今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
ユナカの罰を共に受けることを誓ったタロウ。
「神竜氏。やはりわたくしめの罪はわたくしめで受けるべきでございます。神竜氏を巻き添えにするわけにはいきませぬ」
「気にするな。人を幸せにできなくても、人の不幸を減らすことはできる。それが今の俺にできることだ」
遠慮と後悔からタロウ止めようとするユナカ。だがタロウはお構いなしにズンズンとアルフレッドたちのいる広場へと歩いていた。
すると広場にたどり着く前にアルフレッドのほうからタロウたちのほうに近寄ってきた。その背後にはヴァンドレやクランとフランの姿もある。
「丁度いい所にきたお供たち。お前達に話がある」
「ああ。僕らも話したかったところだよ。いや、謝りたかったところなんだ」
そう言うとアルフレッドはタロウが反応するよりも早く深々と頭を下げはじめた。ヴァンドレやクランとフランはあまりにも深く、地面に頭がつくほどに。
この急な行動に困惑するユナカ。タロウも4人の行動が理解できず目を大きく見開いた。
「まず詫びたい。さっきタロウとユナカの話を盗み聞きしてしまったことを。それとキミが自分の正直さに苦しんでいたことに、友として気付けなかったことを謝りたい。すまなかった」
王子という立場の人間らしからぬ心からの謝罪を示すアルフレッド。続いてヴァンドレも声を震わせながら謝罪を口にした。
「私もです。神竜様の御心を察することもできず、ただ黙ることしかできなかった。守り人失格でございます。本当に、本当に申し訳ありません」
「僕たちも。神竜様が僕たちを鍛えようとしてくださる意味を知ろうともしないで」
「逃げてばっかりなんて、本当に駄目駄目な守り人です。本当にごめんなさい!」
凄まじい勢いで謝罪する4人の熱意に圧され、たじろぐことしかできないユナカとタロウ。
「いいや。俺は人の心を理解できていないから言葉が足りない。それに全く駄目な人間なんてものはいない。お前達はお前たちなりによくやっている」
「神竜氏は心が広い御方ですな。それに比べてわたくしめは、指輪を盗むような愚か者でございます。神竜氏、やはりお裁きはこのユナカめにだけ頂きたい」
自首するように両手を差し出すユナカ。そんなユナカにアルフレッドは「その必要はない」と手を横に振った。
「償いという話なら、もしよければ僕らに同行してくれないか? 先ほどのユナカの戦いぶりを見てもユナカほどの実力者がいてくれると助かる。それにタロウもキミとは話がしやすいようだ。話し相手としてもお願いしたい。無論、僕らも精進していく所存だが」
「わたくしめが神竜氏のお相手を!? そのような大役を・・・お断りするわけにもいきませぬ。不肖ユナカ、精一杯がんばりまする!」
宣誓したユナカ「よろぴっぴ!」と元気な挨拶と共に拳を突き上げた。
「ちなみにでございますが、神竜氏御一行はどこに向かって旅をしておりまするか?」
ユナカの当然の質問。タロウの返答はさも当然のように「邪竜退治」というものであり、ユナカは心臓が止まりそうになるほど驚いたという。
こうして新たなお供・ユナカが加わった。道中、タロウが単独行動でどこかに行って帰ってきたりすることはありながらも、一行はついにブロディア王国領へと足を踏み入れた。
周りの景色も辺り一面が岩だらけであり、生きていくには厳しい環境であることが分かる。
そんな国境付近はやはり厳しく警備が張られていた。
突如としてタロウ目がけて矢が飛んできたのだ。無論、タロウは容易く矢を斬り払うが、突然の奇襲に険しい表情を見せた。
「何者だ!」
「それはこちらの台詞ですよ。国境を越え、侵入してきたのはあなた方です。名乗らないなら賊とみなし討伐します」
国境警備兵だろうか。弓を構えた男がタロウたちに警告した。
「ほぉ、面白い。お供たち、名乗るぞ!」
何をどう面白がっているのか分からないまま、アルフレッドはタロウに言われるがまま「僕はフィレネ王国第一王子、アルフレッドだ」と名乗った。
「何を普通に名乗っている。ここは・・・うむ」
アルフレッドに文句を言いながらも、タロウは頭を押さえながら「神竜、タロウだ」と普通に名乗った。
「タロウ、キミだって普通じゃないか」
タロウの名乗りの平凡さにボヤくアルフレッド。
「神竜に、フィレネ王国王子?」
そう呟いた弓兵は突如として弓を置き、タロウたちの元に走り出した。
そして高く跳躍すると、五体投地の姿勢で着地した。ダイビング土下座ともいう。
「すみませんでしたー! 神竜様とフィレネ王子とはつゆ知らず、攻撃して申し訳ありませんんん!」
あまりにも見事な謝罪にタロウは「いい土下座だ。95点」と賞賛した。ちなみにアルフレッドはその反応に「土下座に高得点を出されても」と苦笑いした。
さて、その土下座弓兵であるが。その正体はブロディア王国第二王子スタルーク。
フィレネ王国からの書簡は届いており、ブロディア王の勅命でタロウたちを国境まで迎えに来ていたのだ。
だがこの周囲にも異形兵が出没しており、人間が現れたとしても賊の類ばかり。そのためタロウたちにも思わず威嚇を行ってしまったのだという。
「すみません、すみません。謝りついでに、迎えが僕なんかですみません」
「顔を上げてください。王子自らのお出迎え、感謝しています」
「ああ、いい人だ。王子である上に性格までいいなんて。でもその分、僕の薄汚さが露呈するので、あまり輝きを放つのはやめてください」
「あまり自分を卑下するな。お前の弓、鍛えればまだまだ伸びる。51点だ」
相変わらずのタロウの態度だが、スタルークは「やめてください」と首を振った。
「点数が高すぎます。それに僕なんかに使うなんて、数字に対して申し訳ないです」
アルフレッドは苦笑いするしかなかった。この2人は真逆すぎる。タロウの直射日光が強すぎてスタルークが消えてしまわないか心配になるほどに。
そんなスタルークの案内でブロディア城へと向かうことになったタロウたち。
ここを越えれば城にたどり着く、というグランスール大橋にさしかかった頃、タロウたちの目の前に現れたのはイルシオン兵たちであった。
「あれは、イルシオン兵です! 橋がイルシオン軍に占領されています!」
「毎度のパターンになっていないか?」
自国を侵略されているスタルークの緊迫感に同情できないわけではないが、タロウの言う通り最近、城の隣の土地が占領されがちだなぁと思うアルフレッドたち。
橋にたどり着くと、そこにはイルシオン兵を率いるド派手な少女がいた。
「あ、やっと来た。この私を待たせるなんてイイ度胸ね」
「何者だ、お前は?」
「私はイルシオン王国第二王女オルテンシア。皆さん、こんにちはー」
無駄に高いテンションで騒ぐオルテンシアに、タロウは「ああ。こんにちは」と平然と挨拶を返した。
「あ! もしかして、あなたが神竜サマ?」
「ああ」
「やっぱり! すぐわかったわ。他の人よりキレイだから。神竜ってルミエルだけだと思ってたけど、他にもいるなんて最近まで知らなかったわ」
人を舐めたような態度でタロウと相対するオルテンシア。だがタロウは「そうか」と冷めた言葉で返した。
「さ、神竜サマ。持ってる指輪をぜーんぶ出して。そしたら殺さないでいてあげる」
「? お前は何を言っているんだ?」
「だってあたし、そっちの指輪と同じ力を使っちゃうんだもん」
そう言って勝ち誇ったようにオルテンシアが掲げたのは紋章士の指輪であった。おそらくルミエルが殺された日に奪われた指輪の1つだろう。
そしてオルテンシアは指輪から光を放ち、赤い光を纏った紋章士ルキナを顕現させた。
「びっくりした? 紋章士を顕現できるのはあなただけじゃないのよ神竜様。邪竜も同じように紋章士を顕現できるの。あなたたちと同じことができるのよ!」
「そんな! 邪竜までもが紋章士の力を使えるのか」
まさに闇の紋章士。邪竜の手に堕ちた紋章士を前にアルフレッドは頭を抱えた。
だがタロウはこの光景に首を傾げた。
「あら神竜サマ。ショックで声も出ないのかしら?」
「いや。お前がどうしてそんなにも偉そうにしているのか意味がわからん」
「負け惜しみ言っちゃって。神竜サマもわからずやね」
鼻で笑うオルテンシアだが、タロウはそれすらも鼻で笑って返した。
「そうか。お前は自分がまるで駄目なことに気付いていないようだな」
「なによ? そっちこそ何が言いたいのよ」
タロウの物言いの高慢さにムッとして睨むオルテンシア。
そんな彼女にタロウは腕を組んで言い放った。
「お前もこちらと同じことができる? それはつまりお前ができることを俺たちは4人もできるということだ。数の劣勢を理解できないお前が駄目でなくて何と言うのだ!」
タロウの指摘に「あ・・・」と口をパクパクさせるオルテンシア。本気で紋章士の顕現だけを勝機の根拠にして、相手の神経を逆なでする発言をしていたようだ。
そんなオルテンシアを見ながらアルフレッドは思った。
『これがイルシオンの第二王女。そしてブロディアの第二王子があのスタルーク。うん、うちの王位継承二位、僕の妹がマトモでよかった』
じか~い じかい
『僕なんかが次回予告を仰せつかるなんて、なんて勿体ない』
『こんな責任重大な事、僕なんかに任せちゃいけません』
『ああ。太陽がまぶしすぎて僕の駄目なところが鮮明になってしまう』
エン8話「勇ましき王国」というお話
アンタが喫茶店でいつも注文しているものは何だ?
-
コーヒー
-
モーニング
-
クリームソーダ
-
パフェ
-
生姜焼き
-
ドンペリ
-
きびだんご
-
カラフルサンデー