機動戦士ガンダム 水星の魔女 DCT 作:SakuraNoel Fayray
「もう、やめてくれ」
ダリルバルデの赤い機体がエアリアルの前に立ちふさがる。
「グエル!?」
地球寮のメンバーが一斉に叫ぶ。
「これ以上、誰も死なせないでくれ。お願いだ、スレッタ」
グエルは涙を流しながらコックピットから懇願する。
「グエルさん、式の途中ですよ。邪魔をしないでください」
エリクトはグエルを睨みつける。
その違和感にグエルは気付く。
「お前は、誰だ?」
「わたしはエリクト。エリクト・サマヤ」
「エリクト!?」
“別人”の名前に、グエルも地球寮のメンバーも全員が驚く。
「スレッタじゃないの?」
「スレッタにしか見えないよ」
「どういうこと?」
「その子は、エリクトであり、スレッタなの」
プロスペラが答える。
「早くして魔女となったエリクトは、その存在を隠しておく必要があったの。そこで、エリクトの中にスレッタを作り出したの」
「作り出した!?」
「そう、GUNDの技術でね」
一同、理解が追いつかなくてぼう然としている。
「私たちは研究の過程で、パーメットには“改変”の力があることを発見したの。人の病気を治す医療がその一つ。強大な兵器として使うGUND-ARM“ガンダム”もその一つ。そしてその先にあるもう一つの改変、世界を改変する力」
「世界を改変!?」
「ええ、ガンダムさえも凌駕する絶対的な力。わたしたちはそれを追い求め、生まれたのが“スレッタ”だったの」
!?
「この世界のありとあらゆるものを変えることが出来る、いわば最終兵器ね」
「最終…兵器」
「なんで、スレッタなの?」
「この子しか成功しなかったのよ。普通の人間は、魔女になってもパーメットリンクだけで使い物にならなくなっちゃう。強化人間も、普通の人より少し強化されてるだけで、結果は同じ。“完全体”として成功したのはこの子だけだったの」
「なんてことを…」
「スレッタは、その強大な力を持っているにも関わらず、純真で、弱々しく、魔女を隠しておくには最適の存在だったわ。まさに理想の娘」
「狂ってやがる」
「まあ。それは褒め言葉として受け取ってあげましょう」
「魔女であるエリクトを隠して、何をしようとしてたの?」
「復讐よ」
プロスペラが答える。
「21年前のヴァナディース事変で、わたしたちは多くのものを失った。この子の父親も。その復讐の機会をこの子達と一緒にずっと待っていたの」
「復讐って?」
「わたしたちの敵をすべて倒すこと」
「ちょっと待って。21年前って、スレッタの年齢は…」
「そう、この子の本当の年齢は、25歳。あなた達よりずっと年上よ」
一同、その事実に驚愕する。
「スレッタがほんとは魔女で、25歳、、、どういうことなんだよ」
「お姉さんだったなんて…」
「ありえねえだろ、そんなこと」
「全部、事実よ」
プロスペラははっきり断言する。
「お母さんの言う通り」
エリクトも同意する。
「ちなみに、わたしの名前はエルノラ。エルノラ・サマヤ。プロスペラは、魔女であることを隠すための偽名ね」
「偽名って…」
「わたしたちをずっと騙してたのね」
「ええ、そうね」
エルノラは笑顔で答える。
「そんなこと、許せない!」
グエルは、拳を握りしめながらそうつぶやく。
「スレッタは、どこからみても人間だ。あんたの道具なんかじゃない。兵器なんかでもない。一人の女の子だ。あの子をそんな風に扱うなんて、俺は、俺は、絶対に許せない!」
地球寮の全員、その言葉に頷く。
「プロスペラさん、俺はあなたからスレッタを救い出す」
「ふふ、わたし達に勝てるかしら?ねえエリクト」
「みんな敵になっちゃったの?」
「そうみたいね。結婚式も結婚も、ここで終わりかしら?」
「ミオリネさんとの結婚を邪魔するなんて…」
「ひどい人たちよね」
「うん、ひどい」
「それでも、スレッタの大事なお友達ではあったわけなので、そこをどいてくれたら見逃してあげるわ」
ダリルバルデを見つめるプロスペラ。
「いやだ」
「あら」
「俺はスレッタを救ってみせる。俺が認めた相手だから。救って…、もう一度プロポーズする!」
「まあ」
純真な意外な答えに驚く一同。
「あ、いや…、とにかく、救う、救うんだ。救う。スレッタを。そのためなら俺は、命を懸けて戦ってもいい。いや、戦うんだ」
「そう、そこまで思われてスレッタも幸せね。でも、容赦はしないわよ」
「覚悟の上です」
「それじゃ、いきましょ。エリクト」
「はい、お母さん」
エリクトとエアリアルの目が深紅に光る。
その視線の先で、ダリルバルデはビームサーベルを構える。