大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回は一挙2話更新になります。
この後すぐ更新の第141話と合わせてお楽しみください。



第140話 スゥとルフィと男のロマン

 

 

「……しぶといな」

 

 私の『獅子・破裏剣(ハリケーン)風雲急(スクランブル)』を食らって、エネルが飛んでいった、あるいは『消し飛んで』いったと思しき方角を見て……ほとんど無意識に、私はぽつりと呟いていた。

 それを、ナミはかろうじて聞き取っていたらしい。

 

「しぶとい、って……え!? あいつまだ生きてるの?」

 

「お、おいおいおい……こんなバカげた破壊力の技食らって無事なのかよ!? 『自然系』なのはわかったけど、それにしたってどんなバケモンだそりゃ……」

 

「それを言ったら、その技を繰り出した方こそどんだけだって話になるだろうがな……で、確かなのか? あの野郎が生きてるってのは」

 

「多分ね。……ちょっと手ごたえが弱かった。直撃する寸前で、流動されていくらか受け流されたっぽいな……さすがは『雷』。逃げ足は速い」

 

 ウソップとゾロも加わっての問いかけに、私はそう返す。

 

 それと同時に……

 

 

 ―――ドドドド……ズズゥゥン!!

 

 

 そんな、地響きみたいな音が上から(・・・)聞こえて来て……とっさに私たち全員、音がした方を見上げる。

 すると、その視線の先で……今まさに、上の方に広がっている『島雲』の地面が壊れて崩れ落ちてくるところだった。大量の土砂や、遺跡の残骸であろう瓦礫と共に。

 

 あの野郎……真正面からじゃ勝てないとあきらめて、私達を生き埋めにする気か。

 

 頭上から大量の……瓦礫とか雲とか、色々なものが降ってくる光景に、『ぎゃああああ』と悲鳴を上げる者や、逃げようとする者、迎撃してどうにか防ごうとする者、様々いたけど……バラバラに滅茶苦茶に手を出したところで、防ぎきれないし逃げきれないのは明らかだった。

 

 なので、さっさと私がやっちゃうことにした。

 

 

 ―――ゴゴゴゴォオォン!!

 

 

 さっき使った大技、『獅子・破裏剣(ハリケーン)風雲急(スクランブル)』……それを、覇気をちょっと弱めにする代わりに、4つまとめて作り出し、頭上に放つ。

 威力は大幅に落ちたものの、そこまで量もない落下物――ほとんどが雲で、土砂や瓦礫はそこまで多くなかった――を吹き飛ばして散らすには十分だった。

 暴風が砂粒まで全部散らして、空島のさらに空まで飛んでいき、消える。

 

 後には、わずかな土と砂、それに、形成に使った大量の紙が舞って落ちてくる……というだけの光景が残った。

 

 自分で言うのもなんだけど、舞台劇の見せ場みたいで、見栄えのある光景になったように見えなくもない。

 ちょうど上に開いた穴から、光が差し込んできてるし。スポットライトみたい。

 

 落下して来ると思っていたものが全部消し飛んだのを見て、それはそれであんぐりと口を開けて硬直している人がまたたくさん出ていたので、パンパン、と柏手を打って皆の注目を集める。

 

「はい注目! 色々あって混乱してるし疲れてるだろうけど、ひとまず外出よう! どうやらあの雷ヤロー逃げちゃったっぽいし、ここにいても仕方ないからね。シャンディアの皆さんも、せっかく故郷に来れて色々思うところあるだろうけど、今はとりあえず避難。あいつ絶対ろくでもないこと考えてるから。このまま終わるとは思えないし」

 

「……あっ、そうだ! あいつそういえば、さっきやばいこと言ってた!」

 

 と、はっとしたようにナミが口にし……それと同時に、ゾロやワイパー、ガン・フォールやレオナといった面々も、何かに気づいたというか、思い出したような様子になる。

 

 で、聞いてみると……概ね原作通りではあるものの、エネルはこの空にある全てを引きずり下ろすつもりだと。

 『エンジェル島』も、『雲隠れの村』も、『神の島』も……この『スカイピア』を形作る『積帝雲』そのものすら、全て破壊して。

 

 聞いていなかった面々は、そんなことができるのか、と愕然とするものの……今それを議論している時間はない。さっさと上の方に脱出するべき、ということになった。

 

 向こうの方に見える『巨大豆蔓(ジャイアントジャック)』を登れば出られそうだったが、遠いしケガ人も多かったので、私が紙でエスカレーターを作って、今あけた穴から直で外に出られるようにした。

 途中参戦で遅くなっちゃった上、詰めが甘くて逃がしちゃったからね……このくらいはさせてもらうよ。

 

 負傷者に手を貸しつつ、外に出てみると、そこにはすでに……空を飛び、てっぺんにある煙突からもうもうと煙……ではなく、黒い『雷雲』を吐き出している、方舟『マクシム』の姿が。

 雲を吐き出しながら、どんどん空へ、空へと上がっていく。

 

「あれが……吾輩の『神隊』に作らせていたという、『方舟』か。まさか、空飛ぶ船とは」

 

「どこまで行く気だ……どんどん高く飛んでいきやがる」

 

「多分、この巨大な樹の頂上よ。そこにおそらくは、『黄金の鐘』があるから……それを取りに行ったんだわ」

 

「え? それって……」

 

「何だと……!!」

 

 ロビンの言葉を聞いて、ラキやアイサがはっとして、ワイパーがカッと目を見開いて怒りをあらわにする。

 自分達の村に伝わっている『シャンドラの灯』のことだとわかったんだろう。それを奪われそうになっていると知って、怒りがぶり返してきたらしい。

 

 その一方で、

 

「どうします、お嬢? 放っとくとさすがにまずそうっすけど……なんか、この島丸ごと破壊するつもりとか言ってたっすよね?」

 

「だね。どうやってやるつもりなのかはわからないけど……何にしても、それを私がここで黙ってみているとでも思っているなら、甘いってもんだよ。居場所がわかるのに、放っておいてやる義理も何もない」

 

 言いながら、私は背中から紙の翼を生やす。

 さっさと飛んであの『方舟』に乗り込んで、仕留め損ねた雷野郎の首を取りに行くか、と……羽ばたこうとしたところで、

 

 

「待て……スゥ!」

 

 

 後ろから……私の肩をがしっとつかんで、ルフィがそれを止めてきた。あ、復活したんだ。

 

 ていうか、ちょっと……危ないな、今まさに飛ぼうとしてた時にそんな……何いきなり?

 私コレから、あいつシメに行くとこで……

 

「俺がやる!」

 

「へ?」

 

「「「えぇ!?」」」

 

 それを聞いて、思わずきょとんとしてしまう私。

 周りで聞いていたナミ達に加え、ルプーやレオナ(あ、こっちも復活した。よかった)も驚いている中……冗談で言っている様子ではないルフィは、そのまま私に強い視線を向けてくる。

 

「仲間を助けてくれたのは……ありがとう。でも、これは俺の喧嘩だ……手ぇ出すな!」

 

「……えっと……何で?」

 

「ちょちょちょちょちょっと待って何言い出すのルフィ!? 何でいきなりあんたそんな……いいじゃない別にそんな意地張らなくたって! やられっぱなしで悔しいのはわかるけどさぁ!」

 

「そうだぜルフィ! やり返せないまま逃げられたのは癪だけどよ、今もうそんな場合じゃないんだって! スゥに任せようこのまま!」

 

「そうよ! あんた見てなかったからわからないでしょうけど、スゥってば滅茶苦茶強いのよ!? あのエネルがホントに一方的で、手も足も出ないままボッコボコだったんだから。せっかくやるって言ってくれてるんだし……任せとけば間違いないわよ!」

 

「そもそも、行くっつったってお前飛べないだろ! どうやってあんな高さを飛んでる船に乗るつもりだよ……しかもそんなボロボロで、無理すんなって! 大人しくしとけ!」

 

「やだ、俺が行く! スゥが強くても関係ねぇ……俺がやらなきゃダメなんだよ! あとそんな別にボロボロじゃねえよ俺、ちょっと火傷しただけだ!」

 

 ……確かによく見ると、ルフィ、そこまで傷とか多いわけでもなさそうだな。あちこち焦げたり切り傷がついたりはしてるけど……そっか、打撃も電撃も効かないから、あの槍の電熱と斬撃だけ食らってた感じか。

 ずっと蛇のお腹の中にいたからか、疲労度もそんなでもなさそうだし……精神面でのタフさはもはや語るべくもない。割とコンディションはそこまで問題もなさそうだ。

 

 でも、だからって何でそこまで自分がエネルとの決着をつけるのにこだわるのか……

 私もルプーも、その他の面々も、困ったような不思議なような視線を向ける中で……

 

「あんたじゃなきゃダメってどういう意味!? 一体何を考えてそんな……」

 

 

「ひし形のおっさんが……俺の友達だからだよ!!」

 

 

「「「……!!」」」

 

 それを聞いて、麦わらの一味がはっとして……対してその他の面々は『?』って感じ。

 私は原作を知ってるからわかったけど。

 

 なるほど……ひし形のおっさん、ね。

 また独特な呼び名だから、誰のことなのか思い出すのが一瞬大変だったけど……

 

 そしてルフィは語る。青海で今も、海底に沈んだと思い込んでいる『黄金郷』を探し続けている男と、その仲間達のことを。

 この『スカイピア』に来るにあたって欠かせない存在、ないし協力者だった人達のことを。

 

 ご先祖様を嘘つき呼ばわりされて、その悲劇を絵本にされて、世界中の人達にその名を嘘つきの名だと知られてしまってなお、過去に決着をつけるために海底を探し続けている男。

 自分の友達である彼に……知らせてやるんだと。

 

 『黄金郷』はあったぞ。

 400年間、ずっと空にあったんだ。

 

 鐘を鳴らして、それを伝えてやるんだと。

 

 ……やれやれ、眩しいもんだね。夢やロマンを追う男の子ってのはさ。

 

「……いいよ、行ってきなルフィ」

 

「「「!」」」

 

 私がそう答えたことで、驚いたような視線がみんなから向けられる。

 

「え、いいんすかお嬢!?」

 

「まあ、そういうことなら今回は譲るよ。なんか折れる気なさそうだしね……その代わり、ちゃんとぶっ飛ばしてくるんだよ? レオナひどい目に遭わされた私の分もボコってきて」

 

「……! ああ、わかった。任せろ!」

 

「あーでも、今からこの蔓登っていったんじゃ時間かかるから……そこだけ手、貸してあげる」

 

 言いながら私は、『折神』で、ルフィが乗れるくらいの大きさの鳥を作り出す。

 

 ……あ、そういや、私コレに乗ってた時にルフィに激突されて海(雲)に落ちたんだっけな……なんかふといらんこと思い出してしまった。

 

「ありがとうスゥ! あんときはコレぶつかってごめん!」

 

 君も思い出したんかい。

 

「じゃあ、行ってく……」

 

「待て、麦わら!」

 

 と、ルフィが『折神』に乗って飛び立とうとした間際……今度はそれをワイパーが声を張り上げて静止した。

 ? 何だろ……?

 

「あ、バズーカの奴……何だ?」

 

 その問いかけには答えず、ワイパーはルフィのそばまで、ラキに肩を貸してもらいながら歩いてくると……もう片方の手を差し出した。

 そこには、手の中にすっぽり収まって持てるくらいの大きさの、小さな『貝』が何個か乗っていた。

 

「持っていけ……『雲貝(ミルキーダイアル)』だ。お前、飛べないなら……万が一突き落とされた時、足場がいるだろ。コレを押して放り投げれば、即席だが小さい雲の足場になる」

 

「え、いいのか?」

 

「……その代わり……」

 

「?」

 

「お前に、託す……必ず鳴らせ! 『シャンドラの灯』を!」

 

ルフィは、何も細かくは聞こうとしなかった。今まで徹底的に非協力的で、排除しようと狙ってばかりきていたのに……なんでそんな風に手を貸してくれるのかとか。

何だったら、『シャンドラの灯』が『黄金の鐘』のことだってことすら、わかってるかどうか微妙だったんだが……それでも、ルフィはただ一言、

 

「ああ、わかった! ありがとう!」

 

それだけ言って、ワイパーから『貝』を受け取り……今度こそ『折神』に乗って、飛び立った。

 

それを、何も言わずに見送るワイパー。

その様子を傍らで見ていた、アイサとレオナが……茫然としていた。

 

「あのワイパーが……ルフィに……」

 

「誰かに……それも、『シャンディア』以外に……『シャンドラの灯』を託すなんて……」

 

 超がつくほどに過激かつ徹底的、排他的な姿勢から、『戦鬼』とまで呼ばれ、敵はおろか味方にすら恐れられているワイパー。

 その彼が……400年間の悲願とも呼べる『鐘』を誰かに託したことが、2人には信じられなかったみたい。

 

 その一方で……さっき、私達がルフィと話している間に、ワイパーと何やら話していたらしいロビンが、薄く笑みを浮かべているのを見るに……

 

(……ああ、こっちも『ロマン』か)

 

 うん、なんとなくわかった。

 ああいう堅物が、誰かに自分の夢を託す時っていうのは……自分と同じか、それ以上の『バカ』を見つけた時だ。

 

 そんなことを考えていると、ふとロビンがこっちを見て、

 

「よかったの、『海賊文豪』さん? うちの船長さんに任せてしまって」

 

「んー……まあね。この年になると、夢を追う男の子ってのは、応援したくなっちゃうものみたい。ま……ヤバそうだったらその時行くよ。まーでも、大丈夫だとは思うけどね。ルフィだって、伊達や酔狂でその首に1億ベリーもかかってるわけじゃないんだし」

 

 王下七武海の一角を落としてるんだ、それでも安いくらいだと思う。

 

 今言うことじゃないかもだけど、クロコダイルって絶対8000万程度じゃないでしょ。あれって多分、あまり政府に睨まれないように犯罪とかしてたから、正確な金額がついてなくて、そのまま『七武海』になった結果の額なんじゃないかなと思ってます。個人的に。

 いくら、懸賞金額がそのまま戦闘能力を現してるわけじゃないと言ってもさ。

 

 それを倒したんだから、ルフィだって実際のところは、この時点でも多分もっと……

 

「そうね。……それで、その船長さんより強い、ってさっき言われていたあなたの首には……いくら懸かっているんだったかしら?」

 

「7600万べリー。ロビンより300万ベリー下だよ」

 

「……ひどい詐欺ね」

 

 かもね。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そして、上空。

 

 丁度、『巨大豆蔓(ジャイアントジャック)』の頂上で、黄金の鐘を回収し、船に乗せたところだったエネルの背後に……紙の鳥から飛び降りて、ルフィは降り立った。

 

「……もう逃がさねえぞ……雷! あと、その鐘、よこせ!」

 

「まったく、下で待っていればよかったものを……不届きな奴め。だが……来たのはお前だけか?」

 

「……? そうだ、俺だけだ」

 

 それを聞いて、エネルの顔に、あざけるような笑みが浮かぶ。

 

「ヤハハハハ……そうか。それは、私にとっては好都合ではあるが……判断を誤ったと言わざるを得ないな」

 

 バチバチと電撃を迸らせて、手にもった黄金の棍――スゥに折られたはずだが、新しく作ったのだろう――の先をまた刃に変え、ルフィに向けて突き付けるように持つ。

 ヂヂヂヂ……と小さく火花が散っているその切っ先には、先ほどまでと同じく、膨大な電熱が宿っているのだろう。

 

 もっとも、それを見てルフィも怯む様子は一切見せず、拳を構える。

 

「貴様の体質はもう理解した。効く攻撃、効かない攻撃……戦うにあたって注意すべきこと、そして……弱点までな。貴様よりも私にとっては、あの紙の女が追ってくることの方が脅威だったのだ……実際その方が勝率は高かっただろう。だが、最後の最後で、貴様のようなサルに望みを託すとはな……ワイパーといい、やはり誰もかれも、愚か者であることに変わりはないようだ」

 

「そんなこと知らねぇ。これは俺の喧嘩で……黄金の鐘は、ひし形のおっさんの……俺の友達の夢だ! だから、お前は俺が必ずぶっ飛ばす! スゥの分も……バズーカの奴の分もだ! そして、鳴らすんだ……黄金の鐘を!」

 

「ほざけ小僧……今度こそ思い知らせてくれる! 人は『神』には勝てんのだということを!」

 

 直後、雷を迸らせるエネルが槍を突き出し、ルフィも勢いをつけた拳を突き出す。

 

 高度1万mの空島……そのさらに最高峰の場所で、最後の戦いが始まった。

 

 

 

 

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