大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第130話 スゥと最初の『試練』

 

 

 ご存じの通り、私達の船は飛べるので、その気になればまるっとショートカットして『生贄の祭壇』まで行くことも可能である。

 しかし、せっかく向こうからこんなお膳立てして舐め腐った真似してくれてるんだから、あえて敵の思惑に乗ってやろうと思います。

 

 あと、こっちがあまりに想定外の行動をした場合に、向こう側がどういうリアクションをしてくるかわからないので、そこに対する警戒もある。

 

 ルフィ達と一緒にアッパーヤードに入った私達は、途中の罠とかを回避したり、あるいは面倒だから破壊したりしつつ進んで……『試練』の場に続く4つの門の前に来た!

 

「『沼』『鉄』『紐』『玉』……さて、どれ行く?」

 

「『玉』行こうぜ! なんか楽しそうじゃねえか?」

 

「『試練』なんだぞ、どれも楽しいもんなわけあるか!……でも、『玉』は俺も賛成だな……唯一、暴力的な響きがない……ような気がする」

 

「なら決まりでいいか……しかしスゥちゃん達、ホントに手分けしていくのかい? 連中の話だと道中危険らしいし、やっぱり俺達と一緒に……」

 

「大丈夫大丈夫。私達だって戦えるから」

 

「そうそう。それに、私達の仲間も捕まってるんだし……だったら手分けしてさっさと終わらせちゃったほうがいいでしょ。どんな内容だか知らないけど……」

 

「4つもあるというのであれば……もう昼を回った時間ですし、なるべく手早く終わらせた方がいいでしょうしね。危険な森だというのであれば、それこそ、夜の間の活動は避けるべきかと」

 

「そっか、わかった。んじゃ、そっちも気を付けて行けよ! ……で、おめェらどれ行くんだ?」

 

「……んー……『沼』行こっか」

 

「ちなみに理由は?」

 

「適当だよ。ルフィ達が右端の『玉』行くって言うから、じゃあ左端行こうかなと思っただけ」

 

「お、おいおいそんな適当に決めていいのかよ……何が待ってるかわかんねえんだぞ?」

 

「それはどこも同じでしょ。こういうのは悩んでないでさっさと決めて見に行った方がいいの」

 

「まァ……道理だな。それじゃ、レディ達……どうかご無事で」

 

「じゃあな~、ナントカの祭壇で会おう!」

 

 とまあ、そういうわけで、私達は『沼の試練』と書かれた門をくぐり、ルフィ達とは別れて進み始めた。

 

 ちなみに、『沼』に決めた理由が適当だっていうのは……ごめん、嘘だ。狙ってコレにした。

 

 原作知識由来の情報になってしまうんだが……私の記憶が正しければ、この先にいるのは、神官4人のうちの1人、『空番長ゲダツ』だ。

 そしてそいつは、4人の中で唯一……戦闘用の装備として、絶滅種の『貝』を持っていたはず。

 

 確か……『噴風貝(ジェットダイアル)』。とんでもない勢いで風を噴射する貝……だったはず。

 

 今回の空島訪問の目的は元々『新たな『貝』の入手』だ。

 こうして犯罪者として『試練』に巻き込まれるようになった以上は、連中が持っている珍しい『貝』は根こそぎもらっていくつもりである。

 

 まずはその第一歩として……いただこう、『噴風貝』。

 

 

 

 ――――嫌だぁ~~!! 嘘だろぉ~~!?

 

 

 

「「「…………?」」」

 

 ……ああ、そうだ。『玉』は最初めっちゃ落ちるところから始まるんだっけね。

 

 空島から落ちる……かと思ったんであろうルフィ達の悲鳴が聞こえてきた頃、私達もようやく、暗い通路から外に出た。

 しかし、こっちは特に落下とかはしたりすることはなく……代わりに、なんかやたらと『雲の道(ミルキーロード)』が広くなったな。

 深さ、というか雲の厚みも増したみたい。これが川だとして……水量が増えた感じだ。

 

 そのまましばらく進んでいくと、だんだん流れが速くなって……遊園地のアトラクションくらいの勢いで進んでいく。

 そして、少しだけ急勾配な部分を超えて……一面に雲が広がる、巨大な湖みたいなエリアに出た。

 

「何だろここ、いきなり広くなった」

 

「湖……いや、コレは……沼ですわ。さっきまでの雲と、微妙に質感が違います」

 

 船から手を出し、とぷん、と水につけて感触を確かめたエムロードが言った。

 なるほど……ここ一面、全体が沼の『雲』なのか。

 

 よく見るとあちこちに『島雲』が浮いてる。転々と陸地がある感じか。

 

 どんな性質なのかを調べるため、命綱をつけたうえで、リュビがざぶん、とそこに飛び込んで潜っていき……しばらくして、普通に泳いで帰ってきた。

 

「どう、リュビ?」

 

「『海雲』の沼バージョン、って感じですね。かなり泳ぎにくいです。魚人や人魚なら何とかなりますけど……普通の人間じゃ、たとえ能力者じゃなくてもまともに泳げなくて沈むかと。言うまでもないですけど、お姉様とハニー、それにルプーは絶対に落ちないように」

 

「なるほどね……これが『沼』で『試練』か。つまり、そろそろ敵が出て来て襲ってくるわけね」

 

「この地形からして……攻撃されて沼に落としたり、船を転覆させてもろとも沈めたり、といった戦術になると思われますわね。船を守るのはもちろん……点在する『島雲』も上手く使うべき、ということでしょうか」

 

「いえ、それはダメよエムロード。近づいてみないとわからないんだけど、あの『島雲』、しっかりした足場になってるものもあれば、ちょっとの重さで沈んだりひっくり返ったりするトラップ的なものも混じってるわ。足場として信頼しちゃダメね」

 

「なら、出てきたところをさっさとぶっ飛ばせばいいわけっすね。ハニー、船の守りは任せていいっすか? お嬢とあたしは飛べるっスから、リュビとエムロードも一緒になってそっこーで仕留めちゃうんで」

 

「こらこらルプー、油断するな。可能性が高いとはいえ、今のはあくまで推測。どんな敵がどう攻めてくるか、全然わからないんだからね」

 

 とはいうものの……このメンバーがそろって、ゲダツ程度に負ける気はしないけどね。

 

 水上は魚人にとってホームグラウンドだし、さっき言ってたように、私は能力で、ルプーは『月歩』で空を飛べるから落ちる心配も少ない。

 

 低酸素の環境下には『メルヴィユ』での修行で慣れてるし、空の戦士が『貝』を使って戦う存在だということも私達は知ってる。情報面・環境面でのアドバンテージは、向こうにはない。

 

 とどめに、こちらは全員が覇気使いだ。

 『見聞色』は全員使えるし、ハニー以外は4人とも『武装色』使える。

 慢心だらけの上、覇気も使えず、『(アイテム)』頼りの戦闘してくるような連中なんぞ、秒でぶっ飛ばせる自信がある。

 

 懸念があるとすれば、『心鋼(マントラ)』と呼んで神官4人が修めている、高レベルの『見聞色』だけど……まあどうとでもなる。

 最悪、力技だけど、『わかってても避けられない』攻撃をぶちかませばいいだけだし。

 

 あ、そうだ忘れてた。

 皆にきちんと手加減して攻撃して、装備してるであろう『貝』壊さないように通達しないとだ。危ない危ない……。

 

 さあて、『沼』のフィールドもだいぶ深く……それこそ、真ん中くらいまで進んだ。

 もうそろそろ来てもいい頃だろう。

 

 どっからでもかかってこい! お前が持っている『絶滅種』、貰い受ける!

 

 

 ☆☆☆

 

 

「よくぞ来た、犯罪者達よ……へそ! 俺の名は空番長・ゲダツ。全能なる“神”に仕える神官にして……この沼にて、お前達への裁きを与える者だ」

 

 

「…………おい」

 

 

「全滅のリスクを避けるためか、それともルート模索を優先したのか……いかなる理由で隊を分け、ただでさえ少ない手勢をさらに減らしたのかは知らん。だが、たとえ少人数であれ、お前達が女であれ……手加減など期待するなよ……!」

 

 

「……おい」

 

 

「せいぜい足元に気を付けることだ……張り巡るは『沼雲』! ひとたび足を取られ、あるいは船から落ち、捕まればもはや自力では脱出不可能!」

 

 

「おい」

 

 

「ここは生存率50%(うっかり)! 『沼の……」

 

 

「おい、ゲダツ」

 

 

「む、何だ人が話している最中に…………オーム? なぜここにいる?」

 

「それはこっちのセリフだ。ここは俺の『鉄』のエリアだぞ。自分のエリアの『試練』はいったいどうした」

 

「…………???」

 

(はて……確か俺は、罪人達が来る前に用足しを済ませておこうと思って、トイレに行って……戻ってきて……戻って……そして……)

 

「………………」

 

 

 

 ―――うっかり!

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

「……結局なにも出ませんでしたわね」

 

「すっごい思わせぶりなエリアに出させといて何もないとか……え、どういうことなの?」

 

「油断させといてここから襲ってくるんすかね? だったらまあ警戒はし続けといたほうがいいかもっすけど……」

 

「まあ、どの道敵地だしね。きちんとサフィルを回収するまではそうしましょ」

 

 …………あっれー? どうして?

 

 なぜか何も起こらずに『沼の試練』のフィールドを通過できてしまったことに、私が1人、心の中で混乱していた……その時、

 

 

 ―――ぷるぷるぷるぷる……ぷるぷるぷるぷる……

 

 

「ん、何?」

 

「お嬢の電伝虫っすね。鳴ってるっす。でも、誰から……?」

 

 このスカイピアに、私の電伝虫の番号を知ってる人はいないはずだ。ルフィ達にも教えてないし……そもそも空島には『電伝虫』を使う文化ってあるのかどうか。

 似たような『貝』があるのかもしれないが、まあそれは今はいい。

 

 こんな時にいったい誰だろう、と思いつつ受話器を取ると、聞こえてきたのは……

 

『もしもし!? 母上か!?』

 

「え、スズ? どうしたの一体急に」

 

『すまん、一大事じゃ! その……さっき、母上からじい様に、トラブルに巻き込まれた的な連絡の電伝虫があったじゃろ? その直後くらいなんじゃが……』

 

 尋常じゃなく慌てている様子のスズが、すごく早口で話す。

 落ち着いてゆっくり話すように言っても聞かない。……何かよっぽど大変なことが起こったんだろうか? 一体何だ?

 

 さすがに心配になりつつその続きを聞くと……

 

『わしらもよく状況が、というか理由がわかっておらんのじゃが……いきなりレオナが家を飛び出して、どこへかいなくなってしもうた!』

 

「……は!? 何それ!?」

 

『わしが母上からの連絡の内容を、レオナとアリスに話した直後くらいから、急に顔色が悪くなって……その後、『メイド隊』のシズを連れてどこかへ飛んでいった! 誰も何も、行先すら聞いておらんかったから探すこともできず……』

 

 いや、ホントに何だそれ!?

 レオナが、何でそんな急に……家出、じゃないと思う……思いたい、けど……?

 

 しかも、連れて行ったのがよりにもよってシズ!?

 だとしたら、追いかけるとしてもそこらの鳥とかじゃ無理だぞ。空戦機動力メイド隊最強の奴をお供に、一体どこへ……?

 

『それと、わしは聞き取れんかったのじゃが……その話を聞いた時に、アリスがじゃな……レオナが小さい声で、『思い出した』とつぶやいていたのを聞いた、と……』

 

「……! それって、まさか……」

 

 戻ったのか? レオナの……忘れていた記憶。

 そして、それが理由で、急いで向かわなきゃいけない場所があるからって、シズに言って飛び出したと……

 

 いやでも、ちょっと待て。確か今スズは、私がパパに報告した内容について話した時に、レオナの様子がおかしくなったって言ってたな……。

 

 仮に記憶が戻ったんだと仮定して……それってつまり、スカイピア関連の話が、記憶が戻るきっかけになったってこと?

 

 そういや、レオナは最初……どこからか『降ってきた』んだった。

 

 クレーターの大きさからして、相当な衝撃だった……すなわち、それだけの高高度から落下したんだと予想できた。

 だから、最初は『空島から落ちて来たのか?』なんて思ったりもした。

 

 結局その後、レオナの記憶喪失が発覚してうやむやになっちゃったけど……もし彼女が本当に、どこかの『空島』の出身だとして。

 そして、『スカイピア』の話を聞いて記憶が戻った、ということは……

 

 まさか、あの子の出身地は……

 

 そして、飛行能力を持つメイドである『シズ』を連れて飛び出して、向かってる先は……

 

 

 

 

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