ダンジョンに訳ありデビルハンターがいるのは間違っているだろうか 作:EGO
時は流れ、
その日オラリオは鈍い西日の色に染まり、紅の色を帯びていた。
グレイの瞳には煌めく宝石のようにも、あるいは直視し難い血の海のようにも見え、美しいと思う以上に不気味にも見えていた。
「指定していた
「よし、全部隊に共有させろ!何分かかる!」
「十分下さい!」
「駄目だ、五分で終わらせろ!」
背後から聞こえるシャクティと【ガネーシャ・ファミリア】団員のやり取りを聞き流しつつ、警戒ついでに周囲を見渡した。
場所はオラリオ南西、第六区画。
冒険者達は西日が生み出す影に紛れながら、音もなく物資を運び、人員の配置を進めていた。
視界の端で目的の施設──かつては名のある豪商が所有していたという商館らしい──を捉えながら、そのあまりの静けさに肩を竦める。
「いくらなんでも静かすぎるだろ?やっぱ罠か?」
「そうだとしても、やるしかないわ。何としても
余裕の笑みを浮かながら、表情とは裏腹に警戒を強めるグレイの隣で、彼と同じく商館を警戒していたアリーゼが彼の言葉に応じた。その顔には決絶たる意志が宿り、瞳の奥に正義の炎が揺れている。
「団長。全員配置についた」
「わかったわ。時間になるまでそのまま待機。見つからないようにね」
輝夜の報告にアリーゼは頷き、待機命令を出した。
いつもの着物を思わせる
彼のトレードマークである灰色のロングコートはなく、黒のシャツにそのまま長剣を背負っている姿は滑稽で、同時に喪服を思わせる黒ずくめの恰好はこの状況では縁起が悪い。
「せめて他の色はなかったのか?」
「これが一張羅だ。これが終われば、ヴァレッタ捕縛の報酬が貰えるからな。それまでは我慢してくれ」
輝夜の悪態を軽く受け流したグレイは、再び商館に目を向けた。
相変わらず人の気配を感じず、気味の悪い静けさを纏うその建築物は無言でこちらを見つめ返してくる。
それに負けじと商館を睨み返す中、冒険者達も準備も終えたのか、一人、また一人と静かになっていく。
そんな中でも唯一音を出すのは、ライラが持つ懐中時計だけだ。時の経過を教える針の音が、冷たく耳朶を撫でてくる。
他の拠点周辺にはフィン達【ロキ・ファミリア】とオッタル達【フレイヤ・ファミリア】が、それぞれアリーゼ達と同じように息を潜め、開戦の時を待っていた。
遠く離れた館では
街中に散った冒険者達もまた来たる開戦に備え、拠点に突入する四つの【ファミリア】は『悪』の根城に矛先を向ける。
時計の針は進み続ける。冒険者達を焦らすように、小さな音を立てて時を刻む。
グレイは深く息を吐き、長剣に手をかけた。
時計の針が、刻限を告げる。
「──時間だ」
シャクティの声が冒険者達の間を駆け抜ける。
冒険者達の戦意が途端に膨れ上がり、シャクティはその背を押すように声を張り上げた。
「突入!!」
固く閉ざさらていた門が、破砕音と共に吹き飛ばされた。
冒険者達が放った『魔法』の号砲が開戦を告げ、こじ開けた突破口から冒険者達が雪崩れ込む。
「てッ、てきしゅ──」
「お静かに頼むぜ!」
突然の奇襲に
相変わらずの剣の腹で殴りつける峰打ちだが、その一撃たるや大の男を倉庫の端から端まで一直線に吹き飛ばすほど。
「オラオラオラオラ!死にたくねぇなら道開けろ!!」
たじろぐ構成員達をグレイの咆哮が殴りつけ、直後音を置き去りにする一閃が彼らを物理的に殴りつけ、昏倒させた。
「彼に遅れるな!進めええぇ────!!」
そして片っ端から構成員を昏倒させながら突き進むグレイの背中を、冒険者達が猛追する。
右へ左へ。あるいは上へ下へ。柱を駆け上がり、壁を走り、たまに天井さえも走りながら、二階だろうが三階だろうが目についた構成員に突撃し、殴り倒していく様は『鬼神』の如くだ。
「いや、あいつどこ走ってんだよ!?今壁走ってたよな!?」
「何なら天井もだ。いや、なぜ走れるのだ、天井だぞ!?」
そんな彼が切り拓いた道を進みながら、ライラと輝夜は思わずツッコミを入れた。
別に足が速いとか、跳躍力があるとか、そんな話ならまだわかる。だが壁を走ったり、天井を走ったりは流石に想像を超えている。重力というものを知らないのか、あいつはと悪態の一つも言いたくもなる。
「奥から増援来るぞ!備えろ、お前ら!」
不意に二階で五人を纏めて斬り伏せたグレイの叫びを浴びせられ、冒険者達の表情が引き締まる。
彼の報告通りに倉庫の奥から数人の白濁色のローブを纏った
「はぁ!!」
真っ先に飛び出したリオンが稲妻と見紛う一閃が一人を斬り伏せ、遅れて飛び出した輝夜、アスタ、ナインの【アストレア・ファミリア】の前衛を務める少女達が残りを一気に殲滅した。
「おい、ポンコツ妖精!一人で飛び出していくな!」
「ポンコツと言うな!彼に頼り切りになりたくはない、それだけだ!」
輝夜の苦言にリオンは鬼気迫る表情で返すと、頭上で五人纏めて斬り伏せたグレイの姿を認め、目を細めた。
彼の手には相変わらず包帯が巻かれていた。炊き出し襲撃の傷が癒えきっていないにも関わらず、最前線で戦い続けているのだ。負けてなるものか。
今回ばかりは輝夜も同じ意見なのか、好戦的な笑みと共に「ああ、そうだな」と首肯して刀を構え、リオンと共に次の一団に切り掛かった。
二人の剣舞に
二階から上はグレイが、一階はリオンと輝夜のコンビが、凄まじい速度で相手を切り伏せていく。
三人の文字通りの無双劇に冒険者達の士気は上がり続け、勢いついていく。
「このまま施設を制圧するわ!ネーゼ、マリュー!イスカ達を連れて散って!輝夜、リオン、グレイは戻って!私達本隊は奥に進むわ!」
「一人たりとも逃すな!全員無力化し、捕縛しろ!」
アリーゼとシャクティ。二人の団長の指示が飛んだのはその瞬間だった。
勢い立ち、士気も上がっている冒険者達は即座に応じ、ネーゼ達や『ガネーシャ・ファミリア】の上級冒険者達が建物の東西に別れていく。
場所は何枚も壁をぶち抜いては撤去を繰り返した痕跡のある大通路。剥き出しの建材は朽ちて色が変わり、かつての商館としての面影は皆無だった。
「廃られた商館ってよりは廃工場だな。ほら見ろよ。……なんだこれ?」
戦闘の傍ら、乱雑に置かれていた物資に気づいたグレイは一階に飛び降りてそれを確認するが、いかんせんオラリオの文化というものがわからない彼には何の道具なのかも検討もつかない。
剣のようなものから、
「物品の検閲は後にしろ!今は
「へいへい」
だが、それは後で時間を確保して確認すればいいことだ。シャクティのお叱りの言葉にグレイはべっと舌を出しながら適当に応じ、拾い上げたスクラップを手首の
頭蓋骨が砕ける異音が響き、血を吐きながら昏倒した男が倒れるのも見届けず、グレイは次のスクラップを手に取り、今度は振りかぶり、勢いをつけてから投射。
人外じみた膂力から放たれる鉄塊は容易く音の壁を越え、不運にも掠めた
「おい、グレイ!そのまま上の連中も頼んだ!」
「おし、任せろ!」
戦況を見守り、敵の第二陣にいち早く気づいたライラの指示にグレイは応じ、その場から二階へと
そのまま二階から魔剣を振り下ろそうとしていた
「私もいるからね!」
いつの間にか二階に登っていたアーディだ。
人を傷つけることを苦手とする彼女でも、Lv.で言えばアリーゼ達と同じLv.3。その強さに偽りはない。
数々のモンスター、そして罪人を裁いてきた
ひゅう♪と口笛を吹き、「やるな、アーディ」と賞賛と共に
「はいはい、ありがとう!次来るよ!」
「わかってるっての!」
そんなグレイの茶化しとも言える言動に笑みを返しつつ、奥を指差して警告を口にすると、グレイが長剣を肩に担ぎながら応じるが、それに合わせたようにリオンと輝夜が突出し、舞うような連撃でもって
彼らの悲鳴に混ざって相変わらずの憎まれ口を叩きあっているが、その連携は見事なものだ。
上から二人が描く剣の軌跡を見下ろしながら、グレイはアーディと共に二階を進む。
向かってくる
この程度の相手なら何人同時だろうが負ける気がしない。ここが重要拠点だというのなら、ヴァレッタ程の強さ──はなくとも、もう少し歯ごたえのある相手がいてもいいものだが……。
「どうにもきな臭えな。どいつもこいつも雑魚しかいねえ。こういう場所には何人か先鋭を置いておくもんじゃないのか?」
「それはよくわかんないけど、確かにちょっと変かも」
彼の指摘にアーディが首を傾げ、下で進軍を続ける【アストレア・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】の面々を見下ろした。
現状誰一人欠ける事もなく、文字通りの快進撃が進んでいる。犠牲が出ていないのはいいことではあるし、
不意打ちが完璧に決まったと言えばその通りだが、敵の本拠地の一つにしてはあまりにも順調が過ぎる。
大型の槍を振るい、
調子よく事が進んでいる時に限って足元を掬われ、一転して危機的状況に放り込まれる感覚。ダンジョンでいやというほど味わったあの感覚が拭えない。
「やはり罠をこさえているか。敵の拠点なら、防衛手段の存在は然るべきではあるが……」
「だとしても作戦続行よ!相手も人員を大勢失ってる!このまま畳み掛けるわ!」
輝夜の呟きを他所に、アリーゼは意志の統一を叫んだ。
確かに罠が待ち構えているかもしれないが、引き返すにはあまりにも施設の奥まで進みすぎている。ここで引き返してしまえば、それこそ背中を刺されかねない。
彼女の声にリオン達が頷いた。グレイとアーディも二階から飛び降り、アリーゼ達と合流すると共に頷く。
両派閥の先鋭を集めた本隊に迷いはなかった。彼らは一斉に薄闇を宿す通路の奥を目指した。
何枚も板が打ち付けられた鎧戸からは光が差し込むことはなく、進むごとに冷え冷えとした空気が漂い、正義に燃える冒険者達を奥へと誘う。
その中でも、グレイは産毛が逆立つ妙な感覚──要は悪寒が強くなっていく感覚に目を細め、矢面に立つように隊列の先頭を陣取った。
冷たいだけの空気がねっとりとした粘着質なものに変わり、足に絡み付いてくる感覚。深い泥の中を進んでいるように、一歩が重い。
その覚えがある感覚に──人間の立ち入りを拒む『魔界』の空気に当てられるグレイは不快感のままに舌を弾き、ほんの一瞬全身に魔力を巡らせ、発生させた一迅の風で絡みつく空気を振り払った。
そのまま冒険者達に警告しようと振り向くが、冒険者達は気にした様子も──空気の変化に気づいた様子も、何かしら不調を感じていること様子もなく、微弱とはいえいきなり魔力を放った挙句、意味深に振り向いてきたグレイに怪訝な表情を返す。
「アッシュウォルドさん、大丈夫ですか?息があがっているようですが……」
「あ?いいや、問題ねえ。そっちはもうばてちまったのか?」
四苦八苦して走っているグレイに対し、普段通りの様子で走っているリオンが問いかけるが、グレイは強がりを含んだ笑みを浮かべていつも通りに煽りの言葉を吐いた。
こっちは心配しているというのにと不服そうな表情を浮かべるリオンだが、グレイはすぐに正面に向き直った。
「気をつけろよ。嫌な感じだ」
同時に神妙な面持ちで警告を口にするのと、長い通路の終わりが訪れたのはほぼ同時。
「道が開ける!最深部!」
一気に開ける通路に、アーディの声が響いた。
アリーゼ達は隊列を維持したまま、奥に広がる空間へと飛び込んだ。
そうして冒険者達が突入した空間は、通路と同じで酷く殺風景だった。
物資運搬用の鉄製のカーゴが積み木のように乱雑に、うず高く積まれ、天井は十
そんな広々とした空間を冒険者達が警戒する中、頭上から手を叩く乾いた音が響いた。
リオン達が素早く振り向くと、積み重なったカーゴの上で怪しく笑う男を発見する。
灰色の髪を前髪ごと後ろに流して固め、喪服を思わせる黒で統一された紳士服に身を包んだ男。
「貴様、何者──」
「ヴァニタス!!!」
謎の不審者に対しシャクティが行った呼びかけを、グレイの怒号がかき消した。親の仇を前にしたような、普段のどこか力の抜けた声とは程遠い憤怒に彩られた声と表情。
長剣を背に戻した彼はホルスターから
灰色の魔力が轟然と弾け、小さな礫となって男──ヴァニタスに向けて放たれる。
ヴァニタスは拍手を止めると共にその場から飛び退くと、灰色の弾丸が鉄製のカーゴを容易く食い散らかし、削り取っていく。
ヴァニタスの跳躍に合わせて照準を調整し、天井や床にもいくつもの風穴を開けながら、グレイの乱射は止まらない。
空中で身を翻し、時には手刀で弾丸を払い退けたヴァニタスが優雅に倉庫の中央辺りに着地を決めると、グレイは長剣を抜刀した勢いのままに一気に肉薄。
その場に集う冒険者達の動体視力を容易く振り切った神速の踏み込みの速度を乗せ、グレイの渾身の力が込められた一閃が放たれる。
だがヴァニタスは余裕のある動作で自らの影から純白の大剣を引っ張り出すと、雑な手つきで大剣を薙いで彼を迎撃。
二人の得物が激突した瞬間、天へと届く轟音と衝撃が、迷宮都市を揺るがした。
「きゃ!?」
冒険者達ですら感じたこともなく、踏ん張らなければ耐えられない衝撃にアーディが悲鳴をあげ、アリーゼ達もまた衝撃からそれぞれの得物で身を守りながら踏ん張る。
遠く、同じように拠点を攻略している【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】、そして街に住む全ての冒険者と民衆が街中を駆け抜け、体の芯を殴りつける鈍い衝撃に驚倒し、思わず転倒する者も出る中で、何が起きたのかを理解できたのはほんの一握り。
──凄まじい力と力が、正面から激突した。
フィンは疼く親指を握りしめながら【ファミリア】の団員に狼狽えぬように檄を飛ばし、オッタルは未知の怪物の影に眉を寄せ、ロイマンは状況を探るべく職員に指示を出す。
リヴェリアは何かが起きたことを直感して柳眉を歪め、ガレスは衝撃の発生源と思われる南西に目を向けた。
アレンは獲物を取られた獅子のように歯を食い縛り、舌を弾いた。
そんな各地での反応を知る由もないグレイは、そのままヴァニタスを押し切ろうと力を込める。競り合う刃が赤熱するほどの力を込めているにも関わらず、刃は一ミリとて前に進まない。
ヴァニタスの余裕の笑みが消えることはない。
「あの頃よりは強くはなっていますが、まだまだです」
対するヴァニタスは余裕なもので、彼の強さを『まだまだ』と評しながら大剣を薙いで競り合いを強引に終わらせ、グレイの体勢を崩すと共に返す刃で牙突を放つ。
とっさに長剣で受け止めるグレイだが、甲高い金属音共に彼の体が吹き飛ばされ、床と踵を擦って踏ん張っているにも関わらず、後退を強いられる。
「くそが……ッ!」
長剣を床に突き立てて両足と長剣の三点でブレーキをかけることでようやく止まったグレイは、舌打ちを漏らしながら長剣を構え直し、再び挑もうとするが、
「待て、居候!奴は何者だ!?」
「アッシュウォルドさん!一人では無謀だ、何か罠があるかもしれない!」
輝夜とリオンが彼の前に割り込み、待ったをかけた。
先程の二人の打ち合いからして、相手のステータスはグレイよりも上。そしてグレイよりもLv.が低い自分達では相手にすらならないのは明白だ。まだ勝てる見込みのあるグレイを、ここで失うわけにはいかない。
そんな二人の制止も無視して強引に進もうとする彼の前に、シャクティとアリーゼも壁として割り込みながら、それぞれの得物を構えてヴァニタスを睨みつけた。
「
シャクティが油断なく構えながら問いかけると、ヴァニタスは肩を竦めて床に突き立てた大剣に肘を預けた。
「一応は幹部として籍は置いていますが、生憎と新参者でして。顔も名前も知らないのは仕方がないことかと」
「ヴァニタス、でいいのかしら?グレイの知り合いなの?」
続けて問いを投げたのはアリーゼだ。一切の油断なく身構えながら名前を問いかけ、ついでに彼の名を呼んだグレイとの関係にも探りを入れる。
「ええ。改めて、ヴァニタスと申します。以後お見知り置きを、正義の眷属の皆様」
ヴァニタスは演技じみた動作で恭しく頭を下げながら名乗り、顔をあげると共にグレイに目を向けた。
同時に微笑みを貼り付けていた顔に明確な蔑みの色を加え、嘲笑するように彼に言う。
「今はグレイと名乗っているのですね、
「……ッ!」
ヴァニタスの嘲りの言葉にグレイは返事代わりにアッシュの弾丸を放つが、彼は軽く首を傾げるのみでそれを避けてしまい、背後の壁に小さな穴が空いた。
「相変わらず血の気の多い。かつては私のことを父親のように──いいえ、事実父親として慕ってくれていたではありませんか。私が何か気に触ることをしましたか?」
「ッ!!!それもわかんねえのか、このド畜生が……!!」
首を傾けたついでにそのまま疑問符を浮かべたヴァニタスがそう言うと、グレイは歯茎から血が滲むほどに歯を食い縛り、血と唾を吐きながら彼を罵倒した。
同時に冒険者達の間に駆け抜けるのは驚愕だ。ヴァニタスの言葉を信じるのなら、グレイと彼は親子という事になる。
冒険者達がグレイと、警戒を強めながらヴァニタスに視線を配る中、ヴァニタスは顎に手を当てて思慮する様子を見せた。
「むぅ。何かしてしまいましたかね?確かに貴方の兄姉達を悪魔の餌にしたり、不要な弟妹達を間引いたりはしましたが……」
そして何の罪悪感を感じている様子もなく告げられた言葉に、冒険者達は言葉を失った。
ヴァニタスの吐いた言葉が理解できない。いや、頭が理解を拒んでいた。
まるで命を替えのきく道具か何かのように宣う彼の言葉を、理解したくない。
「他には兄弟達と殺し合わせましたし、交配実験として姉妹達と交じわらせたりもしましたが、あの時は貴方も楽しんでいたでしょう。まあ、少々危険な薬物と魔術で狂わせていましたが」
それでも彼の言葉は止まらない。善行を褒められた子供のように無邪気に、そして道徳と倫理を投げ捨てた狂人のように、喜色満面に笑う。
吐き気がする。目眩がする。目の前の男が、自分達と同じ生物であることにさえ嫌悪を覚える。
「それが何だと言うのですか?
「もういい。お前は喋るな。ここで死ね」
冒険者達の殺意混じりの視線を全身で受け止めながら笑う彼に向け、グレイの抑揚が消え、たった一つの感情が──純粋なまでの殺意のみが孕んだ声が投げつけられた。
床に突き立てた長剣を抜き、全身から灰色の魔力を溢れさせる。
色褪せた瞳は昏い輝きを帯び、魔力に当てられて灰色の髪が揺らめいた。
「むぅ……。また怒らせてしまいましたか。まあいいでしょう。貴方に用があったのも事実ですし」
ヴァニタスは殺気立つグレイの様子にも怯む様子を見せず、大剣を肩に担ぎながら左手を掲げ、パチン!と指を鳴らした。
それが合図となり、物陰から
「伏兵!?しかも、あれって!」
「例の鎧だ!油断するな、強いぞ!」
アーディが狼狽えながらも愛剣を構える中、輝夜が忌々しそうにアンジェロを睨みつけながら警告を口にした。
強いとは言うが実際に戦ったことはない。だがグレイが先日の会議で『強い』と断言した程の相手だ、自分達では数を揃えなければ勝負にすらなるまい。
アンジェロが漆黒のマントを翻して前進を開始すれば、
漆黒の騎士達とは対照的な白濁色のローブに身を被っている画一的な衣装。だが体型は誰一人として一致せず、種族も、性別も、年齢もバラバラなのは明白だ。目を凝らせば、ドワーフや獣人が比較的多いだろうか。
冒険者達の数を優に超え、もはや頭数では倍近く差が広がる中、彼はゆっくりと冒険者達を包囲していく。
「では八号。新たな課題を与えましょう」
冒険者達が円陣を組み、各々が
出来の悪い生徒に、それでも教鞭を振るう熱心な教師のような、あるいは超えられぬ壁を用意してきた意地の悪い先達のような、邪悪を孕んだ期待を込めた笑み。
「──生き延びなさい。冒険者達の無事は考慮しないものとする」
では、開始。
パン!と手を叩いた瞬間、冒険者達が入ってきた広間の入り口と、ヴァニタスの数
「結界!?閉じ込められた!?」
アリーゼが退路を絶たれた事を直感し頰に冷や汗を流す中、二体のアンジェロが低く呻いてその場を駆け出した。
そんな中、アンジェロ達は漆黒の残像を残し、不運にも進路上にいた
二体の通った道に赤い轍が残り、肉片や骨、眼球。そして二人が振るっていた武器が冷たく床に転がる中、冒険者達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
悲鳴もなく、抵抗も許されず、仲間が目の前で死んだのだ。だが感傷に浸る余裕はない。
「こいつら、よくも……!」
漆黒の鎧と盾に、
飛びかかってきた
二体のアンジェロは飛び出してきたグレイを間合いに捉えた瞬間、肉厚な大剣を振るうが、
「
グレイが振るった神速の二閃が、それぞれの刃を容易く弾き返す。
甲高い金属音と共に仰け反った二体は盾を構えて追撃に備えるが、グレイはそんな盾を踏み台にして跳躍。二体の真上をとった瞬間に
師匠直伝の戦闘
回転しなながら高速で撃ち下ろされる灰色の弾丸は文字通り雨のように降り注ぎ、ほんの一瞬盾を掲げるのが遅れたアンジェロの一体の体にいくつもの風穴を開け、片膝をつかせた。
「
そんな致命的な隙を見逃すわけもないグレイは双銃をホルスターに押し込むと共に長剣を抜き、落下と共に縦一文字に振り下ろす。
再び盾を構えるのが遅れたアンジェロはそのまま脳天から体を叩き斬られ、中身の伽藍堂を晒しながら左右に割れる。
それには一瞥もくれずに首を傾けながら長剣を肩に背負い、脳天をかち割らんと振り下ろされた漆黒の大剣を受け止める。
その体勢のまま腰に吊るした
灰色の魔力が物理的破壊力を伴いながら炸裂し、鎧の脇腹を深々と抉り取った。
『……ッ!?』
痛みもなく、恐怖も感じない筈のアンジェロが狼狽えた瞬間を、グレイは見逃さない。
反転しながら散弾銃を片手で構え、アンジェロに向けて三連射。
アンジェロは咄嗟に大盾を構えてその三発を正面から受け止めるが、炸裂した魔力の流れ弾が背後の
長剣に魔力を溜めながら散弾銃の連射を続け、アンジェロに防御を強制する中、逆手に構えた長剣を抜刀一閃。
「
灰色の魔力が濃縮された斬撃が放たれ、ほぼゼロ距離でそれを受けたアンジェロの大盾は灰色の大爆発と共に粉々に粉砕される。
大盾を破壊され、駆け抜けた魔力の衝撃に当てられて仰け反った瞬間、グレイは踏ん張りの軸足である左足の太腿を散弾銃で破壊し、片膝をつかせると、
「
真一文字に放った長剣の一閃で首を跳ね飛ばした。
天井高くまで飛んだ首が落下してくると、それをヴァニタスの方向に蹴り飛ばす。
無論それは結界に阻まれて粉々に砕け散ることになり、ダメージを与える事はない。
グレイは苛立ちのままに結界に向けてダストを連射するが、やはり結果は破れない。
「忘れたのですか?この結界は、中の敵を全滅させなければ消えないのですよ?」
ヴァニタスは肩を竦め、小馬鹿にするような声音でグレイに告げると、後方で乱戦を繰り広げる冒険者達と
グレイは彼の指示通りにしなければならない不快感に舌を弾くが、そうしなければそもそも戦えないと己に言い聞かせ、アリーゼ達に加勢するべく足を向けた瞬間、視界の端で確かに見た。
アリーゼ達と離れた場所で、一際小柄の戦闘員──正確にはそう呼ぶのも烏滸がましい少女だ──を相手にしていたアーディが、突然武器を下ろした瞬間を。
いや、アーディは責められない。彼女が胸に秘める『正義』からすれば、あの少女は敵ではなく救うべき子供でしかないのだ。
アーディは武器を下ろし、笑顔を浮かべながら少女に手を伸ばす。
少女はぼうっとその手を見て、己の右手を伸ばし、左手で小さな胸を握りしめる。
それを見ていたヴァニタスは、目を細めて声もなく嗤った。
グレイは彼の表情の変化に気づいていない。だが猛烈な悪寒を感じ、同時に少女達の背後に蠢く黒い影の存在を認めた時には既に駆け出していた。
(駄目だ。駄目だ!駄目だ!!それだけはやっちゃいけねえ!!)
表情にはこれ以上ないほどの焦りが滲み、本来吐こうとした言葉が吐き出せなかった。
「…………かみさま」
瞳から光を消し、声からも感情を消し、少女は唇を震わせる。
敵意もなく、殺意もなく、『正義』も『悪』もなく、たった一つの願いを口にする。
「おとうさんとおかあさんに、会わせてください……」
死した両親との再会を願い、胸に隠していた『
凍結した時間の中、アーディは震えながら自分の手を握る少女の手を払えなかった。
直後。
「るがぁぁああああ!!」
グレイが獣じみた雄叫びと共にアーディを掻っ攫い、力任せにその場を離脱。
アーディが驚愕に目を見開き、グレイを見やった瞬間、凶悪な轟音が全てを飲み込んだ。
炸裂。
衝撃。
震動。
そして、爆熱。
『〜〜〜〜〜〜〜!?!?』
その場に集う冒険者達は、何が起きたのかを理解する前に駆け抜けた衝撃に吹き飛ばさる。
炎を帯びた閃光が視界を白く塗り潰し、耳を聾する程の爆音が聴覚を駄目にする。
その震動は建物全体を揺るがし、カーゴの山を容易く倒壊させた。
雪崩の如き音の暴力と、何の前触れもなく訪れた大破壊に冒険者達は翻弄される。
受け身を取る間も無く吹き飛ばされ、煤と埃に被る冒険者の中で、リオンは震える体を起こした。
耳鳴りが酷い。視界が点滅して落ち着かない。それでも状況を把握すべく目を凝らしていると、彼女の隣にグレイが音もなく着地した。
「アッシュウォルドさん!一体なに、が……?」
リオンは弾かれるように彼を見上げると、声を尻すぼみにしながら顔色を青くした。
黒いシャツを着ていた筈の上半身には、背中を中心に余す事なく火傷を負い、顔も左頰が焼き爛れて歯や骨が剥き出しになっていた。
痛みを堪えるように歯を食い縛り、見開かれ、血走った目で虚空を見つめながら、彼は一瞥もくれずにリオンに告げた。
「リオン。回復だ、早くしろ」
「……っ!わかりました、動かないでください!」
「俺じゃねえ!アーディをだ!早くしろ!」
彼の指示に慌てて回復魔法の詠唱に入ろうとするリオンに、グレイは語気を強めながら横抱きに抱えていたアーディを示し、床に寝かせた。
咄嗟にグレイが盾になったのだろう。彼ほどではないが青い
それでも息はしている。意識もある。だが薄く開いた目には意志が欠け、その手は痛みとは別の理由で震えていた。
それは後悔だ。この手は届いていた。確かに届いていたのだ。なのに、あの子を自分は救えなかった。
僅かに少女の手の感触が残る手を眺めながら、アーディは目から涙を流す。
リオンもグレイもかける言葉を無くす中、グレイは悪寒を感じて弾かれるように先程までいた場所に視線を向けた。
自分とアーディがいた場所は、文字通り抉れていた。
大型の怪物に齧られたように。
空間をそのまま削り取ったように。
何もかもが、粉微塵に消し飛んでいた。
「……まさか、自爆した?」
冒険者達が目の前の光景の理解を拒む中、ライラの呟きが彼らの耳朶を撫でた。
壁にへばりつく血痕。抉られた地面。そして、
冒険者達が時を止める中、ヴァニタスは一人嗤っていた。
「人間とは、本当に愚かな生き物ですね」
彼は知っている。あの少女の行動は、『
『自爆し、冒険者達を道連れにすることで、死んだ両親との再会を約束する』という、どうせ口約束でしかない下らない契約を間に受けて、その命を何の意味もなく散らした少女を、彼は心の底から嘲笑っていた。
「ですが、その何の意味をなさなかった死に、私が意味を与えましょう」
ヴァニタスは興奮に身震いしながら、高々と右手を掲げて指を弾いた。
パチン!と乾いた音が広間に響き、冒険者達と
「ぅ……ぁ……」
彼らの耳に、少女の呻き声が届いた。
リオンが使用した回復魔法の燐光を浴びていたアーディは真っ先にそれに気づき、弾かれたように顔を上げた。
「ぃ……たい……よぅ……。ぉとぅざん、おがぁざん……っ。どこ……?」
下半身が──より正確に言えば胸から下が爆ぜ、頭の右半分も欠損している。両腕も歪に折れ曲がり、骨が飛び出していた。
生きている筈がない。万が一生きていたとしても、動ける筈がない。
ガラス球のように濁った瞳をアーディに向け、助けを求めるように折れ曲がった手を伸ばす。
「な、なん、で……?」
アーディは明確な怯えの感情を込めた声を絞り出すと、少女は血の跡を残しながら床を這い進み、アーディの元を目指す。
「だれかっ、誰か……!だだだだだだれかかかかかかか!?」
そんな中、少女の表情と声が変わった。
壊れた音声器具のように意味のない声を漏らしながら、ぎょろりと目を見開き、怪物の如き唸り声をあげた。
爪が異様な速度で伸びると共に鋭く尖り、金属的な輝きを放つ。
同時に折れた腕を床にめり込ませ、そのまま砕く程の力をこめて殴りつけ、その勢いで飛び出す。
「え……?」
その速度たるや、放心状態とはいえLv.3であるアーディと、隣で彼女を治療していたリオンが全く反応できないほど。
刃の如く鋭く尖った爪が振り下ろされる瞬間、少女の体が両断された。
自爆で壊れかけた体は左右に分断され、踏み込みの勢いのままに壁に激突。肉体はその衝撃に耐え切ることができず、壁の染みとなった。
「──」
アーディとリオン。二人を守るように立ちはだかったグレイは、深く息を吐くと共に少女の血に濡れた長剣に血払いをくれ、ちらりと少女だったものを確認。
二つに別れた死体から、耳では聞こえない絶叫を残して消滅していく異形の魂を認め、無表情のまま前に向き直る。
それを合図にしたように、アンジェロに轢殺された冒険者や
頭を完全に無くした者も、半身が抉り取られた者も、手足のいずれかが千切れ飛んだ者も、悪に魅入られた者だろうと、正義の為にこの場に馳せ参じた者だろうと、関係ない。
「なんだよ、これ……!一体何がおきてんだよ!?」
次々と立ち上がる死体達を前に、訳もわからず吠えることしかできないライラに向けて、ヴァニタスが告げた。
「とても簡単なことですよ、
そう言いながら笑みをこぼし、己の勢力の惰弱さを誤魔化すヴァニタスは、悪魔に乗っ取られた冒険者と
「神の加護を受けた者でさえ、死んでししまえばただの肉。後は墓に埋めるだけなのですから、有効活用する我々には感謝してもらいたいですね」
「感謝しろだと!?ふざけるな!これは生命に対する冒涜だ!私達に、何より神々に対する侮辱でしかない!!」
「何を言っているのですか?神々は『血』でもって眷属とするように、我々は死した肉体を再利用し、眷属としているだけですよ?そこに何の違いがあるのですか?」
ヴァニタスの物言いにリオンが怒号を飛ばす中、それでも彼は狼狽え様子も、そして彼女の言葉を理解した様子もなく首を傾げた。
「どうせ人間は生まれた瞬間から下等で下劣な生き物なのです。せめて我々の役に立って死ぬのが本望でしょう。神々のために喜んで奉仕するのと、何ら変わりませんよ」
そして彼は明確に冒険者達を見下すような声音でそう告げた。
世の真理に見つけたりと言わんばかりに胸を張り、同時に侮蔑の表情を浮かべながら冒険者達を見る。
「それは違うわ!」
そんなヴァニタスに対して声をあげたのはアリーゼだ。
「少なくとも、アストレア様はそんな神様じゃないわ!私達にああしろ、こうしろなんて言わないし、私達が迷っている時は答えを出すまで待っていてくれる!貴方みたいにこんな外道な方法で従わせるなんてしない!何なら私達の方があの
「まあ、そこは文化の違いですね。神の眷属と我ら夜の眷属。どちらが上か、試してみますか?」
「上等よ!全員取り押さえて、しっかり弔ってあげる……!」
ヴァニタスの挑発にアリーゼが応じると、彼は再び指を弾いた。
パチン!と乾いた音が広間に響き、彼の背後に広がる闇が蠢き、姿を現したのは十数体のライアットと、巨大な鋏を携えた異形──デスシザースが五体。
「へ……?」
「何を驚いているのですか?悪魔とは既に出会っているでしょう?」
目を見開き、間の抜けた表情になるアリーゼをくすくすと嘲笑いながら、ヴァニタスは横のライアットの青白い鱗を撫でてやりながら告げた。
「悪魔は既に地上に搬入済みですよ」
『……ッ!!?』
彼の告白に冒険者達が一様に驚き、狼狽えた。
悪魔が既に地上に?ということは、まさか──!
「もう間も無く、街中で暴れ始まるでしょう。そして、彼らに殺された者は新たな同胞として立ち上がり、更なる殺戮を繰り返す」
「殺し、増え、また殺す。オラリオに住まう全ての者を我が同胞とするまで、殺戮は止まりません。
ヴァニタスの宣言に冒険者達は顔色を青ざめさせ、一刻も早く結界を破ろうとするが、赤い障壁は彼らの攻撃を容易く弾き返し、脱出を拒む。
ライアットとデスシザーズ達は外側から結界の内側に侵入し、
悪魔と
「上等だ。こうなりゃ全員ぶっ殺してやる!ヴァニタス、てめえはその後だ!!」
長剣の鋒を向けながらの宣言にヴァニタスは肩を竦めた。
「せいぜい頑張りなさい、八号。私をがっかりさせないでくださいね?
彼はそう告げながら適当な瓦礫に腰を下ろすと、パン!と手拍子を一度。
それを合図に悪魔達の咆哮をあげ、
「立て、アーディ!やるしかねえぞ!!」
「ぇ……?でも、あの人達は、私の……!」
ある程度回復したとはいえ、いまだに立ち上がれていなかったアーディを抱き起こしながら檄を飛ばすと、彼女は悪魔に取り憑かれたかつての仲間達を見ながら首を横に振った。
彼女にとってはどんな姿になろうとも彼らは家族であり、刃を向ける相手ではないのだろう。
どこまでも優しく、そして言葉は悪いが愚かでもある彼女の性根に舌を弾いたグレイは、彼女を離して一人前に出ながら告げた。
「無理なら悪魔の相手だけやってろ!他の奴らは、俺が殺る……!」
「全員、構えろ!相手は自爆する、距離を保ち、一撃で仕留めるんだ!」
そんな彼の隣に並び立ったのはシャクティだ。
呼吸を乱しながらも真っ直ぐと槍を構え、穂先を悪魔と
「お姉ちゃん!?なんで、皆は──」
「アーディ!彼らは────我々の敵だ!!」
表情を悲痛に歪め、声を詰まらせ、自分で吐いた言葉を己で否定するように柳眉を歪めながら、次の瞬間には眦を裂きながら彼女は妹を守らんと立ちはだかる。
「そんな、なんで、こんな……!」
尊敬する姉の言葉を、今回ばかりは聞き入れられなかった。
首をなくし、手足をなくし、それでもこちらに向けて歩いてくる彼ら、耳を澄ませばこちらに助けを求めるような声を漏らしている。
「しゃ、くてぃ、だんちょ……次、しじ、を……」
「おれ、まだいきて、る……?なん、で……?だんちょ、いま、そちら、に……」
「だれ、だれか、おれのみぎうで、しらない、か?それが、ありゃ、まだ、たたか、える!」
口々にある程度の意味を持つ言葉を大量の血と共に吐き出しながら、目からは涙の代わりに血を流す。
アリーゼ達も悲痛な表情で得物を構えた。リオンもまた、アーディを守るように背に隠しながら得物を構える。
だが、それでもアーディは動かなかった。呆然としたまま動く死体となった仲間達と、壁の染みとなった少女の残骸を見やる。
「──では、開戦です!」
そんな少女を迷いを嘲笑うように、ヴァニタスは声高らかに開戦を宣言した。
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