大文豪に私はなる!   作:破戒僧

13 / 306
第13話 スゥ、能力者になる

 

 

 その海賊船がそこを通りがかったのは、全くの偶然だった。

 

 その船の船長が、ちょうど甲板で食事をしながら海風に当たって涼んでいたところに、見張り番からその報告が上がってきた。

 

「あ? 小舟が一隻浮かんでるだと?」

 

「へい。人も乗ってるようで……どうしやすか、船長?」

 

「ほっとけ、そんなもん……いや、待てよ? 確か最近、このへんで闇商人の船が一隻沈んだって話があったな。何でも、大口の取引の途中で嵐にあったとかで……」

 

「! もしかしてその生き残り……なら、何か金目のものでも持ってるかもしれねえぜ」

 

 海賊達は、こちらも小舟を出して船員を何人か向かわせ、隣に寄せてその小舟に乗り移った。

 乗っていたのは1人の少女。相当長い間遭難していたのか、かなり痩せて衰弱してしまっているのがわかった。

 

 しかし海賊達は、その少女には興味を示さず、つまらないものを見たかのような目で一瞥すると、その少女が傍らに置いていた袋をつかみ取る。

 中を見ると、宝石など、いくつか金目のものが入ってはいたが、期待したほどではなかったため、舌打ちしながらそれらを抜き取った。

 

「船長、たったこれっぽっちです」

 

「何だよおい、しけてやがんな……そんな小さな宝石じゃ、飲み代にもなるかわかんねえぞ」

 

「全くですね。まあ一応貰って……ん?」

 

「! どうした、おい」

 

「ああいや、この女よく見たら、首に首輪が……奴隷だったみたいっすね」

 

「例の闇商人の船に乗ってた奴隷かもしれませんね。逃げ出したはいいものの、漂流して力尽きちまった、ってとこだと思います」

 

 大したものはなかったと知り、一気に興味をなくす海賊の船長。

 つまらなそうな表情で、手に持っていた骨付き肉を食いちぎり、咀嚼しながら、

 

「何でもいい。貰うもん貰ったらさっさと戻れ、船を出すぞ」

 

「わかりやし……あん?」

 

 船員達が本船に戻ろうとした時、その中の1人が不意に足を止めた。

 見ると、やせこけた少女の手が、自分の足を縋るようにつかんでいた。てっきり既に死体だと思っていたが、どうやら息があったらしい。

 

 しかしその男は、鬱陶しそうに顔をゆがめると、『放せガキ!』と蹴飛ばすようにしてその手を振り払った。

 だが、少女はなおも手を伸ばして男の足をつかもうとする。

 

「ちっ……しつけえなこの死にぞこないが……」

 

「おい、何モタモタしてんだ! さっさと戻って来ねえか!」

 

「す、すいません! こいつ、まだ息があったみたいで……」

 

「いちいち構ってんじゃねえよタコ! 邪魔だってんならいっそ今楽にしてやれ!」

 

 撤収に手間取り、船長に怒鳴られたことも合わさって、苛立ちをさらに募らせた海賊は、腰にさしていたサーベルを抜き放つ。

 そして、鬱陶しい瀕死の少女をただの死体に変えるべく、その首元目掛けて振り下ろした。

 

 その一撃は、正確に少女の首を捕らえ、見事に首と胴体を泣き別れにさせて、その命を刈り取った―――

 

 

 

 ―――そう、誰もが思った……その時だった。

 

 

 

「……ん?」

 

 異変に最初に気づいたのは、サーベルを振り下ろしたその男だった。

 2つの違和感に、彼は気づいた。

 

 1つ目は……人間の首を斬ったというのに、全くそれらしい手ごたえがなかったこと。

 いくら痩せているとはいえ、肉や骨を断ち切ったのであれば、それなりに硬い感触があるはず。それなのに……まるで空振りでもしたかのように、ほとんど手ごたえがなかったのだ。

 

 そしてもう1つ、血が全く出ない。生きている、心臓が動いている人間の首を断ち切ったのなら、かなりの勢いで血が噴き出すはずだし、当たり前だが剣にも血が付くはず。

 なのに、それが全くない。

 

 おかしいと思って、その少女の亡骸をよく見ると、

 

 

 

 ―――ぱらり

 

 

 

 男の目の前で、少女は……斬られた場所から、その体が薄くめくれあがっていった。

 ぱらり、ぱらり、と、剥がれてほどけていく。

 

「は?」

 

 困惑する男の目の前で、少女の全身が……痩せた体も、落ちた首も、全てが無数の『紙』になって周囲に広がり……そして次の瞬間、小舟に乗っていた男達に襲い掛かった。

 

「「「うぎゃああぁぁあああ!?」」」

 

 無数の紙に襲い掛かられた男達は、一瞬後には体中を切り裂かれて血まみれになっていた。

 絶命したのか、それともショックで気絶したのか、倒れて、あるいはそのまま海に落ちて動かなくなる。

 

 本船でそれを見ていた海賊達が驚愕する間に、今度はその無数の紙は舞い上がり、自分達が乗っている船目掛けて殺到する。

 そして、甲板のちょうど人がいない一角に集まっていき……再び人の形になった。

 

 先程まで船の上にいた、痩せた少女がそこに立っていた。

 ふらついて今にも倒れそうではあるが……船長が見たその少女の目は、らんらんと輝いていた。まるで、飢えた獣のように。

 

「こ、こいつ……能力者か!?」

 

「船長! トーバル達がっ!」

 

「……! お前ら、こいつを殺せ!」

 

 船長の号令で、海賊達が一斉に武器を構える。

 

 剣を、槍を、銃を、その他さまざまな武器を構えて、自分達の船に乗り込んできたその少女を殺そうと、一斉に襲い掛かり……そして、失敗した。

 

 斬撃も、弾丸も、少女にはまるで効果がなかった。少女は全ての攻撃を、その身を『紙』に変えてかわしてしまった。

 

 そして、

 

「う……うわあぁぁあ、紙が、紙が襲ってくる!?」

 

「い、痛ぇ!? こ、この紙、斬れるぞ!?」

 

「やめろ……畜生、やめろ、こっちに来るな! あぁああ!」

 

 船全体で吹き荒れる紙の嵐。

 1枚1枚がまるで刃物のような切れ味を持ったそれらに、海賊達はなすすべもなく蹂躙され、切り刻まれていった。

 

 たっぷり1分ほども続いた地獄の紙吹雪は、海賊達の悲鳴や怒号が1つも聞こえなくなると、ようやくやんだ。

 

 そして、後に残されたのは……無数の海賊達の亡骸と……

 

 その中心で、海賊達が食べていた途中の食事を夢中で貪る、1人の少女だけだった。

 

 

 

「……がつがつ……っ……ぉげっ、はっ……げほ、げっほ……げほっ……もぐもぐ……ごくごく……ごくん。……ん? …………あれ、ここはどこ? 私は何を?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 えーっと……1回状況を整理してみようか。

 

 何がどうなって、私はこんな場所に……どこぞの海賊船に乗ってて、しかもその乗組員の方々が全員死体になって転がってて……その中心で私は食事なんぞしているの?

 

 なんか意識というか、記憶が飛んでる気がする……あ、でも頑張れば思い出せそう。

 

 そうだ、確か小舟の上で、もうそろそろ限界ってところまできてたんだけど……なんか、まだずっと遠くにだけど、船がいそうな気配がしたんだっけ。

 そしたら、それから何時間後かにホントに船が現れて、ああ気のせいじゃなかった、助かった、って思った。

 

 もっとも、その時私、半分もう意識ない状態だったから、そう『思った気がする』って程度の記憶なんだけど。

 

 けど、それは海賊船で、私の持ってた金目のものだけ持ち逃げされそうになったから、そりゃないでしょせめて助けてよ、ってな感じで足をつかんで……

 そしたら逆切れされて、剣で斬られて殺されて……いや、違う。

 

 殺されたと思ったら生きてて、その後…………ああ。

 

「そっか、コレ、私がやったんだ」

 

 ようやく思い出して納得した私は、死屍累々の惨状を前に、ぽん、と手を打った。

 

 そして、手に持ってる骨付き肉を一旦お皿に置いて……その手に意識を集中してみる。

 すると、手がぱらりとほどけて『紙』になった。

 

「……あの『悪魔の実』、本物だったんだ」

 

 これが私の能力か……体が紙になるんだ。面白いな。

 

 しかし……こんなのワンピースにあったっけ? 少なくとも、私が知ってる限りでは、出てきてなかったように思うけど……。

 

 まあ、気にしても仕方ないか。本編には出てきてないけど、設定としては存在している悪魔の実とかかもしれないしね。

 

 ひとまず……命の危機を乗り越えることができたことを喜ぼう。

 

 

 

 ひとまず食事を終えて一休みした後、私は次に何をすべきか考えて……ひとまず、この船はそっくりそのままいただいてしまうことにした。

 ちょうどついさっき、乗組員が全員お亡くなりになったところなので、構うまい。

 

 まず、海賊の死体は全部海に捨ててから、血まみれになってしまった甲板を掃除。

 

 次に、船の中の倉庫とか食糧庫を物色。

 おっ、大人数乗ってただけあって、食料はたっぷりあるな。

 

 金目のものも結構積まれてる……略奪してきた後だったんだろうか?

 量的に1人で全部いただくのは厳しそうなので、よさそうなものはより分けて、袋にでも詰めておく。後からすぐに持ち出せるように。

 

 その他の部屋も1つ1つ確認して、めぼしいものを集めていく。

 

 船長室と思しき部屋で、『永久指針(エターナルポース)』をいくつかと、海図や航海日誌を手に入れることができた。

 あと、死体の1つが『記録指針(ログポース)』を腕にしていたので、それも貰っておいた。

 

 航海記録から、今だいたいどの辺にいるのかもわかったので、ここから一番近いと思われる島へ向かうことにする。もちろん、このままこの船を使わせてもらって。

 『エリート奴隷教育』の中で、最低限ではあるけど、航海知識も叩き込まれていてよかった。

 

 ただ、海賊旗は下ろしておこう。海軍の船とかに見つかったり、島に行くときに騒ぎになるのは面倒だし。

 

 

 

 

 

 この後私は、数日間の航海の末に、目的地に定めていた島に無事たどり着くことに成功。

 そして、持ち出せる分の食料と金品を持ち出して、海賊船を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 それと、参考までにもう1つ。

 

 この度めでたく『悪魔の実の能力者』となった私なわけだが……食べた実が一体何だったのか、それを私が知ることができたのは……それよりもさらに、しばらく後のこと。

 

 とある島でたまたま読むことができた『悪魔の実図鑑』に目を通した時に……それらしきものを見つけることができた。

 

 

 超人系『パサパサの実』

 

 

 体を紙に変えることができる、『紙人間』になるというもの。

 分類的には超人系(パラミシア)だが、自然系(ロギア)のように、体が原形をとどめないタイプの能力。

 多分、コレだな。

 

 

 

 




★どうでもいい豆知識★

『パサパサの実』

体が無数の紙になる『紙人間』になる悪魔の実。

本作オリジナル……ではなく、ゲーム版に登場したもの。
正確には、そのゲーム『ナナツ島の大秘宝』のボスキャラがコレの能力者だった。
20年くらい前のやつなので、知ってる人いるかどうか微妙だが。

そのゲームでもほとんど説明とかはなかったので、今後この作品内では独自設定マシマシで書いていく予定です。ご理解ください。

今後ともよろしくです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。