今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた   作:三柱 努

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エン20話 王なき城

神竜タロウ改め桃井タロウ獣人率いる4国連合軍は邪竜退治のため四狗を追い、ついに因縁の地イルシオンの王城へとたどり着いた。

 

ここに来るまでにイルシオン軍の足止めはあったが、いずれもタロウ率いる軍勢を前にして敵ではなかった。

だが一番の足止めになったのは武力ではない。現実だ。

イルシオン王国の国民の多くが命を奪われ、異形兵へと変えられていたのだ。

アイビーやオルテンシアといったイルシオン出身の仲間のショックは大きく、彼女たちは悲しみに打ちひしがれて立ち止まってしまっていた。

そんな彼女たちに手を差し伸べたのはタロウ。そしてアルフレッドやディアマンド、ミスティラであった。

「アイビー王女」

そこにそれ以上の言葉はいらなかった。手を取り合うだけで伝えたいことが分かる。

邪竜を倒さなければ、この悲劇がもっと多くの人を襲うだろう。そうさせないために何をするべきなのか。

彼らは真の仲間になっていた。タロウに頼り切りだった自分たちを脱ぎ捨て、信頼することで自分たちの心すらも強くしていた。

 

そして突撃したイルシオン王城。邪竜との決戦の覚悟は十分。

だがすぐに大将戦というわけにはいかない。

最初にタロウたちの前に立ちはだかったのは四狗の1人、グリ。

「遠路はるばる、この城までようこそ。ああ、イルシオンの姫君には、お帰りなさいませと言って差し上げるべきかな?」

「そうか。ならこちらは、お邪魔しますとでも言っておけばいいのか?」

「ノリがいいじゃねぇか神竜様。ククク」

不気味に笑うグリの様子をアルフレッドたちは怪訝に思った。

何故グリには余裕があるのか。いくら自分たちの陣地とはいえ、敵に攻め込まれている現状。しかも紋章士の指輪は全てタロウ側が手にしている。決して楽観視できる状況ではない。

「前々から思っていたが。お前、変だぞ」

「傷つくこと言ってくれるじゃねえか神竜様。まぁ傷つけてくれる分には大歓迎だが。それよりいいのか? 紋章士の力も借りずに俺と戦う気かい?」

ますます不気味に挑発してくるグリ。だがここで威圧されるタロウではない。

「いい度胸だ。そんなに早くやっつけられたいのなら、望み通りにしてやろう」

そう言ってタロウは紋章士マルスの指輪を取り出した。

大教会で奪われ、邪竜の顕現で上書きをされて以来の出番だ。

「来い、マルス!」

タロウの呼びかけにマルスは指輪から姿を現した。

久々にタロウの横に並び立った彼はどこか嬉しそうに見える。

だが、この顕現を前に誰よりも喜んだ男がいた。それは誰あろうグリである。突如として狂ったように高笑いを始め、何かを確信したような視線をタロウに向けた。

「お前、ますます変だぞ」

「ふふふふふ。ヒャーーーーーーハハハハハ。ヒッヒヒヒヒヒ。その台詞、そのままお前に返してやるよ。なんでそちら側にいる? 神にでもなったつもりか?」

妙な言い方をするグリ。その意図をタロウが掴みかねていると、グリはますます勝ち誇ったように告げた。

 

「お前の正体は、神竜なんかじゃない。こう言ったほうがわかりやすいかもな。『邪竜の御子様』さんよぉ!」

 

グリの高笑いにタロウは首を傾げた。

「俺の正体が神竜じゃないのは知っている。だが邪竜の御子はあっちのヴェイルだ。間違えるな。あと様にさんを重ねるな」

「違ぇよ。ヴェイルじゃなくてテメェのこと・・・って、神竜じゃないって・・知っているだと?」

思っていた反応が返ってこないことにグリはキョトンとしてしまった。

「ああ。俺は神竜ではない。獣人だ」

「あ? じゅう・・・と? いやいや、お前はソンブル様の御子だっての」

「俺は邪竜なのか?」

グリは自分の耳がおかしくなったのかと心配になった。いや、そもそもタロウの反応が変すぎる。邪竜であることを告げられ、ショックを受けたり否定をするどころか、すんなり受け入れたようにしているのだ。

それは他のアルフレッドたちも同じ。

「何というか・・・もう今さら驚かないというか」

「鵜呑みにしなくていい。あの男が言っているだけだ」

「ええ。でも。まぁ。ね」

神竜に逡巡している仲間ですらこの反応。グリはますます困惑した。

 

その後、グリは解説を始めた。

神竜も邪竜も紋章士を顕現できるが、神竜が祈りによって顕現するのに対して、邪竜は呪文により顕現する。タロウがマルスに命令して顕現させたのは間違いなく邪竜の血族の証拠なのだと。

だがここまで説明してもタロウは「そうか」とつぶやくだけ。他の仲間たちも「まぁ・・・ねぇ」とリアクションが薄い。

唯一、ヴァンドレだけが膝から崩れ落ちるほどにショックを受けていたが、グリとしてはもっと仲間割れだとか離散したりだとか・・・もっと大打撃を与えられるのではないかと期待していた分、むしろショックが大きかった。

「御託はそれだけか?」

それ以上、特に何かを言うことも、言う予定も無かったグリ。

 

その後、あっさりタロウのエンゲージの餌食となった。

 





じか~い じかい

『ついに僕たちの出番ですね』
『何の話だ? 俺は何も知らないぞ?』
『まあまあ。我々の話については多くを語るまい』
『タロウ、待っててね!』

エン21話「帰還」というお話

アンタは自分が戦士なら何属性になりたい?

  • ずっと光の中を歩きたい。光属性
  • 敵だと決めつけないで。闇属性
  • 熱血! 烈風! 火属性!
  • 万能っぽさがありそう。水属性
  • スピードを売りにされがち。風属性
  • 激走・太陽・百獣。ピンク属性
  • 太陽。青属性
  • 太陽。黄属性
  • またしても何も知らない。黒属性
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