大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第133話 スゥとシャンディアとスカイピアの歴史

 

 

 『空の騎士』によって語られた内容は、概ね原作通りのもの。

 ここが『うそつきノーランド』のお話の舞台だった『黄金郷』であるということは先にナミが話していた通りだが……話はその後から始まる。

 

 まず話の前提として、スカイピアには本来『大地』……つまりは『土』がない。

 島雲はあるから人が生活すること自体はできるし、植物とかを植えれば問題なく育つが……島雲は植物とかそういったものを『生む』ことはない。

 なので、様々な命の源となる『大地(ヴァース)』は、空の住人達にとっては憧れだった。

 

 今から400年前、おそらくは『突き上げる海流(ノックアップストリーム)』によって、この島はこの『スカイピア』にやってきた。

 

 当時のスカイピアの住人達は、これほど大きな『大地』が現れたのは奇跡であり、神から自分達への贈り物だと喜んだが……そこには先住民である『シャンディア』が住んでいた。

 それを『この島もらうから出てけ』って当時の『神』が追い出して、乗っ取ってしまった。

 

 それ以来、『神の島』を奪い取ったスカイピア側と、故郷を取り戻そうとする『シャンディア』との戦いは、今の時代まで400年間続いている。

 それこそ、空の騎士ガン・フォールが『神』の座についていた、6年前まで。

 

 話す気がなかったことも語るので、ちょっとラキが何か言いたげにしてたようだったけど……結局途中で口をはさんでくることもないまま、空の騎士は話し続けた。

 嘘とか脚色みたいなものが何も入ってなかったから、かもしれない。

 

 代わりにじゃないが、ウソップとかサンジとかが『それ悪いのお前らじゃん』ってツッコんで、怒ったピエール(相棒の鳥くん)に嚙みつかれてたりしたけど……ガン・フォールは何も反論せず、それどころか、『その通りだ』とまで言っていた。

 

「吾輩もどうにかして、このあまりに長い間続く戦いを収める手はないかと、在位中に手は尽くしたつもりだったが……400年もの長い間に互いが負った傷はあまりに大きく、深く……いや、これも言い訳だな」

 

 昔のことを思い出すように、虚空に視線をさまよわせながら話す『空の騎士』。

 

「今のスカイピアの暮らしは、『神の島』の『大地』の恵みによるところがあまりに大きく……最早全てを返すことはできなかった。しかしそれも、シャンディアからすれば盗人の理屈。幾度か対話で妥協点を探せぬかと試みはしたが……」

 

「……あんたはよくやってたと思うよ。ガン・フォール」

 

 そこで初めて、横からラキが口を開いてきて言った。

 

「私はまだ子供だったけど……何度もあんたが私達の村にきて、どうにか血を流さずに戦いを終わらせる方法はないかって苦心してたのを見てる。それを受け入れなかった身でこういうことを言うのも変な話だけど……私利私欲じゃなく、ただ平和のことを、戦いで傷つく者のことを考えて対話に臨んでたのは……見てて分かった」

 

「…………」

 

「もっとも、うちの村の血の気の多い連中のせいで、毎度乱闘騒ぎになって解散……っていう繰り返しだったけどね」

 

「……彼らはただ故郷を望んでいるだけだ。手段や、そこに至るまでの犠牲についてはともかく……その思いそのものを否定する資格など、吾輩にはない」

 

「……なんか、ちょっと切ない話ね。部外者が言うのもなんだけど……どっちが悪いともはっきり言えない感じ」

 

 溜息をつきながらナミがそういう。

 すると、それを聞いてうちのルプーが不思議そうな顔で、

 

「何で? もともと人がいたところを奪っちゃったんなら、『空の民』ってのの方が悪いんじゃないっすか? やってることただの侵略と開き直りに聞こえるっすけど」

 

「こらルプー! 言い方!」

 

「だって、いきなり襲い掛かってきて奪い取っておいて『話し合いで解決しよう』なんて、虫がよすぎると思うっすけど……下手すりゃ解決どころかキレられるっすよ? 『お前が言うな!』って」

 

「……実際キレてたな……ワイパー。話し合いに来るたびに殺し合いになりそうだったし」

 

「うちの連中……特に今の世代は、基本的に血の気多いからね……ワイパーはもちろん、ブラハムとかカマキリなんかも、基本的に一歩も引かない姿勢だし」

 

 続けて、レオナとラキもそんな風に。

 

「当然と言えば当然である……そこの女給殿の言う通りだ」

 

 なお、このやり取りの間に、またピエールが、ガン・フォールの悪口を言ったルプーに噛みつこうと(物理的に)してたんだけど……ルプーが犬歯を見せる形でにやりと笑って睨み返したら……すごすごと引き下がった。

 本能で危機を察知したのかもしれない。賢いな、この鳥馬くん。

 

「『盗人猛々しい』物言いだとしか言えないのはわかってはいたが……それでも、今の恵みある平和な暮らしを、罪のない者達から奪うことも、吾輩にはできなかった。『シャンディア』からすれば、その者達に『罪がない』というのも業腹だったようだが……」

 

「いや……実際、私達だって、直接戦いに関わらない、戦う力を持たない者達まで巻き込もうとは考えてはいなかったよ。何度かあんたが交渉に来た時のワイパーの言葉は……まあ、ある程度本気だったかもしれないけど、実際にそうするつもりはなかっただろうし。それでも、その『罪のない』者達を言い訳に、自分達を正当化して、私達を悪者にしてるんだって受け取る者は多かった」

 

「……言葉もない。結局吾輩には何もできなかった……何も解決せぬまま、『神』の座をエネルに奪われ、より多くの者が傷つき、エンジェル島の民達までもが苦しむことになるまでになった……」

 

「い、いやでも……エネルのことはガン・フォール、あんた関係ないじゃん! あいつはホントにその……いきなり横から出しゃばってきた感じだし」

 

「そういえば……今の『神』はそのエネルって奴なのよね? 何なの、一体?」

 

「奴について知っていることは、実は多くはない。6年前、どこぞの空島より突如兵を率いて現れ……『神隊』と『シャンディア』の両方に大打撃を与え……『神の島』に君臨した。その時、吾輩は『神』の座を追われ、『神隊』はその多くが捕虜となった。伝え聞く話では、何やら労働を強いられていると聞くが……情報が断片的でなんとも説明はできん」

 

「400年前にあんたらがやったことと同じっすね。労働云々はともかく」

 

「ルプー、あんたちょっと黙りな。シズ、次そいつが何か余計なこと言いそうになったら止めて」

 

「はい」

 

 デリカシーというものをどっかに捨てているうちのメイドに釘を刺しつつ、続きを聞く。

 

 それで、エネルによって『神』の座を簒奪されて以降、今までとは全く違う恐怖統治が敷かれ、スカイピアは割と地獄な感じになった。

 エンジェル島に暮らす民達にまで実害が及ぶことになり、反抗する者達はことごとく殺された。

 逃げ出そうとする者も同様になるか、あるいは逃げた先で『シャンディア』に討たれた。

 

 一方でシャンディアにとっては、『神』が誰に、どう変わろうがやることは変わらず、故郷を取り戻そうとするのみ。

 6年前のその事変からも変わらずエネルに戦いを挑んではいるものの、成果は出ていないと。

 

 また、彼らが『青海人』を襲うのは、元々の排他的な風潮とか、『また自分達の故郷に土足で踏み入る奴らを許さない』とかもあるが……それ以上に、『神隊』と間違えるから、というのもあるらしい。

 

 エネルの元に捕まっている彼らは、時折、船か何かを手に入れて逃げ出すことがあるんだが、シャンディアにとってはそれも敵なので排除しようとする。

 けど、どの船に誰が乗っているかなんて、外から見てわかることでもない。

 

 結局、自分達以外で船に乗ってる連中、とりあえず全部見かけたら排除しておけ的な感じで暴れてるんだとか。

 んな適当な……第一次大戦中にどっかの国がやった、潜水艦の無差別攻撃みたいなことを……部外者からすれば迷惑な話だ。無駄に敵が増えても知らんぞ。

 

 

 

 さて、そんな感じで色々話を聞いて……この国が今どんな状況にあるかを把握できたところで……話は今後のことに移った。

 食事も終わり、各自お腹もきちんと膨れたし。

 

 あ、もちろんラキにもきちんと食べさせたよ。食べづらいだろうから拘束は解いてあげて。

 

 『逃げるかもしれないのにいいのか』って言ってたけど、『別に逃げてもいいよ』って笑って言ってあげたら……ちょっとむっとしつつも、何もせず普通に食べてた。

 食べて、サンジの料理の美味しさにびっくりしてた。

 

 というか……実際別に逃げてもらってもいいんだけどね。さっきのガン・フォールの話のおかげで――その最中にラキちょくちょく補足入れて説明に一役買ってくれてたし――特に何ももう聞くこととか残ってないし。

 

 でもせっかくだから、その『今後』の話し合いにラキも参加してもらうことにした。

 

「じゃあルフィ達は、黄金探しに行くってことでいいのね?」

 

「おう! こういう冒険待ってたんだ! いただくぞ、黄金!」

 

「「「おーっ!」」」

 

 ノリのいいウソップとかチョッパー、そしてお宝大好きなナミが合わせて声を上げ、サンジとかゾロも割とやる気になっている。

 『お宝を前にして海賊が黙ってるわけにはいかない』ってさ。

 

「あ、でもスゥ達はどうすんだ? やっぱ海賊だし、黄金探すのか?」

 

「へぇ……だとしたら争奪戦になるな」

 

「「「えぇえ!?」」」

 

 と、ふと気づいた感じのルフィと……なんか好戦的そうな笑みを浮かべているゾロ。

 それとは逆に、ウソップやチョッパーなんかは気まずそうに、不安そうになってる。サンジもだな……こっちのメンバー、全員女性だから。敵対はしたくないと思ってるのかも。

 

 その横では、にこやかに笑ってるけどいまいち読み取れないロビンと……そのさらに隣でナミが『今ここで仕留められれば商売敵が……』とか怖いことを言ってる。えっと……冗談、だよね?

 

「うーん、どうしよっかな……黄金かぁ……」

 

 思わせぶりにちょっとためて言ってみると、ウソップとチョッパーがますます不安そうな顔に。

 仮にも私、懸賞金額7600万ベリーで、ゾロより上だからな。ロビンやルフィがいるとはいえ、なるべくなら敵対とかしたくないんだろう。

 

 しかし、ルフィは特に何も気にした様子はない。

 もし争奪戦になるなら戦えばいい、とか思ってるのかもしれないな。その辺の割り切り、ルフィって割とはっきりさっぱりしてる感じがするし。

 

 まあ、ならないんだけどね。別に。

 

「いいや、私達は、黄金は」

 

「え、いいのか? 海賊なのに?」

 

「うん。特に欲しくないしね……それよりも、私達は別なものを狙うことにもう決めてるから」

 

「その、別なものって?」

 

(ダイアル)。それも、今まで見たこともないような……珍しいやつ」

 

 本格的にエネル陣営と敵対した今となっては、目立たないようにとか、そのへん気を遣う必要もなくなった。

 であれば、襲い掛かってくるであろうエネル軍団相手に大暴れして、持っている『貝』を略奪しまくろうとも何も問題ないわけだ。

 

 スカイピアには存在しない種や、『絶滅種』なんかを片っ端から奪うつもりでいます。

 

 ウソップやナミは、『そういえば欲しがってたな』と、エンジェル島での出来事を思い出して納得してるようだった。

 

「ちなみにレオナ、ラキ……『シャンディア』には何か、よさそうな『貝』とかあったりするの?」

 

「うぇっ!? え、ええとぉ……それは……あ、あたしはさすがに知らないかなぁ……いやホントに」

 

「……もし持っていたら、私達もあんたの標的になるってこと?」

 

 少し怯えながらも毅然とした態度で聞くラキと、不安そうになるレオナ。

 ラキの方も……ハニー達に手も足も出ずに捕まったことを考えて、『敵対はしたくない』とは思っているようだ。取り繕ってはいるけど、こちらも不安そうな様子で、私の返事を待っていた。

 

 うーん、ちょっと意地悪だったかな。

 とりあえず、不安そうなレオナの頭をなでて安心させてあげながら、きちんと答える。

 

「安心しなって。そんなことしないから」

 

 それを聞いてほっとするレオナ。ラキはまだ少し疑わしそうにしているけど、問いただしてくることまではしないみたい。

 

「ガン・フォールさんは知ってる? シャンディアの戦士が、見たこともない『貝』を使ってたとか……そういう話は?」

 

「いや……特には聞かぬな。ありふれたとまでは言わぬが、我らも使う、あるいはその気になれば手に入るようなものばかりである」

 

「なら大丈夫だね。ひとまず私達は明日は、『神・エネル』の軍勢を相手に『貝』狩り。よさそうなのを持ってる敵がいたら片っ端からぶちのめして奪い取れ、以上!」

 

 なかなかに海賊らしい指示を出す私。

 それに頷くハニー達。ルプーが特にノリノリで、めっちゃ笑顔で楽しみそうにしてた。

 

「ラキはこのまま解放するから、仲間のところに帰るなりなんなり好きにしていいよ。まあ……夜の森は危険かもだから、このまま泊まってってもいいけど」

 

「いや……このくらいなら大丈夫さ。私達にとっても明日が勝負になると思うから……戻るよ」

 

「そっか。気を付けてね……で、レオナはどうする? エネルってのを倒しに行くって言ってたけど……シャンディアに合流して戦う? それとも……私達と一緒に行く?」

 

「……どうしようか、まだ迷ってる。というか、あんまり考えずにきちゃったから。合流できればいいのかもだけど……ワイパー怖いし……」

 

「……というより、レオナ。あんた戦いに加わらない方がいいかもね……今、サトリがいなくなって……それがなまじチャンスだからこそ、ワイパーは余計にピリピリしてる感じがする。気持ちは……少なくとも私はありがたいと思うけど、何にしてもシャンディアには加わらない方がいいよ。……正直な話、あんたを好意的に思ってるやつばかりじゃないから」

 

「……そっか……」

 

 そう聞いて……何やら思い当たる部分があるのか、残念そうに顔を伏せるレオナ。

 

 ……どうやら、昼間にワイパーが言ってた『今までどこに行ってた』云々以外にも、何か……レオナと『シャンディア』そのものの間には、何かありそうだ。

 じゃなきゃこんな風に、シャンディアそのものがレオナに対して何か思うところがありそうな言い方はしないだろうし。

 

 結局その日、レオナについては『こうする』って結論は出ないまま……私達と一緒に寝ることになった。

 ラキを見送って、さて、後はじゃあ寝るだけかな……

 

 ……と思ったんだけど、ルフィ達がキャンプファイヤーに突入してしまった。

 

 そのへんにいた野生動物(雲ウルフ、とか言うらしい)まで巻き込んで夜中まで、煌々と照らす炎を囲んで大騒ぎして……

 ちゃっかりルプーとかサフィルの、こっちの方でもノリのいい面々もそこに加わって……しまいには私達も引っ張り出されて、結局夜中まで騒いでから寝ることになった。

 

 ……いやまあ、楽しかったからいいけどね。

 

 ちょっと沈んだ気分になってたっぽいレオナも、いい気分転換になったみたいだったし。

 

 さーて……目一杯楽しんだところで、明日は頑張らないとなー。

 

 

 

 

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