今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
タロウたちがフィレネ王城にたどり着いた時、城は既にイルシオン軍に占拠されていた。
「母上!」
「お母様!」
王城を斬り進み、たどり着いた先にはイルシオン軍に捕えられた女王の姿があった。
「あら、王子様方のご帰還。王女が指輪を持っているかは直接確かめることにしましょ」
「あの子たちに手を出さないでください!」
女王の必死の懇願に、イルシオン軍の女将は嬲るような不敵な笑みを浮かべた。
「なら指輪の在処を吐いてくださいな」
「それは・・・」
「指輪は俺とアルフレッド、セリーヌが持っている」
敵の問いに平然と告げたタロウ。あまりにも呆気なく飛び出た情報にアルフレッドたちどころか敵すらも唖然とした。
「な、タロウ! 何故そんなことを言うんだ!?」
「? 聞かれたからな」
「だからと言って・・・言っていい事と悪い事が」
アルフレッドの困惑する様子がますますタロウの言ったことの信憑性を敵に伝える結果になった。敵将はますます苦笑いするしかない。
「ご・・・御丁寧にありがとう。え? 待って、貴方は・・・いいえ、他人の空似ね。こんなところにいるはずがないもの。お前、何者なの?」
「神竜、タロウだ」
迷いなく自己紹介できるイイ子。そんな風に思ってくれる敵はおそらくいないだろうが、タロウイイ子。だから何だ! と、アルフレッドは頭を抱えた。
「神竜? 嘘をつかないで。ルミエルの他に神竜がいるなんて聞いてないわよ」
「俺はルミエルの息子だと聞いている」
あれだけストレートに情報提供してくれるタロウが急に曖昧な回答をしてきたことに膝をガクッとさせる敵将。
「息子?・・・あの女、いつの間に子を成していたというの? まあいいわ。それなら、ルミエルの安否を知っているわよね? 神竜ルミエルはこの前の襲撃のあと、どうなったのかしら?」
「ルミエルは死んだ」
あまりにもストレートに淡々と告げたタロウ。これには誰よりも捕らえられた女王が一番に驚いた。
「そんな、神竜王ルミエル様が!?」
「ああ。どうやら襲撃の事を知っているのなら、お前たちだな? 襲撃犯は。そしてイルシオン王国は邪竜と異形兵と結託し、指輪を奪った張本人だな?」
「そうよ。いろいろ教えてくれたお礼に教えてあげる。私たちイルシオン王国はソンブル様を復活させたわ」
「そ、そんな・・・邪竜が・・・」
「だろうな。そんなこと想定の範囲内だ」
邪竜復活の情報に困惑するアルフレッドたち。だがタロウは憮然な態度を崩さなかった。
「ルミエルの子。あなたまで目覚めたのは、ひょっとするとソンブル様復活がきっかけかもしれないわね。私たちのおかげで眠りから覚めたのかもしれないってこと。感謝してくださいな」
「何を言っているんだ? 根拠も出せないくせに因果関係を語ろうとするな。アンタは自分の頭の出来以上の問題に口を出して、その気になっているだけだ」
すごい。アルフレッドは感心した。敵将の嫌味には苛立ちを覚えるが、即座にその上から殴りつけるように反論するタロウにはいっそ清々しさを覚えた。しかもそれは悪口の反撃ではない。おそらく彼が本気で思っていることだ。そのことはアルフレッドやヴァンドレがよく知っている。
「あの女の子にしては減らず口が上手ですこと。でも今は貴方の相手をしている時間はありませんの。私はこれで、失礼いたしますわね」
相手もなかなかに心臓が強いようだ。敵将はそう言い残し、部下にはタロウたちから指輪を奪うように言って去っていった。
「逃げ足だけは早いようだ。さっさと雑魚を片付けて女王を助けるぞ」
タロウの号令にアルフレッドたちは「おう!」と応え、武器を高く掲げた。
「お供たち、エンゲージだ!」
タロウの呼びかけにアルフレッドとセリーヌはそれぞれの指にはめた紋章士を呼び出した。
「この身を捧げよう」
「紋章士様、お願いします」
「「エムブレム・エンゲージ!」」
アルフレッドは紋章士シグルドと、セリーヌは紋章士セリカと。それぞれがタロウから託された顕現の力でエンゲージした。
紋章士の力が形となり、2人の装備を新たなものへと変えていく。
この時、アルフレッドは小さく期待していた。
タロウがフルルの村でエンゲージしていたように、紋章士シグルドとのエンゲージであの牛車のような乗り物が自分の前に現れるのだろうと。あの超スピードで敵を撃破できるのだろうと。
あの時のタロウのように。イメージのままに両手を前に出すアルフレッド。
「お兄様?」
「アルフレッド王子、何をしてらっしゃるのですか?」
周りの指摘にアルフレッドは気付いた。自分があの乗り物に乗っていないことに。
「まさか、エンゲージできなかったのか?」
「いや、エンゲージはできているようですよ」
ヴァンドレの指摘の通り。アルフレッドの体には力がみなぎっていた。そして背中には何やら小さな風車のようなものがついた装備を背負っていた。
セリーヌも同様に何やら不思議な鉄球を周りに浮かべている。そして2人ともに体が少し浮き上がっていた。
「そ、そうなのか。タロウと違う姿になったからてっきり。どうやらエンゲージは人によって姿形が変わるようだね」
頬を少し赤らめながら冷静に分析するアルフレッド。だがその分析にシグルドの声が待ったをかけた。
「そういうわけではない。エンゲージは誰もが同じ姿になる。とはいえ神竜は紋章士の力を全て引き出すことができるのだ」
シグルドの言葉にアルフレッドは「そうなのか」と納得を見せた。
だがシグルドは最後に小さく呟いた。
「だが千年前のタロウは、あのような姿になることはなかった。何が起こっているのか。それは私たちにもわからない」
じか~い じかい
『神竜様の視線いただきました!』
『神竜様より鍛錬の機会、いただきました!』
『・・・し、神竜様より・・・がくっ』
エン6話「奪われた指輪」というお話
アンタは家臣になるならどの国の王がいい?
-
テクノロジーの国の王
-
芸術と医療の国の王
-
法を司る中立国の王
-
農業の国の王
-
最強の工業国の王
-
自称“邪悪の王”
-
平和と博愛主義国家の王
-
富国強兵の軍事国家の王
-
自由を重んじる国の王
-
知識と叡智の宗教国の王
-
最高最善最大最強の魔王