大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第115話 スゥと捕虜(仮)生活と急展開

 

 

 目が覚めると……客室っぽい部屋の天井が目に入ってきた。

 柔らかく体が沈み込んでいる感触から、ベッドに寝かされているんだな、ってこともわかった。

 

 ……気絶する直前までのことは、やたらはっきり覚えている。

 

 『覚醒』能力をフルパワーで使って戦って……けど、時間切れまでに倒しきれなかった。

 スタミナが底をついて……途中で力尽き、墜落した。

 

 ……あの瞬間、死の直前にあるアレみたいに、周囲の景色がやたらスローになって感じられてさあ……そのせいで、自分が負けたというか、これから負けることがはっきりわかって『ええ……マジかよ』みたいな気持ちになったことまで、はっきり覚えてるんだよ。

 

 その後、気を失う間際になんだか、誰か、あるいは何かに抱え上げられたような感覚があったようななかったような……まあどうでもいいか。

 

 なので、次に目を覚ますときは牢屋の中かな……とか思ってたんだけど、予想が外れたな。

 

 あちこち痛むのを我慢して上体を起こそうとすると……力を入れようとしたとたんに、体から力が抜けていくのがわかった。

 

 体力がまだ戻ってないからかな、と一瞬思ったけど、違った。この感覚……前に覚えがある。

 力を籠めようとすると、それとは逆に力が抜けるというか、入らなくなる感じ。

 

 左腕に違和感があったので見てみると……見覚えのない腕輪がつけられていた。

 

「……ま、そりゃ拘束くらいするよね。牢屋じゃなかっただけありがたいわ」

 

 恐らくは海楼石製であろう、そのアクセサリーは……マリージョアで『天竜人の妻』をやってた頃と同じように、能力者である私から力を奪うものだ。

 コレつけられてると、能力はもちろん覇気も使えないんだよね。力込めようとした段階で抑え込まれるから。

 

 純度が低い奴なのか、普通に動くくらいなら問題なさそうだ。感覚的に分かる。

 

 捕まるの久しぶりだなー、なんてのんきに考えていたわけだが、

 

「おォ、起きたか」

 

 しげしげとアクセサリーを眺めていると、部屋の扉が開いて、シキとDr.インディゴが入ってきた。顔にちょっと絆創膏張ってあるけど……普通に元気そうだな。

 

「……勝負は私の負けですか」

 

「そういうことだな。……だがまあ安心しろ、負けたからって直ちに部下になれとか。そこまで言うつもりはねえからよ」

 

 え、そうなの?

 

「ああ、勝ち負けははっきりつけたとはいえ……明確にこっちに反感抱いてるような奴をそのまま迎え入れても、信頼性に難があるのは否めねえからな。獅子身中の虫をわざわざ作る気はない」

 

「『金獅子』だけに?」

 

「上手い」

 

 『それな!』とか言わんばかりにびしっとこっちを指さして言ってくるシキ。

 ……ちょいちょい思ってたけど、この人割と茶目っ気あるよね。

 

 そのせいか、普通に悪党であること以外はそんなに嫌いな感じしないんだよなあ。

 ……あるいは、心のどこかで『実の父親だから』って言う理由で、何かしら……私の中で感じるものがあるんだろうかね。

 

 まあだとしても、ピュアな悪党の悪行三昧の片棒を担ぐ気にはなれないんだけど。

 このご時世、肉親の情なんて所詮はその辺どまりだよね。

 

 ……けど逆に言えば、『その辺どまり』であっても、決してゼロじゃないのかもな……と、私は今も心のどこかで思っていたりするわけだが……。

 

「それで……私これからどうなるんですかね? 今はなんかいい部屋に入れてもらってますけど。ひょっとして見逃す感じで解放されたりします?」

 

「それはさすがにするわけにはいかねえな。さっき言った通り、そのまま無理やり仲間にする気はないが……だからといってこのまま見逃したんじゃあ、俺の海賊としての沽券にも関わる。何かしらの形で落とし前はつけてもらわねえといけねえよ」

 

 ですよねー……こんなん着けてるってことは、少なくとも好きにさせる気はない、逃がすつもりはないってことですもんね。

 しかし、落とし前ってどういうことすればいいんでしょうかね? 海賊の流儀とか全然知らないからわからんのよ。

 

「作家の先生なんだろ? 自慢の想像力で当ててみろよ」

 

 ニヤニヤ笑ってそう言ってくるシキ。

 むぅ……そんなこと言われてもなあ。そういう、〇〇な職業なんだからこういうの得意でしょ、って言う感じで無茶ぶりしないでほしいんだが、

 

 お笑い芸人に『何か面白いことやってよ』って突然言うのが嫌われるキラーパスであるのと同じようにさ、作家だっていつでもどこでもアイデアが湧いてくるわけじゃないのであって……

 

 まあいいや、ええと、落とし前落とし前……

 

「腕……指……足……目……耳……」

 

「さらりと出てくる想像が容赦なくおっかねえなこの娘」

 

 あれ、違った? 『ヤ』のケジメ系はないか……そうなると、別なジャンルで……

 

「強制労働……地下王国……臓器……代理母……苗床……生贄……」

 

「想像力豊かってのは必ずしも魅力的な人物像には結びつかねえのかもしれねえな」

 

「私としてはソゥとの血縁関係をより強く確信させられる光景に戦慄してます」

 

 さっきから好き勝手言ってくれるなあ……。

 そんなに言うなら答え教えてくれよ。

 

「だからまだ決めてねえっつってんだよ。うちの海賊団のために何かしらさせることは確かだが……まあいずれ決めるからそれまで待ってろって話だ。しばらくはここに滞在してもらうぜ」

 

「ま、嫌とも言えない身の上ですしね……わかりましたよ。部屋は? ここですか? それともやっぱ牢屋とかに移る感じで?」

 

「ここにこのままでいい。お前の手首のそれがあれば、物騒な真似は出来ねえだろうし……ああ、このアジトから出ると爆発するからそれ。妙な気は起こすなよ」

 

「えぇ……怖。まあ、出なきゃいいだけなら了解しました。閉じ込められるのは割と慣れてるんでどっちでも大丈夫ですけどね」

 

「どんな人生送ってきたんだお前? ……まあ俺もインペルダウン入ってたことあるけどよ」

 

「あれって割と退屈が敵だったりしません? 足枷とかつけられて体ろくに動かないし、ずっと同じ場所で同じ景色しか見えないから息がつまるっていうか……」

 

「あーあーわかるわかる。何でもいいから代わり映えのすること起こらねえかなって四六時中思っててよお。新聞とかも読めねえから、やること全然なくてもう暇で暇で……いっそ拷問でもいいから刺激をくれって思ったもんだぜ」

 

「いやあ、さすがにそこまでは私思う気にはなれないかなあ……まあ私の場合は、牢番をやってた海賊さんが割と軽い調子の人だったんで、自分の暇つぶしも兼ねて話し相手になってくれましたからそんなに苦痛ではなかったかもですけど」

 

「何だよ恵まれてんなあオイ、俺なんか何話しかけても無視されるか『いや、何も』しか言わねえんだぜあそこの看守共。お前も一回入ってみたら1か月くらいでそう思うって絶対」

 

「えーでも全然私Mとかじゃないんですけどぉ……」

 

「……何で牢獄談議に花が咲いてるんですか、親子そろって」

 

 呆れた様子で横からDr.インディゴが突っ込んできた。

 

 いやでもマジでこれ、感想とか価値観を共有して駄弁れる相手がいない話題だからさ、不覚にも面白くなって話が弾んでしまった。

 

 シキも同じだったらしい。いっけね、とでも言わんばかりに、頭をコツンと自分で叩いて『てへぺろ』……おっさんがやっても需要無いって。さすがに見苦しいわ。

 

「何だとコノヤロー、お前だってやってんじゃねえかよ」

 

「私はほら、自分で言うのもなんですけど、割と見た目には自信あるし、需要ありますって」

 

「でもお前もう27だろ。二十代後半で『てへぺろ』ってお前……四捨五入したら30だぞ。親としてどんな目で見守ってやったらいいのか……困るわ」

 

「いやギリ行けますって。こないだも新聞で『世界美女・美少女海賊トップ10』入りましたし。あんま自覚ないけど私って美女らしいんですよ」

 

「それはすげえけど、多分それでお前に投票した奴の大半はお前の中身を知らないからこそなんだろうな……」

 

「すいません、非常に仲がよさそうなとこ申し訳ないんですが、話が脱線しまくってますよ親分、お嬢。今後のこと説明するために来たんでしょう?」

 

 再度Dr.インディゴが軌道修正してくれたので、さすがに今回は茶々を入れることはせず、それに従って話の続きに進む。

 

 ……というか……『お嬢』?

 何その、任侠一家の三代目の孫娘の数学教師が呼ばれてそうな呼称は? ……立場的には割と近いな……。

 

「ええ、シキの親分の娘ですので、『お嬢』とお呼びしました」

 

「でも私、部下になるつもりはないから、何かの形でけじめつけて出ていきたいと思ってるんだけど……」

 

「それは今んとこ、だろう? ここで過ごすうちにもしかしたら心変わりするかもしれねえじゃねえか。まあ、ひとまずそう呼ばせとけ」

 

 えー……まあいいか。

 とりあえず、なし崩し的に加入とかさせられないようにだけ気を張っておけばいいや。

 

 ……まさか、心変わりして本格的に海賊の片棒を担ぐようになんて……なりゃしないだろうしね。この私が。

 

「ここから出るのを禁じる以外は、まあ特に何をしててもいい。飯は好きな時間に好きなもんをここに届けさせる。……せっかくだ、この部屋とか、向かいの書庫とか……色々見て回りゃいい」

 

「この部屋はともかく……書庫……ですか?」

 

「ああ。お前の母親……ソゥが残した文献やら何やらがそこに収められてる」

 

「!」

 

「まあ、研究内容的に重要なもの……資料とか論文については、現行のラボに移して保管してありますから……個人的に持っていた書籍だとか、そのたぐいのものしかありませんがね。でも探せば、何か彼女にゆかりのあるものがあるかも」

 

 ……なるほど。

 

 それなら……外出らんなくて暇だし、お言葉に甘えて色々見させてもらおうかな。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 それから数日。

 私は、捕虜……というには好待遇すぎる環境の中、『金獅子海賊団』のアジトでお世話になっていた。

 

 何もしなくても一日三食食べられて、外に自由に出られない以外はほぼほぼ何してもいい……マリージョアで一年ほど過ごしたあの期間と同じような生活である。

 

 周りの人から無駄に敬われて扱われてる点も含めて。

 今回は見世物じゃなくて、暫定とはいえ『金獅子の娘』として扱われてるが故だが、

 

 小説を書くのとかも特に禁止されなかったので、時間がある時に、程度にではあるが、時々ペンを取って思いついたことを書き記している。

 

 そして、こないだ言われたとおり……私の実の母である『ソゥ』という人が残したという本を、毎日書庫に行ってちょっとずつ読んでいる。

 そのほとんどは、研究用とか勉強用の専門書みたいなやつ――の、中でも、Dr.インディゴが持って行かなくていいと判断したもの――だったので、読んでも仕方ないだろこんなの、と思ってたんだけど……

 

「そんなにというか、全くのちんぷんかんぷん、ってわけでもない……な」

 

 不思議なことに……割とわかる。

 間違いなく初めて勉強する分野で、初めて触れる知識のはずなのに……全部とは言わずとも、割とどれもスッと頭に入ってくる。

 

 医学、薬学、化学、生物学、工学……その他諸々。

 

 私、『文豪』だからガチガチの文系だと思ってたんだけど……ホントは理系脳だったのか?

 それとも、母親からそのあたりの才能が遺伝してた……とか?

 

 あるいは……

 

(『超人化』……肉体性能だけの改造じゃなくて、頭脳の方も何かいじられてた、とか? いやでも、それはそもそも失敗してたんだもんな)

 

 ま、何か損してるわけでもないし……知識が増えるのはいいことといえばいいこと、か。

 

 ……それにしても、読んでも読んでも全然減らないな、この書庫の本……何千冊あるんだろう。

 ちょっとした学校の図書室くらいの量は確実にあるぞ。これが個人の蔵書だとは……

 

 ……私の実母は、ここにある本を全部読破して、その内容を覚えてたんだろうか。

 だとしたら、シキ達の言う通り、とんでもない頭脳の持ち主だと評価されてしかるべきだろうけど……

 

 そんなことを考えながら、私は次の本に手を伸ばす。

 

 しかし、ここまで専門書その他が続いていたので、次もそうだろうと思って開いたそれは……予想とは違うものが記されていた。

 というか、そもそもコレ、本じゃなくて……

 

「……日記、か?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ところ変わって、本船の艦橋。

 備え付けられた玉座に座り、葉巻をふかすシキに、Dr.インディゴは尋ねていた。

 

「それで、シキの親分……お嬢のこと、結局どうなさるんです?」

 

「どうすっかな……自分から協力してくれりゃあ、そりゃあ頼もしい駒になるのは間違いねえんだが……さすがはあの女の娘というか、今の時点でもう、立派なじゃじゃ馬だったしよ。下手に人質なんて持ち出して脅した日にゃ、100%『獅子身中の虫』になるぜ?」

 

「難しい所ですね……そもそもすでに身寄りと呼べるものが、ソゥを含めて死に絶えていますから、人質になり得る者がいないですし……」

 

「まったく……やっかいというか、扱いに困るもん残してくれたもんだ、あのアホ女」

 

 普段のシキであれば、人質でもなんでも使って、手段を択ばずに自分に忠誠を誓わせるところではあるが、色々な意味でそれが通じない……というか、使えない相手。

 

 しかも……シキ自身、なんとなくスゥに対して、そういう手に出ることを、ほとんど無意識のうちに忌避している……というのがまた、シキにとってはほぼ初めての感覚であり、それによる困惑も合わさって、シキは今後のスゥの扱いを決めかねていた。

 いっそ何も考えず、何も求めず、このまま放逐して以後不干渉にしてしまおうか、とすら考えたほどだ。

 

(親と子ってのは、こういうもんなのかね……? 理屈に合わねえ感情が、理由も何もわからないまま、しかし確かに自分の中にある……おかしな感覚だ。だが、不思議と不快感はない)

 

「……例えば、ニューゲートやリンリンであれば知ってんのかね、これを……」

 

 片や、海賊船の仲間達を『息子』と呼ぶ古老。

 片や、実際に血のつながった子供達を幹部に据えて海賊団を結成した女傑。

 

 自分と違って『家族』というものを知っているであろう、2人の昔馴染みを思い出して、シキはぽつりとつぶやいた。

 

 ぽつりとつぶやいたその言葉は、しかし小さかったからか、近くにいたDr.インディゴにも聞こえていなかったようだ。

 

 その代わりにではないが、Dr.インディゴはさらに尋ねてくる。

 

「そういえばシキの親分……なぜあの時、ソゥのことを正確に説明しなかったので?」

 

「? 何の話だ?」

 

「ソゥが出産間近になった頃、別な病にかかってしまった、というあの部分ですよ。あの説明の仕方だと、親分の判断でソゥを船から下ろしたように聞こえてしまうかと思いますが」

 

「実際にそうだろうが。嘘は何も言ってねえぞ」

 

「ええ、嘘ではありません……ただその前に、ソゥが自決を試みたところが抜けているのは……さすがに説明としてどうかとふと思いまして」

 

 27年と少し前……ソゥが出産目前にして病にかかり、『超人』を出産することが絶望的となってしまった時のこと。

 ソゥは、自分の最後にして最高の傑作となるはずだった我が子が、常人と同じかそれ以下の力にまで劣化してしまったという事実を前にして……絶望した。

 

 そして、『父親』として協力してもらいながら、最後にして最大の実験が失敗に終わってしまったことをシキに伝えて謝罪し……償いとしてこの場で殺してくれ、と申し出ていた。

 それがだめなら、自分で命を断とうとまで考えていた。

 

 しかしシキはそのどちらも許さず……残り僅かな命でも、最後の最後まで生きてみせろ、とソゥに伝え、命じた。

 

「確かにお前は最後の最後にしくじった。だが、俺のために長年尽くしたという事実と功績は本物だ……それらまで全部否定するんじゃねえ。それに、お前の腹のガキは、まぎれもなく俺の子だろうが。兵士として役に立たなくなったからって、自分もろとも粗末に扱おうとするんじゃねえよ」

 

「どうせ残り少ない命だろう、わざわざ刈り取ってやる意味もない。最後まできっちり生きてみろ……そんで、産めるなら、ではあるが……きちんとその子供も産んで、諸々全部託して、最後の瞬間まで一緒にいてやれ……きっとそれで分かるというか、感じることもあんだろ。知らんけどな」

 

 そしてシキはさらに、適当な島で捨ててくれと言ったソゥを、事前に調べてあった、彼女の血縁者……妹の『クゥ』が暮らしている島まで送り、そこで下ろした。

 

 ソゥの絶望をそのままにしていれば、そもそもスゥはこの世に生まれることもなかった。

 その時情けをかけた理由は、シキ自身上手く説明できない……これもまた、不思議な感情のもとのことだったのだが……それはさておいて。

 

「そのことを説明すれば……まあ多少なり恩に思わせたりして、こちらに天秤を傾けることもできたかと思いますが」

 

「だといいがな。まあ、いずれにしろ……」

 

 

 しかし、シキが何かを言おうとした……その時。

 

 

 

 ―――ドォォオォン……!

 

 

 

「……!? 何事だ!?」

 

 突如として響き渡った、砲撃、ないしは爆発音。

 しかも、明らかにこの島船の外側から……何度も何度も、立て続けに聞こえてくる。

 

 モニターを監視しているオペレーター全員に檄を飛ばし、確認を促すシキ。

 

 異常事態の原因はすぐに分かった。モニターの1つに、その光景がでかでかと映し出される。

 

「これは……海軍の軍艦!?」

 

「馬鹿な、ここは空島……シキ様の手引きがなければ上がってくることができない領域だぞ!? いったいどうやって……」

 

 何隻もの海軍の軍艦が、本拠地たる島の周囲の海に浮かび……その砲撃を島に、あるいはあちこちの施設に浴びせているという光景だった。

 

 部下の1人が言った通り、どうやって部外者……どころか、不俱戴天の敵である海軍がこんな場所に来れたのかはわからないが、そこにこうして来てしまっているのに変わりはない。

 

 そのあたりは後で解明するとして、シキはひとまず、今まさにここを攻撃してきている軍艦をさっさと排除することを決めた。

 島の周囲、軍艦が浮かんでいるあたりの海水を一部浮かせるのをやめる。

 

 そうすれば、海水と一緒に軍艦も落下していき、海面に叩きつけられて木っ端みじんになる……と、考えてのことだったが……次の瞬間、

 

 

 

 ――― パ キ ン

 

 

 

 その周囲の海水が全て……軍艦もろとも、それらを固定するような形で……凍り付いた。

 島と一体化してしまったため、そこだけ切り離して落とすことができなくなり……軍艦から固定砲台に形を変えはしたものの、砲撃はさらに続いていく。

 

 その光景を見たシキは……この場に、これらの軍艦を率いて誰が来ているのかを察した。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そして、その海軍船の1つ……その甲板にて。

 アイマスクをつけた大柄な男が、気だるそうな態度のまま、部下達に指示を出していた。

 

「これでよし……と。そんじゃ、後はよろしくな……そろそろ『金獅子』が出てくるだろうし、俺はそっちの対処に回るからよ」

 

「はっ! 了解いたしました!」

 

「どうかご武運を…… 大将“青キジ”!」

 

 

 

 

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