ダンジョンに訳ありデビルハンターがいるのは間違っているだろうか   作:EGO

30 / 55
Mission23 死神の甘言

 時は移ろう。都市を覆う厚い雲は月光も陽の光さえも通すことはなく、オラリオは常に薄暗闇に包まれていた。

 闇の中を悪魔が駆け回り、無辜の民を、冒険者を襲い続けていた。

 英雄の都はその威光を穢され、悪魔達の狩場へと変わり果てていた。

『死の七日間』四日目。事態が好転する事はなく、絶望が覆る事もない。

 だが、それでも彼は闇の中を駆け続けていた。

 灰色の剛閃が三体の悪魔を纏めて叩き斬り、噴き出した鮮血が灰色の髪と漆黒のマントを赤く汚す。

 悪魔達の断末魔を聞きながら長剣を背に回し、深く息を吐いた。

 都市中央から遠く離れた都市北西『第七区画』。

 跋扈していた闇派閥(イヴィルス)と悪魔を殲滅したグレイは、目を細めながら小さく溜め息を吐く。

 ヴァニタスは見つからない。闇の気配を辿っても、いるのは下級の悪魔ばかり。闇派閥(イヴィルス)に関しても即自爆してくるため、話を聞くことすらできない。

 いいや、ヴァニタスの事だ。下っ端の戦闘員に自分の居場所など教える訳がない。

 やはり狙うべきは言葉を理解できる上級の悪魔。闇派閥(イヴィルス)に与する邪神でも見つけられれば話も早いのだが。

 いや、見つかるわけがない。悪魔はとにかくとして、神が護衛もなしに街をうろつくなどあり得ない。何より街に繰り出す意味もないだろう。半ば勝利が確定しているこの状況で、自らが不利になるような事をする筈がない。

 

「あなた、貴方ぁ!しっかりしてぇ!」

 

 聞こえてきた声に一瞥もくれず、グレイはその場を後にしようとする。

 敵は倒した。この場で自分にできる事はもうない。

 

「ちょっと、あんた!」

 

 そうして去り行く彼の背を怒鳴りつけたのは、泣きじゃくるヒューマンの女性だった。おそらく夫婦なのだろう、彼女の隣には腕から血を流す男性が倒れ込んでいた。

 息はある。意識もある。だが腕からの出血が止まっていない。なのに治療する術が何もない。回復薬(ポーション)の一つでもあれば良かったが、生憎そんなもの不要な体が故に持ち合わせがない。

 なので彼はそのままその場を後にしようとした。その内【ガネーシャ・ファミリア】か誰かが来るだろう。後のことは彼らに任せる他ない。

 少しずつ遠ざかる彼の背に、やはり投げられるのは罵倒の言葉だった。

 

「どうしてもっと早く助けてくれなかったの!?冒険者なんでしょ!?ちゃんと守ってよ!」

 

 その言葉にグレイは足を止めるが、溜め息を吐きながら乱暴に頭を掻いた。

 自分は冒険者じゃないと言うのは簡単だが、言ったところで彼女はそれを受け入れないだろう。守られて当然と思っている輩だ、こちらの言葉に聞く耳など持ちはしない。

 行く先々で向けられる怒りと非難の言葉。理不尽極まりない罵倒の数々。

 どんなに力を尽くしても、どんなに身を粉にしても、向けられるのは怨嗟の声ばかり。

 

「……こんな奴らを守って何になるんだよ」

 

 思わず漏れ出た本音は、幸いにも先程の女性には聞こえていないようだ。相変わらず何かを喚き散らしている。

 グレイはその事に安堵しつつ、その場を走り去った。

『恩恵』もない民衆には知覚もできない速度は、まさに視界から消えたと言っていい。

 女の声が聞こえなくなるまで走った彼は、走り疲れたように足を止め、僅かに肩を喘がせながら空を見上げた。

 厚い雲に覆われた空は暗く、今が昼なのか夜なのかも曖昧にさせ、戦いが始まったあの日からずっと夜のままなのではないかと錯覚させてくる。

 そして夜とは、悪魔達の時間だ。

 

「どこもかしこも悪魔悪魔。嫌になってくるぜ、まったく」

 

 グレイが視線を前に戻せば、そこにいたのはやはり悪魔(ライアット)

 青白い鱗に覆われた体躯は返り血で赤く染まり、戦利品のように誰かの腕や頭を咥えたり、手に持つ様は僅かながらの知性を感じられ、同時に人命への冒涜を孕んでいた。

 

「まあいい。ヴァニタスは──お前らのご主人様はどこにいる。いい加減足が疲れてきたぜ」

 

 トントンと爪先で地面を叩き、足と具足の具合を確かめながらの問いかけへの返答は、不気味な金切り声の連鎖だった。

 

『イィィィィィイイイイイ!!!』

 

『イゥリリリリリリリリゥゥ!!』

 

『アゥルルルルルルルルルルル!!!』

 

 声が連鎖する。周囲に潜んでいた悪魔が、声を頼りに集まってくる。

 迫る足音。迫る息遣い。鋏をかき鳴らす金属音。おぞましい笑い声。

 ライアットだけではない。種族の垣根を超え、悪魔達が集結してくる。

 魔界の瘴気を孕んだゴミ溜めのような刺激臭がグレイを取り囲んでいく。

 グレイは盛大な溜め息を吐きながら背負っていた長剣に手をかけた。

 数は二十かそこら。更に増えるだろうが、いくら来ようが問題はない。むしろ補給もできて好都合だ。

 グレイはゆっくりと右手を前に出し、くいくいと手招きした。

 

来いよ(Come on)、雑魚ども」

 

 その挑発を合図に、悪魔達が一斉に彼に向けて駆け出した瞬間、その場にいる全てのものがぞわりと背筋を震わせた。

 悪魔達は動きを止めたかと思えば、すぐさま踵を返して情けのない悲鳴と共に逃げ出していく。

 グレイもまたその迫力に体を強張らせながら目を見開き、ゆっくりと顔を右に向けた。

 

「──やっと見つけた。迷子の悪魔」

 

 荘厳でありながら艶かしい声が、グレイの耳朶を撫でた。

 そこにいたのは黒衣を纏った男性であった。

 目深く被ったフードからこぼれる濃紫の髪は女性のように長く、体の線も細い。整いすぎた顔立ちは美しいを通り越していっそ不気味でさえあり、纏う雰囲気は退廃的なもの。

 普段のグレイなら視界にも入れないだろう男だが、今はその男の一挙手一投足に細心の注意を払い、何なら逃げる事さえも意識に入るほど。

 だが男が放つ圧倒的なまでの『神威』が、グレイの体から自由を奪っていた。

 アストレア程の不快感はない。むしろ心地よささえも感じるのに、恐ろしい。そんな気色の悪い矛盾を孕んだ感覚が喉が干上がり、目尻と口の端が痙攣する。

 

 ──これだから神は嫌いなんだよ……っ!

 

 グレイは胸の内で悪態をつく。

 目の前にいる男は間違いなく神だ。初対面の相手ではあるが、おそらく友好的でもない。

 眷属もなしに街を歩き回る豪胆さは好むところだが、この状況でそんな事をする命知らずはオラリオ側の神にはいない。

 つまり相手は闇派閥(イヴィルス)に与する邪神。グレイが求める情報を握っているだろう、敵の幹部だ。

 見る限り護衛もいない。本当に一柱で自分の前に立っている。『神威』を放っていれば何もできないとなめているのか、単に敵意はないと示すためか。

 深く息を吐いたグレイは全身に魔力を漲らせて絶対的なまでの『神威』に抗い、長剣を抜いた。

 

「悪魔が──ヴァニタスが憎いか?」

 

 それでも邪神(タナトス)は浮かべた微笑を崩さず、グレイに向けて言葉を投げた。

 怪訝そうに眉を寄せるグレイを見つめながら、タナトスは口を動かした。

 

「今日までの苛烈な戦いは大体は知っている。ヴァレッタを倒し、君自身も自覚のないままに俺達の計画のいくつも潰されている」

 

 悪魔とはいえ、流石と素直にグレイを賞賛するタナトスだが、次の瞬間に冷酷なまでの声音でもって告げた。

 

「だが、己の弱さを許せない。この都市にいる誰よりも強いにも関わらず、己の非力を嘆いている」

 

「不自由を感じている、葛藤している、掻き毟りたい程の衝動を抱えている。お前は復讐のために力を求める悪魔そのものだ。だというのに、人間の側に立ち、剣を振っている」

 

「胸に秘めた黒い劫火を──封じ込めた本当の自分を、ただ矛先を有耶無耶にする事で無理やり抑え込んでいる」

 

「この街にお前を理解できる者など一人もいない。お前は孤独なまま生き、そして死ぬ」

 

 タナトスの言葉は易々とグレイの胸の内へと滑り込む。

 己の弱さを許せない──その通りだ。自分が強ければ、オラリオはこんな地獄にはならず、とっくの昔に復讐も終えていた筈だ。

 不自由を感じている──その通りだ。ヴァニタスを探さねばならないというのに、こちらの事情など知らんと言わんばかりに行く先々で助けを求められ、助けたところで罵倒の言葉を向けられる。

 葛藤している──その通りだ。人間を守るべきか、見捨てるべきか、このクソッタレな戦いの中でいつも自問自答を繰り返している。

 衝動を抱えている──その通りだ。殺戮を見る度に血が騒ぐのを感じていた。いっそ悪魔らしく欲望のままに暴れてしまえと、自分の影が醜悪に嗤っているようにさえ見える。

 グレイは俯いた。前髪が顔にかげを落とし、表情が窺えなくなる。

 タナトスの言葉を胸の内で反芻し、それを否定できない自分と、心地よさまで感じている自分の悪魔としての部分に自嘲する。

 

「憎いだろう?悲しいだろう?不安だろう?」

 

 そんな彼の変化を見逃さず、深淵を思わせる紫の瞳がすっと細まった。

 

「私がその苦しみから解放してやろう」

 

 グレイは顔を上げ、色褪せた瞳にタナトスを映した。

 

「力を与えてやる。更なる高みに至る術を教えよう、お前の願いを成就させる居場所を提供しよう。欠片の迷いもなく、ただ力のみを求められる剣と炎の世界を」

 

 それは甘露な響きとなってグレイの脳を犯していく。

 内なる悪魔が歓喜する。『正義』を捨て、『魂』を捨て、力のみを求める修羅に成り果てろと、咆哮をあげている。

 お前が言った事だろう。『もっと、力を(More power)』と。

 

「内なる悪魔の声に従え。私が赦そう。そうするだけで世界は変わり、お前は祝福される」

 

 神の祝詞は悪魔の思考を狂わせる。

 その言葉は喉から手が出るほど求めていた答えのようであり、同時に拒むべき道標でさえあった。

 己のために『死』と『破滅』を振り撒く厄災に成り果てるための儀式。その一幕。真に悪魔であるならば思慮する必要などない、くだらない一幕。

 死の神(タナトス)はまさに産声をあげんとしている『死の剣士』を祝福するように微笑みながら、そっと手を伸ばした。

 

「私と共に来い。お前が望むもの、その全てを与えよう」

 

 グレイにとって、タナトスの言葉が救いの言葉に他ならなかった。

 守る価値を見出せない民衆。彼らの事など考えず、力を求めるだけの修羅の道。

 屍の山を築き、全身を血で汚しながら勝鬨をあげる自分の姿を幻視し、それもありかもなと思ってしまう自分を自嘲する。

 そうだ。力がいる。何にも負けない力が、全てを破壊する力が。

 グレイは俯けていた瞳を前に向けた。相変わらず微笑む死神の姿に、ほんの一瞬とある半魔の姿が重なった。

 力を求め、全てを投げ捨てた孤高の戦士。グレイの師匠の手で最後の最後に阻止され、魔界へと消えた『英雄の息子(サン・オブ・スパーダ)』の片割れの姿が。

 ほんの細胞の一欠片とはいえ自分の材料の一つにもなったという男は無表情のまま、けれどこっちに来いと言わんばかりに手を差し出す。

 力が必要だ。ヴァニタスを超える絶大なまでの力が。

 グレイは漆黒の籠手(ゴリアテ)に包まれた左手を見つめ、握りしめた。

 

 ──もういいんじゃねえか……?

 

 感謝もされず、報酬もなく、無心で誰かの為に戦う事に意味を見出せない。いっそ何も考えずに殺す『悪魔』へと成り果てたい。そう、師匠に出会う前の自分に戻りたい。

 彼は感情のまま、本能のまま、微笑む死神に──彼に重なる力の象徴たる『剣鬼』の幻影に手を伸ばさんとした。

 だってそうだろう。力が必要なのだ。ヴァニタスを殺し、悪魔を殺し、盤面を破壊する絶大な力が。

 悪魔は悪魔らしく、気に入らない相手を力で捩じ伏せるべきなのだ。

 その力をくれるなら、神でも邪神でも魔神でも何でもいい。

 グレイは手を伸ばす。力を求め、その手を掴むことの意味も理解しないままに。

 目深く被るフードの下で笑みを深めるタナトスの顔など、もはや見向きもしない。

 そして彼の手を取ろうとした瞬間、不意にがしりと肩を掴まれた。

 グレイは足を止め、振り向いた。

 そこには誰もいない。いるはずがない。誰かが近づいてくれば、その時点でわかる。

 代わりに視界の端で揺れたのは、真っ赤なロングコートの裾だった。

 闇の中でも悪目立ちする銀色の髪。ここにいる筈のない男の幻影が、グレイの肩を掴んで止めたのだ。

 突然足を止め、振り向いた彼の行動にタナトスが小首を傾げる中、グレイはそのままの体勢で顔を俯けた。

 幻影は静かに目で訴えていた。『そっちはやめとけ』『行くんじゃねえ』と。

 グレイはそんな男の──尊敬する師の訴えを無視するように前を向いた。

 今必要なのは『力』だ。師匠のいう『人間らしい強さ』など、『悪魔にはない強さ』など、不要なのだ。自分は悪魔なのだから、悪魔らしい強さを突き詰めればそれでいい。

 肩を掴む手を払い、今度こそタナトスに手を伸ばす。

 

『──この『世界の中心』で何を知り、何を想い、何になるのか(・・・・・・)。君にも注目しておこう』

 

 頭に響くのはエレボスの言葉だった。

 初めて出会ったあの男神はこうなる事を予期していたのだろう。

 人間への失望を、己への失望を想い、悪魔へと成り果てる。あの胡散臭い神は、きっと笑うに違いない。

 死の神に手を伸ばす。感情なき『戦鬼』に成り果てる契約が、『死の剣士』となり果てる契約が結ばれんとした間際。

 

『──貴方達の正義を信じなさい。貴方達の正義を成しなさい』

 

 今度はアストレアの声が頭に響いた。

 悪魔である自分を受け入れてくれた──家族(ファミリア)にならないかとまで言ってくれた慈悲深い女神の言葉が。

 だが、自分に正義はない。あったとしてもそれは師匠の真似事で自分の正義ではない。いいや、むしろこれまでの言動のほとんどが真似事で、本当の自分というのがわからない。

 

『──私は、信じているわ』

 

 その言葉が脳裏をよぎると共にグレイの手が止まった。

 信じる。信じると言われても自分にあるのは力だけだ。何も救えず、ヴァニタスも殺せない、何の価値もない力しかない。

 

「…………」

 

 口を噤んだまま俯くグレイを、タナトスは急かすこともなくただ見守り続けた。

 彼はもう堕ちている。このまま強引に手を掴み、あれこれと高説を垂れて引き込まないのは、それでは本当の意味での駒にはなってくれないからだ。

 ヴァニタスへの抑止力(カウンター)。彼にはそうなってもらわねば困る。今よりも強くなってもらわねば、そして何の疑問もなく、無心で死の神に奉仕するようになってもらわねば困るのだ。それも、神威による脅しではなく自分の意志で。

 だからこそ待つ。彼が自分の意志でこの手を取ってもらえるまで、あまり時間的余裕はないが、ギリギリまで待つ。

 そうして律儀にも彼の決断を待っていると、再び彼の手が動き出した。

 ゆっくりと、けれど確実に、タナトスとグレイの手が近づいていく。

 力への渇望は決して満たされない欲望へと変わり、師匠の言葉も今や頭にはない。

 誘いを受ければ力が手に入る。全てを捨てて、昔の自分に戻れる。

 

 ──昔の、自分……?

 

 そう言えば昔の自分はどんなだったか。

 悪魔らしく力に貪欲で、ヴァニタスに指示されるがまま彼の求める『後継者』になるべく兄弟姉妹と殺し合い、やがて意味もわからず捨てられた。

 あの頃の自分は強かったのだろうか。いいや、ステラが──過去の自分をよく知る妹が、今の自分を『弱い』と評したのだ、きっと過去の自分は強かったのだろう。

 なら、問題はない筈だ。『力』を手に入れる。ヴァニタスを超え、奴を否定し、兄弟姉妹の無念を晴らす為には『力』が必要なのだ。

 

「『力』をくれるのか?」

 

「勿論。全ては君が望むまま、君の思い描くままだ」

 

 グレイの問いかけに死の神(タナトス)は微笑み、改めて手を差し出した。

 染み一つない、穢れなどという言葉とは程遠い白い手は、けれど血と死の気配に彩られて『悪魔』を惹きつける。

 光に釣られる羽虫のように、あるいは助けを求める迷子の子供のように、グレイの手がタナトスへと伸びた。

 そして神と悪魔の手が繋がりかけたその瞬間、

 

「アッシュウォルドさん!!」

 

 正義の妖精の声が、二人の契約を断ち切った。

 反射的に手を引っ込め、その場を飛び退くグレイと「時間切れか」と肩を落とすタナトス。

 グレイが弾かれるように視線を向けた先にいたのは、金色の髪を戦場の風に揺らす一人の妖精だった。

 肩を喘がせ、頬や戦闘衣(バトルクロス)を血に汚しながら、それでも空色の瞳は真っ直ぐとグレイを見つめてきていた。

 

「……リオン」

 

 喉の奥から絞り出された掠れた声は『恩恵』によって強化された彼女の聴覚は確かに拾い上げた。

 彼女は呼吸を整えながらグレイを見つめ、次に視界の端でひらひらと手を振っている神へと目を向けた。

 いくら神でもこの状況で一柱で行動する程に能天気な輩はいない。

 

「貴様、何者だ!」

 

 剣の鋒をタナトスに向け、声を張り上げた。

 相手はおそらく闇派閥(イヴィルス)に与する神だ。一柱とはいえ、捕えれば相手の戦力を削ぐ事に繋がる。何よりアストレアの所在を探る切っ掛けにもなる。

 だが万が一にも好奇心優先の命知らずの神であったのなら、拘束し、護送する時間が無駄になる。

 グレイもまたリオンとタナトスを交互に見やる中、正義の妖精に見つかった死の神はべっと舌を出した。

 

「ざーんねん。もう少しで悪魔君をこっちに引き込めると思ったんどけどな〜」

 

 先程までの荘厳さはどこにやったのか、途端に薄っぺらい雰囲気を放ち始めた。

 威厳も妖艶さも何もない、どこにでもいそうな軽薄な神。それこそがタナトス本来の姿なのだろう。

 あまりの変わりように困惑するグレイを他所に、警戒を強めるリオン。

 そんな二人を見つめながら、タナトスはにへらと笑った。

 

「もう少しだった。いや、そこの妖精ちゃんが来なかったら取り込めていたかな。沢山の命を天に還してくれて、悪魔どもを殺し尽くしてくれるオレの愛する死の眷属に」

 

「……っ!」

 

 その言葉に目を剥いたのはリオンだ。

 彼の正義がそこまで揺らぎ、折れかけていたなど、流石に想像できていなったのだろう。彼女は驚愕のままにグレイに目を向け、彼はバツが悪そうに目を逸らした。

 

「やっぱり彼は『悪魔』だよ。『強くなりたいか?』って聞いたら君達の事も、街の人達の事も二の次ですぐに手を伸ばしてくるんだ」

 

 黙り込む彼に代わって口を動かしたタナトスはそう告げながら、あと少しで彼と繋がる筈だった右手を見つめた。

 

「利己的で、貪欲で、暴力的。まあそれは闇派閥(オレ達)が言えた義理じゃないけど、悪魔はあっさり裏切ってくるし、何考えてるかわかんないし」

 

 タナトスは退廃的な雰囲気を醸し出しながらグレイを──彼の瞳の奥に眠る『悪魔』を見据え、笑った。

 

「あれだよね。もう神々(オレ達)みたいに根本の種族が違うからさ、価値観が違うし倫理観も違う。話し合うだけ無駄かもね」

 

「だけどこれだけは確実に言える」

 

 

 ──君は弱いよ。

 

 

 死の神は大罪を糾弾するような荘厳さを孕みながら明確な侮辱を込めた声音でもって、そう告げた。

 弾かれるように顔を上げ、睨みつけるグレイの殺気に怯むことなく、タナトスは肩を竦めた。

 

「【剣姫】ちゃんはあっさりと断ったんだよ?あんな子供でも、オレの手をあっさり払ったんだ。なのに君は迷いに迷った挙句、最後は取ろうとした。隣の妖精ちゃんとか、街に来てからいろんな人のお世話になったっていうのに、その人達をみ〜んな裏切って」

 

【剣姫】。それは先日戦う事になったアイズの二つ名だ。

 かつてタナトスは復讐に身を焦がし、修羅の道を突き進む彼女を闇派閥(イヴィルス)に引き込もうとし、結果として失敗した過去がある。

 今回も駄目だろうなぁと駄目元で取った行動が、すんなりと成功まであと一歩まで行ったのだ。ご機嫌にはなるが、同時に侮蔑もしてしまう。

 あんな少女でも払えた手を、目の前の悪魔は掴もうとしたのだ。

 

「だから、君は弱いよ。身体能力(ステータス)はオラリオの冒険者じゃ誰も勝てないけど、強さってそれだけじゃないと思うんだ、オレは」

 

 まあ、邪神の戯言だけどね。タナトスはそう言葉を締め括り、降参するように両手を挙げた。

 

「さてと。生憎護衛もなしに歩き回っていてね、捕まえるなら早くやっちゃってくれ」

 

「…………」

 

 あまりにも呆気なく諦める神の姿に怪訝な表情となるリオンだが、相手がギルド側の神だろうが邪神だろうがこのまま一柱にするわけにもいかず、どこかに連れて行かねばならないのもまた事実であり、自分には選択肢がない事に歯噛みした。

 

「貴方が何者であれ、神であるのならば一緒に来てもらいます。話はそこで──」

 

「それは困るな、正義の眷属」

 

 そしてリオンがタナトスを連行せんと踏み出した瞬間、横合いから放たれた言葉に振り向いた。

 崩れかけた建物の影。戦火に照らされる事も許されなかった闇の中から、一人の女性が這い出してくる。

 纏うは漆黒の鎧。腰に帯びるは雷と炎と毒を纏う魔剣。

 女神も羨む美貌を持つ長身の女性──大悪魔マルコシアスの人間態。アストレア誘拐にも関わった『覇者』が、妖精と邪神、そして迷える悪魔の前に姿を現したのだ。

 

「お前は……!」

 

 リオンはタナトスに向けていた意識のほぼ全てを彼女に向け、グレイもまた慌てながらも長剣を構えた。

 そんな二人を興味なさげに一瞥したマルコシアスは胡乱な視線をタナトスに向け、彼に歩み寄る。

 

「勝手な行動は自重してもらいたい、邪神よ」

 

「勝手な行動をしているのはそっちでしょ、悪魔どもが」

 

 言葉だけは目上の相手に対する諫言のように告げた言葉への返答は、本気の侮蔑と罵倒の言葉。

 マルコシアスはその言葉に愉快そうに眉を寄せるが、すぐに思い当たる節があったのか「ああ、なるほど」と得心したように頷いた。

 

「言葉も解さん獣畜生がした事だ、大目に見て欲しいものだが」

 

「その獣を躾けるのが君達の役目じゃないのかな?」

 

「それはヴァニタスの仕事だ。私はただ強き者と殺しあえればそれでいい」

 

「本当に獣みたいだね」

 

「弱肉強食という意味では、悪魔は獣と同じだとは思うがな」

 

 タナトスとマルコシアスは相手への敵意と侮蔑の感情を隠す事なく、ただ言葉の応酬を繰り返す。

 両者は睨み合ったまま一定の距離を保つ中、我慢ならなかなったのかリオンが声を張り上げた。

 

「お前達の話などどうでもいい!アストレア様はどこだ!」

 

「オレとしては結構大事な話をしてるんだけどなぁ」

 

 事の重大さを──悪魔が人類の転生に関わる世界の理を歪め始めている事を──知らないリオンの問いかけにタナトスは苦笑し、マルコシアスは鬱陶しそうに溜め息を吐く。

 

「聞き出したければ向かってこい。今も言ったが、強き者が正義なのだからな」

 

 腰の剣に手をかけながら、正義の妖精に覚悟を問うた。

 強さとは正しさ。悪魔達の絶対的な基準は変わる事なく、正義の使徒に己の正義をぶつける。

 やるしかないかと身構えるリオン。グレイもまた構える中、マルコシアスは彼を見つめて肩を落とした。

 

「ステラから話を聞いた時は期待したんだが、今のお前からは魅力を感じんな」

 

「何……?」

 

 彼女の言葉にグレイが視線を鋭くすると、彼女は言葉を続けた。

 

「己の行く道を定められず、己を貫く事もできず、迷い、嘆き、足を止めた弱者。あの日見せた執念はどこにやった。この四日で起きた何がお前を腐らせた」

 

「……ッ!」

 

「復讐だけでは足りんのなら、他の動機を見つけろ。己が行く道をさっさと見つけろ。それが出来たのなら相手をしてやる」

 

 彼女の言葉は確かに悪魔らしい冷たさを孕んでいたが、同時に上に立つ強者としての矜持なのか、どこか教鞭を振るう教師のような独特な雰囲気まで孕んでいた。

 グレイが言葉を無くす中、遠くから足音が聞こえてくる。数は二つ。音の軽さからして女性だろうか。

 

「グレイ、リオン!やっと見つけた!!」

 

「リオン、いきなり走り出さないでください!追いつくのも一苦労なんですから……っ!」

 

 通りの向こうから駆けてくるのはアーディとアスフィだ。

 戦闘衣(バトルクロス)を血と煤に汚した二人はグレイを見つけた事に安堵しているのか、疲労の滲む顔には笑みが浮かんでいた。

 だがすぐにグレイとリオンに相対する相手──マルコシアスとタナトスの存在に気づき、二人の隣に立つと共に得物を抜いた。

 

「この人も悪魔なの?それにあの神様は?」

 

「わかりません!ですが──」

 

 アーディがマルコシアスとタナトスに交互に目を向けながらアスフィに問うと、彼女は目つきを鋭くしながら苦虫を噛み潰したような表情となる。

 

「──私達だけではどうにもならない!何なんですか、この|圧力《プレッシャーは……!」

 

 グレイもいるから大丈夫、勝てるなどという希望的観測もできない。マルコシアスが無意識の内に放つ圧は第一級冒険者のそれを凌駕し、こうして前に立っているだけでも呼吸が苦しくなる。

 マルコシアスは追加で現れた二人の小娘に興味なさそうに胡乱な視線を向けると、踵を返してタナトスの首根っこを掴んだ。

 

「帰るぞ、『死』の神よ。用事は終えたろう」

 

「はいはい。別に一人で歩けるよ?」

 

「私が運んだ方が速い」

 

 タナトスの言葉を無慈悲に切り捨てた大悪魔は、親猫が子猫をそうするように片手でひょいとタナトスを持ち上げた。

 

「……っ!待ちやがれ……!」

 

「待ちなさい!アストレア様はどこに……!」

 

 グレイとリオンは逃すまいと駆け出すが、マルコシアスは空いている片手を腰の剣に伸ばし、抜刀。

 鞘擦れの鋭い音と共に業火と雷光が吐き出され、冒険者達とグレイの視界を埋め尽くす。

 膨大な魔力。致命的な高熱。不可避の速度。冒険者達が退避さえもままならず、間近に迫る死の気配に目を見開く。

 だがグレイだけは、左手を前に突き出して更に前に跳んだ。

 

「喰いつくせ……ッ!」

 

 グレイの雄叫びと共に唸りをあげたのは、左腕を包むこむ漆黒の籠手(ゴリアテ)だ。

 紛い物とはいえ獣の王たる咆哮と共に大口をあけたゴリアテは、迫る業火と雷光に喰らい付き、一息に呑み込んでいく。

 

『More!More!More!』

 

 魔力を喰らいながら、それでも満たせぬ飢えを訴えるゴリアテは、ついにはマルコシアスが放った炎雷の全てを呑み込んだ。

 取り込んだ膨大な魔力がグレイの全身を駆け巡り、鱗の隙間から溢れる灰色の魔力光が強まる。

 

「あいつらは……っ」

 

 だがグレイにはそんな事どうでも良かった。ようやく見つけたヴァニタスへと続く情報源を逃した挙句、マルコシアスからもタナトスからも馬鹿にされっぱなしなのだ。一発殴らねば気が済まない。

 だが先の炎雷による目眩しと周囲に漂う魔力の残滓によってマルコシアスは愚かタナトスの気配さえも掴めず、グレイは舌を弾いた。

 

「くそっ!どこに行きやがった!」

 

「アッシュウォルドさん!」

 

 そのまま宛てもないままに捜索を始めようとするグレイを呼び止めたのはリオンだ。

 殺意まじりに振り返る彼の気迫にも負けず、彼女は彼に詰め寄る。

 

「貴方は何を考えているのですか!?あの神が言った事は本当なのですか!?」

 

 声を荒がるリオンの姿に何事と顔を見合わせるアーディとアスフィ。

 彼女の怒鳴り声も鬱陶しそうに眉を寄せたグレイは「それがどうした」と彼女を睨みつける。

 

「力がいる!ヴァニタスもステラもマルコシアスも、悪魔どもを殺し尽くす力が!あの神様はそれをくれるってんだ、それに手を伸ばして何が悪い!?」

 

「……っ!闇派閥(イヴィルス)に与する神だとわかっていた筈です!なのに、それでも力のためならその手を掴むと!?」

 

「だから、そう言ってる!」

 

 段々と熱がこもっていく二人の声は、静寂に包まれた通りに響き渡った。

 グレイにとって『力』が全てだ。それが手に入るのなら他には何もいらない。

 

「貴方の『正義』はどうしてしまったのですか!?あの日教えてくれた貴方の『正義』は、あの時見せてくれた笑顔は、全て嘘だったのですか!?」

 

「俺に『正義』なんてものはない。あったとしても、それは師匠の真似をしてる中身のねぇもんだ」

 

 真っ直ぐに見つめてくる空色の瞳から逃げるように、グレイは顔を背けた。

 

「ヴァニタスの言う通りだよ。何もかも師匠の真似をしているだけの、空っぽの男さ、俺は」

 

 グレイは色褪せた瞳を更に濁らせながらそう告げた。

 民衆を守るのも師匠の真似。普段の言動も師匠の真似。自分の意志でやっている事など、それこそ悪魔狩りしかない。

 

「それは違う!」

 

 そうして俯く彼に向け、リオンは叫んでいた。

 自分で自分を追い詰め、罵倒の声も、守った人々からの憎悪さえも背負い、闇へと突き進もうとする友人を引き止めんと言葉を紡ぐ。

 

「貴方に救われた者がいる。貴方に道を示された者もいる。例え誰かの真似だとしても、例え誰かに否定されたとしても、それは貴方自身が見つけた『正義』の結果に他ならない」

 

「俺は誰も救えちゃいない」

 

「私は助けてもらったよ。一回だけじゃない、何回も」

 

「私もです。貴方がいなければ、きっと私は生きてはいません」

 

 顔を俯けたまま、リオンの言葉から逃げるようにこぼした言葉に、アーディとアスフィが素早く反論した。

 グレイに命を助けられた二人の言葉に彼が小さく唸ると、いつの間にか近づいていたアーディがそっと彼の手を握った。

 

「こんな時に言うのも変かもしれないけど」

 

 照れくさそうに笑い、頬を朱色に染めながら少女は笑った。

 

「──ありがとう。私を助けてくれて、街の人達の為に戦ってくれて」

 

「……っ」

 

 その言葉に、その笑みに、静かに心臓が跳ねた。

 ただの感謝の言葉。聞き慣れた筈のたったの五文字。それでもその言葉はタナトスの言葉に呑み込まれていたグレイの胸の内に静かに染み渡っていく。

 

「私からも感謝を。貴方がいたから、私はまだ生きています」

 

 アスフィもまた照れくさいのかすぐに顔を背けてしまったが、それでも感謝を彼に伝える。

 彼がいなければオラリオの被害はより深刻なものへとなっていただろう。ただ立ち寄っただけ、それだけの理由で誰よりも献身してくれた恩人に、感謝を伝えずに何を伝えようというのか。

 

「私からは、まず謝らせてください。貴方に酷い事をしてしまった」

 

 リオンが行ったのは、頭を下げての謝罪だった。

 民衆の言葉を鵜呑みにし、彼を信じきれずに糾弾の言葉を投げつけてしまった。それは冒険者である無しに関わらず、一人のエルフとして恥ずべき行為だ。

 グレイが返事に困る中、リオンはそのまま言葉を続けた。

 

「そして今更と思われるかもしれませんが、言わせてください」

 

 ──私達と共に戦ってくれて、ありがとうございます。

 

 そして告げられるのは、やはり感謝の言葉だった。

 三者三様。けれど掛け値なしの感謝の言葉にグレイは俯いたまま、アーディの手を払いながら小さく鼻を鳴らした。

 

「馬鹿かよ」

 

「何ですって」

 

 同時に吐き出された罵倒の言葉に、先程までの柔和な表情はどこにやったのか、リオンの眉間に皺が寄った。

 アーディとアスフィの二人もムッとして不満を露わにするが、グレイは気にする素振りも見せずに口を動かす。

 

「悪魔に感謝してどうすんだよ。この街をこんなにしたのも悪魔なのによ」

 

「確かに貴方は悪魔かもしれません」

 

 彼が吐いた自嘲の言葉にリオンは間髪入れずに頷くと、「ですが」と言葉を続けて彼の手を取った(・・・・・・・)

 己が認めた者にしか肌を許さない。そんなエルフの習慣が骨身に染みる彼女にとって、それが何を意味するのかを、アスフィとアーディの二人は理解していた。理解しているからこそ、目を見開くほどの驚愕を露わにした。

 

「ですが貴方は尊敬に値する『ヒューマン』だと、私は思います」

 

「私は貴方の『許す強さ』が羨ましい。貴方のいつも余裕そうな態度は、少し苛立ちますが見倣うべきかもしれません。私は真面目すぎるそうなので」

 

「それも全部師匠の真似だ。本当の俺は、何にもない空っぽの──」

 

「別にいいではありませんか。誰かの真似、誰かの背中を追いかける行為を、私は愚弄しません」

 

 彼女の真摯に告げられる言葉さえも受け止めようともしないグレイは彼女の手を払おうとするが、彼女は彼の手を離す事なく言葉を続けた。

 

「これはある友人の──私の親友からの受け売りなのですが」

 

 彼女は微笑み混じりにそう言うと、ちらりとアーディに目を向けた。

 彼女も微笑み、こくりと頷いて見せた。

 リオンは彼女に頷き返し、グレイに目を向けた。

 

「グレイ。『正義は巡る』そうです。誰かに助けられた者が誰かの『正義』を受け継ぎ、形を変え、意味を変え、次へと託されていく。貴方はきっと、師匠と呼ぶ人の『正義』を受け継いでいる。それは真似ではありません、貴方なりの『正義』を見つける旅の途中なだけです」

 

 それは私もそうなのですがと苦笑しながら、リオンはそう告げた。

 師匠の背中を追う事も、その人の真似をしてみる事も、それは当然の事なのだ。英雄に憧れた子供がそうするように、親の背中を追う子供がそうするように、理想の自分を探して、模索して、迷子になっているだけだ。

 ヴァニタスはその旅を無意味と断じ、その旅人を空っぽと嘲笑うだろう。

 タナトスはその旅の意味を理解しつつも、自分に都合のいい仮初のゴールを用意して手招きしてくるだろう。

 

「……『正義は巡る』」

 

 グレイは彼女の言葉を反芻し、顔を上げた。

 空色の瞳は真っ直ぐにこちらを見つめ、その後ろにはアーディとアスフィがやはりこちらを見つめてきている。

 不思議だ。三人の言葉は不思議と胸に染みる。神の言葉でも悪魔の言葉でもないというのに、彼らと同じかそれ以上に胸の奥を掻き乱してくる。

 だが不快感はない。むしろ心地よい。師匠にボコボコにされた挙句にあれこれ指南された後に一緒になってストロベリーサンデーを食べた時のように、穏やかだ。

 

「私達も一緒に戦います。アストレア様を見つけ出し、助け出さなくては」

 

「私は下水道が怪しいと見ています。グレイ・アッシュウォルド、協力してくれませんか?」

 

「私も行くからね。足手纏いかもしれないけど、君だけに戦わせたりなんかしない」

 

「……っ!それは駄目だ、今の俺じゃお前らを──」

 

 三人の合流の意志の表明に、グレイは慌てて何かを口走った。

 そして、それが音になる間際にどこからか聞こえてきた爆発音が四人の鼓膜を揺らした。

 四人はほぼ同時に音のした方角──都市北西に目を向ける。

 

「──ッ」

 

「グレイ!?」

 

「ちょ、いきなり独断専行!?」

 

「追いかけます!どちらにせよ、何があったのか調べなければ!」

 

 そして真っ先にグレイが走り出し、リオン、アーディ、アスフィが慌てながらその背を追いかけた。

 行先では薄らと砂塵が舞い、それなりの量の爆薬が炸裂した事を教えてくれる。

 

「一体何が……っ!」

 

 リオンは走りながら疑問を投げかける。

 だがそれに答えられる者はおらず、四人は戦場を目指してひた走るのだった。

 

 

 

 

 




感想等ありましたら、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。