今俺を見たな? これでお前ともエンゲージができた 作:三柱 努
ブロディアの軍勢が国境に到着したのは日を跨いだ頃だった。
常冬の国イルシオンとの国境は雪に覆われた広大な平原。
今まで見たことのないほどの大量の異形兵を揃え、イルシオン軍はブロディア軍と相対した。
「ディアマンド王子、戦況は?」
「父は決戦の地点へ向かった。私たちは後方待機との指示だ」
この戦いで何かがあれば王国の存亡に関わる。故にアルフレッドやディアマンドといった王子たちは前線から外されていたのだ。
それはタロウも同じ。後方の砦に控え、戦いを見守るように言われていた。
「ところで神竜様は? 勇猛果敢なあの方が飛び出してしまわぬかと私は心配していたのだが」
会って数日でありながらタロウの蛮勇とも言える性質を理解したディアマンドは周囲を見回してアルフレッドに尋ねた。
「ああ。そのことなんだが」
ディアマンドの問いに口を濁すアルフレッド。視線を外したその態度にディアマンドは「まさか」と顔を青ざめさせた。だがアルフレッドは即座に「いや、前線に向かってしまったわけではないさ」と否定した。
「ゴホゴホゴホ」
砦の方から誰かが咳き込んでいる音が聞こえてくる。気の毒になるほど酷い咳に、ディアマンドは思わずアルフレッドから目をそらしてソチラを見てしまった。
「し、神竜様!?」
そこにいたのは普段のハイテンションが反転してしまったかのような、ザ・体調不良のタロウの姿だった。
ヴァンドレに肩を担がれ、フラフラとした足が雪にとられて転びそうになっている。
「神竜様! お怪我はありませんか!」
心配するヴァンドレに、タロウはうわごとのように「やあやあやあ まつりだ まつりだ」と呟いている。相当重症のようだ。
「神竜様、一体どうされたというのだ?」
「タロウのこの様子は今朝からなんだ。心労がたたったのではないかと思う」
首をかしげるディアマンドに、ヴァンドレは目頭を押さえながら口を開いた。
「記憶を無くされ、目覚められた翌日に母君のルミエル様を亡くされ。その悲しみを背負われたまま今日まで走り続けてこられたのです。さらには我々を鼓舞し、前線で剣を振るわれ、誰よりも多く戦ってこられた。神竜様の体は既に悲鳴を上げられていたのでしょう」
不甲斐ない自分を戒めるように声を落とすヴァンドレ。
タロウを労り、彼を囲むアルフレッドたち。
そんな彼らがタロウに気を取られている間に、戦いは始まっていた。
激突する両軍。大将である2つの国の王も一騎討ちに入っていた。
当初、イルシオンが罠を張り、矜持の無い戦いを始めるのではないかと危惧していたディアマンドたち。
だがフタを開けてみればなかなかに武闘派なイルシオン王。素手でブロディア王と渡り合い、正々堂々とした勝負を繰り広げていた。
とはいえやはり素手。剣を操るブロディア王に分があるように見えた。
「さすが父上」
「いや、待て!」
スタルークをディアマンドが諫めたその時、事態は急変した。
イルシオン王が渾身の力でブロディア王の剣を止め、顕現された紋章士がブロディア王を射抜いたのだ。
「「父上!」」
雪原に倒れたブロディア王。イルシオン王は配下の兵に命じてブロディア王を捕らえて撤退し始めた。
「くっ、父上を連れ去るとは、何を考えている! イルシオン王を追うぞ!」
ディアマンドが指揮を執り、全軍でイルシオン軍を追うことになったブロディア軍。
だがその目の前にアイビーが異形兵を引き連れて足止めに入った。
「ここは通さない。私だってお父様のことを・・・」
「退け! アイビー王女!」
「退く選択肢があると思うの? 私は残るしかない。負けるとわかっていても。死ぬとわかっていてもね」
アイビー率いる異形兵と交戦に入ったディアマンド。
戦いは長引いた。
決死隊となったアイビーたちの奮闘もさることながら、タロウが戦えないことでいつもよりも苦戦したことも、アルフレッドたちにそう感じさせる要因だった。
「私の負けよ。殺しなさい」
捕らわれたアイビーは潔く負けを認め、死を受け入れていた。
ブロディア王が拉致されてから時間が経っている。今は刻一刻を争う状況。アイビーがイルシオン王たちの行く先を知っているかもしれないが、正直に話してくれるはずもない。
ならばここでアイビーをすぐに殺し、先を急ぐべきだろう。
即決したディアマンドは剣を振り上げた。
その時、ヴァンドレの背でぐったりとしていたタロウが声を上げた。
「待て。殺すな」
「神竜様!?」
待ったをかけたタロウの言葉にディアマンドは剣を納めた。
「甘い御方ね神竜様。ここで私を殺さないと、また襲いに来るかもしれないわよ」
「覇気もない。惰性の捨て駒のお前にその覚悟はあるまい。父王を信じ、最後まで国のために命を散らす心はとうに折れているのだろう?」
覇気のなさは今のタロウのほうが上だろうが。タロウに心の奥を見抜かれ、アイビーはその場で膝をついた。
「酷い人」
「・・・そうか、やはり俺は酷いか」
また本音の真実で相手を傷つけたことに小さく落ち込むタロウ。だがアイビーはむしろ清々しい表情で顔を上げた。
「でもやっぱり貴方は私の神様だわ。見逃してくれるお礼に教えてあげる。お父様は邪竜ソンブルが力を取り戻すための儀式をしようとしているわ。王の生き血を贄として。最初からソンブルに捧げるためにブロディア王を連れ去るのが目的だったの」
「なっ!?」
アイビーの口から語られたイルシオン王の真の目的に驚愕するディアマンドたち。
「儀式の場所はイルシオンのデスタン大教会。行くなら急ぎなさい。それからくれぐれも気を付けて。邪竜が復活してからお父様は変わってしまったわ」
全てを語り終え、まるで肩の荷が下りたように楽な表情を浮かべたアイビーは静かに去っていった。その去り際にタロウに向けて小さく微笑みを向けながら。
じか~い じかい
『皆気付いてると思うけど、私は後で仲間になるタイプなの』
『こっちは家臣のゼルコバよ。ただ今回は台詞がないの』
『他にも登場すらできなかった人たちのことも、よかったら調べてあげてね』
エン10話「邪竜ソンブル」というお話
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