今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた   作:三柱 努

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エン17話 砕かれた平和

フィレネ王国フルル港。

沈む前の夕陽が照らす美しい自然と活気溢れる人々が織りなす平和の村。

そこに突如として現れたのはイルシオンの軍艦であった。

 

そしてタロウたちが同着した。

「って、どうして神竜たちまでいんだよ!」

到着して早々に迎撃態勢十分の様子のタロウたちの姿に、四狗のグリは唸り声を上げた。

「グリが遅刻さえしなければ、この村の皆殺しにできたのに」

「仕方ねぇだろ。ソルムではぐれたヴェイル様をずっと探してたんだ。モーヴとマロンが保護したっつうから、これでも全速力で来たんだぞ!」

セピアは恨みがましい視線を向ける中、グリは気怠そうに言い訳を口にする。

港で睨み合う2人。そこに村の入り口からタロウの大声が聞こえてきた。

 

「やあやあやあ、じゃりゅうのてしたども! きょうこそいちもうだじんにしてやるから、くびをあらってまっておけ!」

 

遠くから聞こえてくるせいか、どこか棒読みのようにも聞こえるタロウの声。隣にいるアルフレッドが『なんでそんなに大根芝居なんだ!』と焦っている様子。

だが敵の強襲を前に迎撃態勢を整えるのに忙しいセピアもグリも、その事を全く気にしなかった。

そこにモーヴとマロンがヴェイルを連れて合流した。

「あ~やっと着いたぁ、ってなんで神竜が来てるの?」

「遅れてしまいすみません。ですがヴェイル様はこのようにご無事です」

「セピア、グリ。これはどうなってるの?」

兵士たちが慌ただしく港で戦闘態勢に入っている姿に、ヴェイルは怯えるような小さな声で尋ねた。

「ん? あちらのヴェイル様は眠りにつかれているのか」

「ああ、そういうこと。グリが見失うわけね。それにしても本当に面倒っ」

うんざりしたようにヴェイルを見下ろすセピア。その態度にヴェイルは思わず後ずさりした。

「眠り? 面倒? どういうこと?」

「敵が迫っている今、この状態のあなたは足手まとい。そろそろお別れということですよ」

そう言ってセピアはヴェイルと向き合った。

 

「見つけたぞ! そこを動くな!」

そこにアルフレッドたちが馬を走らせ急行した。

タロウの軍勢が全軍で動いたわけではなく、少数精鋭の突撃である。

「あら。意外とお早いお付きだこと。でも丁度いい機会ですわ。神竜様がたもよーくお聞きになってくださいね」

両手を大きく広げ、仰々しい態度で語り始めたセピアに、アルフレッドたちは足を止め、耳を傾けた。その背後でディアマンドがタロウの口を手で押さえている。何かタロウが変な事でも言い出しそうだからと止めているようでもあるが、セピアにはそんなこと分からないし関係なかった。

「これはソンブル様の偉大なるご意思ですの。後継として相応しい『邪竜の子』が欲しい、という」

そう言ってセピアは語り始めた。

ヴェイルが邪竜にあるまじき平和を望む心を持って生まれた欠陥品であること。

魔の力をもつ竜族であるセピアが術を施して、もう一人のヴェイルの人格を植え付けたこと。

人間を殺すことを何とも思わなくなり、ソンブルの手となり足となったヴェイルが、今までの数々の悪行を働いてきた張本人であることを。

「あ…あ…わ、わたし…そんな」

嘲笑うセピアの前でヴェイルは悲痛に叫びながら頭を押さえた。

その光景にアルフレッドたちは思った。

『知ってた。ほとんど知ってた』

『見事なまでに神竜様の推理の範囲内だったな』

『ヴェイル、演技が上手ね』

『それにしてもさっきの神竜様。いくら嘘がつけないからって。あの演技は5点でしょ』

セピアの語ることにいちいち驚く演技をしながら、タロウがつい本当の事を言ってしまわないよう押さえつけながら、悲しみにくれるヴェイルの演技を見守るアルフレッドたち。

 

そこでいよいよ舞台も最後にさしかかる。

全てに絶望したようにヴェイルはガクッとうなだれた。

そして再び顔を上げた時、彼女の目つきは別人のように険しくなっていた。

「ご苦労でしたセピア。これで存分に戦えそうです」

戻った。四狗の誰もがそう思った。

上手い。四王族の誰もがそう思った。

「セピア、グリ、モーヴ、マロン。指輪を私に渡しなさい。神竜たちの前で絶望の顕現を見せつけてやります」

冷たい声で言い放ったヴェイルに、セピアは「仰せのままに」と紋章士の指輪を渡した。

6つの指輪を手に、ヴェイルはニヤリと笑う。

「タロウ、受け取って!」

「なっ!?」

セピアたちが唖然とする中、紋章士の指輪はタロウの元へ投げ渡された。

「よくやったぞヴェイル」

ディアマンドの手から解放されたタロウが全ての指輪を受け取り、勝ち誇ったように剣を振り上げた。

「オイオイオイ冗談じゃねえぞ! 指輪を向こうに全部渡しちまいやがった!」

一瞬、事態を飲み込めないグリたちが唖然とする中、セピアが怒りの形相でヴェイルに詰め寄る。

「この、欠陥品め!」

間髪入れず、ヴェイルを殴り飛ばしたセピア。幹部とはいえ、自分たちの大将に対する突然の暴力。そのあまりにも衝撃的な光景に周りにいたイルシオン兵たちは愕然とした。

それでもセピアの怒りは治まらず、鬼の形相でヴェイルを睨んだ。

「ただではおかないわよ! 二度と目覚めないようにしてあげるわ!」

「死ねない。私は生きて、またお兄ちゃんに会うんだ!」

「ヴェイル! ネタバラシが早急すぎたんだ。皆、早く彼女を助けるんだ!」

アルフレッドの号令に武器を手に立ち上がる仲間たち。

「来るぞ。セピア、今はそんなヤツ、放っておけ。指輪を取り返すんだ!」

グリが腕を引き、四狗も迎撃態勢に入る。

だがこの状況はあまりにも多勢に無勢。イルシオン軍は混乱の中で統率が取れず、しかも全ての紋章士の指輪がタロウの元にある。

 

そしてエンゲージである。フェスティバルである。タロウが元気であるうちは、セピアたちはことごとく勝利に縁が無かった。

「せめて、アナタだけでも殺してやるわ、ヴェイル!」

混戦の最中、魔力を込めたセピアの光弾がヴェイルを襲った。

「危ない!」

友軍の誰もが敵を相手にして、彼女の方に行く余裕はない。

直撃は避けられない。誰もがそう思った。

 

だがそんなヴェイルを庇う1つの影があった。

 

それは四狗の1人、モーヴであった。

 





じか~い じかい

「えっと。私ってもうタロウの仲間でいいのかな?」
「モーヴも私も、何だか時期尚早って言われそうな気がするの」
「でもタロウがいいって言ってくれたからいいよね?」

エン18話「冷たい海路」というお話

アンタは戦士としてどんな能力が欲しい?

  • 銃。ビーム。遠距離攻撃能力
  • 剣。拳。近接戦闘能力
  • ジュワッチ。巨大化能力。
  • パワーアップ。武器装備強化能力。
  • ステータスアップ。バフ能力。
  • ステータスダウン。デバフ能力。
  • 輝け流星の如く。無敵能力。
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