機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT   作:SakuraNoel Fayray

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23話 永遠の誓い

「来てくれたんだ」

 

「当たり前じゃない」

 

「えへへ」

 

スレッタの顔に笑みが浮かぶ。

 

「でも…、どうしよう。わたし、わたし…」

 

「落ち着いて、スレッタ。落ち着いて、一緒に考えましょ」

 

「ミオリネさん」

 

ミオリネは抱きしめていた手を緩めて、スレッタの顔をまじまじと見つめる。

 

「え? な、な、なんですか?」

 

スレッタは困惑する。

 

「よかった」

 

「え?」

 

「スレッタでいてくれて」

 

「はい」

 

二人は静かに見つめあう。

 

 

「わたし、時々なぜか自分が自分でなくなってしまうことがあって…」

 

「魔女ね」

 

「魔女になった時、わたしはみんなにひどいことを…」

 

「スレッタのせいじゃないわ」

 

「ミオリネさん…」

 

スレッタはミオリネに抱きつく。

ミオリネもスレッタを抱きしめ、やさしく頭をなでる。

 

「スレッタのせいじゃないの。あなたがお母さんと呼んでたプロスペラ、いえ、エルノラが行なっていた復讐のせいだったの」

 

「お母さんが?」

 

「エルノラはあなたのお母さんじゃないわ。エリクトのお母さんなの」

 

「え?」

 

スレッタは抱きしめていた手をゆるめ、ミオリネの顔をじっと見つめながら困惑する。

 

「あなたはパーメットで生まれた、わたしたちとは違う存在の人なの。エルノラがエリクトの中に作り出したものなのよ」

 

パーメット?

違う存在?

エルノラ?

エリクト?

 

スレッタにはその内容が理解出来ない。

 

「よく分からないけど…、そういえばお母さんから、すべてが終わったらわたしの力で一緒にこの世界を改変しましょうって言われてました。お母さんと一緒に新しい世界をつくるって」

 

「そのためにスレッタを…」

 

ミオリネはスレッタが生み出された本当の意味を理解し、すでに息絶えているエルノラを睨みつける。

 

「改変しないと、魔女が世界を滅ぼしてしまうか、わたしの力を求めようとする人たちが争いをしてしまうからだって」

 

「それはたしかにそうね」

 

「だからこの世界を、争いの無い、魔女もガンダムも無い世界に改変させるって、お母さんはわたしにそう約束してたの」

 

「そう」

 

「でも…」

 

「でも?」

 

「そうしたら、わたしは一人になっちゃう。お母さんももういないし…」

 

スレッタは寂しそうにうつむく。

ミオリネは、両手でスレッタのヘルメットをゆっくりと持ち上げ、スレッタの顔をしっかりと見つめる。

 

「改変しない方法は無いの?スレッタのことは、わたしたちが全力で守るから」

 

「改変しないと…、わたしが起きてるうちはいいけど、魔女が目覚めたら…、この世界は全部壊されてしまいます」

 

「それを防ぐ方法は無いの?」

 

「それも、この世界ごと改変するしか…」

 

「どちらにしても改変なのね」

 

 

「どちらにしても、わたしは一人になっちゃう…」

 

「そんなことはないわ」

 

ミオリネはスレッタにグッと顔を近づける。ヘルメット同士がぶつかり、小さくコツンと音を立てる。

 

「え?」

 

「わたしがいるじゃない」

 

「ミオリネさん?」

 

「わたしは花嫁で、あなたは花婿でしょ?」

 

「あっ」

 

「わたしとあなたは結婚を誓い合った間柄よ。どんな世界になっても、わたしはあなたと一緒にいるわ。百年でも、千年でも、一万年先でも」

 

「ミオリネさん」

 

「あなたを一人にしないわ、スレッタ」

 

その言葉に、スレッタの顔に満面の笑みが浮かぶ。

 

「ありがとうございます。こちらこそ」

 

ミオリネはスレッタへと右手を差し出す。

スレッタはその手をしっかりと握りしめる。

 

「よろしくお願いします!」

 

「よろしくね」

 

二人は笑顔で見つめあう。

 

「じゃあ、魔女が目覚める前に」

 

「はい!」

 

 

コックピット内の表示が改変モードに変わる。

ミオリネはスレッタの操作の邪魔にならないようにコックピット左側に移動し、操作をしているスレッタをじっと見つめる。

 

「エアリアル、長い間ありがとう」

 

スレッタは、コックピットの前面パネルをやさしくなでた後、パネルに表示された暗証番号入力欄に数字を入力する

 

[999]

 

入力を受け付けると前面パネルは上部へと移動し、パネルがあった場所の下から子供の背丈ほどある円筒形の透明な筒に入った結晶体がせり上がってくる。

 

「これは?」

 

「エアリアルのコア。これがわたしと同調すると、改変が始まるの」

 

「わたしはここにいてもいい?」

 

「もちろん」

 

「よかった」

 

「ごめんなさい、こんなことに巻き込んじゃって」

 

「いいのよ」

 

 

「…か?、…のか?、…てんのか?、…聞いてんのか?」

 

通信機からかすかにチュチュの声が聞こえる。

ミオリネはスレッタに気付かれないように指で通信機のスイッチを探し、それをオフにする。

ミオリネの口にかすかに笑みが浮かぶ。

 

「あいつ、やりやがったな」

 

通信が切られたことに気付いたチュチュは、エアリアルを睨みつけながらそうつぶやく。

 

 

エアリアルからカウントダウンの音声が流れ始める。

 

 

 

 

 

 

コアがまぶしく光る。

二人は寄り添い、固く手を握りしめる。

 

「これがわたしたちの結婚式よ」

 

笑顔で見つめあう二人は、静かに光に包まれていく。

 

 

エアリアルからあふれた光は宇宙を白く染め、地球寮の船も飲み込んでいく。

 

「ふざけんな、こちとらこの世界に生きて…」

 

チュチュの叫びも、白い光にかき消されていく。

 

地球も、太陽系も、銀河系も、この世界すべてが白い光に包まれていく。

そして静寂の時が訪れる。

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