機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT   作:SakuraNoel Fayray

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19話 魔女誕生

「…さい、…きなさい、起きなさい」

 

ぼんやりとした意識の中、雑踏の音の中に次第に聞こえる母の声。眠気を振り払いながらゆっくりと目を開けると、そこには母の顔があった。

 

「おはよう、エリクト」

 

「お母さん、おはよう。どうしたの?」

 

慌ただしく周りを駆け回るスタッフを見て、エリクトは不思議そうに母に尋ねる。

 

「敵が来たのよ」

 

「敵?」

 

「そう、あなたのお父さんを殺した敵が」

 

エリクトの眠気が一気に覚める。

 

「戦わなきゃ」

 

ゆっくりと母のひざの上から起き上がるエリクト。その姿を見ていたスタッフの一人が声をかける。

 

「エルノラさん、エリクトちゃん、あなたたちはすぐに逃げなさい。エアリアルで」

 

「逃げるのはダメなの」

 

「そうね、あの時逃げたから、あなたはお父さんを失ったの。逃げたから、お母さん一人だった。逃げたら一つ、進めば二つ」

 

「うん。今度は進んで二つ守らないとね」

 

「そうよ、偉いわエリクト」

 

親子は右往左往する人々の間を抜け格納庫へと歩いていき、エアリアルへと搭乗する。

 

 

スクリーンに映る大艦隊と多数のモビルスーツ。まるで水星を殲滅しに来たかのようなその異様な状況に、スタッフは恐れおののいていた。

 

「なぜここに?」

 

「私たちが何をしたというんだ」

 

施設が爆発する音が聞こえ、その度に司令室は地震のように大きな揺れに見舞われる。

 

「もう終わりなのか?」

 

「せめて住人だけでも…」

 

彼らが絶望しかけたその時、画面に白い光が現れる。

 

「なんだ?」

 

「エアリアルじゃないか?」

 

「逃げなかったのか?」

 

驚きと期待が訪れた一瞬も、他の機体が見えないことで不安に変わる。

 

「一機じゃ無理だろ」

 

「早く逃げろ」

 

次の瞬間、その白い機体は画面を縦横無尽に走り回り、敵を次々と破壊していく。沸き立つ司令室。

しかしその喜びも、本来一機のモビルスーツでは破壊し尽くせないような量を破壊していく様に、次第に恐怖を感じるようになっていく。

 

「これは…、いったい何なんだ?」

 

逃げ惑うモビルスーツや艦隊も、容赦なく白い光が破壊し尽くしていく。そこには慈悲も何も無かった。

その光景に言葉も無い人々。

我に返った時には、スクリーンにはエアリアルただ一機と、画面いっぱいの爆発の光だけになっていた。

 

そこにエアリアルから通信が入る。

 

「やっつけたよ、みんな。お母さんも水星のみんなも守ったよ」

 

そう笑顔で話しかけてくる少女に、人々は恐れおののくだけだった。

 

「魔女だ…」

 

エリクトの後ろに座るエルノラの口元に笑みが浮かぶ。

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