今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
邪竜ソンブルの前に現れた12の戦士。だがそれは紋章士の顕現ではない。
その姿はまるでタロウのエンゲージ姿のよう・・・というわけではない。似ているのもいれば似ていないのもいる。というより大半が統一感の無い鎧姿だ。色合いに至っては全員がバラバラ。
そんな12の戦士は瞬く間に異形兵に斬りこみ、バッサバッサと打ち倒していった。
「まさか千年に一度の力を、お前が使ったというのか!」
ソンブルはそうとしか考えられなかった。
紋章士の指輪が12個全て揃った時、1000年に一度だけ起こすことができる奇跡の力。
その力を使いソンブルは異界に侵略するつもりでいたのだが、タロウに先を越された形だ。
そんなソンブルの怒りに構うことなく、タロウと12の戦士は笑いながら戦っていた。
「タロウさん! 僕たちが来たからにはもう大丈夫ですよ!」
槍を振り回し、元気よく戦っている戦士を背に、タロウは「俺はいつでも大丈夫だ」とさらっと答えた。
「といっても獣人らしいがな」
「それでも僕らは仲間です。タロウさん!」
「そういうことだ。縁というものは恐ろしくもあり、頼もしくもあるもの」
この3人の戦士はどれもこれもが変な等身だ。妙に腕が太かったり、足が細かったり、背が小さかったり。化け物にしては化け物っぽくない。
「ちなみにマスターも来てくれてるんだよ」
「ああ。来たよ」
黄色と白はまだマトモな等身だ。まだタロウの鎧に近いかもしれない。
「タロウ。また共に戦うことができる喜びに、私は今震えている」
「ちなみにキビポイントは大丈夫らしいわ」
「ついでにムラサメも連れてきたぞ」
ここからはもはやタロウとの統一感が皆無だ。だがタロウと共に敵と切り結ぶ姿は妙にシックリくる。
「来ました。いいですよね、マザー」「 」
誰に話しかけているのだろう? 紫の戦士はよくわからない独り言を言っていた。
「私たちはオマケね。どうでもいいけど」
「ギリギリだな。それにギンギンだ」
「って、ちょっと待って! 5と6が7と8になってる!」
何か3人目の戦士が騒いでいる。すごくパニックになっている様子だ。
そんな全然違う12人の活躍もあり、アルフレッドたちの戦況は完全に盛り返して余裕が生まれた。
「これがタロウの本当のお供たちか・・・って、「13人いる!?」」
指輪の数と戦士の数が合わない。その事実に気付いたアルフレッドとソンブルは思わずツッコんでいた。
「あと、お供4人じゃなかったのか」
アルフレッドの付け足しのツッコミに、タロウは反応することなく13人の戦士たちと横に並んだ。
「お供たち、名乗りだ!」
タロウのやることはいつも分からない。何故、このタイミングで名乗りを? アルフレッドは呆れるしかなかった。その気持ちはソンブルも同じ。
だがタロウの呼びかけに13の戦士は「やりましょう!」「いいだろう」とやる気まんまんで並び、順番に高らかに名乗りを上げ始めた。
「清廉潔白 完全主義 ソノイ」
「美しい花には棘がある 愛を知りたい ソノニ」
「思い込んだら一直線 ソノザ」
「清潔第一 ソノシ」
「戦う交通安全 ソノナ」
「天空の王者 ソノヤ」
「秘密のパワー ゼンカイザー」
「ジョーズに目覚めた ドンムラサメ」
「金骨龍々 ドンドラゴクウ! ドントラボルト!」
「浮世におさらば サルブラザー」
「漫画のマスター オニシスター!」
「逃げ足ナンバーワン イヌブラザー」
「鳥は堅実 キジブラザー!」
『なるほど。前にタロウが言っていた、面白い名乗りというのはこういうことか』
アルフレッドが感心する中、13の戦士が次々と名乗っていき、次はついにタロウの番。
彼がどんな名乗りをするのか、敵味方問わず全員の注目が集まった。
「桃から生まれた ドンモモタロウ」
そうきたか。
もはや出自が神竜でもなければ邪竜でもなく、獣人ですらない。誰もが苦笑いするしかなかった。
そんな周りの目を全く気にすることなく、タロウと13人のお供は声を揃え名乗った。
「「暴太郎戦隊 ドンブラザーズ」」
と。言葉の意味が分からないが、とにかくすごい自信だ。
だが心なしか、タロウが今までで一番活き活きしている。この勢いを止めてはいけないだろう。
「お供たち、祭りを楽しむぞ!」
タロウの号令を皮切りにドンブラザーズは異形兵との戦いを再開した。
アルフレッドたちが見守る中、タロウをはじめとした13人の戦士たちは軽やかに戦っていた。
「ほぉ。お前たち、腕を上げたな」
「なんてったって、僕はドンブラザーズのリーダーですから!」
「ああ。彼はよくやってくれている」
タロウと共にソンブルに立ち向かうのはソノイとドンドラゴクウドントラボルト。
まったく統一感の無い鎧をまとった3人だが息ピッタリでソンブルを圧倒していた。
あと、どうやらタロウがドンブラザーズのリーダーではなかったようだ。
「わびさびも風流さもない。言葉が通じないというのは何とも無粋な敵だな」
「こいつら、まるで無感情だな。昔の俺の方が笑い方を知っている」
「おしゃべりばっかりしてると危ないよ。教授、編集長」
サルブラザーとソノザ、オニシスターはアルフレッドたちを守るように異形兵を相手にしてくれている。この3人もまるでバラバラだが、それでいて息が合っていて強い。
あと、教授はわかるが。へんしゅうちょう、とはどんな役職なんだ?
「僕、がんばるよ。待っててね! みほちゃ・・・って間違えた」
「やめろ雉野! その呼び間違えは俺に刺さる」
「何をやってるの翼、油断しないで!」
こちらの3人も等身が全然違うけれども息ピッタリだ。あと誰が誰なんだ? さっきの名乗りの通りでいいんだよね?
「あらソノシちゃん。動きが悪いわよ」
「邪魔なんだよ。戦いの足手まといになるやつは全て」
「ぅぅ戦いにくい」
ソノナとソノヤ、ソノシは名前も鎧も、この中で一番統一感がある。なのにすごく息がバラバラだ。特にソノシは居心地が悪そう。
あと何か床の上を滑るように剣が動いている。ドンムラサメの剣に似ている。それがまるで地面を水のように泳いでいるように見えるから不思議だ。
「彼らに戦わせてばかりでなるものか。僕らもタロウのお供だ!」
「そうとも!」
アルフレッドの号令に軍勢が吠えた。ドンブラザーズと共に異形兵へと斬りかかり、戦況は一気に優勢へと傾く。
かに思われた。
「図に乗るなよ貴様ら」
その時、ソンブルの地を這うような咆哮が一帯を吹き飛ばした。
あまりにも禍々しいオーラと共に、ソンブルの体が一回りも二回りも巨大化していく。
そしてその巨体が神竜王城の天井を突き破り、アルフレッドたちはその姿を見上げ立ち尽くしてしまった。
「我が力の半分も見せていたと思うなよ」
「なんということだ・・・」
アルフレッドたちは愕然とした。これが邪竜。人間が敵うような次元の話ではない。絶望を感じずにはいられなかった。
だがタロウなら。タロウなら何とかしてくれる。そんなアルフレッドたちのすがるような視線が向いた先で、彼はいつものように高笑いをしていた。
「ならばこちらも全力全開を見せてやろう」
そう言うや、タロウは手にした弩のような変なものに手をかけ、グルグルと歯車を回し始めた。
同時に他のドンブラザーズの面々も変なものの歯車を回していく。
するとその直後、タロウはルキナとエンゲージした時と同じ鎧姿に。他の面々の体にも鎧のようなものが装着されていく。
「お供たち、ドン全開大合体だ!」
タロウの言葉にドンブラザーズですら「なんじゃそりゃー」と声を合わせて驚いている。
かと思えばイヌブラザーとオニシスターが支えるようにタロウがその上に立ち、サルブラザーが2つに分かれ、キジブラザーも4つに分かれ、タロウの腕となった。ドンドラゴクウドントラボルトにいたっては、もう骨格の何がどうなっているのかわからない。
こうして組体操のようにして出来上がったものは、さながら鎧の巨人。
さらにドンムラサメの体でも全く同じようなことが起き、タロウの巨人を黒くした姿へと変貌した。
話はそれだけで終わらない。2体の巨人が更なる変形を始め、その体が合わさろうとしていたのだ。だいぶ前の時点で目玉が飛び出そうになっていたアルフレッドたちは、今度は顎が外れそうなくらいに口が開いたまま閉じなくなった。
だがそんなリアクションとは裏腹に進んでいく合体。そしてその仰天にすら彼らは乗り気満々で口々にお気楽なことを言い始めた。
「俺はまた足か!」
「こういうのシンメトリカルドッキングっていうんだよ」
「今度は腰か」
「え! 僕、もしかして脇!?」
「マザー、皆で大合体です」「 」
「センターはやはり僕!」
「違う、俺だ」
彼らが強大な敵を前に、自分たちの身に何が起きているのかも分からない状況で、それでも好き勝手言えるのはタロウを信頼しているからだろう。それがよく伝わってくる。
「「完成! ドントラサメオニタイジン全極!」」
うん、何が起きているのか何を言っているのかよくわからない。
ただ1つ、分かっていることは。これで邪竜ソンブルと同じ視線で戦える巨人へとタロウたちが変形したということだ。
「あと、キミたちはどうしてここに?」
アルフレッドが尋ねる先にいたのはソノイたち。
「私たちにアレはできないからな」
「・・・そうなんだ」
どうやらドンブラザーズのお供たちの中にも、できることとできないことがあるようだ。
そんなアルフレッドの苦笑いの先で、ソンブルには悲惨が待ち受けていた。
「銀河桃一」
「「全力ドンブラファンタジア・極!」」
ボルガノンやトロン、エクスカリバーでは説明がつかない虹色の熱波がタロウたちから放たれ、ソンブルを貫いた。
せっかくのソンブルの巨大化に見せ場を全く与えることなく、まさにタロウたちの完全大勝利である。
「「完全究極大勝利!」」
タロウたちの勝鬨にアルフレッドたちもつられて武器を天に大きく掲げる。
こうして、1000年越しの邪竜との戦いの幕はここに下ろされたのだった。
「タロウ。きみには感謝してもしきれないよ」
「え?」
戦いも終わり、タロウの元へアルフレッドたちは駆け寄った。
だが何か様子がおかしい。
「ここはどこでしょう?」
キョトンとした顔でタロウは周りを見回していた。
その表情は豪傑と呼べた今までの彼ではない。純粋無垢という言葉がよく似合う。
「タロウ、何を言って・・・!?」
その時、アルフレッドたちはタロウの背後に14の影を見た。
その影は光の粒子となって1つ1つと徐々に消えていき、
最後に赤い影がタロウと向き合った。
「え? あなたは一体・・・」
タロウが困惑する中、赤い影は手を差しだした。まるで握手を求めるように。
タロウは恐る恐る赤い影の差しだした手に手を重ねる。
するとその影は満足したように扇をパタパタとあおぐと、他の13の影の元に向かうように光の粒子となって消えていった。
去り際の挨拶か。あるいはタロウに何かを託すバトンタッチか。
『タロウは・・・いや、ドンブラザーズは・・・』
アルフレッドたちは一様に察していた。
前にタロウが言っていた。
彼は桃井タロウの自我が、1000年間眠り続けている神竜の器に入り込んだ存在であると。
その魂はまだ目覚めていない、と。
その桃井タロウの仲間であるドンブラザーズは消えた。
邪竜を倒す役割を果たしたからか。あるいは桃井タロウを助け終えたからか。
桃井タロウの魂も、あるべき場所に帰っていったのだろう。
そして今、彼が憑依していたタロウは、その眠り続けていた魂が目覚めたばかりなのだ。
邪竜との戦いで疲弊した世界。そんな世界に放り出されたタロウを誰が支える?
今までタロウに支えられてきた自分たちが、今度は彼を支える番だ。
アルフレッドたちは言葉を交わさずとも、皆が同じ気持ちだった。
「あの、みなさんは?」
眠り続けていたが故。今のタロウは何も知らない。
目の前にいる仲間たちが誰なのかも。
キョトンとした顔で尋ねるタロウに、アルフレッドは微笑みながら答えた。
「僕らはキミと縁ある者だよ」
=完=
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