他の作品でお目にかかったことがある方はお久しぶりです。破戒僧です。
今回は『ワンピース』原作の二次創作を書かせていただきました。
いつも通りの見切り発車で、拙い文章になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
第1話、どうぞ。
第1話 スゥ、転生する
自分が『転生者』であることを自覚したのは、4歳の時だった。
とある出来事がきっかけで、頭の中から洪水のようにそれらの……経験したことがない、しかし確かに『あった』と、自分のものだとわかる『記憶』が押し寄せてきた。
その時の私は半ばパニックになっていたため、全く訳が分からなくて、恐怖で変な夢でも見てるのかと思ってたんだけど……しばらく時間をおいて落ち着いて考えてみると、それが『前世の記憶』であることが理解できた。
一度死んで……その記憶を残したまま、今のこの体に生まれ変わったんだと。
そして同時に、この世界が『何の』世界なのかも……理解できてしまった。
前世の方じゃない、今世の方の記憶……その中に、聞き覚えのありすぎる単語がいくつもあった。
『グランドライン』
『海賊』
『海軍』
『電伝虫』
『世界政府』
『悪魔の実』
その他にも色々と……この世界がとある超有名漫画の世界であることを示す情報が、これでもかというほど揃っていた。
否応なしに認識、ないし確信させられた。ここが『ワンピース』の世界だと。
私は、前世の記憶を持ったまま、この世界に『転生』したのだと。
しかも、危険な海賊がこれでもかとひしめいている『グランドライン』の中にあるとある島の、特別でも何でもない一市民の家の娘として。
村を襲撃してきた海賊が、下品な笑い声をあげながら私めがけてサーベルを振り下ろす光景を、なんかやけにゆっくりになった世界の中で、他人事のように眺めながら、そんなことを思った。
☆☆☆
……さて、そんな修羅場からはどうにか生き残ることができたので、まずは自己紹介もかねて、状況を整理していこうと思います。
ああうん、大丈夫だったよ。どうにか生き残れたよ。
どうして助かったのかも今から話すからまずは聞いてくれ。
私の名はスゥ。
フルネームは『ベネルディ・トート・スゥ』。ミドルネームとかあるけど、高貴な生まれとかじゃ全然なくて、ごく普通の一般人の女の子である。あと転生者。
前世的に聞き覚えがない名前なので、原作キャラとかじゃなく、ごく普通の一般人とか、名前もないモブ的な感じの存在なんだろうと思う。
グランドラインの中にある……どの辺にあるのかはいまいち知らないんだけど、とある島の小さな村で、両親と3人で仲良く平和に暮らしていま『した』。過去形である。
数日前、同じ島の別な村が海賊に襲われた、という知らせが入った。
しかも調べてみると、どうやらその海賊の船長は3千万ベリーの賞金首だという。
原作のインフレ具合がアレだから少なく見えるかもしれないが、何の力も持たない一般人からしたら、十分に絶望的な数字である。
懸賞金の額イコール強さ、というわけじゃないにしても、それだけの『危険度』であることは間違いないのだから。
原作で『東の海』のラスボス的な立ち位置だったアーロンが2千万ベリーだった。家一軒を腕力で投げ飛ばしたりするようなアレの1.5倍である。
もっとも、アーロンの場合は『東の海』にきた経緯が少々特殊だったはずだから、額面通りってわけでもないんだろうけど……まあその辺はいい。
とどめにその海賊は、今度は私が住んでいる村を目指して船を出したというからもう大変。
村の自警団で何とか出来るレベルじゃないのは明らかだ。これはもう、悔しいが村を捨てて逃げるしかない、という結論になり、荷物をまとめて村全員で逃げることにした。
しかし時すでに遅し。避難を始めるよりも早く、海賊は港に強引に入港し……村を襲い始めた。
予想通り自警団の人達は一蹴され、家々からの略奪が始まった。
ダメだ死ぬ、コレ絶対死ぬ。子供の体力じゃ逃げるのなんて絶対無理だ。
絶望的な未来を突き付けられて固まってしまった私の前に、ニヤニヤと笑いながら近寄ってくる海賊がいて、けど恐怖とパニックで私は動けなくて。
しかも、タイミングいいんだか悪いんだか、その瞬間私は『前世』のことを思い出し……そのショックで余計に思考停止。
気が付けば、目の前で海賊がサーベルを振り下ろすのが見えて……『あ、死んだ』と思った。
せっかく転生したのに、自覚すると同時に終わりなのかよ、と。
が、どうやら神様――いるのかどうか知らんけど――は、私を見放してはいなかったようで。
サーベルが振り下ろされる瞬間、その海賊が、突然ものすごい勢いで真横に吹き飛んだ。
あまりの勢いに、飛んだ先にあった民家の壁をぶち抜いて反対側に抜けていた。
「ぼさっとしてると死ぬぞ、お嬢ちゃん」
そして、その男をたった今殴り飛ばしたのは……すごく大柄な男の人だった。
その肩には、真っ白なコートを羽織っていて、背中には『正義』の2文字。
素肌のはずなのに真っ黒に染まった拳、というか腕を振りぬいた姿勢で立つ、壮年の男性。
「まあ、まだ小さい嬢ちゃんにしゃきっとしろなんて言うのも酷か……おい、誰かこの子の保護を!」
「はっ!」
壮年の海兵の指示に従って、部下と思しき人が私の体を抱え上げてどこかに運んでいく。
自分の身長よりずいぶん高い所に持ち上げられた状態でふと見ると、さっきまで海賊達が暴れていた村のあちこちで、同じ制服を着た海兵達が海賊と戦っていた。
いや、戦っているというにはあまりに一方的だった。海賊は必死に逃げて防いで、海兵がそれを追い立てて討ち取っているという感じだったから。
ふと見ると、村の中心の広場の入り口あたりに伸びている1人の男……あいつ、ボスの3千万の首の奴だった気がする。顔面がへこんで人相が変わるくらい殴られてるから、多分だけど。
これは後になってから知ったんだけど、どうやら先に襲われた方の村の上役の人達が、ダメ元で海軍に救援要請を出していたらしい。そしてそれを、たまたまこの近くを航行していた海軍がキャッチして、救援に来たんだそうだ。
要請を出したその村の救援には間にあわなかったけど、そのまま海賊を追いかけてこの村を助けに来てくれたらしい。
そしてそのまま、海賊を一網打尽にして村を救ってくれたわけだ。
こうして、辛くも私は命を拾うことができた。
もちろん、死者重傷者も少なくない数出てしまったから、村は決して『無事』とは言えない状況だけど……命があっただけ、全滅しなかっただけ儲けもの、と思うしかないだろう。
『原作』を思い出したからこそわかる。ここはそういう世界だ。『大海賊時代』とはそういう時代だ。
海軍は、村の偉い人達といろいろ難しいことを話し合った後に帰っていった。
村は、生き残った村人達と、他の襲撃された村の生き残り達が集まって1つの村を再建して生きていくという方針になったみたいだ。
幸いにも、私の両親はどちらも、怪我はしたけど命は無事だったので、私も色々と手伝うようにして行けば、今後の生活はどうにかなりそうである。
そしてそれと同時に、今後のことについて私は考えていた。
生活のことじゃなくて、自己防衛とかそういう部分で。
今回は助かったけど、この世界、死亡フラグがあちこちにあるからなあ……そこら中に海賊がいるから、防衛手段を持たない小さな村なんていつ襲われて滅んでもおかしくない。
今回みたくいつも海軍が駆け付けてくれて助けてくれるとも限らない。
だったら自衛のための手段を持っておきたい。持っておくべきだ。
今のうちから少しずつでも鍛えていけば、最低限、自分の身は守れるくらいの力は身につく……かはわからないけど、やらないよりはましなはずだ。
この世界、何せ素の身体能力で巨大な猛獣や海王類を倒すようなバケモノがゴロゴロいる。
どこにでもいるわけじゃないが、いるところにはいる。そういう次元まで、普通の人間が体を鍛えることができる世界だ。
ネット界隈じゃ、某狩人世界と並んで『空気にプロテインが含まれている』とかなんとか言われてた気がする。
もちろん、そういう人は才能もあって適切なトレーニングもしていて、場合によっては『覇気』とか、優秀な武器とか、いろいろ併用してのことなんだろうけどさ。
それでも、純粋な人間でありながらそこまでいく可能性がある世界であることには変わりない。
だったら、やらないよりはやるべきだ。絶対。
もし何かあった時に、『やっておけばよかった』なんて思うことになるのは……嫌だしね。
ところで、今回助けてくれたあの海兵……の、ボスっぽい人、なんか見覚えある気がするんだけど……誰だったかな?
短く刈り込んだ紫色の髪に、腕が真っ黒になるくらいの『武装色』の覇気……気のせいじゃなければ、『大将』って呼ばれてたような気も……
いまいち思い出せないな……前世の記憶、まだ完全に目覚めたわけじゃないのかな?
まあいいか。知らなくても困ったことにはならないと思うし……『海軍大将』が来てくれたなんてラッキーだったとだけ思っておこう。
だからこそ、このラッキーを無駄にしないためにも、きちんと鍛えて強くなりたいもんだね。
しかし、知らない(思い出せない)人が『大将』となると……やはりというか、原作の時間軸とは全然違いそうだな。
あともう1つ。
これも後になってから知ったんだけど……『大海賊時代』、まだ始まってなかった。
新聞見たら、ロジャー海賊団の記事が載ってて、バリバリまだ現役みたいだった。
原作どころか『大海賊時代』すら始まってないのに、こんだけ海には海賊が多いのか……わかっちゃいたけど、やばいなこの世界。
ていうか、今、いつよ?
感想・評価などいただけると作者が狂喜乱舞して、さらなる執筆意欲につながります。
どうぞよろしくお願いします。
なお、『作家』要素が出てくるのは結構後の方になる見込みかもです。
では、今後とも宜しくお願いします。破戒僧でした。