機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT   作:SakuraNoel Fayray

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22話 Wの悲劇

星空の中を駆け巡る白い光と赤い光。

 

バシー、バシー

 

ビームサーベルのぶつかり合いは、さながら時代劇のようである。

互角と呼べるその動きは、いつまでも決着がつきそうもないようにも見えた。

 

「なかなかやるわね。でも、それもいつまでもつかしら?」

 

そう呟くエルノラの横で涼しげな顔で操縦するエリクト。一方グエルは、その動きについていくだけでもやっとであった。

 

「力の差がありすぎる。本物の魔女って、こんななのか」

 

ダリルバルデの機体がきしみだす。コックピットに警告音が流れ始める。

 

「もうちょっと、もうちょっと、もってくれ」

 

苦しそうな動きのダリルバルデを見たエアリアルは、ダリルバルデをひらりとかわすような動きを見せる。

 

「くっ」

 

エアリアルの動きに合わせて機体の向きを変えようとしたグエルは、慌てて操作を誤ってしまう。

 

「あ!」

 

ダリルバルデの機体はグルグルと回転を始め、エアリアルへと接近していく。

ダリルバルデが持っていたビームサーベルは、その動きでエアリアルの右脇腹を貫いてしまう。

 

バリバリバリバリ

 

次の瞬間、コックピットの右側が爆発する。

爆発に巻き込まれるエルノラ。

 

「お母さん!」

 

エリクトが倒れてくる母を抱き留める。

 

「お母さん、お母さん、お母さん!」

 

エリクトはエルノラに必死に呼びかける。

 

エルノラはうなだれていた頭をゆっくりと起こす。

その額は、ヘルメット越しでも分かるほど血に染まっていた。

 

「!?」

 

「慌てないで、エリクト。部品の一つが壊れただけよ。エアリアルもあなたもまだ健在だわ」

 

「でも…」

 

「計画は、あなたが進めなさい。わたしたちの約束を」

 

「お母さん…」

 

「青い地球、きれいね。先に行ってるわね」

 

エルノラから力が抜ける。エリクトはその重みをより強く感じる。

 

「お母さん、お母さん、おかあさんーーーー」

 

エリクトの声が星空に響き渡る。

 

 

「ちがう… ちがう… ちがう… 違うんだ…」

 

グエルは両手の手のひらを見つめながら、予想外の出来事に困惑する。

 

「俺は、俺は、俺は、俺は…」

 

スクリーンの方に目をやると、鬼の形相のエリクトの姿が見えたように見えた。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああ」

 

人の声とは思えないようなエリクトの声が響き渡ったと思った瞬間、エアリアルのビームサーベルがダリルバルデの胴体を真っ二つに切断する。

 

大爆発を起こすダリルバルデ。

その爆発の中から、真っ黒に染まったエアリアルが現れる。

 

 

エアリアルの周りに、黒い物質が広がり始める。

その物質は、宇宙よりも暗く、星々を漆黒の闇へと飲み込んでいく。

 

黒い物質は、エアリアルの背に生えた翼のような形状に広がっていく。

 

「あれはなに?」

 

「これが、魔女の本当の姿なのか?」

 

その光景を、ただぼう然と見つめる地球寮のメンバー。

 

地球軌道上に集結していた残存艦隊は、異様な姿のエアリアルを目にして、全艦一斉砲撃を始める。

ビームが次々とエアリアルに向けて放たれる。

エアリアルは黒い羽を前方へと突き出し、その光すべてを消滅させていく。

 

ビームに効果が無いと感じた艦隊はゆっくりと前進し、エアリアルへ向けて直進していく。

艦を体当たりさせる「特攻」である。

 

しかしエアリアルは微動だにせず、前へ突き出した羽を大きく広げ、大きく羽ばたいたかと思うと黒い物質を前方へ放出し、艦隊を次々と消滅させていく。

まるで、そこにはもともと何も無かったかのように。

 

「艦隊が…」

 

「えええ、どうするの?」

 

「やべえよ」

 

絶望感が広がる。

 

「あ、あれは?」

 

オジェロが地球を指差す。

地球から次々と宇宙へ放たれていく光。

 

「熱核ミサイル!」

 

数万の光の軌跡がエアリアルへ迫る。

 

「地球の最終兵器が」

 

「スレッタ…」

 

スレッタを心配する心と、これでエアリアルを止めることが出来るかもしれないという気持ちが交錯する。

光がエアリアルへ触れようとしたその瞬間、黒い羽がその光すべてを飲み込み消し去っていく。

 

「そんな…」

 

「もう終わりだ」

 

地球寮のメンバーはぼう然と立ち尽くす。

 

「やっぱり、魔女なんかに関わったから…」

 

「違うわ」

 

チュチュの言葉をミオリネが遮る。

 

「スレッタは、スレッタよ。あの中にはまだわたしたちの知ってるスレッタがいるはず」

 

「でもどうするんだよ?助けになんか行けないだろ?」

 

「わたしが行くわ」

 

一同、ミオリネを見つめる。

 

「死ぬぞ」

 

「死なないわ。信じてるから、スレッタを」

 

車椅子から立ち上がると、船外へと出るミオリネ。宇宙服の背中に付けられた推進装置で少しずつ前へ進んでいく。

 

「心中する気かよ」

 

「いや、彼女なら出来るかもしれない。花嫁だから」

 

 

ゆっくりとエアリアルに近づいていくミオリネ。

黒い物質はミオリネにも近づいてくる。

あと少しでミオリネを飲み込もうとしたところで、その物質は静かに消える。

 

ミオリネはエアリアルにたどり着くと、外側からコックピットを開ける。

そこには、すでに息絶えたエルノラと、世界を滅ぼさんと睨みつけているエリクトの姿があった。

 

ミオリネはエリクトの目前まで迫り、自分の頭を後ろに大きく振りかぶって、エリクトの頭に思いっきり叩きつける。

 

ガーン!

 

ヘルメット同士がぶつかる大きな音がコックピットに響き渡る。

 

「起きなさい、スレッタ! お・き・な・さ・い!」

 

エリクトの瞳が水色に変わる。

 

「ミオ…リネ… さん?」

 

ミオリネはスレッタを抱きしめる。

 

「ミオリネさん、わたし、わたし、わたし…」

 

スレッタの目に涙があふれる。

ミオリネはスレッタをさらに強く抱きしめる。

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