにニュータイプを遊ばせる余裕などない。どの道戦場に連れて行かれたか……もしかして私が見つけなければよかったのでは?少なくとも一年戦争で戦死することはなかったはずだ)

 

「どうしたクワトロ君?」

「ああいえ、何でもありません」

「本当に大丈夫なのか?今の君は酷い顔をしているぞ……何か思い詰めたような表情だ」

 

ブレックス議員に心配されシャアは慌てて表情を取り繕う。

 

「ご心配をおかけして申し訳ありません。本当に何でもありませんので」

「ふーむ、余計なお世話かもしれないが何か悩みがあるのなら相談に乗ろうじゃないか。一人で考え込んでいても改善することは滅多にない。愚痴でもなんでもいいから吐き出せば気分転換にはなるし解決の糸口に繋がることも多いぞ?」

「それは……」

 

シャアは少し悩む素振りを見せ……最終的に話すことにした。

 

「そう、ですな。お願いできますでしょうか?」

「うむ!遠慮しなくていい、若者の悩みを聞くのも年長者の役目だ」

「もう若者という歳ではないのですが」

「ハハハ、私のような老人から見れば君もまだまだ若いさ」

 

自分らしくないと思いつつもシャアは自分の悩みを話すことにした。シャアが自分の思いを正直に話せたのはブレックス議員が自分の正体を知る数少ない存在かつ信頼できる人物だからだろう。

 

(……こうやって誰かに本心を話すのはララァ以来だな)

 

 

 

数時間後、シャアの長い独白が終わった。最初は軽く愚痴るだけの予定が気が付けば話す予定のない事まで話していた。

 

「そうだったのだな……しかし、その、大丈夫なのかね?話す前より酷い顔をしているのだが」

「いえ、大丈夫です。……認めたくないものですな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」

 

話し終えたシャアは死んだ目をして頭を抱えていた。自分の過去を話し、自分を客観的に見つめた結果自己嫌悪に陥っていたのだ。

 

(何をやっているのだ私は……ララァだけでなく、ガルマやハマーンについても後悔ばかりではないか)

 

どうやら自分は想像以上に度し難い人間だったらしいと自嘲する。

 

(ガルマ……彼は確かにザビ家の一員だったが、それでも気を許せる友人だった。それを一時の衝動で見殺しにした挙句「君の生まれの不幸を呪うがいい」とは……いくら何でもあんまりではないか?)

 

(ハマーン……鬱陶しかったのは確かだが相手はまだ10代の少女だったのだぞ?世間知らずの少女に貧乏くじを押し付けて逃げ出すとは情けない……いや、まあ彼女から逃げた事については後悔していないが。だがそれにしても)

 

「もしかして私は疫病神なのでは……?」

「落ち着け!……今の君に必要なのは気分転換だな。こういう時は何か口に入れるのが一番だ。酒は明日の業務に響くからダメだが、地球産の高級チョコやコーヒーがあるからそれをいただくとしよう」

 

ブレックス議員に宥められつつシャアは落ち着きを取り戻すのであった。

 

 

 

「……先程はご迷惑をおかけしました」

「いや、迷惑とは思ってないさ。君も苦労していたのだな」

 

落ち着いたシャアは迷惑をかけたブレックス議員に謝罪していた。

 

「失望したでしょうか?」

「まさか!私は君の働きに何度も助けられている。私の若い頃と比べたらとてもしっかりしてるし頼もしく思っているよ……だから自分を卑下するのはやめるべきだ」

 

弱音を吐くシャアに対してブレックス議員は笑いながら背中を叩く。

 

「どうかね今の気分は?」

「不思議と気分が軽くなりました。ただ愚痴を吐くだけでも違うものですな」

「そうだろう。一人で悩みを抱え込んでいても鬱屈とするだけだ。誰かに話すだけでも違うものさ。これからは何か悩みがあるなら遠慮せず私に相談しなさい。微力ながら力になろうじゃないか」

「ええ、そうします……恐れ入りますが何処かで長期休暇を頂きたいのですが」

 

幾らか迷いが取れたシャアはブレックス議員に休暇の申請をすることにした。

 

「それは構わないとも。有給も溜まっているようだし消化すべきだ。バカンスにでも行くのかね?」

「いえ、妹に会いに行こうと思いまして」

「妹?君に妹が……いや、まさか」

「ええ、アルティシア……私の妹でありもう一人のダイクンの遺児です」

 

(久々にアルティシアの顔を見たくなった。アルティシアにとってはいい迷惑だろうが少し会いに行くぐらいなら大丈夫だろう)

 

その後有給を取得したシャアはアルティシアと再会したものの、妹から厳しい言葉を投げられて少々凹んだり、妹から尻を叩かれて政治家としての道を目指すことを決意したりしたのだがそれはまた別の話である。

 




<一年戦争終結後のシャアの一幕>
シャア「ほう、アムロ・レイが語るニュータイプについてのインタビュー記事か。興味深いな。早速見てみよう」
アムロ「仏陀が~ニュータイプの革新が~」(抽象的過ぎてよく分からない話が続く)
シャア「おおっ………うん………」



更新速度は遅くなりますが頑張って投稿していこうと思います。
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