注:作中のライスがちょっと毒舌かもしれません。注意。
どうも皆さんお久しぶり、はじめましての方ははじめまして、ライスシャワーです。
以下中略。監禁されました。大事な事なのでタイトルと合わせて2回言いました。ついでにもう一度言います。監禁されました。
「で・・・これはどういうつもりなの?
・・・ “ブルボンさん”。」
「どういうつもりも何も・・・ライスの両手両足を縛って、私の部屋に監禁しているだけですが」
そう、何を書くそう、・・・間違えた、何を隠そう、いまライスを監禁している真の真犯人は、ブルボンさん――――そのひとなのである。
そう淡々と述べる彼女の言葉通り、いまライスの両手両足は結束バンドで縛られている状態にあった。ちなみにそのバンドの色は赤色である。
「だーかーら!!なんでライスを監禁してるのって聞いてるの!!あとついでにブルボンさんと同室のはずのニシノフラワーさんはどこ!?」
確かにここは栗東寮にあるブルボンさんの部屋だが、ブルボンさんだけの部屋という訳ではなく、ニシノフラワーさんと共用の部屋である。だが、いまこの部屋にいるのは、ライスとブルボンさんのふたりだけ・・・
フラワーさんは何処に?・・・まさか、もうすでにフラワーさんはブルボンさんに―――始末、されてしまったのでは?
「ふっ、フラワーさんに関しては安心してください。彼女がこの部屋に戻ってきて邪魔に入ることはあり得ません」
「それはいったいなんで!?」
まさか、本当の本当にブルボンさんに始末されてしまったのでは・・・?
天才少女の異名を持っていた同期の顔を思い出す。フラワーさんの作るお弁当はいつも美味しかったから、もうあの味が食べられないのだとなるとなんだが寂しさがこみあげてくる。せめて料理教わっておけばよかったかな。惜しいひとを亡くした。
「何を隠そう、フラワーさんはもうすでに・・・・・・・・
・・・・・・セイウンスカイさんとの北海道ぶらり旅に出かけてしまいました」
(なんでやねん!!)
ちなみに帰りは2週間後になるとのことで、その間の授業のノートを代わりにとっておいてほしいと依頼されています、と、ブルボンさんは更に平和なひとことを付け足す。
・・・なんかめっちゃ平和な理由での失踪だったぞ。どうやらライスは惜しいひとを亡くさなかったようだ。帰ってきたら料理教えてもらおう。
「・・・って!!そうじゃなくて!!ブルボンさんはなんでライスを監禁してるのって話!!」
「あぁ、そういえばそうでしたね」
『そういえばそうでした』というか、ライスが手足を縛られてブルボンさんの部屋にいるという状況下において、呑気にフラワーさんスカイさんのお出かけについて会話しているほうがおかしい気がする。
「ブルボンさんは!!どうしてライスを監禁してるの!?」
「ふっ、それは愚問ですね、ライス。そんなこと、どこの地球の本棚にも、答えはヒトツだけしか載っていませんよ」
ブルボンさんが、過去類を見ないような挑発的な表情でライスに向かってそう言ってくる。
いったいどういう事なんだ。ブルボンさんは、ライスを監禁なんかして、いったい何を企んでいるというんだ。黒魔術か、それとももっとサイバーパンクな何かか。少なくとも、どうやらライスは、知らないくらいがいい下手な真実を知ってしまいそうになっていることは確かであろう。
「何故私がライスを監禁しているのか、その答えはただひとつ・・・・・
私が!!ライスを監禁したかったからです!!」
(答えになってない!!)
「トップロードさん構文やめて!!」
「?・・・疑問です。『私はライスを監禁したいと思っている』という心情と、『ライスを監禁する』という動作の間には、明確な因果関係が存在します。よって、これはライスの質問に対する返答になると判断・・・」
「そうじゃなくて!!ライスを監禁したいと思った理由は何って聞いてるの!!」
もう『そうじゃなくて』という言葉を今日に入ってから何回言ったのかわからない。実際は3回くらいなんだろうけど。
「そっ!!それは・・・その・・・・・・・
・・・・・・言わなければダメ、ですか・・・?」
「ダメ。」
「い・・・いえ、しかし、その・・・・・あっ、えっと・・・・・・」
急にどもりはじめるブルボンさん。両手の人差し指の先っぽをちょんちょんと突き合わせ、顔は何やら紅潮して、耳はぺたんっとしてしまっている。
「・・・・・・・・ライスの、えっち・・・・・・」
「・・・・・・(イラッ)」
なんなんだこのひと。そんな反応をされちゃあ、まるでライスが何か変なことを言ったみたいじゃないか。
「ちょっと!!ブルボンさん!!真面目に答えて!!」
もはや正確に質問に答えることすら不可能な状態と化したぽんこつサイボーグにいい加減しびれを切らし、ブルボンさんを問い詰めようと、力を込めて一気に立ち上がる。
ぱきっ。そんな軽快な音が、耳のずっと下で鳴った気がした。
「・・・・・?」
ふと足元を見下ろす。足元にあったのは、無残にも引きちぎられた、かつて結束バンドだった残骸と、解放されたライスの両足。・・・あれ?足?・・・解放されてる?
「そっか・・・そっか!!ライス、ウマ娘なんだった・・・
こんな結束バンド程度、簡単に引きちぎれる・・・!!」
えいっ、という気合入れのひとこととともに、バンドで縛られた両手首をぴっと引っ張る。
ぱきっという軽快な音と共に、再度破壊された結束バンドと、ようやく解放されたライスの両手。完全復活。みっしょんこんぷりーとである。
「で?・・・・・それで?ライスをこんなもので縛って閉じ込めてたのは、なんで?」
さっきとはうって変わって顔面蒼白となったブルボンさんに、ライスはつかつかと歩み寄る。そしてオプション程度に胸ぐらをつかむ。・・・ブルボンさんの、ふわっふわ・・・いかん、気を確かにしろ。
「・・・答えてよ。黙ってちゃわかんないでしょ」
「いっ・・・いや、でも、でも、その、あっ、えっと・・・」
じっとブルボンさんを見つめるライスとは対照的に、ブルボンさんはまるで視線から逃れるように視線をそらしている。というかせわしなく宙を回せている。顔面蒼白なのは相変わらず。さっきまでの赤面はどこに行ったのだろうか。
「そんなに視線をそらしてないで、ちゃんとライスを見て!!」
「・・・・・・・・ちゃんと私を見てないのは、ライスのほうでしょう・・・?」
――――え?
そんなブルボンさんの言葉に、何かがはっとする。彼女の頬をつかんで、逸らしていた視線を強制的にライスのほうへと戻す。・・・その青い瞳は、いまにも泣き出しそうなくらいの涙をはらんでいた。
「・・・菊花賞の後のあの時、あなたは孤独でした」
ずっと手に入れたかった勝利の称賛が、手に入れた時には、他のウマ娘の夢を壊してしまったという烙印に変わってしまった。あの時。
「ヒールだと罵られ、走ることすらやめようとしていた。天皇賞の時だってそうです。
でも、そんなあなたでも、私にとっては、夢をくれて、立ち直るきっかけをくれた、・・・ヒーロー、だったんです」
それでこそ、私のヒーローです。
記憶の中のブルボンさんが、そう言ってライスに笑った。
「でも、いまのあなたは、もう、孤独じゃない。ひとりぼっちじゃない。
確かにそこにある夢があって、それを応援してくれる、仲間と、ファンの皆さんがいて、ひとたびレース場に足を運べば、自分を応援してくれるひとたちがそこにいる。
それは、・・・喜ばしいことです。あなたの、ライスの夢がかなう瞬間が、着々と近づいているという証なのですから」
でも・・・でも!!
そう続けるブルボンさんの瞳からは、もう、ぽろぽろと涙がこぼれていた。
「あなたはもう、私だけのヒーローじゃない。たくさんのひとに夢を与えて、希望を与えて、前に向くきっかけを与えて――――
―――おかしい、ですよね。本当は私も喜ばなきゃいけないはずなんです。喜ぶべきことなのですから。
でも・・・でもッ!!私はッ!!
あなたに・・・ライスに、『私だけのヒーロー』で居てほしかった、、、、、、っ」
だから、あなたを監禁しようと思い立ったんです。
私以外の誰ともコンタクトを取れない状況にして、あなたをひとりぼっちにしてしまえば、また、あの頃のように、『私だけのヒーロー』でいてくれるのではないかと。
「変・・・ですよね。気持ち悪い・・・ですよね。・・・ごめんなさい。
もうライスの前には姿を現さないようにするので・・・その・・・・・・」
そう言ったブルボンさんは、柄にもなくしゃくりあげていて。感情のダムが決壊して、涙としてあふれ出ているように見える。そんな彼女の姿が、なんだか放っておけなくって。
・・・ライスはもう、ブルボンさんだけのヒーローじゃないかもしれないけど、・・・ライスにとってのヒーローは、今も昔も、ブルボンさんひとりだけだから。
そんな言葉が喉元まで出かかって、とまった。
言えなかった。あの頃と今とでは、もう、状況が違いすぎた。
・・・思えば、最後にこうやってブルボンさんと面に向かって会話したのは果たしていつだったのか。ライスにはもう思い出せない。
ブルボンさんの怪我はまだ完治していなくて、だからトレーニングで一緒になることは無くて。休日も・・・気が付けば、一緒にトレーニングするようになった別の子たちと過ごすようになっていた。
『————優勝おめでとう、ライス』
あぁ、・・・どうして。あの頃から、こんなにも遠く、―――離れて、しまったのだろう―――
「・・・ブルボンさん。ライス、明日はトレーニングがあるって言ったけど、・・・今日は、お休みだから。
だから、・・・・・・きょっ、今日だけなら!!・・・ブルボンさんに、監禁、されてあげても、いい・・・よ?」
忘れていた大切なことを、ようやく思い出した気がする。
ライスのヒーローがそれを望むのだったら、ライスはそれを拒まない。
だって、ライスはブルボンさんの、――――『ヒーロー』、なんだから。