大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第126話 スゥと麦わらの一味

 

 

Side.三人称

 

 遡ること数分前。

 

「ほらルフィ、あんたその変な『雲』で遊んでないでさっさと船に戻って。行くわよ」

 

「え~、もうちょっと~……」

 

 自分の船の上から呼ぶ声を聴いて、夢見心地な気分のままそう返す、麦わら帽子をかぶった1人の青年。

 彼の名はモンキー・D・ルフィ。つい先ほど、仲間達と共に、この『空島』にやってきたばかり。

 

 見た目はいかにものんきそうな様子であり、実際かなりマイペースで気分屋なところがある彼は、一見そうは見えないのだが、れっきとした海賊である。

 それも、その首に1億ベリーもの高額な懸賞金のかかる、中々の大物だった。

 

 今はこうして、小さな『島雲』の上に乗り、そのふわふわとした……ふっくら膨らんだ布団のような温かく柔らかい感触を楽しんでいる最中であり、怖さや威厳といったものはかけらも伺い知ることはできないが。

 同じ海賊船に乗る仲間であり、ノリも大体同じ感じであると言える2人……ウソップとチョッパーと共に、ふわふわの雲に乗って遊んでいた。

 

「ほら早くしてってば! 早くしないとまたさっきの牛仮面みたいなのが襲ってきたら困るでしょうが!」

 

「うおっ……そ、それは確かに嫌だな……よし、そろそろ戻るか」

 

「そ、そうだなウソップ。ほら、ルフィも行くぞ!」

 

「え~……」

 

 その様子を見ていて呆れたような航海士・ナミが一喝すると、ウソップとチョッパーは素直に船に戻ってくる。好奇心よりも恐怖の方が勝った様子だ。

 

 先程、空に来た直後に、仮面を被った何者かに――ゲリラ、と呼ばれていた――襲われ、危うく船を沈められそうになったのは、まだ記憶に新しい。

 その窮地を救ってくれた、どこか独特で珍妙な雰囲気の『空の騎士』との語らいも。

 

 ルフィも仲間達に急かされ、しぶしぶ船に戻ろうとするが……途中で、ふと何かに気づいたように、『ん?』と斜め上の空を見上げた。

 

「おい見ろよ、アレ、でっけー鳥が飛んでんぞ」

 

「え、鳥? あ、ホントだ……よく見えたわねあんた」

 

 つられてナミがその方向を見ると、かなり遠くにだが、言葉通りに鳥が飛んでいるのが見えた。

 この距離で見えるとなると、かなり大きいだろうと予想できた。

 

 もちろん、魚やタコもいる、そして人も住んでいるらしい空なのだから、鳥くらい飛んでいてもおかしくはないのだろうが、ルフィは何かを考えついた様子で、にかっ、と笑う。

 

「なあなあ、腹減ったしアレ食おう!」

 

「あ? お前さっき『空魚』の料理食ってたじゃねえか」

 

「魚も美味かったんだから、空にいる鳥も美味いぞきっと! 味とか色々違うかもしれねーし。なーサンジ、飯作ってくれよ!」

 

「お前はそればっかりだな全く……けどまあ、正直俺も、さっきの『空魚』の例もあるし、空の食材って奴には興味あるな。獲ってきたら作ってやるぞ?」

 

「やった!」

 

 呆れたようにため息交じりに言う剣士・ゾロや、こちらも呆れつつも、料理人としての興味も確かにある様子のコック・サンジの視線を受けながら、ルフィはびよーん、と腕を伸ばし、前方にある大きな島雲をつかむ。そして、その勢いを利用して……

 

「ゴムゴムのォ~……!」

 

「……ねえ、変じゃないかしら、あの鳥? さっきから同じ場所にずっと滞空しているわ。しかも……翼をほとんど動かさずに。どうして、というか、どうやって……」

 

 そう、ぽつりとつぶやくように言った、考古学者・ロビンの声は、残念ながらルフィには届かないままに……ルフィの体は、ゴムの反動で勢いよくそこから射出された。

 

 

「ロケットォー!」

 

 

「ドギャス!?」

 

 

「「「…………ん?」」」

 

 ルフィがその大きな鳥(?)に頭から激突する形でぶつかった瞬間……あきらかに鳥の鳴き声ではない、人の声……というか、悲鳴のようなものが聞こえた。

 海賊船に乗っていたクルー達は全員、反射的にそれに注目する。

 

 そして次の瞬間、突然その鳥が目の前から消え……

 

「人!?」

 

「え、何アレ、どういう……ていうか、落ちるわよ!?」

 

 

 

 ―――ドボォン! ×2

 

 

 

「お嬢ぉぉおおぉっ!?」

 

「ちょっ、お嬢様!? い、一体何が……あんた達、緊急事態よ! 助けに行きなさい!」

 

 

 

「! おい見ろ、あんなとこに船が!」

 

「え!? あ、ホントだ……雲の影になってて気づかなかった!」

 

 次いでゾロが、雲の陰になっていてメリー号からは見えなかった位置に、小型の船がいて……それに乗っている2人の女性が、泡を食った様子になっているのを見つけた。

 そのうちの1人の視線は、たった今ルフィが激突し……そして、2人共が墜落・着水してしまった位置にまっすぐ向いている。

 

「サンジ君、ルフィを助けに行って!」

 

「了解です、ナミさん!」

 

「ていうか今、ルフィと一緒に誰か落ちなかったか!? 鳥の上に載ってたのか……てか、鳥も消えちまったように見えたぞ!?」

 

「上に乗っていた誰かが指示していたから同じ場所に滞空していたのね」

 

「そいつも落ちちまったんなら、一緒に助けた方が……あれ? 何か、向こうの方から、すごい速さで泳いできてないか!?」

 

「っ……さっきのと同じ空魚か……いや、違うな。あれは……魚人!?」

 

 

 

 

 

 そして……時は、現在に戻る。

 

 

 

 

 

「あんたら一体何なんスかぁ!? 何を初対面どころか出会い頭に、うちのお嬢を海に突き落とすような真似をォ!?」

 

「むしろ出会ってもないうちだったけどね……それで、本当に何なわけ? 見たところ海賊みたいだけど……喧嘩を売ってるってことでいいのかしら?」

 

 怒髪天を衝くといった様子の茶髪に褐色肌のメイドと、メイドほどではないものの苛立っている様子の金髪の美女……ルプーとハニーは2人共、海賊船『ゴーイングメリー号』の甲板で、『麦わらの一味』に詰め寄っていた。

 目の前で、彼女達にとっての主であるスゥが、飛んでいたところをいきなり撃墜されて、しかもそのまま雲の海へ落とされてしまったのだから、当然ではある。

 

「いやホント……ごめんなさい。心から」

 

「うちの馬鹿が申し訳ねェ」

 

 そんなもっともな怒りを受けて、きちんとぺこりと頭を下げて謝罪しているナミとウソップ。

 全面的に自分達が……というか、船長であるルフィが悪いので、これは仕方がない。

 

「テメェコラクソ船長! 何をお前こんな麗しのレディをひどい目に遭わせるような真似をしてんだコラァ! 怪我がなかったからよかったものの……オロすぞボケナス!」

 

「す……ずび……ばぜん、でじだ……」

 

 そのルフィはというと、攻撃した相手が鳥ではなく人間、しかもとびきりの美女だったという事実を知って激怒したサンジによって速やかにボコボコにされていた。

 顔面の面積が3倍くらいになるほど殴られ蹴られ、煙を上げて突っ伏しながら謝罪している。

 

「お姉様、ホントに大丈夫?」

 

「げほ……大丈夫大丈夫、ちょっと水飲んじゃったけど、別にケガも何もないし。ありがとね、皆」

 

「このくらい当然です! というか、あなた達本当に何のつもりなのよ!」

 

「もう少しでお姉様が溺れてしまうところだったじゃありませんか! さっきハニーが言ったことを繰り返すようですが、私達に喧嘩を売っているのですか!?」

 

「い、いやいやそんな滅相もないですレディ達! これはその、このバカの勘違いというか、不幸な事故でして……」

 

「へぇ……仮に売ってるんだとしたら、買ってくれんのか?」

 

「うぉいゾロ!? お前まで変なこと言いだすなよ!?」

 

「ごめんなさいホントごめんなさい。うちの連中控えめに言ってバカばっかなの、謝るからこの通りホント許してお願い」

 

 慌てて否定するサンジに、なぜか好戦的で不敵な笑みを浮かべるゾロ。それを必死で止めるウソップとチョッパー。

 謝罪しつつナミと、その途中からロビンも加わって、ひとまず現状、どうしてこうなったのかを説明していく。ルフィの食欲と好奇心に始まった、勘違いによる事故だということを。

 

 怒りや苛立ちを露わにしつつも、一通り説明を聞いた被害者サイドは、『そういうことか』と納得はしたものの、だからといって即座に『ならいいよ、許す』とは流石にならない。

 ほぼ全員、不満や苛立ちの残る表情のままで……唯一大して気にしていなさそうなのは、被害者本人であるスゥくらいだった。

 

 もっとも、そのスゥはというと、

 

(いやあ、参ったな……まさかこんな形で原作主人公達と知り合うというか、関わることになるとは。予想外というか予定外というか……タイミングなんでこんなドンピシャだったんだか。用事だけさっさと済ませて出会う前にさよなら、ってのはもう無理になっちゃったなあ)

 

 怒りとかそういうのよりも優先して他のことを考えていただけだったりするのだが。

 

「まーまー皆もういいよ。害意があったわけじゃないみたいだし、無事だったんだからそれで」

 

「けどお姉様、死ぬところだったんですよ!? お姉様能力者だから、泳げないんだから!」

 

「そういう時のためにリュビ達を連れてきて、こうして助けてもらえたんだからいいじゃない。私もまあ、何も思わないわけじゃないにしても、だからってここから更に喧嘩とかになっちゃうのも面倒でしょ?」

 

「ご命令さえもらえれば、私が1人でこいつら全員ぶっ飛ばすっスよ、今すぐにでも。時間はかけさせないっす」

 

「ほぉ……?」

 

「だからその笑みやめろゾロ! 何なんだお前今日なんか物騒なそんな……」

 

「俺達が悪かったからそういうこと言うのやめてくれ! コエーし、喧嘩も嫌だよ!」

 

 必死で双方で好戦的なことを言ったり、態度でそれを示す者達を止めるウソップやチョッパー。それはもう必死で、チョッパーに至っては涙目である。

 

 その『物騒な笑み』の裏でゾロは……目の前にいる女性ばかり6人のチームから漂ってくる、強者特有の気配を鋭敏に感じ取っていた。

 

(強ぇな、全員……何者だ一体? 『お嬢様』とか『お姉様』とか呼ばれてたが、どこかの金持ちの道楽での旅行中、って様子にも見えねえし……)

 

 勘ぐっているうちに、どうにかスゥが『誠心誠意謝罪してもらったので受け入れる』という方向でその場の話をまとめていく。

 まだ不満はありそうではあるが、スゥがそう言うならと、ルプーをはじめとした、スゥの仲間達もひとまず矛を収めることにしたようで、ウソップ達もほっと胸をなでおろしていた。

 

「……ん?」

 

 するとその直後、スゥが何かに気づいたように、きょろきょろとあたりを見回し始め……メリー号の外、少し斜め下のあたりを見ながらその視線を固定した。

 突然のことに、何かあったのかと、その場にいた全員が注目する中、スゥは、

 

「ルプー、ちょっとこっち」

 

「はい、何スか?」

 

「何か来るみたいだからお願い」

 

「はい? 何かって……ああ、ホントっすね」

 

 少し遅れてルプーもその『何か』に気づいた様子をみせた、次の瞬間……白い雲の海を突き破るようにして、大型の平たい『空魚』が姿を現した。

 大きな口を開け、その鋭い牙の並んだ口で丸かじりにでもするつもりかのように、メリー号目掛けて襲い掛かってくる。

 

 が、ルフィやサンジが拳や足を出すより、ゾロが刀を抜くよりも早く……

 

 

「―――そりゃあ!!」

 

 

 ―――ズドォン!!

 

 

 目にもとまらぬ速さて飛び出したルプーが、振り上げたその足で繰り出した飛び蹴りが、空魚の頭に命中。

 凄まじい音を立ててその巨体を持ちあげ……どころか、空高く蹴り飛ばしてしまった。

 

 メリー号のマストのてっぺんよりも高い位置まで、その長い体の全体が打ち上げられた空魚は、その時点で既に絶命しており……そのまま墜落し、ぷかぷかと雲の海に浮いていた。

 

 麦わらの一味全員が一瞬の出来事に呆気に取られている前で、『褒めて褒めて』とでも言いたげによってきたルプーを、頭をなでてかわいがるスゥ。

 たった今見せたすさまじい威力の蹴りを前にして、唖然とする一同の中で……

 

「……そうか。どこかで見たと思った……」

 

 考古学者・ロビンが、スゥの顔を見て……何かを思い出したように、ぽつりと呟いた。

 

 

 

 




Q.なんでスゥ、前話であんなにあっさりルフィの攻撃食らったの? 『見聞色』とか使えるはずなのに?

A.世の中にはギャグ補正とか、展開の犠牲者とかいう、何者も抗えない法則が存在していましてですね……まあぶっちゃけそんな感じです。


Q.なんでいきなりクロスオーバーキャラ(ルプー)出したの? 唐突すぎない?

A.これに関しては、ちょっとネタバレになりそうなので詳しくは触れられないんですが……作者の趣味(クロスオーバー大好き)と、とある伏線回収のためが半々、ってとこですかね……。詳しい理由は、今後本編で。
 まあぶっちゃけ、こういう展開にした理由も含めて、大部分はノリなんですが……苦手な方いましたらすいません。
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