【完結】機動戦士ガンダム実況_カルト教祖プレイ   作:すも

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今回は番外編となります。


閑話⑦<カイ・シデンのレポート~地球連邦の新型MSとザビ家最後の生き残り〜>

<カイ・シデンのレポート~地球連邦の新型MSとザビ家最後の生き残り〜>

 

 

 

「グリーンノアにようこそカイ・シデンさん。あの一年戦争の英雄とお会いできて光栄です」

「こちらこそ本日はよろしくお願いします」

 

宇宙世紀0092年、カイはサイド7の1バンチ……通称グリーンノアにてティターンズの士官に出迎えられていた。モーレスの目的を調査する傍らジャーナリストとして様々な場所で活動しており、今回はティターンズの新型MSについての取材となった。

 

「早速基地にご案内します。こちらへ」

 

新人らしい青年士官に案内されカイは車にてティターンズの基地に向かう。

 

「今回はMSの取材に来たのですか?」

「ええ、巷のニュースで話題になっているのを見て興味が湧きましてね。それに昔住んでいたコロニーの事も気になりまして」

「ああ、そうでした。シデンさんもここに住んでいましたね」

「ええ、ジオンの襲撃から逃げてホワイトベースに乗り兵士として一年戦争を戦う事になりました……たった数ヶ月とはいえ過酷でしたよ」

 

当時を振り返ったカイはよく生きてたものだと遠い目を浮かべる。

 

「アハハ……士官候補生の時にホワイトベースの記録を見ましたが、本当に大変でしたね。自分じゃとても生き残れる気がしません」

「アムロのおかげですよ、彼の驚異的な活躍があってこそあの戦争を生き延びたんです」

「ご謙遜を、確かにレイ大尉の戦果は突出していましたがシデンさんもエースとして活躍していたじゃないですか」

 

青年士官から尊敬の眼差しを向けられむず痒い気持ちになる。その後サインを求められるなど終始和やかな雰囲気で基地に移動していたのだった。

 

 

 

「ジェリド・メサだ。新型MSのテストパイロットを担当している」

「カクリコン・カクーラー、ジェリドと同じくテストパイロットだ。よろしく頼む」

 

基地に到着したカイはテストパイロットの中尉達2人に迎えられた。

 

「今回メディアに公表された新型MS……ハイザックⅡについてですが、実際に搭乗したお二人の感想を聞きたいのですが」

「ハイザックⅡは傑作機だ。現場のパイロットや連邦政府も満足する出来だよ」

「ああ、間違いなくいい機体だと断言できる。実物をお見せしよう、ついて来てくれ」

 

2人に案内され新型MSがある格納庫へ移動する。

 

 

 

「……娘のティナはアメリアに似て可愛い顔でな。あれは大人になったらスゴイ美人になるだろう。悪い虫がつかないか心配になる。俺がしっかり見張っておかないとな」

「カクリコン、嫁と娘の自慢話はやめろ。相手が困っているだろうが……悪いねシデンさん、コイツ普段は真面目なんだが家族の話になるとこうなるんだ」

「いえいえ、話を振ったのは自分ですし」

 

移動中に雑談をしているとカクリコン中尉の家族自慢が始まり見かねたジェリド中尉が止めていた。

 

「お前だって酒の席ではよく女房と息子の話をするじゃないか」

「そりゃあマウアーとマイクは自慢の嫁と子供だからな……じゃなくて仕事中は止めろと言ってるんだ。もし上官に見られたら修正されるぞ」

 

(なんというかティターンズなのにノンビリしてるな。まあでもアクシズ討伐以降地球圏で大規模な戦闘は起きていないし、火星のマーズジオンも討伐された今では地球圏に連邦の脅威となる勢力は存在しない……気が抜けるのも仕方ないか)

 

仲の良い2人の様子を見つつカイは考える。

 

(でも平和なのはいい事だ。戦いの中で死ぬよりもこうやって家族の話をしたりして何気ない日常を過ごす方が絶対にいい)

 

 

 

格納庫に到着したカイは目当てのMSを見上げる。

 

「これが新型ですか。既存のハイザックに似てますが細部が色々と違いますね」

「それだけじゃないぞ、コイツはハイザックに似ているが中身は完全に別物だ」

「ああ、マラサイと同じムーバブルフレームだからな」

 

RMS-110……ハイザックⅡはハイザックの面影を強く残しつつも似て非なる機体と聞いてカイは驚く。

 

「ムーバブルフレーム?ハイザックにはなかったものですね……という事はジムⅡのようにハイザックからの改修は難しいのでは?」

「一応できなくはないそうだ。大規模な改造が必要となるが」

「まあ改修にかかる費用を考えたら現実的ではないし、新造したほうが安いらしいがな」

 

2人の話を聞いてカイは不思議に思う。

 

「軍縮を進めている連邦政府がよく許可を出しましたね」

「噂では軍のトップが苦労して押し通したらしい。現場からの声が大きかったのもあるだろうがな」

 

カイの疑問にジェリド中尉達が答える。

 

「シデンさんも知ってるだろうが、以前から現場のパイロットより新型MSを望む声が多数上がっていた。連邦軍とティターンズの両方からな」

「ハイザックは乗りやすいが色々と中途半端な部分があって不満点も少なからずある。地道な改善は続けられているが現場のパイロットが新型を欲しがるのも無理はない。そして我々ティターンズの主力MSであるマラサイは高性能だが高価で数を揃えるのは難しい。連邦軍全体に普及されるのは現実的じゃない」

「そこでハイザックⅡというわけですか」

「ああ、次世代の汎用量産機であるハイザックⅡの出番さ」

 

MSのスペックが書かれている宣伝用の資料をカイに渡しつつ2人は説明を続ける。

 

「ハイザックⅡはハイザックとマラサイの運用データを参考にして設計された機体だ。開発にはアナハイム以外にもサナリィといった幾多の企業も参加した一大プロジェクトだった。基本性能はマラサイを凌駕し、模擬戦ではマラサイを圧倒するほどの力がある」

「それにハイザックの生産性の高さと操作性の良さはそのまま、整備性と拡張性も高くオプションも豊富で武装についても既存の物をそのまま使えるぞ」

「何度も言うがハイザックⅡは傑作機だ。コイツが配備されたら今後10年以上新型MSは必要ないだろう」

「それは、すごい」

 

資料を読みつつカイは感嘆の声を上げる。確かにスペックを見るに既存のMSとは一線を画しており、2人が自信をもって断言するわけだと納得した。

 

「正式配備は来年からですか。やはりティターンズから配備されるのですか?」

「当然エリート部隊から優先される。マラサイに飽きたパイロットも多いし歓迎されるだろうさ」

「連邦軍は何時頃になるでしょうか?」

「………それがなぁ」

 

これまでとは打って変わって2人は少し不満げな表情を浮かべた。

 

「ティターンズへの配備は少しずつ進めるという話だから、まあ連邦軍は当分ハイザックで我慢だな」

「予測では連邦軍への配備は早くても95年以降、軍縮の影響で一度に配備される数も少ないだろうから……普及するには何年もかかるだろう。下手したら今世紀中には終わらないんじゃないか?」

「間違いなく宇宙世紀100年以降も細々と続けてるだろうな。というか辺境の部隊は未だにジムを使っているし更新されずそのままかもしれんぞ」

「予算がもっとあればな……コイツは間違いなくいい機体なのに」

「愚痴を言ってもしょうがないぞジェリド、このご時世に量産にこぎ着けただけでも十分だろ」

 

2人の会話を聞きカイは苦笑する。

 

(いい機体でも予算がなければどうしようもないか。まあ連邦政府も金食い虫である兵器の更新に二の足を踏むのは当然だな。ジオン残党といった仮想敵が存在しない現状では政府も財布の紐を緩めるわけがない)

 

現在の地球圏は安定しており治安についても大幅に改善されていた。ジオン残党と宇宙海賊は地球圏や火星からほぼ駆逐され、残っているのは貧弱な組織のテロリストぐらいである。弱小テロリストが用意できる物など大したものはなく、よくて碌に整備されていない一年戦争の旧式MSぐらいであり、大抵は小銃など携帯火器ばかりで連邦軍部隊でも簡単に対処できる存在であった。そんな状況で現場がいくら新型MSを求めたところで配備が非常に遅くなるのも無理はないだろう。

 

 

 

ハイザックⅡの説明も終わり予定より少し時間が余ったカイは2人と雑談していた。

 

「しかしティターンズも変わりましたね。随分と親しみやすくなったというか」

「設立当初のような高圧的な態度じゃ民衆の支持を得られない。意識改革を徹底した結果今はそれなりに支持されるようになった」

「スペースノイドも加入できるようになったからな。まあ数としてはまだまだ少ないがね」

「スペースノイドがティターンズ入り……昔じゃ考えられないですね」

「連邦政府からスペースノイド差別を止めろと言われたら改善するしかないさ。上官達も内心はどうあれ部下としてきちんと扱っているし上手くやっているよ」

 

話も一段落したカイはある質問をする。

 

「ティターンズにもsalus(救済)教団の信者はいるのですか?」

 

カイの質問に2人は揃って渋い表情を浮かべる。

 

「シデンさん、言いにくい事を聞いてくるな。まあ気になるのはわかるが」

「ああいえ、失礼しました。話したくなければ別に言わなくても」

「いやいいさ、どうせ調べたらすぐわかる事だしな」

 

2人は気が進まない様子でティターンズにいるsalus(救済)教団の信者について話し始めた。

 

「今のティターンズには教団の信者が少なからずいるのは確かだ。隠れて信仰している奴もいるが中には堂々と信者だと公表してる人間もいる」

「この基地にもそういう奴がいる……ほら、アイツだ」

 

カクリコン中尉が指さす先を見ると、教団のシンボルをネックレスとして首から下げているティターンズ士官がいた。

 

「えぇ……?あんな堂々としてて大丈夫なんですか?数年前は信徒だとわかると問答無用で僻地に送られたという話を聞きましたが」

「今じゃそんなことはできないな。不当人事だと騒がれて面倒な事になる。地球連邦は信仰の自由が認められているし、新興宗教を信仰してるぐらいで辺境送りになったら外野がうるさい」

「個人的には気のいい奴だとわかってるし同僚としては悪くはないんだよな。まあ上官はいい顔をしてないし確実に出世コースから外れているのは確かだ」

 

ティターンズにも教団の信者が徐々に浸透しているのがわかりカイは唖然とする。

 

(地球至上主義でアースノイドを優遇するティターンズにも信者が続々と入り込んでいる。ティターンズでこれなら連邦軍はもう手遅れじゃないか)

 

「以前ティターンズNo2のバスク・オム大佐が視察に来た時、アイツを見て露骨に機嫌が悪くなってたよな」

「ああ、あったあった。基地司令官殿が顔を真っ青にしてたな。あの時は本気で同情したよ」

「……それはお気の毒に」

 

2人の話を聞きつつカイは思考を続けていた。

 

(もう地球連邦もティターンズも迂闊に教団へ手を出せないな。下手に刺激したら大混乱だ)

 

取材も終わりホテルに戻ったカイは暫く考え込んでいたが埒が明かないと思考を打ち切る。

 

「今日はもう休もう。次の取材相手は地球のニューヤークか、しかしまさか彼女に取材できるとはなあ」

 

 

 

「初めましてカイ・シデン殿」

「初めましてミネバ・ラオ・ザビ。本日はお会いできて光栄です」

 

地球の北米大陸にあるニューヤーク、厳重な警備が敷かれたとある屋敷にてザビ家の最後の一人であるミネバ・ラオ・ザビに取材をすることができた。一年戦争時は赤ん坊でアクシズではお飾りのトップとして育てられた彼女は現在地球連邦政府に保護されつつ暮らしていたのだった。

カイはザビ家に対していい感情を持っていなかったが当時赤ん坊だった彼女は無関係だと理解していた。彼女の凛とした佇まいを見てカイは感心する。

 

(まだ少女だというのに気品があるな。メディアがラストプリンセスと騒ぐのもわかる……しかし本当に厳重な警備だな。SPが何人も配置されていて表にはMSが警戒態勢で待機している。屋敷で働く人間も明らかに素人じゃない、訓練を受けた動きだ)

 

「どうされましたか?」

「その、これほど厳重な警備にちょっと驚きまして」

「ああ、それですか。私を護る為とはいえこの物々しい警備は皆さんが驚くのも無理はありません」

「SPはわかりますがMSまで待機させるのは過剰だと思うのですが」

「ジオン残党のMSによる襲撃への備えとして配備されています。今となっては不要だとは私も思いますが念には念を入れるということです」

「残党の襲撃ですか……まあ、あり得なくはないでしょうね」

 

デラーズ・フリートやマーズジオンの執念を思い出しカイも否定できなかった。もはや組織だった動きはできなくても義憤に駆られた個人がMSに乗って吶喊する場合も考えられるので備える必要があるのは理解できた。

インタビューが始まりいくつか質問をしたカイはふと彼女がしているブレスレットに気付く。

 

「おや、そのブレスレットはsalus(救済)教団のですか。貴方も信者だったとは」

「いいえ、私は信者ではありません。これはアクシズにいた時に侍女頭のマーヤからもらったものです」

「アクシズで?アクシズにもsalus(救済)教団の信者がいたのですか?」

「そうです。アクシズでは禁じられていましたがそれでも隠れて信仰する人達がいたのです」

 

狂信的なジオン残党が集まっていたアクシズで教団信者がいたことにカイは驚く。

 

「アステロイドベルトでの生活は陰鬱なものでした。私はお飾りのトップとして不自由のない生活を送っていましたが、それでもあの暗く寒い場所は気分が滅入りました。私でもそうなのですから他の方達のストレスは想像を絶していたでしょう」

「……」

「当てもなくアステロイドベルトにただ隠れ潜む生活は軍人達も耐えられず地球圏への帰還を望む声が多く上がりました。軍人でもそうなのです、侍女達が耐えられるはずがない」

「そしてsalus(救済)教団の信者になったと」

「ええ、ですが彼女達を責めることはできません。あの状況では宗教に救いを求めるのも無理はありませんから」

「なるほど」

 

追い詰められた人間が宗教にハマるのを何度も見てきたカイは理解を示す。

 

「しかし彼女達は、その、どうなったのですか?」

「……ハマーンに粛清されました。マーヤは最後に私とハマーンに謝っていました」

「ハマーン・カーンですか」

 

アクシズの実質的な指導者であるハマーン・カーンの名前が出てきて好奇心が刺激される。

 

「彼女について思うところは?」

「可哀想な人です。重荷を背負わされて一人孤独に頑張っていた姿は見ていられませんでした」

「可哀想、ですか」

 

思わぬ言葉に驚く。メディアの報道やアクシズの生き残りの話から想像されるハマーン・カーンは容赦なく粛清を行う冷酷非情な女宰相といったイメージだったからだ。

 

「可哀想なハマーン……あの優しかった人があんなに変わり果てて、そしてあそこまで窶れるなんて。赤い彗星が残ってくれれば彼女の救いになったでしょうに」

「逃げ出した赤い彗星については?」

「思うところがないと言えば嘘になりますが、ですが今ならわかります。アクシズに残ったところで役目を押し付けられるだけ、逃げ出すのは当然のことです」

(まあ逃げるよなぁ。貧乏くじなんて引きたくないよな)

 

当時のアクシズの悲惨な内情を知るカイは赤い彗星の行動に納得する。

 

「今の地球圏についてどう思いますか?」

「未来に向かって進んでいると思います。私のような罪人の娘には何もできませんが、少しでも人類の行く末が良くなるよう祈ることにします」

 

暫くしてインタビューを終えたカイはホテルにてインタビュー内容を確認していた。

 

「まさかアクシズにも信者がいたとはなぁ、salus(救済)教団の影響力は凄まじいな。でもここまで成長した教団を使って彼は何をするつもりなんだ?……もう直接聞いてみるか。虎穴に入らずんば虎子を得ずと言うし当たって砕けろだ」

 

ジャーナリストとしてモーレスの目的について知りたいカイは危険を冒すことを承知でモーレスに再度取材を申し込むことにしたのであった。




現場のパイロット「新型くれ」
連邦政府「軍縮だって言ってるだろ。でもMS開発は最低限続けさせた方がいいか……おいアナハイム」
アナハイム「えっ、平和なんだし別に新型開発しなくてもいいじゃないですか」
連邦政府「そういうわけにもいかないだろ。他の企業と協力して開発を進めてくれ」
アナハイム「おかのした」



<オリジナル機体>
●RMS-110……ハイザックⅡ

全高     18.5m
本体重量   32.0t
全備重量   55.5t
出力    1,750kW
推力    85,000kg
センサー有効半径  13,000m
武装     新型ビームライフル、バズーカ、ザク・マシンガンⅡなど

→この世界におけるジェガンポジション。見た目はハイザックに似つつも背中のスタビライザーが無くなっているなど明確な違いがある。次世代の量産機として高い性能を持ちマラサイを圧倒できる。整備性や拡張性の高さ、そして生産性の良さで現場や連邦政府も満足な出来となった。だが軍縮の為現場に配備されるのは遅々として進まない模様。



更新速度は遅くなりますが頑張って投稿していこうと思います。
感想くれると嬉しいです。
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