大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第121話 スゥとシキと近況報告

 

 

 久々にメルヴィユに帰ってきた私は、とりあえずパパに会いにいった。

 基本的にメルヴィユから動くことのない人なので、なんならアポなしで行っても普通に会えるのだ。

 

 とはいえ、一応毎度きちんと一声かけてから行くようにはしてるんだけど……今回はしないでしまった。

 たまたま近くまで来たから『寄ってくか』くらいの気持ちで来ただけだからね。

 

 パパとはここ数年ほどで、随分とフランクな感じで接することができるようになった。

 一応最初のうちは敬語とか使ってたんだけど……いつの間にやら今ではため口に近い感じだし、パパの方もそれに対して何も文句とか言うこともない。

 

「ひとまず調子はよさそうだな。今度は『アスカ島』とかいう島に行ったんだって?」

 

「うん。まあ、そんなに派手な面白さがあったわけじゃないけど……面白い財宝?は手に入ったよ。手に持った瞬間呪われて破壊衝動に支配されるっていう妖刀だけど」

 

「何だそのおっかねー武器……てか、それ手に入れたって? お前は大丈夫だったのか?」

 

「うん、多分アレ、多少覇気使えれば、少なくとも飲まれることはないと思う。見た目は綺麗だったし、くれるって言うからもらっちゃった」

 

 言いながら、私はパパに、体内にしまってあった「七星剣」を取り出して見せる。

 

 パパはその刀身を『ほー……』と感心したように眺めながら、

 

「なるほど……確かに、中々の名刀のようだな。……使われてる金属が一体何なのかわからねえから、材質的な出来栄えはわからんが……世に知られていれば、『位列』を持っててもおかしくないレベルだろうぜ」

 

「そうなんだ……パパが言うと信憑性があるね、やっぱ」

 

 何せ、パパも元は凄腕の剣士だ。

 名刀『桜十』と『木枯らし』の2本を振るう二刀流で、海賊王の時代から暴れまわっていただけあって……刀剣にも理解が深く、その目利きは頼りになる。

 

 そのパパが名刀だって言うなら、やっぱりこれはただの儀礼用の剣じゃなかったんだろうな。

 

「だが……言っちゃ悪いが手入れが全然されてねえようだな。いや、されてねえわけじゃねえが……刀の取り扱いに見合っちゃいねえ」

 

「あー、呪われた剣とか何とかいわれて、遺跡の一番奥に、石棺に入れて放置されてたっぽいからね……鞘すらなくてむき出しのまんまで。一応、私の知識でできる限りの手入れとかメンテはちょこちょこしてるんだけどさ。最初よりずいぶんマシになったんだよ?」

 

「そうか……なら、もう少し続ければ面構えがよくなるかもな」

 

 私は『七星剣』を体内に再度収納しつつ……ふと、パパの足元を見た。

 

 パパは、インペルダウンから脱獄する際、自分で自分の両足を切り落として足枷から解放されるという荒業を使った。

 海楼石の足枷さえなければパパは能力で飛べるので、『痛い』以外は逃げる時に困りもしなかったそうだ。さすがは大海賊……覚悟の決まり方も常人を大きく突き放してるな。

 

 どこぞの世界では『足なんて飾りです!』なんて名台詞を言った人もいた気がするけど、だからってそれを人体でやってのけるかね。

 

 あーでも、ワンピース原作でも他に、ゾロとブロギーが手足切り落としたり引きちぎって拘束から逃れようとしてたっけ……みんなすごいなー(遠い目)。

 私だったら怖くてそんな方法絶対取れないよ。そうしなきゃ脱出できないとしてもさ。

 

 で、その両足の代わりに、それまで手にもって使っていた『桜十』と『木枯らし』を取り付けて『足』にしていた。

 私と戦った時とかもそうだったけど、蹴りで『飛ぶ斬撃』を放ったりね。よくもまあ、そんなことができるもんだよ……大海賊の呼び名は伊達じゃないな。

 

 しかし……それは数年前までの話。

 実は、今は違う。

 

 『桜十』と『木枯らし』は、2本ともかつての昔のように……パパの腰に納まっている。もちろん、きちんと鞘に納められ、手入れもきっちりされ……いつでも抜ける状態でだ。

 

 そして、数年前まで足の代わりに刃がきらめいていたそこには……ロボットか何かの足を思わせる、細身だがメカメカしい外見の、黄金の義足が取り付けられていた。

 

「義足の調子はどう? 何回か微調整した、って聞いてるけど」

 

「あァ、すこぶるいいぜ。普通に歩けるのはもちろん……戦闘もばっちりこなせるようになった」

 

 見せびらかして自慢するように、ガチャガチャと音を立てて義足を動かすパパ。

 

 この義足は、私を『金獅子海賊団』に迎え入れた後、今後のことを考えてパパが装着することを決めたものだ。

 

 私や『青キジ』との戦いで、己の力が昔よりも大きく衰えていることを痛感したパパは、このまま衰えるばかりではいけないと思い……あらゆる手段で己を鍛え直し、力を取り戻すことにした。

 いつか来る、『金獅子のシキ』復活の時のために、20年で衰えた無様な姿をさらすわけにはいかないから、って。

 

 パパにとって、2本の足刀は脱獄の勲章みたいなものだったけど、それをあえて捨てて、より安定した力を求めて義足を作った。

 パパお抱えの技術者達に加え、私からテゾーロに頼んで紹介してもらった技師さん達の協力も得て作られたそれは、非常に高性能な仕上がりになっている。パパ曰く、普通の足で歩いているのと感覚的にはほとんど変わらない、というほどの仕上がりだそうだ。

 

 きちんと地面を踏みしめて足場を安定させられれば、強力な攻撃と崩れない防御に繋がる。

 

 さらに、いくつもの武器が仕込まれて隠してあって……これそのものが、以前までの『足刀』と比べてもそん色ないくらいに強力な武装になっているのだ。

 刃も仕込まれてるから、足振るって飛ぶ斬撃を出す技とかも、変わりなく使えるし。しかもその刃も、『位列』こそないけど、名刀と呼べる武器を組み込んだって言ってた。

 

 さらに、強度自体も、戦いにも十分に耐えうるそれを誇っている。

 歩いたり走ったり跳ねたりはもちろんのこと、蹴飛ばしたり薙ぎ払ったりしてももちろん問題ない。覇気をまとわせれば、岩だろうが鋼だろうが蹴り折れる。

 

 この義足の慣らしや、元通り両手で使うことになった2本の刀の慣らしにも、それなりに苦労したそうだけど……どうやらその甲斐はあったらしい。

 なんとなく感じ取れるけど、パパ自身の威圧感とか、覇気もより強くなっているように感じる。

 

 もし今後パパが戦うようなことになれば、両手に剣を持ち、両足から斬撃やら何やらを放ち、能力で自在に空を飛び、色々なものを飛ばして戦うという、昔と同じかそれ以上にとんでもない戦い方を見せてくれそうだ。

 

「……それに、前のままだと……歩くたびに床とか傷ついたり、地面に刺さったりしてたもんね」

 

「それな」

 

 何せ抜き身の刃だからなあ……ただ歩くだけで、切っ先が床に突き立てられるから、そのへん傷だらけになっちゃうし、木とか畳の床なら削れるわ刺さるわで……。

 メンテナンス担当の人、地味にめっちゃ大変そうだったもの。傷つくたびに修繕して……

 

 柔らかい地面とか砂地とかだと、立つこともできないもんね。刺さって沈み込んじゃうから。

 まあパパだから、能力で飛べば別になんてことはないんだけどさ。

 

 ……あと、そのことに気づいてしまってから……幹部たちの集会の時とかに、畳の床を傷つけないように、床から2ミリだけ浮いて細心の注意を払いながら移動してるパパを見て、ヤダこの人お気遣い出来てる……なんて思って笑いそうになったこともあったり……

 

 ……うん、やっぱ義足作って正解だったよ。

 

 パパ自身時々言ってたもん。『何であの時の俺は刀なんか足として使おうと思ったのか…』って。今になって考えると微妙な選択だったって自分でも思うらしい。

 考えた結果、『たぶんノリと勢いとかだった』って結論出してた。

 

 なお、パパは武器と義足以外にも、パパが力を取り戻すためにやっていることはあり……実はその一部には、私も絡んでいたりする。

 もちろん、トレーニングの相手をするとかそういうの以外でだ。

 

 よく見ないとわからないけど、前よりパパ、血色もよくなってるし……筋肉も少し増えたんじゃないかな?

 ということは、私の協力で作った品も役に立ってるようだ。

 

 何かというと、『竜骨』や『珍獣王の角』、その他いろいろな材料を配合して作った栄養補助食品……サプリメントである。

 

 体を動かして鍛えるようにしていても、どうしても老齢による衰えばかりは止めることはできない。

 しかし、それならせめてそのスピードを緩やかにしつつ、衰えを補い、調子を整え、体を少しでも元気にすることができれば……と思って開発したのがコレだ。

 

 結構効果はあるようで、前よりも体が動くようになってきた……と聞いてる。

 全盛期とまでは言わなくとも、私や『青キジ』と戦った時よりもかなり力を増している。その差は、漂ってくる覇気にも乗っているようだった。

 

 あと、前より食欲も増して若い頃みたいにがっついて食べられるようになったし、代謝が上がって汗かくようにもなったし、目のかすみとか疲れ目もなくなったし、夜トイレに起きることもなくなったし、歯の知覚過敏も治ったし、髪の色つやもよくなったし、乾燥肌も治ったし、寝つきも目覚めもよくなったし、昼仕事中に眠くなることもなくなったし、口内炎も治ったし、髭を剃る時にカミソリ負けしてヒリヒリすることもなくなったし、偏頭痛も治ったし、腰痛も治ったし、アジトから出る時に『寒ッ』ってなるのを必死でこらえなくてよくなったし、高血圧も治ったし、関節痛も治ったし、歯槽膿漏も治ったし、その他色々とにかく体がすこぶる快調だって言ってた。

 

 ……これは……サプリメントの効果すげえなと思うべきなのか、それともうちのパパそんなに体にガタ来てたのかよ加齢って怖いな、と思うべきなのか……

 あと、普通の高齢者みたいな症状も意外と多く発症してたのね。知らんかった。そら衰えるわ。

 

 ……そういう体の不調がなくなって嬉しかったからかもしれないけど、なんかパパの性格自体も前より丸くなってたような、そうでもないような……

 

 そんな感じでしばし雑談していると、コンコン、と扉がノックされた。

 

「失礼します、親分……おや、お嬢もこちらでしたか」

 

「あ、Dr.インディゴ、お疲れー」

 

「……ああ、もうそんな時間か。そういや、お前から研究成果の報告を聞かせてもらう予定入れてたっけな」

 

「あ、そうなんだ。ごめんねそんな時に突然押しかけてさ。……私、そろそろおいとましよっか?」

 

「いや、せっかくだからお前も聞いてけ。意見があったら聞きたいしな。構わんな、Dr.インディゴ?」

 

「ええ、もちろん。どうぞお座りください、お嬢」

 

 そう言われたので、それなら遠慮なくってことで……パパのソファの隣に座り直す。

 Dr.インディゴは、私達と対面の位置になる場所に座って……手に持ってきていた箱の中から、何かを取り出して……机の上に置いた。

 

 それは……だいぶ特徴的な見た目を持つ、1つの果実だった。

 

「これ……悪魔の実?」

 

「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。お嬢、『 SMILE(スマイル)』はご存知ですか?」

 

「最近裏ルートで流通するようになった、『人造悪魔の実』だよね? 『動物系』限定の」

 

 原作にも出てきた……ドレスローザであのチンピラグラサン鳥41歳が作って流通させてた奴。

 シーザー・クラウンの協力で作り出した『SAD』とかいう薬品を原料にして、小人族を騙して働かせて栽培してたっていう。

 

 食べれば、普通の悪魔の実と同様に能力者になれるらしいが、人造だから何かしらのリスクもあるらしい……ってところまでは、原作で知ってた。

 

 で、ここからが転生後、この世界で実際に『SMILE』に関する情報を聞かされて知った内容なんだが……

 

 

・食べて力を得られる確率は10人に1人。残り9割はハズレ。

・ハズレを引くと、能力は得られず、しかしカナヅチにはなってしまう。

・ハズレを引くと、怒りや悲しみなどの感情を失い、笑うことしかできなくなってしまう。

・当たりを引いたとしても、普通の能力者のようにオンオフが利く変身とかではなく、体の一部が動物に変わるとか、動物の体の一部が生えてくるとか、キメラ的な異形になることが多い。

 

 

 とまあ、中々にリスキーな能力であることがわかる。

 戦力として大きなものにはなるんだろうけど……ハズレを引いた場合のリスクが怖い……。しかもあたりを引いたとしても異形の見た目になるとかやっぱり怖い……。

 

 私だったら、タダでもらえたとしても食べたくないわ……。

 

 よくこんなもん流通させて商売成り立ってたな、ドフラミンゴ……苦情とか来なかったのか? 大枚はたいて『SMILE』を買ったとしても、ハズレでカナヅチになるだけかもしれないと、商品として扱うにもギリギリアウトなのでは……。

 その分当たりを引いた時のリターンが大きいからか、それだけ上手く世渡りしてたのか……

 

 まあ、そのへんは今は置いておくとして、

 

「ご存じの通り、闇の仲買人『ジョーカー』とやらが流通させ始めている『人造悪魔の実』。それが『SMILE』です。生産方法などは不明とされています。……まあ、予想はつきますがね。以前1つ手に入れて分析してみた際に、あらかたの仕組みはわかりましたから」

 

「ほう、さすがだなDr.インディゴ」

 

「ありがとうございます。そして、問題のこちらですが……これも『人造悪魔の実』です。ただし、『SMILE』とは全く別な……我々のラボで新たに開発したものです」

 

「!? マジで!?」

 

「マジです」

 

 そう言われて私は、あらためてその……Dr.インディゴ曰く『人造悪魔の実』をよく見る。

 

 確か私の記憶にある限りでは……普通の悪魔の実は、色や形は多種多様だけど、唐草模様っぽいそれが果実の全体に入っている、という特徴だったはず。

 

 対して『SMILE』は、リンゴみたいな見た目に、二重丸っぽいマークが何個もちりばめられている、という感じ。

 

 しかし、今目の前にあるのは……リンゴみたいな見た目ではあるが、全体が炭治郎カラー……もとい、市松模様になっているという、これまた不思議な見た目の果実だった。

 普通の果実じゃないのは一目でわかるが……これが?

 

「ええ。といっても情けない話、私がゼロから作ったわけではないのですがね。これは、お嬢の母……ソゥが骨子を作成していたそれを元に研究を進め、解析した『SMILE』や、お嬢が持ち込んでくれた様々な素材によって得られたデータ、そして我がラボの傑作『S.I.Q』を基に作った……全く新しい、そしてそれ以上に、『異質』と言うべき『人造悪魔の実』。その名も―――」

 

 

 

 

 

「――― TABOO(タブー)……です。」

 

 

 

 

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