大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第137話 ルプー、レオナ、それぞれの戦い

 

 

Side.三人称

 

 海賊、シャンディア、神の軍団、その他……様々な勢力入り乱れての『神の島』の戦い。

 開始からすでに2時間40分以上が経過し……神・エネルの『予言』まで残り15分ほどとなった現在、島の中心部にある『上層遺跡』にて、残った戦士達のほとんどが一堂に会していた。

 

 そこでオームは、自らの司る『鉄の試練』の真骨頂……有刺鉄線のような『鉄雲』で周囲をドーム状に囲って覆い、逃げ場のない状態で最後までの戦いを強いる『白茨デスマッチ』を発動しようとした。

 

 ―――したのだが……その目論見は、成就することはなかった。

 

 発動するよりも前に、オームが『試練』を張っていた『上層遺跡』そのものが……突如として下から襲ってきた強烈な雷光によって粉砕されてしまったからだ。

 必然、そこにいた者達は皆、遺跡を支えていた島雲がなくなったことで落下していき……しかもさらに、その下の島雲にも開いていた穴の底に、吸い込まれように落ちていった。

 

 そうしてたどり着いたのは……島雲によって覆い隠され、この400年もの間、何者もそれを見つけることができないままに存在していた、かつての黄金郷。

 シャンディア達の故郷である、『シャンドラ』の都だった。

 

 そして、そこに彼らを招待したのは……

 

「やれやれ……どういったおつもりですか、“神”? 今日はどこで何をしようとも自由……とお聞かせいただいたと思いましたが」

 

「ヤハハハハ……そう言うなオーム。何、思ったよりも連中、しぶとく生き残るものだと思ってな……それに対する賞賛も含め、私が相手をしてやる気分になったのだよ」

 

「あ? 今、“神”っつったか……ってことは、あいつが?」

 

「エネル……貴様、何のつもりだ!?」

 

 『シャンドラ』にて待ち受けていたのは……神の軍勢の総大将・“神・エネル”。

 それに加えて、もともとこの遺跡に用があって探し、たどり着いていた――迷わずにたどり着いただけ、とも言う――ロビンの2人。

 

 思わぬ形で敵の総大将が登場したことに戸惑いつつもそれを認識するゾロに、憤怒の形相で怨敵をにらみつけるワイパー。

 それらの視線を特に気にすることもなく、エネルは話し続ける。

 

「それに、『予言』の時間も迫ってきていることだしな。総勢20人余り無事とは……賞賛に値するのは確かだが、それはそれとしてこのままでは私が困る」

 

「? 予言……と申されますと?」

 

「何、戯れだ。他愛もないゲームさ。今からおよそ3時間弱ほど前になるが……」

 

 自らの『予言』という名のゲームの内容について説明され、オームは『なるほど』とそれを認識すると……おもむろに雲の剣を抜く。

 

「では、今のコレでは少々生き残りすぎというわけですな……10分もあれば十分です、速やかに『5人』になるまで減らすとしましょう。本当は『白茨デスマッチ』で囲うつもりでおりましたが……どうやらその必要はなさそうです」

 

「ああ、そうだな。誰もかれも、怨敵を前にして殺したくてたまらない、といった目だ」

 

 ワイパーをはじめとしたシャンディアはもちろん、ガン・フォールもまた、エネルを前にして逃げるつもりなど毛頭ないと見えた。

 海賊達もほとんどはそうだ……一部、非戦闘員と思しき面々も見られ、彼女達はどうやら逃げたそうに、助かりたそうにしているが。

 

「さて、それでは……最終楽章(フィナーレ)と行こうじゃないか。お前達が欲する怨敵の首はここにある。欲しければかかってくることだ……死を覚悟してな。“神”というものがいかなる存在かを理解する覚悟ができた者から、来るがいい」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方その頃、こちらは『神の島』を疾走中&飛翔中のスゥとルプー。

 

 もう既に戦いは始まっているか、と思いつつ走っていた最中、目の前で『上層遺跡』が閃光と共に地盤ごと破壊されたのを見た時は、2人ともぎょっとした。

 それに伴って、そこにあった『声』が全部まとめて下に移動していった。

 

 この先の展開を、大まかにではあるが覚えていたスゥは『早くね!?』と内心少し驚愕しつつ急ぐことにしたが……その時だった。

 

「……ん?」

 

 目の前で『上層遺跡』が崩落したのに気をとられて気付くのが遅れたが、こちらに高速で接近する気配が2つ。

 次の瞬間、目の前と真上(・・)にそれが現れた。

 

「この先へはぁ……行かせ~~んっ!!」

 

「メ~~~ッ!! 止まれェ、青海人!」

 

「!? 何すかこいつら、でっか!? てか、丸っ!」

 

 現れたのは、全体的に『大きい』そして『丸い』という印象が真っ先に来る2人。

 どちらも、大きくて丸い体躯に加え、不釣り合いなほど小さく細い手足がそこにちょこんとついている、といった見た目をしている。

 

 その目にはスゥ達を前にして、ぎらついた戦意と殺意、そして少しの焦りのような感情が見て取れた。

 

 4神官の1人、森のサトリ。

 神兵長・ヤマ。

 

 なぜかどちらも焦げている2人は、片や体ごとそのままぶつかってきて、片や貝から生み出したいくつもの『玉雲』をぶつけてくる。

 

「ぬゥ……!? 狼が喋った……しかも兎の耳だと!? 面妖な……」

 

「いやあ、そっちの方がある意味よっぽどめんよーだと思うっすけどね……体形的に」

 

 そんなことを言いながら、ルプーは変身を解除して人間の姿に戻り、スゥと共にそれらの攻撃を素早く回避する。

 

「! 変身した……『動物系』か。あちらの女も、翼で飛んでいる」

 

「両者ともに能力者のようだ……だが関係ない! (ゴッド)に仇なす者は、ここで消すのみ!」

 

 すでに『リタイア』あるいは参加不可能だった2人がこうして参戦し、スゥ達の前に立ちはだかったのには、理由があった。

 

 簡単に言ってしまえば、エネルにけしかけられたからだ。

 

 ついさっき、自らが起こした『上層遺跡』の崩落をもって『サバイバル』の参加者をここにいる者達のみとすることを決めたエネル。それ以外の者達は、『戦線離脱』ないし『戦意喪失』により、脱落扱いとすることを決めた。

 彼が今考えている計画の内容もあり、『逃げるのであればそれも構わない。どの道この国のどこにいても助かる道などない』として、あっさりと放っておくことに決めた。

 

 しかし、その一度『脱落』したはずの者達が、今更こっちに向かって来ていることについて……無粋で面白くない、と思ったエネルが、気絶していたサトリとヤマに、やや弱めの電撃を落として叩き起こしたのである。

 

 直後、『心綱』により、エネルのいる場所に多数の気配が集まっていることと、そこにさらに迫っている者がいることに気づいたサトリ。

 状況はまだわからないが、目覚めることができたのならやるべきことは1つ。敵の排除だ。

 

 自分の戦歴に土をつけたあの3人の青海人に仕返しをしたい気分ではあったが、それよりもまず手近にいた敵対者の排除に動き……その途中で、同じように起こされたらしいヤマとも合流して、ここに至る。

 

「今の俺は機嫌が悪い……いつもの『試練』のように遊んでやる気はない! さっさと排除して神の元へ行かせてもらうぞ!」

 

「そりゃ奇遇だね。私達もあんたらの相手なんかしてる暇ないんだよ……ルプー」

 

「はいっす」

 

「やれ」

 

 その一言の命令で十分だった。

 命令がくだったその瞬間に、ルプーの顔に……肉食獣のそれを思わせる、凶暴な笑みが浮かぶ。カッと見開かれた目が、口元から除く牙が、どちらもぎらりと凶悪な光を放ったように見えた。

 

「生意k―――」

 

 『生意気な!』と、そう言いたかったのだろう。

 しかし、そのたった一言を言い終えることもできず、次の瞬間……サトリの意識は消し飛んだ。

 

 自分がつかさどる『試練』のように、まさしく『玉』のような形をしているサトリの体。

 それが、破裂するのではないかというほどに大きく変形していた。

 

 体が丸すぎて、それがどこかもわからないような鳩尾(みぞおち)の部分に……的確に、深々とめり込んだルプーの飛び蹴りによって。

 変形する余地もなさそうだった球形の体は、むりやり『く』の字に折れ曲がって、いや歪んでしまっていた。

 

「おっ、ご……!?」

 

 冷静さを欠いていたことを差し引いても、『心綱』による先読みも間に合わないほどに素早い動きで一撃を叩き込まれ、既に意識が刈り取られたサトリ。

 

 そこにさらに叩き込まれる、目にも留まらぬ連続攻撃。

 

 

 ―――ズドンバキャッバァン! ガシッ、ギュンボゴォドムドムドムドムッ!

 

 

 サッカーボールのように蹴り飛ばされ、

 

 飛んだ先で木に激突して跳ね返ったところに、跳躍して追いついたルプーがバレーのスパイクのように一撃。地面に叩き落す。

 

 そこにさらに追いついて頭をわしづかみにして、ハンドボールのように勢いよく放り投げれば、そこそこの太さの木の枝を何本もへし折って飛ぶ。

 

 かなり太い木の幹にぶつかってようやく止まったかと思えば、やはり追いついてきたルプーが今度はまた地面に……今度は何度も何度も何度も何度も……バスケットボールのドリブルのように。

 

「アッハッハッハ! はずみの悪いボールっす……ねェ!」

 

 心底楽しそうに高笑いしながら、そのしめくくりに、サトリの体を両手で抱え上げて勢いよく前に飛び……地面に叩きつけた。

 さながら、バスケットボールのダンクシュート、あるいはラグビーのトライ。

 

 地響きがして小さなクレーターができるほどの衝撃と共に叩きつけられたサトリは、まるで古くてくたびれたボールのようにボコボコにへこんで動かなくなっていた。

 

「なっ……4神官が、こうも簡単に……!?」

 

 普段からお調子者で知られているサトリであるが、その実力は神官の名にふさわしいものを持っていることを知っているヤマは、そのあまりに一方的な……というより、戦いにすらなっていなかった光景に戦慄する。

 しかし、ここで臆するわけにはいかないと思い直し、懐から『斬撃貝』が10枚つづりになった武器を取り出して、巨体に似合わない素早くアクロバティックな動きでルプーに迫る。

 

「食らえぃ10連斬撃(アックス)!! “斬撃満点(アックスマウンテン)”!!」

 

 正面から自分の巨体でぶつかる衝撃と共に、構えた10個の貝による『斬撃』を叩き込む技。

 それをルプーは、真正面から両手で受け止める。

 

 『馬鹿め』とでも言わんばかりにニヤリと笑うヤマ。

 超がつく重量級の巨体に、高速で飛ぶ鉄球を蹴り返すほどの馬力。並の相手であればそれによる体当たりだけでも致命傷だが、このメイドの身体能力なら受け止められてもおかしくはない。

 

 しかし、こうして構えた10個の『斬撃貝』が放つ、斬撃の嵐からは逃れられない。

 

 勝利、あるいはそれにつながる決定打がはいることを確信したヤマだったが……

 

 

 ―――ドンッ!!

 

 

「ぬぐぉォオ!?」

 

 直撃するかと思われた瞬間、まるで弾かれたように、自分の体が後ろに吹き飛ばされた。

 勢いの乗った突進が止められただけでなく、攻撃した自分の方がダメージを受け、弾き返される……ルプーの方は1歩もそこから動いていない。

 しかも、発動したはずの『斬撃貝』によるダメージも皆無。かすり傷1つもないばかりか、着衣にすらほつれの1つもできていない。

 

 防御でありながら攻撃に転ずる『武装色の覇気』。その中でも高度な技の1つ『弾く武装色』。

 そんなものがあると知らないヤマからしてみれば、ただただ不可思議な事態が起こったようにしか思えなかった。

 

 しかし、そんな頭の中を整理する時間すら与えられることはなく、

 

「ぬるい斬撃っすねえ……斬るってのは、引き裂くってのは……こうやるんすよォ……!!」

 

 そんな言葉と共に、ルプーの体が変化し……その体が体毛に覆われていく。

 

 その姿は人型の狼。

 しかもさっき『獣型』で見た時と同じで、頭から兎の耳が生えた、面妖な『人獣型』だった。

 

 女らしいしなやかな体つきを残しながらも、肉食獣の引き締まった強靭な肉体がそこに宿っているとわかるフォルムで……ルプーはまたギラリと牙を、目を光らせる。

 その瞳の奥から除く凶悪な『野生』に、ヤマはぞっとして後ずさる。次の瞬間、その牙に、爪にかかって自分が引き裂かれている光景を幻視した。

 

 ……そしてそれは、0.5秒後に現実になった。

 

 見切るどころか反応することすらできないままに……嵐のような爪の連撃がその巨体を襲った。

 威力も数も、『斬撃貝』を20個使っても到底足りないほどの猛攻に、全身から血が噴き出す光景をヤマは目の当たりにし……痛みの方が遅れてやってきて、自分の敗北を突きつけられた。

 

 意識を失う間際に見た、爪を血まみれにし、ゲラゲラと笑いながらこちらを見下ろす獣の女の姿を……おそらくヤマは、一生忘れることができないだろう。

 

「なーんだ、こんな丸っこい体なんだから、思いっきりぶん殴るか切り刻めば破裂するかと思ったんすけどねえ! ア―――ッハッハッハッハッハ…………あ、お嬢終わったっすよ」

 

「ご苦労ルプー。よし、行こ」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方こちらは、上層遺跡……から場所を移した、『シャンドラ』にて。

 

 そこから始まったのは、壮絶な戦いだった。

 

 まず、うろうろと動き回る――なぜか泣きながら――大蛇……『空の主』を鬱陶しく思ったエネルが、巨大な雷撃でそれを一蹴。

 

 それを皮切りにするかのように、『シャンドラ』のあちこちで戦いは始まり……シャンディアも神兵も入り乱れて戦い、倒れていく。

 

 『神の島』全体での戦いを通して、レオナによる助力があったこともあり、原作よりも多く生き残っていたシャンディアだが……もっぱら怨敵であるエネルに挑み、しかし手も足も出ずに1人、また1人と倒れていった。

 ワイパーとガン・フォールも同様にエネルに向かっていくが、軽くあしらわれてしまう。

 

 『鉄雲』の剣を使ったトリッキーな戦いに苦戦しつつも、渾身の飛ぶ斬撃『百八煩悩鳳』によって、ゾロが神官・オームを撃破。

 

 そして残りの面々のうち、戦闘能力に乏しいナミとアイサをロビンが守る前で……

 

「こっち来んな、この犬!」

 

「ワ゛ァンッ!?」

 

 とびかかってナミ達をその牙にかけようと……と思いきや、犬とは思えない動きでぶん殴ろうとしてくる巨犬・ホーリーを、レオナが蹴飛ばして後退させる。

 

 その姿は、先ほどまでの少女の姿でも、巨大なライオンの姿でもなく……その中間、『人獣型』の姿になっていた。

 

「あの子、ライオンの『動物系』だったのね……色が少しおかしいし、普通のライオンではないのかもしれないけど」

 

「……アイサ、確かあんたのお姉ちゃんなのよね? あんた何か知ってる? あの能力」

 

「え!? え、えっと……いや、その……あんまり知らない。色々あって、レオナはあの力を人前で使いたがらなかったというか、使えなかったから……。まあ、使っててもあんまり何もわからなかったと思うけど」

 

 そう、後半は呟くように言いながら……アイサは途中でふと気づいたように、

 

「ていうか……何か、前に見た時と、形っていうか姿が変わってるような……?」

 

「姿?」

 

「……そういえば、彼女……『人獣型』にしては、少し珍しい変身をしてるわね」

 

 アイサのつぶやきに、ロビンが同意する形で視線を向ける。

 

 動物系の悪魔の実における変身形態の1つ……『人獣型』は、その名の通り、人と獣の間を取ったような姿であるが……多くの場合、顔もそのちょうど中間のような形状になることが多い。

 

 例えば、アラバスタ王国でロビンが――その頃はまだ『ミス・オールサンデー』としてだったが――出くわしたチャカであれば。

 『イヌイヌの実 モデル:ジャッカル』のそれは、顔の上半分がジャッカルのようなそれになり、鼻も犬らしく前に伸びて、獣らしい様相になっていた。

 

 他の動物系についても、似たようなことが言える。ミス・メリークリスマスの『モグモグの実』然り、ハヤブサのペルの『トリトリの実 モデル:ファルコン』然り、人獣型になれば顔もそれに伴って変わるものだった。

 

 しかし、今目の前にいるレオナのその姿は……一言でいえば、猫コスプレの女の子、だった。

 顔は普通に人間のそれのままで、頭には猫耳が、腰のあたりには尻尾が生え……両手両足が肉球のついてモフモフな獣のそれに代わっている。鬣を現しているのか、髪の毛もボリューミーになっているようだ。

 

 ……が、変化としてはそれだけである。

 毛並みその他の質感こそリアルではあるが、この変身を見て『動物系』だとは思わない、ただのファッションに見えてしまう人も多いかもしれない。

 

「こんな時になんだけど……アレどんな変身なの? ていうか、かわいいわねあんたのお姉さん」

 

「いや、その……昔はあんな変身じゃなくて、ちゃんと『人型のライオン』って感じの変身だったはずなんだけど……なんであんな風になってるんだ?」

 

「……珍しい例ね。シャンディアから離れていた数年間に、何かあったのかしら?」

 

「いやでも、変身する姿が変わるって……悪魔の実の能力に、そんなこと起こるの?」

 

「熟練度次第でそういうこともなくはないらしいわ。もっとも、そうだとしても方向性が独特な気がするけれど……」

 

 

(聞こえてるんだけどなー……!)

 

 

 ホーリーと戦いながら、レオナは遠くの方からきちんと聞こえてくる、自らの義妹達の話に……内心でため息をついていた。

 

 アイサの言う通り、レオナの変身は、シャンディアにいた頃や、その直後……スゥに拾われたばかりのころは、まだ普通の獣人型と言っていい姿だった。

 人間とライオンを足して二で割り、骨格を人間準拠で二足歩行にしたようなそれ。

 

 それが、今のような形になってしまったのは……ひとえに彼女の認識やイメージの変化によるところが大きい。

 

 そもそも『動物系』の能力というのは、能力者の認識や想像力によってある程度自在にその姿やあり方を変えてしまう、という特徴がある。

 仮にそれが『いやそんな能力その動物にはないだろ!?』というような、明らかにおかしいものであっても、できてしまうことが多々ある。

 

 その類の例は、主に新世界のとある海賊団に多く在籍しているのだが……まずは今は置いておく。

 

 そして、もともとは『普通』だったはずのレオナの変身が、このような形になってしまった決定的な原因、ないしきっかけが何だったかと言えば……彼女の妹、義妹の存在である。

 

 ただし、そこで見ているアイサとは別な……もう1人の義妹。

 彼女が青海に落ち、記憶を失い、スゥに拾われた後にできた……

 

 

 

『見てレオナ! この姿こそが、女の子がけものパワーと女の子パワーを融合させて最大限強い力を発揮できる姿なんだよ! 猫耳! 猫しっぽ! にくきゅー!』

 

『ホントかよ……聞いたことないぞそんなの?』

 

『ホントだってば! それにほら見てみなよ。これお母さんが書いた本だよ? それにきちんとこんな風に出てるんだからさ、間違ってるはずないじゃん! お母さんも大好きなんだよこの姿!』

 

『えっ!? そ、そうなのか? それなら……よし、頑張ってみる!』

 

『うん、頑張れレオナ! ―――ちょろいぜ(ぼそっ)

 

 

 

 欲望全開のこっちの義妹である。

 

(今思うと上手いこと言いくるめられてたな……まあ、実際に母ちゃんから『かわいい』って言われたから全然いいけど。でも、人間やればできるもんなんだなー……悪魔の実って、案外能力とかアバウトなところ多いのか? それとも、私が『幻獣種』だから? ……まあいいか)

 

 そんな風に考えながら、ホーリーの犬とは思えない拳打の乱れ撃ちを、こちらも拳でさばく。

 

 すると突如、

 

「レオナ、危ない、後ろ!」

 

 アイサの焦ったような声が聞こえて来たと同時に、建物の陰から飛び出し神兵の1人が、手のひらを向けてこちらに飛び込んでくる。

 死角になっていてロビンも気づけず、彼女が能力を発動させて防ぐよりも早い。

 

 しかし、ズバァン、と音を立てて無防備な背中に直撃したはずの『斬撃貝』の一撃は……その肌に、わずかな傷もつけることはできていなかった。赤くすらなっていない。

 

「……あれ? 今確かに……」

 

 小さな体から血が噴き出すかと思っていた神兵が困惑している間に、振り向いたレオナが。肉球のある手でその顔をわしづかみにし……

 

「くすぐったいわ!」

 

「ゴベァ!?」

 

 その顔面を石畳の地面にたたきつけて一撃でノックアウトする。

 

 同時にとびかかってきたホーリー……今度は犬らしく牙をむいて噛みついてきたが、その牙が、受け止めたレオナの腕に突き刺さることはなかった。

 柔らかそうな肌1枚突き破ることはできず、レオナは涼しい顔でその様子を眺めている。

 

「牙が、刺さらない……!? さっきの、斬れる『貝』も……」

 

「動物系だとしても、破格の頑丈さね……」

 

 未だかつてないことに困惑するホーリーだったが、そこから立ち直る暇は与えられなかった。

 

 噛みつかれたまま、上あごと下あごをそれぞれレオナは持って、ぐぐぐぐ……と力任せにこじ開けていき……逃げ出そうとしても、今度はホーリーの方がその手を振りほどけずにいる。

 2本の前足で放つ拳をいくら食らっても、レオナには全く効いた様子がない。

 

 そのまま、顔を掴んだ状態でホーリーの巨体を持ち上げると、その場で大きく回転し始める。

 回転はどんどん速くなっていき、遠心力でホーリーはまともに身動きも取れない状態のまま振り回され……それが頂点に達したところで、

 

「うぉぉりゃあぁぁあああ!!」

 

 女の子が出していいものかどうか、と思うような雄々しい雄叫びと共に、横回転を無理やり腕力で縦回転に変えたレオナが、ホーリーを石畳の地面にたたきつけた。

 

 あまりの衝撃に声すら上がらず悶絶するホーリー。

 それでもなお、主人の敵であるレオナを排除しようと、痛む体に鞭打って牙をむこうとするが……それと同時に、レオナは大きく跳躍。

 

 『月歩』で空を蹴って高く高く飛び、上の方に広がっている島雲の地面にまで上がって、そこに上向きに着地すると……次の瞬間、その地面を蹴飛ばした勢いで急降下。

 そのまま自分の肉体を弾丸に変えた体当たりが、隕石のような勢いでホーリーに直撃し……断末魔の遠吠えすらあげさせずに完全に仕留めた。

 

 気絶しているだけではあろうが、ぴくりとも動かなくなった巨犬の上から飛び降りて……服についたほこりを払う。

 

 ふと振り向くと、あっけにとられた様子でこっちを見ているアイサやナミの姿があった。

 その隣にはロビンもいるが、こちらは前の2人よりは落ち着いているというか、きちんと目の前の光景を認識できているようだった。

 

 とりあえず、レオナはその3人に向けてサムズアップをして無事と勝利をアピールしておき……しかし、まだまだ油断ならない敵が残っているのをきちんと思い出して、その方向を向いた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 神兵全てと神官オーム、そしてホーリーも倒れ……神の軍団も残すところ1人。

 『予言』の時間まで、もう間もなく、残り5分を切るところ。

 

 それでもエネルが余裕を崩さないのは……ひとえに、その圧倒的な実力あってのことだった。

 

「ヤハハハハ……哀れなものだな。言っただろうに。人の領域を出ない貴様らが、神たる私に勝つことなど、土台無理な話なのだと」

 

 敵が残すところ1人となり、ワイパーを含むシャンディアの戦士や、空の騎士ガン・フォール、そしてゾロもまたエネルに挑むが……ことごとくをエネルは強力な電撃で一蹴する。

 

 その最中、何度かよそ見をしていた様子だったのが気になったものの……そんな隙すら、雷の体を持つエネルには隙たりえない。

 こちらの攻撃は、自在に体を雷に変えるエネルにはきかず、それどころかこちらが感電してダメージを受ける始末だった。

 

 これまで戦って生き残ってきたガン・フォールも、エネルの『還幸』という目的と、捕えていたかつての部下である『神隊』を始末したという話を聞いて激昂し……返り討ちにあい、沈んだ。

 

 一度だけ、イチかバチかの覚悟を決めたワイパーが特攻をかけ……シューターに仕込んだ『海楼石』でエネルの力を封じて『排撃(リジェクト)』を直撃させたが、それすらエネルは自分の心臓を電撃でマッサージして回復してしまった。

 

 気付けば、かろうじてでも立っているのはゾロ、ナミ、ワイパー、ロビン、アイサ、レオナの6人。それにエネル自身を加えて、7人。

 

 戦闘要員は誰もかれも満身創痍なのに対して、エネルは余裕綽々。

 残りの中で動けて戦えそうなのはロビンとレオナくらいだが……自分達ではエネルに痛打を与えることができないのは、『覇気』というものの存在を知るレオナがよくわかっていた。

 

 すなわち……この場に、『自然系』であるエネルを倒すことはできない―――

 

「さて、もうそろそろ3時間になる。少々まだ人数が多いな……さて、誰を削ろうか。それに……一度ゲームから離脱しておきながら、図々しくも復帰を望む者の始末もつけねばならんし…………ん?」

 

 

 ―――倒すことは、できない……その、はずだった。

 

 

 

 

 

「何してんだ、お前……俺の仲間によ」

 

 

 

 

 

 

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