機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT 作:SakuraNoel Fayray
青い空に白い入道雲、新緑に輝く山々。
日本の山沿いの田舎の風景を再現しているここは、サウスコロニー(仮名)。
まだ建築中で一般公開はされていないものの、それが逆に“謹慎”には好都合ということで、プロスペラとスレッタはこの地で修業を行っていた。
「えい、やー、えい、やー」
スレッタは両手を交互に前に出し、空手のような動作を行っている。
スレッタの声が山にこだまする。
「えい、やー、えい、やー」
「スレッタ郎、そろそろ体が温まってきたかしら?」
「はい、いい感じです、プロスペラ滝さん」
「それでは今日は、あそこにある岩山を素手で割る特訓に入ります」
その岩は直径10m程もある大岩で、とても素手で割れそうにはない雰囲気であった。
「素手で!?」
「そう、素手で。あれくらいすぐに割れるようにならないと、ミオリネ子さんは守れないわよ」
「やります!やります、素手で!」
「よし、じゃあ始め!」
スレッタは岩へと突進し、思いっきり岩を叩く。
ペチーン
軽い音が響き渡り、スレッタの右手は赤く腫れあがる。
「あいたたたた。痛い、固すぎる。こんなのほんとに素手で?」
「そうよ」
「エアリアルは使っちゃダメなの?」
「それはダメ。まずはあなた自身が力をつけないと。いくらいい武器を持っていたとしても、あなた自身が未熟だったら、武器は使いこなせないわ」
「なるほど。さすがプロスペラ滝さん」
スレッタは赤くなった手を振りながら、少しでも早く痛みを抑えようとしていた。
「ところで…、わたしたちの名前、さっきから変なんですけれど、どういうこと?」
「それは、山での修業だからよ」
「山での修業…、まさか!?」
「そう、そのまさかよ」
プロスペラは笑顔で答えた。
スレッタの顔が急に青くなった。
「ええええ、だ、だ、だ、大丈夫なんですか?各方面から怒られたりなんかしちゃったりしないんですか?わ、わ、わ、わたし、知りませんよ。怒られても」
「安心して、スレッタ郎。わたしたちには最強の盾があるから大丈夫よ」
「最強の盾?」
「そう、“銀○の監督”。いざとなれば、これを盾にすればたいていのことは防ぐことが出来るわ」
「おお、○魂!株式会社ガンダムの親会社と言えば、サンライズ。そのサンライズ最強の防壁。それなら安心だね。さすがお母さん、いえプロスペラ滝さん」
「分かってくれて嬉しいわ、スレッタ郎。では修業を続けるわよ」
「はい!」
昼夜問わず「逃げれば一つ、進めば二つ」と呪文のように唱えながら山を駆け巡り、岩山と格闘する日々が何日も続いた。
そして、
バシーーーン!
「いい音ね。もうちょっとよ。あと大事なのは気持ちね。ミオリネ子さんへの気持ち。ダブスタクソ親父無慘を絶対倒すという気持ち。それも力に加えれば…」
「ミオリネ子さんへの気持ち、ミオリネ子さんへの気持ち、ミオリネ子さんへの気持ち、、、うおおおおおおおおおお」
スレッタは大きく振りかぶった手を、それまでにないスピードとパワーで振り下ろす。
スッパーン
岩山は真っ二つに切れる。
「やった、やった、やったー、切れたー!」
「よくやったわ、スレッタ郎」
「ありかとうございます、プロスペラ滝さん」
「この感覚を忘れないようにね。じゃあ、今日はここまでにして、最後の修業は明日からにしましょう」
「はい、ありがとうございました」
夕焼けに染まる山道を、スレッタとプロスペラは麓にある国民宿舎へと帰っていく。