機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT 作:SakuraNoel Fayray
彼女の名は、エリクト。
魔女として生まれ、あの日“スレッタ”という人格で封印された少女。
彼女は再びこの世界に現れた。
ああ、スレッタからわたしの中に記憶が染み込んでくる。
学園
ミオリネ
結婚
…
「大丈夫?」
プロスペラがエリクトの顔をのぞき込む。
「うん。お母さんだけじゃなくて、ミオリネさんもなんだね」
「そう、ミオリネさんも」
「ふたつだ」
「そう、ふたつね」
「うん」
エリクトは満面の笑みを浮かべる。
「ひさしぶり、エアリアル。元気にしてた?」
エリクトは操縦桿を握る。
パネルに様々な情報が映し出される。
「元気そうでよかった」
「もちろんよ。誰が管理してたと思ってるの?」
「お母さん!」
二人の表情に笑顔が浮かぶ。
前面モニターに、病室の窓から身を乗り出してスレッタに呼びかけているミオリネが映る。
「あ、ミオリネさん…、あっ、あっ」
エアリアルに取り付けられたスピーカーからエリクトの声が流れる。
「スレッタ!」
スレッタから反応があったことに喜ぶミオリネ。
「ミオリネさん、わたし、足りないものが分かりました」
「足りないもの?」
「たくさんのキャンドルです」
「キャンドル?」
ミオリネと地球寮のメンバーは顔を見合わせる。
「はい、美しく輝くたくさんのキャンドル。結婚式にはそれが必要ですね。これからそれを準備してきますね」
「どういう…?」
ミオリネにはエリクトが言ってることが理解出来ない。
「ミオリネさん達は、先に式場に入場しておいてください。地球寮の船で地球の前まで来てください。それでは式を始めましょう」
「式!?」
「何を言って…」
その言葉に返答は無く、エアリアルは足早に学園を離れていく。
「いくわよ、エアリアル」
エアリアルは宇宙へと飛び出す。
「どうする?」
「どうすると言われても…」
「地球の前に来いって言ってたよね?」
「行くしかないのかな?」
「でも式って…」
困惑する地球寮のメンバー。
「あー、もう、行ってやろうじゃない。行って、スレッタの野郎を止めてやる!」
「そうね。今回はわたしも行くわ」
「花嫁だもんね」
「ええ」
チュチュは近くにあった車椅子をミオリネのところに持っていく。
「これに乗りな。あーしが押してやるよ」
「チュチュ…」
「誤解すんなよ、花嫁の父じゃねえからな」
「あははは」
チュチュの冗談で、一同緊張がほぐれる。
「それじゃ、行きましょう。スレッタを止めるために」
地球の軌道上付近に接近する地球寮の船。
「スレッタ先輩の言ってたところはこの辺のはずなんですけれど…」
「いねえな、あいつ」
「レーダーには?」
「この付近にはいません」
船を回頭させ、船首を地球とは反対の外宇宙の方に向ける。
そこには星空が広がっているだけである。
「誰もいないね」
「ったく、騙されたんじゃねえの?」
「スレッタがそんなことするわけないと思うんだけど…」
全員が疑心暗鬼になっているその時、通信機に緊急通信が入る。
「ザ、ザザザザ…、こち…、火星…、ザザザザッ」
「緊急通信!?」
「何でこんな時に?」
「襲撃を… ザッ うわー」
ブチッという音と共に通信が切れる。
顔を見合わせる一同。
「火星方面の映像を出して。最大望遠で」
ミオリネが指示を出す。
スクリーンに火星方面の映像が映し出される。
そこには、火星基地の場所から巨大な炎が宇宙に伸びる火星の姿があった。
ぼう然と立ちつくす一同。
スクリーンに白い機体が映る。
「あれって、エアリアルじゃ?」
白い機体は火星を数度周回した後、太陽系の外側へと進んでいく。
「どういうこと?」
次の瞬間、火星の近くにある小惑星群が次々と炎を上げる。
「え?」
「ええええ!?」
「エアリアルが?」
「スレッタ!?」
ミオリネは通信機を操作し、エアリアルへの通信を確保する。
「スレッタ?スレッタ?どういうこと?」
「…さん、ミオリネさん、見てた?」
「見てたって… あんたいったい?」
「きれいでしょ?キャンドル」
「キャン…ドル」
衝撃的な言葉に固まる一同。
エアリアルは加速しながらさらに太陽系の外側へと向かい、木星基地からも巨大な炎が上がる。
その光景は、さながらキャンドルが次々に灯されていくようであった。
「あんた…」
「もっと…、もっとたくさんの人に祝ってもらわないと」
エリクトの声がスピーカーから流れる。
「おい!」
「先輩…」
エアリアルの白い機体は太陽系を駆け巡り、あちこちの星々を光に包んでいく。
その光景を写し出すスクリーンの前で青ざめるミオリネ。
「どうして…」
「やっぱり魔女だったんだ!水星の…」
狼狽するチュチュ。
画面いっぱいに広がる無数の光。
その美しい光景をバックに、エアリアルは地球へと戻ってくる。
「お待たせしました!たくさんのキャンドル用意出来ました。これで、素敵な素敵な結婚式になりますね、ミオリネさん」
エリクトは満面の笑みで、そうミオリネに告げる。
式は最高潮の時を迎える。