今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
「じゅう・・・と?」
タロウがまた変な事を言っている。アルフレッドたちは最初そう思った。
自分は神竜でもない。タロウでもない。
桃井タロウの獣人なのだと。
誰もが「・・・・そ、そうなのか」と鈍い反応を示した。
「つまり、どういうことなんだ?」
「そうだな。最初から説明しなければ分からんだろうな」
そう言ってタロウはアルフレッドたちと向き合い、語り始めた。
むか~しむかし あるところに
4人のお供と桃井タロウという男がいた
「なぜそういう語り口なんだ?」
「アルフレッド王子、今は神竜様の話を聞こう」
獣人はドン王家が生み出した人工生命体
人間の姿と記憶を模写し、その人間に成り代わる化け物
桃井タロウはドン王家の生き残りであり、獣人を封印するべく行動を起こした
「行動?」
獣人が現れる封印の地の場所を特定するために
桃井タロウは自分自身を獣人にコピーさせた
獣人は桃井タロウの強すぎる自我によって逆に支配され
再び封印されることとなった
めでたし めでたし
「・・・つまりどういうことなの?」
話を一通り聞いてなお頭にクエスチョンマークを浮かべるアイビーが、同じ気持ちの皆を代弁してタロウに尋ねた。
「さっき言ったように、桃井タロウの自我はあまりにも強すぎた。それは今までの俺を見ていたお前たちならよく知っているだろう」
タロウの自我の強さ、それは分かる。だが説明の前後が繋がらないことにアイビーは苦笑いした。
「獣人の封印の折、コピーの桃井タロウの自我は行き場を失った。その魂は異界に迷い込み、器を見つけそこに入り込んだ」
「器・・・って、まさか!?」
「そうだ。神竜ルミエルの子は、まだ1000年の眠りから覚めていない。今ここにいる俺は神竜の体に乗り移った桃井タロウの獣人の自我だ」
アルフレッドたちは言葉を失った。中でも竜の守り人であるヴァンドレのショックは計り知れないものだろう。
自分たちが今まで神竜と崇めていた者が、全くの別人格に支配されていたというのだ。
何かの悪い冗談にしか聞こえない。だがタロウは嘘をつくことができない。おそらく真実なのだろう。
考えてみれば全て合点がいく。
伝承されていた神竜の特徴と違う性格。母である神竜王ルミエルへの愛着の無さ。中身が違うのだ。
「今から邪竜との決戦が始まるというのに。タロウが得体も知れない存在だったなんて」
「神竜様・・・いえ、タロウと呼ぶべきかしら。別の人格だなんて。ヴェイルだけじゃなかったのね」
「こんなこと聞いたら、神竜様を信仰する国がみんなひっくり返っちゃうよ」
「ああ。私たちはこれから何を信じて戦えばいいんだ。今までこの目で見て信じてきたものが・・・」
嘆く4王族。だがここで誰もが今までの事を思い返して気付いた。
『今まで神竜様の言う事だからと振り回された気分になることはあったけど。結果としてタロウの存在が不都合になったことなんてあったっけ?』
思い返してみればタロウはいつでも異形兵や敵との戦いの最前線にいた。唯一の敗戦であるデスタン大教会での敗走はタロウ不在によるもの。完全に足を引っ張ってきたのはアルフレッドたち自身だ。
「タロウ、一つ確認していいかい? キミはこれからどうするつもりなんだ?」
「邪竜退治に決まっているだろう」
淀みなく。迷いなく。タロウはいつもの調子で答えた。
タロウはいつだって一貫していた。
異形兵と戦い、アルフレッドたちをふりまわし、嘘をつくことなく、人々を守り、戦場を祭りのように盛り上げる。
正直、神竜が信仰対象であることを忘れる時間の方が多かった。だがそんなタロウに皆がついていった。
「そうか。なら僕らも一緒に戦わせてもらおう。フィレネ王国第一王子として、正式にタロウと共に戦うことを誓う」
「そうだな。ブロディアも神竜様ではなく、タロウと共に戦うことを宣言する」
「そうね。正直複雑だけど、イルシオンのためにアナタと一緒に戦いたいと私は思ったわ」
「私はタロウが誰だって関係ないよ。大切なのはその人が何を成し遂げたいのかだもん」
4王族はそれぞれにタロウと向き合い、共に戦うことを誓い合った。
ただヴァンドレだけはまだ心の整理がついていない様子で、茫然とその光景を見つめている。
「ヴァンドレ殿・・・」
「申し訳ありません。私はまだ受け入れられない」
「無理もない。アンタは今までよくしてくれた。邪竜退治は俺に任せておけ」
ヴァンドレにかける言葉が見つからない。そんな寂しそうな背中を見せながら、タロウは次にヴェイルと向き合った。
「お前には悪いが、説得に付き合う暇が無いと判断したら、俺は迷わず邪竜ソンブルを斬る」
「そうだね。私はタロウの邪魔をしないよ。でも後悔しないように、精一杯頑張るつもり」
グッと手を握るヴェイルに、タロウは「その意気だ」と頭を撫でた。
「さて、最後はアンタだ」
タロウに指名され、モーヴは静かに驚きの表情を見せた。
まるで敵陣にいる感覚がない。当事者として一個人と相対する器量がタロウにはある。モーヴは感心せずにはいられなかった。
「最初に言ったように、私はヴェイル様の味方だ。ヴェイル様の幸せのために戦う」
そう言って痛む体を推してベッドから起き上がるモーヴ。
「ハッキリ言おう。ヴェイル様は孤独でいるより、苦しみながらもソンブル様の元にいるほうが幸せだと考えていた私は間違っていた。その道はもう選ばない。御兄弟がご存命という話であれば、私は賭けに出たい」
これは実質上の離反宣言だった。モーヴは邪竜討伐においてヴェイルの盾となり、タロウたちの邪魔をしないことを約束したのだ。
「これで決まりだな」
タロウたちは互いに顔を見合わせた。
信じていた形とは違っても、思いは一つ。
「行くぞ、お供たち!」
タロウの号令にアルフレッドたちは「ああ!」と即答した。
そして直後に思った。
「って、結局お供扱いなのか!?」と
じか~い じかい
『はぁ、まさか神竜様が神竜様じゃなかったなんて』
『でも僕は永遠の神竜ファンクラブ会長なんだ』
『もう何があったって驚かないぞ!』
エン20話「王なき城」というお話
アンタはどんな制限プレイでゲームをクリアしたことがある?
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初期レベル縛り
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性別統一縛り
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店利用禁止縛り
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兵種統一縛り
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アイテム拾い禁止縛り
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RTA
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セーブ禁止縛り
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主人公1人旅
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目隠ししたまま戦ってやろう