今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた   作:三柱 努

10 / 22
エン10話 邪竜ソンブル

アイビーに教えられたイルシオン王国の闇の計画。

邪竜ソンブルの力を取り戻すため、ブロディア王を贄に捧げる儀式が行われようとしている。

イルシオンの厳しい吹雪の洗礼の中で、父を救うべく奮起するディアマンドとスタルークを先頭に一行は進んでいた。

一刻を争う状況だが2つの懸念がある。

1つは未だ体調不良から脱していないタロウ。アイビーへの説得の際には元気を振り絞っていたようだが、今はその搾りかすしか気力が残っていないようで、ヴァンドレの背でぐったりしている。

もう1つ。これが最大の問題。

儀式が行われるというデスタン大教会がどこなのか分からないのだ。

仲間たちにイルシオンの地理に明るい者がいない。辛うじてイルシオン軍の足跡を追ってはみたものの、この吹雪であらゆる痕跡が消えてしまっていた。

「まいったな。これでは目の前の方角すら怪しい」

「迷っている暇はないというのに」

ブロディア王を救うどころか大教会にたどり着くこともできない現状に歯噛みするディアマンド。

そんな彼らの道中に一人の少女が姿を見せた。

「え? タロウ?」

「お前は・・・ヴェイルか?」

アルフレッドとディアマンドは最初、少女を敵かと警戒したが、タロウの様子からどうやら彼の知り合いだと判断した。

「どうしたのタロウ、すっごく具合が悪そうだけど」

「問題ない」

絶対に問題ありそうなタロウの様子を心配するヴェイル。

「本当に大丈夫? どこか休めるところ探してこようか?」

「いいや。休んでいる時間は無い。俺たちはデスタン大教会を探している」

「大教会ならあっちだよ」

タロウの力になれると喜んだヴェイルは大教会に行く目印を教えた。

 

その後、デスタン大教会にたどり着いたタロウたち。

「急いで父上を救うぞ!」

「はい! 兄上!」

拳に力を込め覚悟を露わにするディアマンド。父を想う気持ちはスタルークも同じ。彼には珍しく声を張って弓を握りしめた。

「落ち着いてくれディアマンド。まだタロウもこの調子だ。全軍で突入するわけにはいかない」

アルフレッドの言葉にタロウは「俺なら大丈夫だ」と弱々しく反論した。

「そうだな。敵にとっても重要な儀式に攻め込むことになる。厳しい戦いが予想できる。神竜様を危険に曝すわけにはいかない。ここに残り、神竜様をお守りする者と2手に分かれるべきだろう」

「それならば我々が」

待機組には竜の守り人であるヴァンドレがクランとフランと共に名乗り出た。

「そうか・・・これを持っていけ」

そう言ってタロウはスタルークを呼び、紋章士マルスの指輪を渡した。

神竜直々に力を託されれば、いつものスタルークであれば恐縮して拒否するところだろう。

だが今日のスタルークは違った。真っ直ぐにタロウの方を向いて「承りました」と手を合わせた。

「お供たち。行ってこい」

 

こうして大教会に突入したディアマンドたち。

だが一刻と経たないうちに彼らは大教会から飛び出してきた。

血相を変え、狼狽と憔悴の色を濃くして。

「どうしたお前たち?」

「タロウ・・・すまない」

アルフレッドは多くを語ることなく、タロウを連れて急いで撤退を始めた。

 

撤退というより逃亡に近い。敗走の色は火を見るよりも明らか。

その最中、アルフレッドは息も絶え絶えに語り始めた。

大教会で何が起こったのかを。

全ては最悪の結果に終わった。

 

ディアマンドが突入した時には既に、ブロディア王の命は奪われ、その骸は異形兵と化していた。

苦戦の末、ディアマンドとスタルークの手により異形兵となったブロディア王は討たれた。だがそれも悲劇の序章にすぎない。

 

力を取り戻した邪竜ソンブルがイルシオン王もまた贄として命を奪ってしまったのだ。

この凶手による悪夢は、更なる力がソンブルに戻っただけでない。イルシオン王国を統べる王が死に、国の行末にも暗雲が立ち込めることになる。

 

さらに最悪なことに、この場にはルミエルを殺した張本人が姿を現していた。

その正体はヴェイル。彼女はソンブルの娘にして邪竜族の第一王女。

さきほど会ったばかりのアルフレッドやディアマンドも、彼女が同じ人物だとは信じられなかった。同じ人間であるとすれば、ヴェイルはタロウを騙して大教会に誘ったと考えられる。

だがその真偽を確かめるよりも早く、アルフレッドたちは紋章士の指輪を全て奪われてしまっていた。

 

ここからが悲劇の終幕。

全ての紋章士が邪竜によって顕現を上書きされ、マルスたち6人の紋章士が敵に回ってしまった。

 

タロウたちが今、逃げているのは。かつての仲間の魔の手からである。

 





じか~い じかい

『「セリフ」をこの場でいただけたことは「恐縮」です』
『「復活」の鍵は「和菓子」にあり』
『しかし「活躍」の有無は、どこに「差」があるんだ?』

エン11話「撤退」というお話

アンタはいつもどういうステータスを優先して上げている?

  • 全てを満遍なく上げていくのが定石
  • 圧倒的な攻撃力で敵を捻じ伏せる
  • 鉄壁の防御力でダメージゼロ
  • 豊富なHPで心に余裕を
  • 敵にターンを与えないスピードマン
  • ダメージは1すら許さない回避力
  • ステータスアップのバフ魔法を駆使したい
  • 相手を弱らせたくてたまらないデバフ使い
  • 威力よりもコンボが繋がるのが快感
  • ステ上げなど邪道。初期値・初期レベル維持
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。