機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT   作:SakuraNoel Fayray

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20話 水星の魔女

「あなた達はいったい…」

 

「なぜ水星に来たんだ」

 

スタッフがスクリーンに向けて叫ぶ。

 

「ここにはパーメット鉱石があるからよ。鉱石は月にもあるけれど、月は地球の目の前でエアリアルは目立ちすぎるわ。だからここを選んだの」

 

「俺達を利用していたのか?」

 

「そうとも言えるかもしれないけれど、エアリアル、いえ、GUNDのために必要だったからここを選ぶことは必然だったの。それは、あなた達にも利益があるでしょ?」

 

それは確かにそうなので、スタッフは反論が出来ない。

 

「あなた達が採掘をして、それを私が技術に昇華させる。お互いにウィンウィンの関係よ。悪い話では無いはずよ」

 

「しかし、それならなぜ水星が攻撃されるんだ。あなた達がやってることに何か関係が… まさか…」

 

エルノラはニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「そう、GUNDフォーマット。ガンダムよ」

 

「ガンダム!?」

 

司令室が蒼然とする。

 

「私とこの子エリクトは、ガンダムであるエアリアルであなた達を全力で守るわ。そのかわり、パーメット鉱石を私たちのために採掘してちょうだい。悪い提案では無いはずよ」

 

「いや、悪い」

 

スタッフが声を上げる。

 

「GUNDフォーマットは評議会から禁止されている。そんなことに協力は出来ない」

 

そうだそうだという声が司令室に響き渡る。

 

「我々は、魔女に手を貸すことは出来ない。水星の資源は、スペーシアンやアーシアン全体のものだ」

 

そうスクリーンに叫んだスタッフは、スクリーン越しにエルノラの目を睨みつける。

 

「いい目をしてるわね… でも、あなた達がそのつもりなら、私たちは力づくでここを奪うことになってしまうわよ。それでもいいの?」

 

睨み返すようなエルノラのその言葉は、彼らにとっては魔女の脅しという印象であった。

 

「それなら我々は、全力で水星を魔女の手から守ることになります」

 

「そう、わかったわ。わたしたちをこれまでかくまってくれたことには感謝するわ。でも、こうなってしまっては敵同士ね。容赦はしないわよ」

 

「それは覚悟の上です。私たちも全力でここを守ります」

 

エアリアルとの通信が切れる。

 

「おい、警報を出せ。避難させられる者は今すぐ区画外へ避難させろ。民間人の避難を優先しろ」

 

施設に警報が鳴り響く。スタッフが慌ただしく駆け回る。

 

 

静まり返ったエアリアルのコックピット。

 

「エリクト」

 

「どうしたの?お母さん」

 

「水星の人たちね、私たちのこと嫌いだって。お父さんを殺した人たちの仲間になるんだって」

 

「ええ、どうして?今までお友達だったのに…」

 

「そうよね、ひどいよね。私たちのこと裏切るなんて」

 

「うん、ひどい。でもどうしたらいいの?」

 

「水星の人たちも敵になっちゃったので、倒さないといけなくなるの。出来る?」

 

「倒さないとどうなるの?」

 

「わたしも、エアリアルも、全部あなたのもとからいなくなっちゃうわ」

 

「それはやだ」

 

「嫌なら戦うしかないわね。わたしもエアリアルも、両方残せるように」

 

「逃げたら一つ、進めば二つ」

 

「そう、偉い子ね」

 

エリクトの瞳が深紅に染まる。

 

 

「Aブロック退避完了、Bブロック退避中、Cブロック退避完了」

 

「退避を急がせろ。あと、地球への緊急連絡を…」

 

司令室が真っ白な光に包まれ、言葉がそこで途切れる。

 

巨大なビームで基地は一瞬で蒸発する。

ビームはその後も地中深く進み続け、遂には水星を貫いてしまう。

 

大爆発が起こり、水星全域を巨大地震のような激しい揺れが襲う。

かろうじて残った居住区にもその揺れが襲いかかる。

 

揺れが収まった後、水星基地があった周辺には巨大な穴が開いていた。

そしてその上空には、白い機体のエアリアルが赤い目を光らせて浮かんでいた。

 

「基地が…」

 

「わたしたちはどうなるの?」

 

「魔女だ…」

 

人々は地獄のような光景の前で、為す術が無かった。

 

 

水星からの反応が無くなったことを確認する、エルノラ。

 

「よくやったわ、エリクト」

 

エリクトの頭をそっとなでる。

 

「えへへへ。ありがと」

 

「これで水星の人たちは、私たちに協力してくれるはずよ。あなたのおかげよ」

 

「よかった」

 

エリクトは満面の笑みで母親に寄りそう。

母の体のぬくもりで、エリクトの気持ちは次第に収まっていく。

瞳の色が、普段の水晶のような水色に戻る。

 

「頑張ったら、少し眠くなってきちゃった」

 

「疲れたわよね。あとは私がやっておくから、あなたはゆっくり寝ておきなさい」

 

「うん。おやすみない」

 

「おやすみ、わたしの大事なエリクト」

 

エリクトはゆっくり目を閉じる。

 

 

「…さい、…きなさい、起きなさい」

 

雑踏の中で聞こえる母の声。

眠気を振り払いながらゆっくりと目を開けると、そこには母の顔があった。

 

「おはよう、スレッタ」

 

「お母さん、おはよう。どうしたの?」

 

慌ただしく周りを駆け回るスタッフを見て、スレッタは不思議そうに母に尋ねる。

 

「学校へ行くのよ」

 

「学校?」

 

「そう、あなたはこれから学校に行くの。アスティカシア高等専門学園。行きたかったでしょ?」

 

スレッタの眠気が一気に覚める。

 

「行かなきゃ」

 

ゆっくりと母のひざの上から起き上がるスレッタ。

その姿を見ていたスタッフの一人が声をかける。

 

「スレッタちゃん、まもなく出港よ。早く船に搭乗して」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それじゃあ、いってらっしゃい。気をつけてね」

 

「行ってきます。お母さんも早く来てね」

 

「ええ、“用事”が終わったらすぐ行くわ」

 

「それじゃ、よろしくお願いします!」

 

「はい、では一緒にいきましょ」

 

スタッフと一緒に宇宙港の打ち上げ施設へと歩いていくスレッタ。

 

その姿を見送りながら、プロスペラの口元には笑みが浮かんでいた。

 

「頼んだわよ、私の娘たち」

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