大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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とうとう第100話までくることができました……
……相変わらず連載が短くまとまらない作者で……

これもひとえに、応戦してくださっている皆さんのおかげだと思っています。
感想も全部読んで力にさせていただいております。これからもどうぞよろしくお願いします!

あと、今回で本章はラストになります。

そして、ラストでついに……



第100話 スゥとレオナとスズとアリス、そして…

 

 

 私達3人の朝は、大体、私、スズ、アリスが『川』の字になって寝ていて、ベッドの上で目を覚ますところから始まる。

 ……私が真ん中にいて、一番背が高いから、『川』じゃなく『小』の字かもしれないが。

 

 レオナがここに加わってないのは、けっして仲間外れにしてるとかではなく……夜寝るときはちゃんと一緒に寝てるのに、寝相の悪さゆえに朝は高確率でベッドから落下しているからだ。

 一人用のベッドを3つ横につなげて無理やりラージサイズにしてるので、4人寝ると微妙に手狭なんだよね……。

 

 しかし、うなされなくなったと思ったら、今度は今度で別な問題起こしちゃってまあ…

 

 その後きちんと4人で起きて、それぞれ役割分担してある仕事をこなす。

 

 私はキッチンで朝ごはん作り。

 スズは船内の掃除。簡単に。早く終わった時は、キッチンを手伝ってもらうことも。

 レオナは洗濯。寝間着を含めた4人分の服を、干すところまで1人で。

 アリスは甲板の掃除と、壊れてる個所がないかの確認。几帳面なので適任。

 

 各自の仕事が終わるころには食事が出来上がるので、みんなで一緒に朝食。

 

 食べたらささっと後片付けをして……その後は、日によって違うが、のんびり過ごしながら航海したり、島が見えたら皆で上陸したり。

 

 海賊船とかの襲撃を受けた時には、皆で戦う。

 海軍が相手の場合は、基本的に逃げる。今のところ、娘達が旅に加わって以降は、海軍の船との戦いに発展はしてない。

 

 そんな感じで日中過ごした後、夜はまた一緒にご飯を食べて、しばらくのんびり。

 眠くなってきたら、さっきさらっと述べた通り、ベッドで『小の字+1』になって寝る。

 

 なお、夜間の警戒は『式紙』を複数使ってきちんと行っているのに加え、寝ている間でも私自身は微弱な『見聞色』で周囲を警戒している。

 ほとんど一人旅だった私には必須のスキルだったから、このくらい造作もない。

 

 そんな感じで、私達4人、このところは仲良く楽しく船旅を続けていた。

 傍から見たら……自分で言うのもなんだけど、ほぼ間違いなく『仲のいい家族だな』なんて思われるだろう。そう、割と本気で思っている。実際仲はいいわけだし。

 

 ……まあ、そんな感じの日々を私達は、普段から一緒に過ごしているわけだ。

 

 だから、私としては……とっくに3人を『娘』として受け止めているつもりだったんだが……

 

「いや、そういう意味ではなくての……もちろん、母上がわしらをそういう風に思ってくれていることはよく知っておる。知っておるし、ありがたく思っておるのじゃ」

 

 じゃがな、と続けるスズ。

 

「これはわしらの予想なのじゃが……母上はまだというか、今もなお……わしらを『いつか別れる相手』として見ている気がしておっての」

 

「!」

 

 スズの言葉に、両隣にいるレオナとアリスが『うんうん』とうなずいている前で……私は、多分顔や態度には出さなかったと思うけど、何気にドキッとしていた。

 あまり自分でも意識していなかった部分を突かれたように感じだからだ。

 

 さっき言ったことは嘘じゃない。私は確かに、スズ達3人を『娘』として見ている。

 

 けど同時に、いつまでもそうだと思っているか、と聞かれると……言葉に詰まると思う。

 スズの言った通り、『いつかそうじゃなくなる』とも思っていたから。

 

 というか……そうじゃなきゃいけないと思っているからだ。

 

 身も蓋もない話になるんだけど……私達4人は、本当の親子じゃない。

 本当の親子くらい仲はいいし、そうありたいとも思ってるけど……違うもんは違う。

 

 加えて、いつかは彼女達が行くべき場所へ送り出してあげなきゃいけなくなる……そんな時が必ず来る、とも私は思っている。

 

 レオナは記憶喪失だった。いや、『だった』じゃなくて今もそうなんだけど。

 自分が誰かもわからず、行くあてもなく……かといって『施設』に預けられるのもなんか嫌だ、ってことで……他に選択肢がないので私と一緒に行動し始めた。

 

 スズは、故郷……は『ワノ国』だけど、元々暮らしていた『毒島』が、住民達が皆死んでしまい1人ぼっちになってしまった。その、先に旅立っていったおじいさん、おばあさん達の意思もあって島を出ることに決め、私の船に乗った。

 

 アリスは、元居た国にいられなくなったために私の船に乗った。もともと彼女を狙っていたギャングはつぶしたとはいえ、他のギャング……それこそ、そのギャングの後釜になった連中に狙われないとも限らないし、別に彼女自身、あの国に何も愛着とかなかったそうだから。

 

 三者三様の理由で、船に乗り、私の『娘』になった。そしてそれを、確かに私も受け入れた。

 

 けど、レオナは記憶喪失だから、いつか記憶が戻れば元の家族のところに戻ることになるか……あるいはその時に改めて彼女がどうしたいか考えるだろうと思ってた。

 

 スズは島から出なきゃいけないからっていう部分が比重を大きく占めていた。穏やかに暮らせそうな島が見つかれば、今度こそ彼女の人生を歩むためにそこで降りるかも……とは思ってた。

 

 アリスの場合は、はっきりとした船を降りる理由はパッとは思いつかないけど……それでも、他の2人とも仲がいいし、そのどっちかについて一緒に行くかも、と思ってた。

 

 何より……私は賞金首で、犯罪者で……海賊だ。

 冤罪だとか自覚がないとかそういう問題じゃなくて……もう10年以上もそういう認識で世間に通ってるんだ。そこはもう気にしても仕方ないと思ってあきらめてる。

 

 そんな私と一緒にいれば、彼女達も……それに伴ってやってくる、それなりに過酷な旅路を共にすることになってしまう。

 最悪、犯罪者の一味としてとらえられてしまうようなことだって……

 

 幸い、今のところそういう気配はないけどさ。

 それは、ちょっと、あまりにも……

 

 なんて思っていたからこそ、彼女達は私にとって、たしかに『娘』であると同時に……いつか私という親元から『送り出す』存在でもあったのだ。

 

 しかし、それを見抜いていた娘達は……だからこそこうして、真剣な目で私の前に3人並んで座っていたのである。

 

「遠回しな言い方にするような意味もないからはっきり言わせてもらう。母上、わしらはもう……母上が思っているような『いつか送り出す』なんて扱い、ないしそんな未来は望んでおらん」

 

 私の目を見てそう、言葉通りはっきりと告げてくるスズ。

 続けてレオナとアリスも、

 

「もうあたし達、ここ以外にどこに行くとかそういうの頭にないからさ。母ちゃんに娘として扱ってもらえて、スズやアリスと姉妹としてバカやるのも楽しいし」

 

「お母さんのいるここから旅立って、仮にどんなに住みやすくて平和な島や国に住んだところで、もうボク達、そこじゃ今までみたいに楽しくは過ごせないよ。確信持って言える」

 

「言っておくが、今さっき思い付きで話して決めたわけではもちろんないぞ。ずっと前からわしら3人、そう思っておった。居させてもらっている上で、わしらの方からこんな風に言うのも、少し違う気がしなくもないが……それでも母上。わしらの居場所は……ここじゃ」

 

 軽い気持ちじゃない。思い付きなんかじゃない。

 その意思そのものが宿っていると、見ているだけでわかってしまう、伝わってくるような……子供とは思えない、真に迫る目力。

 

 真剣な表情になっているスズにレオナ。

 アリスは表情こそ笑顔だけど、目は2人と同じで、どこまでもガチだった。

 

 3人の口から次々と出てくる言葉は、決して早口って感じじゃなく……むしろ、一言一言かみしめながら発しているような感じに聞こえてきた。

 けれどだからこそ、私はその一言一言に耳を、心を奪われた……と思う。

 

 

「あたし……目が覚めた時、自分が誰なのかすらわからなくて、どうしたらいいのかもわからなくて……ただひたすら怖かったし、心細かった。何が怖いのかも、どうして心細いのかもわからないんだから、どうしようもなかったよそりゃ。おまけに、よく覚えてるわけじゃないんだけど……寝れば悪夢を見て、能力を暴走させて誰彼かまわず襲い掛かるときたもんだ」

 

「そういう不安も、寝る時の悪夢も、今は収まってるけど……まだ変わらず怖いし、全く不安とかがないわけじゃない。自分が何者で、何を忘れているのかも気になる」

 

「けど、今の私は今の私で間違いなく幸せだし……それをくれたのは母ちゃんだ。ホントの私が今の私とは違ってたんだとしても、今のこの時間を、仮のものだなんて思いたくない。大事にしたいし……ずっとこのままでいたい」

 

 

「わしは……別に、あの『毒の島』での生活も、嫌だったわけではない。あそこにも間違いなく、わしにとって『家族』と呼べる者達はおった。育ててくれたじい様ばあ様達であったり……あまり覚えてはおらぬが、『ワノ国』からわしを連れ出したじい様やばあ様がな」

 

「しかし、あそこに現れて、皆を救ってくれた上に……わしに新しい世界を見せてくれたのは、間違いなく母上じゃ。その行く先で……間違いなくわしは、島にいたままでは知りえなかった、たくさんのものを見て、知って、触れて、味わった……わしの人生が、その時始まった気がした」

 

「全部、母上と出会ってからなんじゃ。でも、わしはまだまだこんなもんじゃ足りん。もっともっといろいろなものを知りたいし、見てみたい。それをきっと、じい様ばあ様達も望んでくれて、送り出してくれたんじゃと思う……そしてそれらは、これからも母上と一緒に歩んで見ていきたい」

 

 

「まあ、言うまでもなく、お母さんのことは大好きだよ。一緒に行くって決めた時からそうさ。……もっとも、全く打算がないわけじゃなかったけどね。一緒に行けば楽しいし、安全だし、食いっぱぐれることもない。望まない仕事をして苦しむことも、自分を押し殺すこともしなくていい」

 

「でもそれと同時に、そういう打算なしでも……そういうの全部取っ払った上でも、一緒にいたいって思ったのも本当なんだ。損得勘定抜きでも、人って一緒にいられるものなんだって、そう思えるものなんだって……お母さんには、ううん、スズにもレオナにも教えてもらった」

 

「毎日がすごく楽しくて嬉しい……それだけでも幸せなのに、もっともっとボクが知らない、想像もできないような世界がまだまだあるんだよ? だったらそれらも全部、お母さんや2人と一緒に見たいし、知りたいし、生きていきたい。この3人で、もっともっと楽しく幸せになりたい!」

 

 

 だから。

 声が揃う。

 

 

 

「「「これからもずっと……わしら(あたし達)(ボクら)の母親でいてください」」」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 もう、作家になってだいぶ経つ。

 物語にしたもの、しなかったものを含めて……随分と色々なもの・ことを想像してきた。頭の中で思い描いて、出来上がった小さな世界に喜んだり悲しんだり、怒ったり楽しんだりしてた。

 

 そんな私でも……記憶にある限り、想像もしなかった光景であり、展開だ。

 

 子供3人に真剣な面持ちで頭を下げられ……しかもそれは別に、イタズラしちゃってごめんなさいとか、そういうしょーもない系の理由じゃなくて……大の大人でもこんな風に覚悟決めて話してくるようなことってあるかな、と思えてしまうような、重い内容。

 

 それを受け止めるこっちの心にも、ずっしりと重いものを感じていた。

 

 けど、それは決して嫌に思えるようなおもさじゃあない。

 むしろ、心地いいというか、嬉しいというか……

 

 ……ああ、まさにあれだな。子育てするときのお父さんやお母さんの感想でよく聞く奴。

 子供の重さは、抱き上げる腕には厳しいけど、心にはすごく嬉しくて幸せだ、っていうアレ。

 

 こんなに立派なことを……しかもこんなに真剣に、私みたいな、まだ数か月も一緒にいない仮の親に言ってくれて……

 ああ、いや、もうこういう言い方はダメなんだな。この子たちは、望んでないんだ。

 

 そんな風に考えてしまっている私自身……もう、頭の中で答えは出ていた。

 聞いている途中から、もう、なんか……こう答えることしか頭の中になかった。

 

 もしかしたらこれは、これから口から出てくる言葉は、その場の勢いとかテンションで出てきたものなのかもしれない。いや、きっと、いや間違いなくそうだと思う。

 

 でも、それでも……これは間違いなく、私の本心でもある。

 

 ばん、と机をたたく私。

 いきなりのことに、びくっと震える3人。

 

 しかしその目の前で、『覚醒』技である『エニグマ』を発動した私の力で、私と3人の間に置かれていた机が紙に変わる。

 これ邪魔だったんだ。あとで元に戻すから、いまはちょっとどける。

 

 そして、それで空いたスペースを横切り……椅子に座ってぽかんとしてる3人に、直進で近づいて行って、私は……

 

 

「っ……あんたら……大好き!!

 

 

 思いっきり、3人とも抱きしめた。

 

 しばしぽかんとしていた3人だったが……すぐに、ぎゅっと全力で抱きしめ返してくるのを感じながら……私もまた、この子たちに幸せにしてもらっているんだなあ、というのを痛感していた。

 

 ……ああ、なんだ。私もか。

 もうコレ、この子達と離れるの……とっくに無理っぽいじゃん。今知れてよかった。

 

 ……子育てって、親が子供に教えて育てるだけじゃなくて、親も子供から色々なことを教わっていくものなんだ、って話……ホントなんだなあ。今、身に染みた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そんなわけで……なりゆきでなった『親子(仮)』が、本格的に『親子(血は繋がってないけどガチ)』に変わりまして……しかし、そうならそうで色々と考えなきゃいけないことはある。

 娘たちよ、それが何かわかるかい?

 

「序列!」 ← スズ

 

「修行!」 ← レオナ

 

「色々!」 ← アリス

 

「うーん、全部正解なようなそうでもないような……とりあえず聞いてくか。じゃまずスズ。『序列』って何ぞ?」

 

「うむ、これで晴れてわしら3人、姉妹じゃろ? であれば、わしらの序列というか順番というか……まあ早い話が、誰が姉で誰が妹か、ということじゃ。……まあ、これは実はもう決めてあるんじゃが」

 

 ああ、そういやさっき『長女』とか言ってたっけな。スズ長女なの?

 

「うむ。長女争いでレオナとじゃんけんをして、わしが勝ってそう決まった」

 

「うぅ……一番最初に母ちゃんの『娘』になったの、あたしなのに……」

 

「まあまあレオナ、どの道ボク達全員同い年(多分)なんだからいいじゃないそのへんは」

 

「レオナとスズで……ってことは、アリスは長女希望しなかったの?」

 

「うん、ボクはこの船に乗ったのも一番最後だし、全然学もないからね。まだまだこれからってことで、三女にしてもらった。で、次女がレオナね」

 

 なるほど。知らんところでいつの間にか順番が決まってたのか。

 長女スズ、次女レオナ、三女アリスね。うん、覚えた。

 

 じゃ次、レオナのはどういう意味……ってまあ、これはなんとなくわかるけどね。

 

「あたし達これから母ちゃんと一緒にいくなら、海賊とか海軍とももっと戦うことになるだろ? その時母ちゃんの足手まといになるようじゃ全然だめだから……もっと強くならなきゃダメだ!」

 

「道理じゃな。わしらは母上の『娘』でいたいとは言ったが、被保護者になりたいわけではない……母上と共に歩んでいきたいと望んだんじゃ。あれだけ啖呵を切って、母上もそれを受け入れてくれたんじゃから、わしらもきちんとそっちの努力もせんでどうする」

 

「いつもの人攫いとかもすでにそんな感じだもんね。ボク達を人質にしてお母さんをどうこうしようとか普通にしてる。万が一にもそんなことになっちゃダメだから……うん、ボク達も強くなるってのは急務だね」

 

 レオナの提案は、3人とも共通の認識として『必要だ』と受け入れられたらしい。

 

 最後に、アリスの……『色々』って具体的には?

 

「これから先必要なことなんて、それこそいくらでもあるでしょ? 今2人が言ったこともそうだし……社会に関する勉強とか、航海術その他の知識とか、その他旅に必要な家事とかモノづくりのスキル……勉強すべきことは色々、いくらでもある。並べたらそりゃきりがないし、時間なんていくらあっても足りないくらいだよ」

 

 すらすらとそんな風に並べ立てていくアリス。やっぱこの子頭の回転早いな。

 

「それに……お母さんについて、まだ私達が知らないこと、教えてもらってないこととかね」

 

「む? 母上について……じゃと?」

 

「どういうことだー、アリス?」

 

「コレについてはさっき解決したことではあるけど、お母さんは僕達のこと、いつか『送り出す』つもりだったでしょ? いつか別れると思ってたからこそ、言う必要はない、言わなくていい……って思って黙ってたこととか、あるんじゃないかなって。……いや、変な邪推だったらごめんね?」

 

 そして、こんな風に鋭いと来たもんだ。

 さっきは『学がないから』とか言ってたけど……ホントに純粋に『知識』とかの蓄積がないだけであって、そういうのをきちんと身に着ければ……アリス、すごく頭よくなるよね、きっと。

 

 まあそんな未来への期待はさておいて……確かにあるな、私……3人に言ってないこと。

 

 色々あるけど、一番は……やっぱアレだな。

 これから彼女達が、私の『娘』になる……つまりは家族になるんだ。

 

 だったら、同じ『家族』のことは、きちんと伝えておかなくちゃいけないだろう。

 

 現在まだ公にはなっていないものの。一応今、私が『所属している』といっていい……とある海賊団のことを。

 そして、そこにいる……『パパ』のことを。

 

「というわけで……今から行こうか」

 

「その『パパ』に会いにか? 母上の『パパ』……父親となると、わしらにとっては祖父じゃな」

 

「うん。さすがにあんた達3人を『娘』にするなら……きちんと話通さないとね。文字通り他人事じゃないわけだし」

 

「ふーん……どんな人なんだ?」

 

「どんな、か……。説明に困るな……いや、説明するのが難しいわけじゃないんだけど……率直に言っちゃうなら、結構な悪党だね。海賊だってことを差し引いても、そこそこ極悪かも」

 

「え、そうなの? 何か意外だな……お母さんのことだから、割と話の分かる、結構善人寄りな人じゃないかな、って思っちゃってたよ」

 

「いやまあ、話が分かる部分はあるんだよ……年の割に理知的ではあるし、損得勘定もできるし……筋さえ通ってれば交渉もできる。あと、結構お茶目で面白い。でも……割と何というか、昔気質の『海賊らしい海賊』ではあるかもね。非情・冷徹・残酷……な部分も持ってる。……まーでも、何だかんだで身内には優しいかな。昔よりは丸くなったって言ってたし」

 

「ちょっと不安じゃな……有名な海賊なのか?」

 

「有名かどうかで言えば、めっちゃ有名で、なんなら超がつくくらいの大物だけど……時代がちょっと変わってるから、今時の子は知ってるかなー……? ……よし、コレをこうして、と」

 

 言いながら私は、体内に『紙』にして収納していた『永久指針(エターナルポース)』を取り出し、操舵室に行って、舵輪のすぐそばに備え付けてある棚の上にセットする。

 これで、指針を見ながら船を操縦できる。行先まで迷うことはないだろう。

 

 もっとも、海じゃなくて空を飛んでいくつもりだから、一直線で行くし……さすがに迷わないと思うけどね。

 

 それに、なんならホントは『永久指針』も必要ないかもだし。

 私、その人のビブルカードを体内に収納してるから、感覚で方角わかるもん。めったに本拠地を離れる人じゃないから、いるでしょここに。

 

 念のため、先に着くように『式紙』でさっき手紙出しておいた。

 

「空飛んでいくの? でも前にちらっと言ってたけど、空飛ぶの疲れるんだよね?」

 

「まあ、今いるここからならそんなに遠くないはずだから大丈夫だと思うよ。というかそもそも、空飛ばないと行けないからさあ、あの島」

 

「空飛ばないと行けない……って、どういうことじゃ?」

 

「っていうか母ちゃん、この『永久指針』……行先コレ、何て読むんだ? め、ま……めーばー? めらびゃー?」

 

「ああ、それはねレオナ……」

 

 

 

 

 

『メルヴィユ』、だよ」

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

「……何ですか親分、この手紙は?」

 

「笑えるだろ? さっきスゥの奴から届いたんだよ。あのバカ娘、婿もらうより先に母親になっちまったんだと」

 

「またそんなお気楽そうに笑って……傘下の海賊達への説明はどうするんです? お嬢がいきなり子供連れてくるなんて、また何言われるか……。お嬢自身の紹介の時にも結構な騒動になったじゃないですか」

 

「でも何事もなく収まっただろ? あいつも何も考えてねえわけじゃねえ。今回も、どうにかする算段くらい立ててんだろうよ。手紙にも、割と見所のあるガキだって書いてあるしな……むしろ、会うのが楽しみだぜ」

 

「親分の期待に応えられるようなのがそうそういますかねえ……まあ、そういうことなら普通にお迎えするということで、門番達には伝えますよ」

 

「おう。まあ、お前も気楽に待っとけ。俺の勘だが、お前が心配してるような事態にゃならねえよ……ガキだからまだ色々甘ェところはあるんだろうが、それでも俺のお眼鏡にも十分叶うと思ったからこそ、あいつもここに連れてくることを決めたんだろうしな。そうやって、あいつがきちんと考えた末の判断であれば、信頼して、期待していい。今までもそうだったろ?」

 

「まあ……確かにこちらの予想を色々ぶっちぎっては来ますね。毎度毎度……『竜骨』然り、『珍獣王の角』しかり……度肝を抜かれるようなとんでもない土産も多いですし。ぶっちゃけ血筋ってものを感じるハチャメチャ具合です」

 

「おうよ、そりゃあそうだろう……」

 

 

 

 

「何たって俺の『娘』だからな! ()()()()()()()()!!」

 

 

 

 

 





はい、とうとう『パパ』が出てきました。
予想できていた皆さん、お見事です……感想欄で、思ったより早い段階でばれてましたね……

これにて本章はラストですが、次回、メルヴィユ編……ではなく、回想が終わったって言うことで、一旦時間軸が『現在』に戻ります。
……パパ編はその後かなあ。
近々書こうとは思ってますが。

今後ともどうぞ拙作をよろしくお願いします!
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