【】内の台詞はテレパシーで交信している設定です。
―ニュースをお伝えします。火星に出発していた新型輸送船「マーズ」が地球圏に帰還しました。「マーズ」はミノフスキードライブという画期的な新技術が使われており……―
「ミノフスキードライブか。あの男が実用化したんだろうが、あのビジョンから見よう見まねで再現できるとは凄いもんだ。自分を天才だと自負するのは伊達じゃないな」
宇宙世紀0099年12月、取材の為地球のニューヤークに滞在していたカイ・シデンはテレビのニュースを見てぼやいていた。テレビのニュース番組ではアナウンサーと専門家がミノフスキードライブについて話し合っていた。
―しかしスゴイ新技術ですね。火星との往復がこんなに早くなるなんて!―
―そうですね。ミノフスキードライブがあれば地球圏外の移動も大幅に短縮されるでしょう。試算では木星なら従来では片道2年以上かかったのが、ミノフスキードライブなら片道2ヶ月程度になるとか―
―片道2年が2ヶ月にまで!?……いやホントスゴイですねぇ。科学の進歩には驚かされますよ―
(サイコフレームといいミノフスキードライブといい、ミノフスキー粒子って何でもアリだな。その内ワープ装置も開発されるんじゃないか?……いや、便利なのはいいことなんだが)
―現在建造中の超大型輸送船「ネオ・ジュピトリス」もミノフスキードライブを搭載しているらしいですね―
―本来は「ネオ・ジュピトリス」が一番最初に建造が始まっていたんですよ。「マーズ」に先を越されてしまいましたが―
―でもあれ程の超大型輸送船なら建造に時間が掛かっても仕方ないのでは?―
―アハハ、まあそうですよね。でも建造も大詰めらしいですし、来年には建造も終わるそうですよ―
「ふーん、往復で半年もかからないのなら木星に取材に行ってみてもいいかもしれないな。……次の取材先は地球連邦本部か。まさかあの男が地球連邦政府首相とはなぁ」
「初めまして、かな?カイ・シデン殿……一年戦争では敵として戦った事もあるだろうがキャスバル・レム・ダイクンとして会うのは初めてだな」
「そうですね、キャスバル・レム・ダイクン首相。でも貴方が地球連邦政府首相になるとは思いませんでしたよ」
地球連邦政府本部にてカイは連邦政府首相のキャスバル・レム・ダイクン……シャア・アズナブルと対面していた。
「ふーむ、君のその表情を見るに……もしや君も未来のビジョンを見ていたのか?」
「おや、わかりますか」
「アムロも首相となった私を見て同じような形容し難い表情を浮かべていたからな。まさかとは思ったが君も見ていたのか」
「アムロもアレを見ていたんですね、なら内容も知っていますか?」
「ああ、アムロに教えてもらったが私がアクシズを地球に落とそうとしていたとか……正直言って何故そんな状況になるのかわからないのだが」
(まあそうだよなあ、聞いたところでわけがわからないよな)
少し困惑した表情を浮かべるキャスバル首相にカイは心中でぼやいていた。
その後落ち着いた2人はインタビューを始めていた。
「史上最年少で地球連邦政府首相とスゴイですね」
「私の実力によるものではないさ。端的に言えば親の七光りだな……ガルマを笑えないな」
40歳手前で連邦政府のトップとなったことを称賛されたキャスバル首相は苦笑していた。
「宇宙世紀100年という節目の年を迎えるにあたって、ニュータイプの存在を予言していた預言者ジオン・ズム・ダイクンの遺児である私が連邦政府の象徴として適任だと判断されたのさ。私はただの神輿だよ」
「ご謙遜を、確かにそういう意図はあるでしょうが政治手腕も評価されているじゃないですか」
「それは周りの人達が支えてくれるからさ。それにゴップ前議長といった前任者達の引継ぎも完璧だった。ここまでお膳立てされて結果を出せないようでは政治家失格だよ」
「地球から宇宙への移民作業は滞りなく進んでいるとか」
「うむ、地球に住む連邦市民の皆さんは進んで協力してくれている。移住先のコロニーの建造などやるべき事が多いが問題ない……モーレス殿のおかげだな、ここまでスムーズに進むとは思わなかった」
「政府関係者やアースノイドが宇宙に移るのはいい事ですね。しかし地球に残る事を許可された人達もいるらしいですが」
「それは文明から離れて昔ながらの伝統を守っている人達の事だな。自然と調和して生きる彼らの意思は尊重されるべきだし無理矢理コロニーに移住させるのは論外だ」
「そうですね、本人の意思を無視するのはよくない」
「この調子なら20年程で移民作業は一段落するだろう。自然と共生する人達や資源の採掘などで地球に降りて活動する人達は残るだろうが、それでも地球の人口は一億人を切るはずだ。地球環境は徐々に改善されていくだろうな」
「今後地球連邦は宇宙への活動に重点を置いていくと?」
「その通りだ、宇宙世紀と名乗っていても現在人類は地球圏に留まっている状況だからな。政府としては今後火星や木星の開発を進めていく方針さ。地球圏のインフラ整備等もあるからゆっくりとした歩みになるが、少しずつ着実に進めて行くことが大切だ」
「いずれ外宇宙への進出も考えているという噂がありますが」
「ハハハ……確かにそんな噂もあるが今の人類にはまだまだ早いさ。しかし太陽系の開発が進めば外宇宙への進出も現実味を帯びてくるだろう。私が生きている間では難しいが、いずれ後輩達がやってくれるだろうさ」
「未来の後輩達へのメッセージはありますか?」
「そうだな、未来はきっと希望に満ちたものになっているはずだ。人類が地球圏、いや太陽系を離れて外宇宙に進出を始めた時、その時が本当の宇宙世紀の始まりだと言えるだろう。私は後輩達によりよい未来を残すために職務に邁進することを誓うよ。我が父ジオン・ズム・ダイクンの名に懸けて」
インタビューが終わったカイはキャスバル首相ととりとめのない話をしていた。
「そういえばシデン殿、君はこの後フォン・ブラウンに向かうそうだが」
「ええ、アナハイムで色々と研究を続けているあの男に久々に会いに行こうかと」
「やはり彼と会うつもりか……君がそんな事をする訳ないと理解してはいるが言わせてくれ。あそこで起きた内容については決して口外しないでほしい」
「そんな事はしませんが、一体何が?」
「……実際に見ればわかるさ。彼の熱意はわかるが今の人類には早すぎる」
真剣な表情を浮かべるキャスバル首相を見てカイは少し嫌な予感を覚えたが、とりあえずフォン・ブラウンに向かう事にするのであった。
「いやマジかよアンタ」
【ほう、驚かせようと思っていたが先に気付いたか。やはり君もニュータイプだな】
フォン・ブラウンにあるアナハイムの研究施設……そこの最奥にある極秘研究施設にてカイは丸みを帯びたMSの前で唖然としていた。カイの直感が目の間にいるMSがパプテマス・シロッコと融合した存在だと察していたのだ。
「ええ、いや、えぇ……?そんな気軽に人間を辞めて大丈夫なのか?」
【問題ないとも、むしろすこぶる調子がいい。研究に思う存分打ち込めているよ。ちなみにサラも私と同じようにサイコフレームの身体になった】
【あ、シデンさん。お久しぶりです】
「お、おう……君もそうなったのか」
シロッコの副官であるサラもMSと融合していることに気付きカイは乾いた笑みを浮かべる。
「思い切りがいいのは尊敬するが、そんな体だと色々と不便なんじゃないか?食事とかどうなってるんだ」
【心配しなくてもいい、機体の整備等についてはサイコウェーブで好きなように調整できることが分かった。脆弱な肉の身体より余程便利さ。それにいざとなれば人に戻れるから心配無用だ】
「あ、戻れるのか。それなら安心……なのか?」
【それと人間に戻る際には肉体年齢をある程度変更することができるのがわかったぞ】
「何でもアリだなおい。そりゃあ首相も口外しないように念押しするわけだ」
サイコフレームの出鱈目さをカイは改めて実感していた。
「ま、まあそれはさておき……アンタも色々と頑張ってるようじゃないか。巷では万能の天才と絶賛されているぞ」
【フッ、このアナハイムという充実した環境で思う存分研究出来るのだから結果を出すのは当然だ】
「大した自信だな。まあそれを言っても許されるくらいには結果を出しているが。あのミノフスキードライブという技術は凄いな」
【ああアレか。私としてはもっと洗練できればよかったのだが、技術的な問題もあってかなり性能を抑えた代物となっているのが少し不満だ。やはり見よう見まねでは色々と限界があるな】
「あれで性能を抑えているのか……本来の性能ならどうなるんだ?」
【地球圏から木星まで一ヶ月で往復できるだろう】
「マジかよ」
シロッコの言葉にカイは絶句する。
「もうミノフスキーワープとか頑張れば出来るんじゃないか?」
【可能だぞ?】
「えっ」
【サイコフレームの実験の際にモーレス殿が極短距離ながら空間移動を成し遂げていた。研究が進めばいずれワープ装置も実現できるかもしれんな】
「……本当に何でもアリだな。首相の言う通り確かにこれは人類には早すぎる」
衝撃の事実を聞いて思わず頭を抱えてしまうカイであった。
暫くして落ち着いたカイはシロッコと会話していた。
「サイコフレームによる肉体、ミノフスキードライブ……これがあれば外宇宙への進出も可能だろうな」
【うむ、いずれ太陽系の開発が終わればいよいよ人類は外宇宙へと進出するだろう。私はその歴史的瞬間に立ち会うつもりだ】
「へえ、そうですか……上手くいくと思うか?」
【難しいだろうな。10の開拓団を送り出して1つ成功すれば上出来だろう】
「おい」
シロッコの言葉に思わずツッコミをいれる。
【何を驚くのかね。人類史を見ても未開の地の開拓というのは多大な困難があったことが記録されている……ましてや外宇宙ともなれば非常に困難であろうことは想像できるはずだが?】
「いやまあ、それはそうなんだが」
【だがそれで問題ないのだ。たとえ1つでも開拓に成功すれば人類の版図を拡大することができる。それがダメなら今度は100の開拓団を送り出す!幾多の失敗を重ねても臆することはない。失敗を糧にして前に進んでいけるのが人類なのだ】
「いやはやポジティブだねアンタは……人類が外宇宙に進出するのを俺は見ることはないだろうが応援しておくよ」
シロッコの熱意に満ちた言葉を聞いたカイはとりあえずシロッコを応援することにした。
【うむ、ありがとう。そうだ、君もサイコフレームの身体になってみるかね?君もニュータイプとして素質はあるようだし出来なくはないとは思うぞ】
「いや遠慮しておくよ」
【そうか、まあ強制はしないし君の好きにすればいい。パラヤ嬢は受け入れたのだが】
「え、彼女が?」
シロッコと別れたカイはsalus教団本部に移動していた。
「ああ、お久しぶりですカイさん」
「パラヤさん」
クェス・パラヤ……ホーリー・モーレスの後継者と呼ばれ教団のトップとして活動している彼女はカイを見て笑顔を浮かべた。
「その、あの男から聞いたんだが君は人間を辞めるつもりなのか?」
「シロッコさんから聞いたのね。そうよ、私は約束があるから」
「約束?」
クェスの言葉にカイは困惑する。
「そう、私には師匠に地球を案内するという約束があるのよ」
「しかし、彼はもう機械に」
「シロッコさんから色々と聞いたんでしょう?サイコフレームと一体化しても人間に戻れるって話を」
「あ、そういえば確かに……彼もいずれ戻ってくると?」
「ええ、私は信じているわ」
カイの疑問にクェスは断言する。
「師匠はね、ずっと頑張っていたの。最終的に人類の為に自分を犠牲にして、結局地球に一度も降りることなく機械になってしまった」
「……」
「全てが終わって解放されたら迎えに行ってあげないと。そしたら綺麗になった地球に降りて案内してあげるのよ。ジャブローの密林、インドの修行の聖地、ヒマラヤ山脈、アフリカのサバンナ、ハワイの綺麗な海……あんなに頑張っているんだからゆっくり隠遁しても許されるわよ」
クェスの話を聞きつつカイは月の教団本部から空を見上げる。
(そう、だな。確かにこれほど献身的に動いているのだから役目が終われば地球でゆっくりしても許されるか……モーレスさん、こうやって貴方を待ってくれる人がいるんだ、いずれ必ず戻ってきてあげてくださいよ)
そこに大型MAが緑の光を輝かせており、暖かくて優しい光を地球圏に発していたのであった。
これにて「機動戦士ガンダム実況_カルト教祖プレイ」は完結となります。今後は番外編を数話ほど投稿しようとは考えてます。
高評価とお気に入りの数がこんなにもらえるなんて想像できませんでした。色々と未熟だった小説を最後まで読んでいただいてありがとうございました。
感想くれると嬉しいです。