今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
虚ろな闇と光の中、その声はかすかに聞こえてきた。
【君と共に戦った・・・十二の・・・】
「ここはどこだ?」
光の中、タロウは目覚めた。気付けば見知らぬベッドの上。だが状況の不可解さよりも深刻な問題に彼は眉をひそめた。
「俺は何をしていたんだ?」
頭の中に霧が立ち込めたように何も思い出せない。自分の事すらも。
そんな時、彼の背後で少年少女の悲鳴が響いた。
「「な、なんと。神竜様がお目覚めになりました!」」
『騒がしいぞ』と、タロウは反射的に彼らをたしなめようとした。だがその2人が何者なのかが分からない。
「誰だ、アンタらは」
どうにか搾り出たのは我ながら情けない言葉。
キョトンとするタロウに構わず、うっとりとした顔で騒ぎながらタロウを敬う2人。
すると騒ぎを聞きつけたのか、扉がバンと開き老騎士が姿を現した。
老騎士は騒ぐ2人を叱りつけ、そしてタロウの姿を見るや気絶する勢いで感激した。
「だから、誰なんだアンタらは?」
困惑するタロウの様子に、3人は改まって姿勢を正した。
老騎士は第三十二代目の竜の守り人ヴァンドレ。少年と少女はそれぞれ名をクランとフラン。双子で第三十三代目の竜の守り人なのだという。
『三十二、三代目? 竜の? なんだそれは?』
聞いたこともないワードが飛び交う中、ヴァンドレは次々に説明を続けていった。
どうやら守り人の守るもの、神竜というのはタロウのことを言っているらしい。
そしてタロウは千年もの間眠り続けていたのだと。
「神竜? 俺が?」
自分の名前以外、どうも記憶と情報が結びつかないことに困惑するタロウ。
どうやら記憶喪失らしい。
それでもヴァンドレは落ち着いた様子で、母である新竜王ルミエルに会いに行けばいいと教えてくれた。
「きっとすぐに思い出されます。何せ貴方様は神と言い伝えられし尊き御方。高貴で優しく武勇に優れ、どのような敵にも恐れず勇敢に立ち向かったと聞き及んでおります」
「噂に尾ひれがついていないか?」
尾ひれというか、頭の部分の情報が違うような気がする。そう思いながらもタロウはリトスの神竜王城に向かうことになった。
リトスの地に降り立ったタロウ。
だがその時、彼らの前に異形の怪物が姿を現した。しかもヴァンドレたちも初めて見る怪物が何体も、意思疎通の気配もなく襲い掛かってきたのだ。
「神竜様お先にお逃げください」
「ここは僕たちが引きつけます・・・ってアレ?」
異形兵を前に戦闘態勢に入るクランとフラン。だが2人が振り返った時、そこにタロウの姿はなかった。
まさか一目散に逃げたのか? そう誰もが思った時・・・笑い声が聞こえてきた。
「ハーハッハッハッハ!」
「し、神竜様!?」
ヴァンドレは目が飛び出るほどに驚いた。何せタロウが高笑いしながら高台の上から異形兵たちを笑い飛ばしているからだ。これにはヴァンドレたちだけでなく異形兵も呆然と立ち尽くした。
「やあやあやあ、祭りだ祭りだ!」
異形兵たちも思っただろう。ヴァンドレたちも同じ気持ちだ。
どちらかと言えばさっきまでの状況、リトスの平和な空気を乱しに来たのは異形兵のほう。
だが今、明らかに空気の入れ替えが起こった。タロウのペースがこの空気を乱しに来ている。
そして当のタロウは周りのアウェイな空気をガン無視してテンション高すぎだ。
「袖振り合うも他生の縁。
躓く石も縁の端くれ。
共に踊れば繋がる縁。
この世は楽園!
悩みなんざ吹っ飛ばせ!
笑え笑え! ハーハッハッハッハ!!」
いや、どこをどうしたら笑う雰囲気になるのだ?と、異形兵は一瞬呆けながらも、どうにか自分たちの役割を思い出したように、手にした斧を振り上げた。
「さぁ、楽しもうぜ! 勝負勝負!」
何の躊躇いもなしに異形兵に斬りかかるタロウ。その勇ましくも勢いの良すぎる戦闘開始に、ヴァンドレたちは反応に遅れた。
「ハッ、何をしているお前たち。神竜様に続け!」
タロウを助けに向かうヴァンドレたち。
だが正直言って、助け・・・いる?
バッサバッサと倒されていく異形兵たち。
残るはリーダーやボスであろうか、1体の異形兵が残った。いや、ただただ残ってしまっただけかもしれないが。
【タロウ・・・思い出してくれ。僕が、キミの力に】
その時、タロウの手にはめられた指輪が光を放った。
「何だ?」
タロウの問いに、指輪は光と共に答えた。
【もしも、いつかまた会える時が来たら。思い出してくれ、僕のことを。キミと共に戦った十二の】
「お供たちのことを?」
【・・・ちょっとその言い方は・・・】
指輪は口を濁した。だがタロウはお構いなしに、頭の中に浮かんだ言葉を口にした。
「来い、マルス!」
タロウに呼ばれ、指輪は光の中から一人の青年を顕現させた。
凛々しく勇敢な光の王子。だがその表情はどこか苦笑い。
【・・・そう、僕の名はマルス。紋章士<エムブレム>マルスだ】
微光を纏い、少し宙に浮いた幽霊のような存在のマルスはタロウの横で剣を構え異形兵に睨みを利かせた。
【また会えてうれしいよ。キミが思い出してくれたから、僕はここに来ることができた】
「誰だ? アンタは・・・たしかどこかで会った気がするが」
タロウは眉をひそめてマルスに尋ねた。そう言われてマルスは『思い出してくれ・・・てないんだね。ストレートに』と言いたげに再び苦笑い。
【そのうち思い出してくれればいい。さあ、僕と<エンゲージ>してくれ】
「縁ができたということだな。面白い!」
マルスの誘いに呼応して、タロウは剣をマルスに合わせた。
【今こそ、心を一つに! エムブレム・エンゲー「大合体だ!」
マルスの言葉を遮り、タロウが叫ぶのと同時にそれは起きた。マルスの姿が光となり、タロウの周りに強大な力の塊が現れたのだ。その姿は神々しい騎士・・・というより武士? 侍?
【君との強い繋がりを感じる。今なら強力な一撃を放てるはずだ。行こう、タロウ】
「俺に命令するな! いくぞ。必殺奥義だ!」
え?と呆気にとられた表情をしたマルス。
絶対にこれ必殺奥義なんてワード想定外なんじゃないか?ヴァンドレも異形兵も、なんとなく心の中でそう思った。
だがタロウは全くお構いなしに剣を構えた。
「桃代無敵・アバター乱舞!」
視認できたのは光の帯。閃光の如き斬撃が異形兵を瞬く間に切り刻んだ。
「大勝利! エイエイオー!」
タロウが勝鬨を上げる中、爆発が異形兵を包んだ。完全勝利である。めでたしめでたし。
そんな驚きの連続の中、クランは「え? 暴発しちゃった?」と自らの手にあるファイアーの書に目をやって困惑するのだった。
じか~い じかい
『ああ、愛しい我が子。タロウ』
『元気でよかったわ』
『・・・ちょっと元気が良すぎ。あら?』
エン2話「神竜王ルミエル」というお話
アンタはファイアーエムブレム・エンゲージを遊んだことがあるか?
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遊んだことがある
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何回かクリアした
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ルナティックもクリアした
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遊んだことがない
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これで縁ができた