今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
ついに12の紋章士の指輪がタロウの元に揃った。
怒涛の出来事は味方だけではない。敵側の急変に誰もが困惑せずにはいられなかった。
撤退したイルシオン軍と四狗。無傷のフルル港を残し、さらにヴェイルとモーヴも残し。
四狗に見限られたヴェイルはセピアにその命を狙われた。
そこを救ったのもまた四狗の1人であるモーヴ。セピアの凶手を受けた彼は重傷を負いながらも最後までヴェイルを守り通した。
「さて、どうしたものか」
「無論、敵の背を討つ。今が絶好の機会だからな!」
モ-ヴに手当てを施し、一息つこうとしていたアルフレッドたちだったが、そこを強制的に立ち上がらせたのはタロウだった。
「敵に休む暇を与えるな。速攻で潰すぞ!」
スピード感のあるタロウの動きに、アルフレッドたちは「根詰めすぎて、また倒れないといいけれど」と心配した。
そんなタロウの指揮の元、フィレネ王国の軍艦に乗り込みイルシオン軍を追うアルフレッドたち。
とはいえすぐにイルシオン軍に追いつけるわけではない。船の事は船乗りに任せ、タロウを休ませることができる。アルフレッドたちはそう思った。
だがタロウはある程度船が安定したことを確認するやカツカツと歩き始め、モーヴが寝かされている船室へ向かった。
「待つんだタロウ。キミは少し休むべき・・・」
「構わん。さっさとモーヴを問い詰めるぞ」
部屋の前で控えている兵士を一瞥し、タロウは迷うことなく扉を開けた。一応、敵がいる部屋なのだから少しは慎重に動いてほしいものだという視線を無視し部屋に入るタロウ。
「あっ、タロウ。お見舞いに来てくれたの?」
モーヴの看病をしているヴェイルが嬉しそうな顔で出迎えた。この子もこの子で呑気なものだとアルフレッドは苦笑いする。
「早速だがモーヴ。お前たちの目的を吐け」
ストレート。そんなド直球の質問で敵が情報を吐いてくれるわけがない。もう少し交渉というものをしてくれ。アルフレッドはいつものように心の中でツッコんだ。
「私がヴェイル様を守った理由は単純。私が四狗である以前にヴェイル様の味方だからだ」
うん。そういう質問じゃない。こちらの求めている情報はそういうのじゃない。
「お前は邪竜信仰じゃないのか?」
タロウ、話に乗らなくていい。
「私は元々フィレネ王国出身だ。だが神竜を信仰していても、父の命を救ってくれなかった。その後移り住んだイルシオンでも、邪竜を信じていても母は命を失った。だから私は何も信仰していない」
意外にも自国民。信仰に裏切られた数奇な人生。明かされるモーヴの人生歴にアルフレッドは思わず聞き入った。
その後、モーヴの口から語られたのはヴェイル迫害の歴史。邪竜の娘である彼女には1000年もの間、この世界に居場所が無かった。
そんなヴェイルを助けたい。それがモーヴの望み。
四狗の元でヴェイルがセピアに操られるのはモーヴにとって苦渋の選択。だがそれでも居場所は居場所。
そんな折に今の状況に至ってしまった。セピアに見限られ、再び居場所を失ったヴェイルをモーヴは命を捧げて守ると決めたのだ。
「そんな経緯があったのか」
「おそらく今後、傷が癒え次第、私はソンブル様にヴェイル様への特赦を願いに行く。私の命を捧げて足りるかどうかはわからないが。もしお前たちがそれを邪魔しようというのなら、覚悟してもらうぞ」
横たわりながらも放たれたモーヴの威圧感に、思わずあとずさりするアルフレッドたち。
タロウだけは微風にも感じない様子でモーヴを睨み返していた。
「ちょっと、喧嘩しないでモーヴ。それにあなたの命を捧げるなんて絶対に止めて」
「ああ。そんなもの通用する相手じゃない。それ以前に俺たちが邪竜を退治してやる。そうすればお前もヴェイルも何も気にする必要が無くなる」
口だけなら何とでも言える。モーヴはそんな気持ちでいるだろう。
だがアルフレッドたちは知っていた。タロウは口だけの男じゃない。というより少しくらいはリップサービスのできる男になってほしい。
「パパを退治なんていうのは受け入れられないけど。私は頑張ってパパを説得してみようと思うの。ねえモーヴ。もしパパが許してくれたら、一緒にお兄ちゃんを探すのを手伝ってくれない?」
この空気の間に割って入れるのはヴェイルくらいなもの。そう感心していたアルフレッドは「お兄ちゃん?」とつぶやき、その単語の意味を不思議に思った。
「ヴェイル以外にいるのか? 邪竜の子供が」
「いや。ヴェイル様以外の御子は1000年前に全員が亡くなっているはずだ」
敵将モーヴから語られるのは信憑性の高い情報だが、そこにヴェイルは「ううん」とさらに信憑性の高い否定に入った。
彼女曰く、一番仲の良かった兄がまだ死んでいないハズなのだと。1000年前の別れ際に兄から預かった竜石が砕けていないことが何よりの証拠。兄との再会の希望を支えに、彼女は今まで気丈に振舞うことができていたのだという。
「一度しか会ったことがないんだけどね。すっごく優しくて。いつか会いたいなぁ」
希望を胸に生きる少女の助けになりたい。アルフレッドたちですらそう思うくらいヴェイルは健気な目で前を見ていた。
「お兄さん、ね。でも1000年も見つからないなんて。何か手掛かりはないのかしら?」
ヴェイルの希望を自分の事のように思案するアイビー。そんな彼女の姿に他のアルフレッドたちも思案に入った。
「1000年か。ルミエル様や神竜様が何かご存知であればよかったが」
「だが邪竜側の事情だ。失われた記憶が戻ったとして、神竜であるタロウが何か知っていると思えない」
「ん? 記憶なら戻っているぞ」
不意に飛び出たタロウのとんでも発言に、アルフレッドはしばらく言葉を失った。
「記憶が・・・戻っている?」
「ああ。最近、力が戻ってきたからな。昨日から全て思い出した」
そういう大事なことは早く言ってくれ! そう誰もが心の中で思った。
「って、そういう大事なことは早く言ってくれ!」
このところ心の中でツッコミを入れすぎて、口に出すことを忘れていた一同は自分自身にもツッコミを入れつつタロウに迫った。
「それはつまり、ルミエル様のことも思い出されたということでしょうか!」
期待を胸に膨らませ、ヴァンドレは尋ねた。
「いいや。やはりルミエルのことは母親とは思えん」
「? どういうことですか? やはり記憶が完全に戻られたわけではないと」
「いいや。記憶は戻っている」
何とも話が噛み合わない。ヴァンドレは頭を抱えながらフラフラと椅子に座りこんでしまった。
「タロウ。思い出したというのは、例えば自分が神竜だということ、とか。そういう断片的なことかい?」
「いいや。俺は神竜じゃない」
あまりにもキッパリとした物言いに、アルフレッドは頭を抱えた。
記憶喪失が治ったどころか悪化しているじゃないか。そう彼が思った矢先、タロウはしずかにこう告げた。
「俺は桃井タロウの
獣人だ」
じか~い じかい
『フゥン。紋章士の指輪が全て神竜の元にあるわけだが』
『だがセピアの推理によると、あいつは神竜ではない可能性がある』
『モンスターではない。神だ! ハッ、俺は今、何を!?』
エン19話「死の港町」というお話
アンタが作ったことのある折り紙はどれだ?
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千羽鶴は定番。ツル
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折り方のレパートリーが豊富な。ネコ
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折り目のバランスが意外と難しい。ペンギン