大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第146話 スゥと子供達と『メイド隊』の秘密

 

 

 私や娘達が普段、『メルヴィユ』の邸宅を拠点にして暮らしていることは既に話したと思う。

 そこには当然、私達の世話をしてくれている部下とか使用人達がいるんだが……それらは大きく2種類に分けることができる。

 

 1つは、パパが手配してくれた普通の使用人。

 きちんとマナーやら作法、家事その他のスキルも修めていて、私達に快適な生活を送らせてくれる、縁の下の力持ち達である。

 この立場の使用人が大半を占め、またそれはメイドとか家政婦的な役割だけでなく、家の掃除や各種備品の整備・管理なんかを請け負ってくれているのもこの立場の人達だ。

 

 ただし彼ら、彼女らは、戦闘に秀でているわけではない。あくまで『使用人』なので。

 護身程度ならできないこともない人も混じってはいるが、その程度だ。

 

 そしてもう1つは……私達が『メイド隊』と呼んでいる者達。

 スカイピアに一緒に来た2人……ルプーやシズはここにあたるわけだが、彼女達を含めて、全部で6人の『姉妹』がいる。今のところね。

 

 彼女達は、普通の使用人達と違って、高い戦闘力を持っている。全員が『覇気』使いであり、懸賞金を付けるなら億越えは確実なレベルだ。

 そのため、彼女達の仕事には、私達の身の回りの世話に加え……必要に応じて、護衛として外出に同行したりする、というのも含まれる。

 

 ……含まれる、のだが……とある理由から、彼女達はまだ全員がその『外出して護衛』を行えるわけではなかったりする。

 空島でシズにお説教した時にも口にしたが、彼女達は『外出許可』をきちんと取らないと、外に出てはいけない身なので。

 

 今現在、その『外出許可』が出ているのは……メイド隊6人中、全部で3人。

 空島に一緒に来たルプーと……この度、さらに2人合格者が出たという話だった。

 

「そっかー、じゃ、今度からはナーベとソリュシャンも一緒に外出できるんだね」

 

「はい。その折はどうぞ私達に、身の回りのお世話から護衛まで、全てお任せください」

 

「どこへでもついていきますわ、お嬢様方」

 

 昼下がりのおやつタイム、ジュースや紅茶で色々なおかしを食べている私達4人。

 そのそばに控えてにっこりと笑ってくれている2人が……今回、新たに合格をもらった2人のメイド……ナーベラルとソリュシャンだ。

 

 ナーベラルは、黒髪をポニーテールにしていて、きりっとした目つきで気の強そうな、クール系の美少女。

 

 ソリュシャンは、金髪をお嬢様っぽいくるくる縦ロールな髪型にしている、はかなげな感じの、これまた美少女である。

 

 その2人の横には、今ちょうど追加のお菓子を持ってきてくれたルプーと……彼女達の『姉』であり、メイド隊のリーダーであるユリがいた。

 黒髪を夜会巻にまとめ、整った顔つきに眼鏡が知的な印象に見える美女は、優雅な仕草で一礼すると、

 

「妹達に先を越されてしまったのは、姉として少し悔しくはありますが……でも、これでより一層お嬢様達の役に立てるのだと思うと、誇らしくも思います。御用の際はなんなりとお申し付けくださいね、皆さま」

 

「ありがとー。ユリも早く合格するといいね」

 

「わしら的にはむしろ、ユリあたりが一番早く合格を取るかと思っとったんじゃがのう……外の世界の常識やら知識も、一番高水準で修めておるのはお主であろ?」

 

 お茶菓子のスコーンにジャムをたっぷり塗って食べながら、そう不思議そうに言うスズ。

 そう聞いてユリは苦笑……嬉しいけど少しばつが悪い、という感じの顔になって、

 

「お褒めいただき光栄です、スズお嬢様。しかし、私の場合はその……どうしても『これ』がネックになってしまいまして」

 

「『首』だけに、っすね」

 

 横からニヤニヤと笑いながら、そう茶化すように言ってくるルプー。

 それを聞いてため息をつくユリだが……注意しようとルプーの方を見た瞬間、椅子に座っていたレオナがひょい、と跳んでユリの真後ろに行き、

 

「えい」

 

 

 ―――すぽっ

 

 

 そんな軽い感じの声と動作で……ユリの頭をひょい、と胴体から取り外した。

 

「「「あ」」」

 

「れ、レオナ様!? ちょ、お、お戯れを……あ、頭返してください!」

 

「うーん……やっぱり固定上手く行ってないんだねー」

 

 自分が両手で抱えているユリの頭を見ながら言うレオナ。

 そのユリ(の、頭)はというと、突然胴体から取り外されてわたわたと慌てている感じだった。普段冷静で知的な雰囲気の美女が困ってるこの感じ……かわいい。

 

 そして、残った体の方もわたわたと動いて焦ってる感じだ。かわいい。

 

 ……そんなユリの体の方に迫る、新たな影。

 

「レオナ様! ちゃんと見えないと体動かせなくて危ないですから……ひゃあっ!? な、何ですか!? ちょっと、誰か私の体に変ないたずらを……ルプー、あなたじゃないでしょうね!?」

 

「ひどいっすよユリ姉……私じゃないっす」

 

「えへへへ……ユリってば相変わらずいい体してるね~♪ てか、また大っきくなった?」

 

「その声……ちょっと、アリス様ですか! やめ、ふぁ……ど、どこ触って……」

 

「おいこらやめんかバカ妹。無抵抗をいいことにユリにセクハラかますでない」

 

 呆れたような目になっているスズの視線の先で、レオナに頭を持たれて、体……というかオッパイを思いっきりアリスに弄ばれているユリがわたわたと慌てている。ギャグマンガみたいな光景だ……かわいそうだけど、かわいい。

 人の頭が体と離れ離れになっているっていう、字面だけ見ればホラーなそれなのに、全然そんな感じしないな。

 

 ひとしきりまさぐった後でアリスがユリの体を解放し、それと同時にレオナも頭を返した。

 ちょっとぜーぜー言いながらも、ユリは頭を体にがしゃん、とドッキングさせる。そして、手を放して首を前後左右に動かしてみて、ちゃんとくっついたと確認していた。

 

「ふぅ……よし、直った……」

 

「んー……ちょっと引っ張ると首がとれちゃうの、やっぱ直らないんだ? そのせいでユリ、ルプーより全然しっかりしてるのに外出許可出ないんでしょ?」

 

「まあ、首が取れるなんて人間離れしてるどころじゃない特徴だからね……万が一そとでそんなことになったら、びっくりされちゃうでしょ」

 

「びっくりどころじゃ済まんじゃろ、普通に阿鼻叫喚じゃ。わしらは慣れとるからいいが、人の頭が目の前で落ちるんじゃぞ。卒倒するか絶叫ものじゃて。……しかし、ユリもそうじゃが……シズやエントマといった、見た目や挙動が人間らしくない者達は難儀じゃのう。ほかの部分はもう完璧じゃと言うに、そのせいで許可が下りんのじゃから」

 

 そんな風にスズが言うと、それを隣で聞いていたルプーが、『ん~……』と、何やら考え込むようにして、

 

「というか……まあ、それはある意味仕方ないというか、むしろ当然とも言えるっすよね。だって、ユリ姉達だけじゃなく、私やナーちゃん達も含めて―――」

 

 

 

「―――私らの中に、人間なんて1人もいないんすから」

 

 

 

 さらっと言ったが、ルプーのこれは……冗談でもなんでもない。ただの事実だ。

 『メイド隊』6人……ユリ、ルプー、ナーベ、ソリュシャン……そしてここにいないエントマとシズ。

 

 その全員が……もともと、人間ではない。

 見た目からはとてもそうは見えないけれど……本当のことなのだ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ちょっと一旦話は変わるが……少し前にDr.インディゴが開発した、『 TABOO(タブー)』を覚えているだろうか。

 『SMILE』とはまた違う、彼オリジナルの『人造悪魔の実』だ。『SMILE』と違って流通させて稼ぐつもりとかはなくて、あくまで身内で使って戦力強化に繋げる用のそれなんだけどね。

 

 というか、こんなもん用途が限定的過ぎて全然売れないと思うし。

 

 人造というだけあって、この『TABOO』には、普通の『悪魔の実』にも『SMILE』にもない、ある大きな特徴がある。そしてそれは同時に、コレが流通しても流行らないだろうな……と思えてしまう理由でもある。

 それは……『人間が食べても何の効果もない』という点だ。

 

 簡単に言えば……動物専用の『人造ヒトヒトの実』なのである。

 

 人間が『TABOO』を食べても、何の能力も手に入らない。10分の1どころじゃなくて、完璧に確率0パーセントである。

 動物系悪魔の実に共通の特徴である、身体能力の強化さえ起こらない。

 

 なのに、悪魔の実には変わりないので、食べるとカナヅチにはなってしまう……とまあ、何一つメリットのない踏んだり蹴ったり具合だ。

 『SMILE』みたいに、笑顔以外の感情表現を失う、とかいうようなデメリットこそないものの……こんなもの食べる価値も食べさせる価値も0だろう。

 

 しかしこれが、動物に食べさせる場合になると話が変わってくる。

 

 動物が『TABOO』を食べると、人間の姿に変身できる力が手に入るのに加え、知能が飛躍的に強化され、人語も理解できるようになり、普通の人間と変わらないコミュニケーションが取れるようになる。

 加えて、こちらは『身体能力上昇』の効果も普通に発揮される。

 

 さらに、『SMILE』みたいに不確実な要素は、ない。

 食べさえすれば確実にそれらの能力が手に入る。

 

 デメリットと言えば、当然ながらカナヅチにはなってしまう点。これはまあ……『悪魔の実』には変わりないわけだから、そりゃ仕方ないだろう。

 それと、しいて言うならもう2つ……かな。

 

 1つは、『人型』がどんな姿になってしまうのかがランダム……というか、全然わからない点。

 食べた動物が。どんな姿の人間になるのか、食べてみるまでわからないのだ。法則すらはっきりしていないので……予想不可能。

 

 今までの実験の中だと、大きな熊がロリっぽい見た目の少女になったり、小さな昆虫がグラマラスな美女になったり……ホントに法則がつかめない。あるのかもわからんし。

 

 強いて言うなら、かわいい感じの見た目になることが多い気がする。それこそ、性別が雄でも、中性的な見た目のイケメンやショタっぽい感じになることが多い気がする。

 

 そして、もう1つのデメリットは……確固たる自我を確立させる、させてしまう点だ。

 

 例えば、そこらへんの野良犬に『TABOO』を食べさせたとする。

 すると、野良犬は人間の姿と知能を手に入れ。しゃべることもできるようになるわけだ。

 

 しかし、だからといって食べさせた人間に懐くわけでも、言うことを聞くようになるわけでもない。普通に、引き続き自分の自我や欲望のままに生きて行こうとするだけである。

 

 もしこれが『ポ〇モン』とか『ド〇クエモンスターズ』とか『妖怪ウ〇ッチ』とかであれば、捕まえたモンスターは普通に自分の言うことを聞くようになるだろう。

 そういう風にゲーム自体ができてるわけだから、当たり前だね。

 

 しかし、『TABOO』にはそんな機能はない。

 食べさせてもさっさと逃げ出すかもしれないし、それどころか襲ってくることもある。

 

 『TABOO』を食べさせた上で自分のための戦力としてその能力者(動物)を使おうとすれば、別個に確かな信頼関係なり何なりを作って、『仲間になる』しかないのである。

 

 実際、実験としてラボで実験動物に『TABOO』を食べさせた後、普通に研究者達、反撃されてたしな。

 実験材料として扱われたり、変な薬――『S.I.Q』その他色々――注射されたりしてたんだから、そりゃ懐いてるわけもなくて。

 知能が上がったところで、言うことを聞いてくれる道理も何もなかったわけだ。結局そのまま、全員研究所から脱走しちゃったし。

 

 ただその後、レオナと出会って……全員まとめて友達になっちゃったわけだけど。

 ほんとにさ、能力者か否かすら関係なく、うちのライオン娘、動物に好かれるんだな……ある種の才能、じゃ片付けられないレベルじゃなかろか。

 天候に関することのナミのそれレベルな気すらする。

 

 そんで、レオナってばその頃すでに動物王国的な感じで友達アニマル多かったから、その中から有志を募って『TABOO』を食べさせて、そいつらを相手に観察とか実験をする……ていう方向にシフトしてたっけな、ラボの連中。

 もちろん、実験とかはきちんと任意、ないし許可取って。でないと反撃されるし、レオナも怒るから。

 

 その結果……『TABOO』自体が貴重なこともあって、すごい数の『ヒトヒトの実』の動物軍団が出来上がるようなことこそなかったものの、一気に『TABOO』能力者は増えた。

 しかもその誰もが私達に、特にレオナと姉妹2人、そして私に好意的な感じだった。

 

 さらに、それらとは別にDr.インディゴが、通常の悪魔の実と同じように『ものに食べさせる』実験も進めていて……それも普通に成功。

 

 そして……そうして生まれた、様々な動物、あるいは物体を元とした『TABOO』能力者の中でも……知能、戦闘能力、教養その他いろいろな面で最高水準という評価になった者達。

 それこそが……今の『メイド隊』の6人である。

 

 例えばルプーは、メルヴィユの固有種の動物で、頭にウサギの耳が生えている巨大な狼『キル・ラビ』という種族の『TABOO』。

 

 ナーベラルは、しっぽの毛が硬質化し鋭利に研ぎ澄まされて鎌のようになっていて、それを振り回して敵を切り刻むメルヴィユの固有種『辻斬りイタチ』という種族の『TABOO』。

 

 ソリュシャンは、粘液状の体を変形させて様々な姿に変幻自在に変わる上、強烈な酸性の体液で獲物を溶かして捕食する『ミミックスライムアメーバ』という種族の『TABOO』。

 

 そしてユリは……元々は、動物ではない。

 はるか昔にメルヴィユに存在していたが、動物との生存競争に負けて滅んでしまった文明。その遺跡にあった戦乙女っぽい石像に『TABOO』を食べさせた結果生まれた存在だ。

 

 ……その時すでに、首にひびが入っていて取れそうだったので、それが反映されてしまったらしく……なんか人間になった後、デュラハンみたいな感じになってしまっている。らしい。

 

 そしてここにいない2人……エントマとシズも『TABOO』なわけだが……彼女達に関する説明はまた今度にしようか。

 

 そんなわけで、メイド隊の皆はこの『TABOO』であり……また、彼女達以外にも、このメルヴィユには『TABOO』能力者が数多くいる。

 そして、その全員、ただの1人の例外もなく、レオナの友達である。すごいよね。

 

 その事実を受けてパパは、レオナをそのTABOO軍団の統括的なポジションに着けようかどうか真面目に検討しているそうです。

 本人達の知らないところですげー人事が決められようとしてる……。

 

 

 まあもっとも、仮にそうなったとしても……

 

 

「ひゃん♪ もう、アリス様ぁ……いたずらっ子なんですから」

 

「えへへへ……よいではないかよいではないか~♪」

 

「だーかーらー! 昼日中から、しかもおやつ食べてる最中にそういうはしたないことするなと言っとろーに!」

 

「? ふむ……夜、ベッドの上でならいいの?」

 

「そんなことは言うとらん! ソリュシャン。お主も嫌なら嫌と言っていいいのじゃぞ?」

 

「いえいえ、むしろ光栄ですし……大歓迎ですわ。私などでよければいつでも、いくらでも。アリス様、もうすこしおっぱい大きくしましょうか? 私アメーバなので変幻自在ですし」

 

「ホント!? えへへへ、それもいいね~……でもまあ、スズがちょっと怖いから、今日はこのへんにしとくよ。また今度ね」

 

「まったくこやつは……む、なくなってしまったか。ナーベ、どら焼きまだあったかの?」

 

「申し訳ございません、スズ様。今しがた最後の1つがレオナ様のお腹の中に……」

 

「あー……さよか。んじゃ。別な種類でもいいから何か追加してくれ、あと緑茶おかわり」

 

「かしこまりました。他に緑茶に合うものですと、煎餅やおかきなどございますが」

 

「もらおう」

 

「あー、おいしかった……ルプー、昼寝するー。一緒に寝よー」

 

「りょーかいっす! んじゃ……今日はどこで?」

 

「天気いいから外行こ、外。そんでルプーが狼モードになってそのふかふかの毛並みの中で、日向ぼっこしながら寝るのサイコー」

 

「合点しょーちっ! ついでに他の手ごろな大きさのモフモフ連中にも声かけとくっすね~!」

 

 

 ……見た感じ、こんな風な友達付き合い……というにも違う気がしなくもないけど、

 まあどっちにしろ、この仲いい感じの付き合いが変わるわけでもないだろうし……別にいいか。

 

 もし変な方向に行きそうだったら、都度私がきちんと口出ししたり、助言すればいいし。

 

 それぞれ、オオカミ娘、イタチ娘、アメーバ娘と仲良く話している娘たちを見ながら、そんな風に思っていると、残る1人……石像娘がすっと横から紅茶を注いで足してくれる。

 

「お菓子のおかわりどうなさいますか、スゥお嬢様? 先にお嬢様が厨房に持ち込んだ『雲チーズ』を使ったチーズケーキがまだございますが」

 

「もらおうかな。あと、果物系のやつも何か適当に」

 

「かしこまりました。しばしお待ちくださいませ」

 

 優雅に一礼して歩いていくユリを見送る。

 

 ……うん、やっぱり誰もかれも……深く考えずに友達付き合い……あるいは、主従だとしても、他人行儀にならない程度に距離が近い付き合いをするのが一番楽でいい気がするな。

 

 普通のマナー程度ならともかく、過度に堅苦しいのは好きじゃないしね、私達みんな。

 

 

 

 





結構前に名前だけ登場したっきりになっていました『TABOO』の設定をようやく出せました……
感想欄で予想していた人、お見事です。

そして、空島編でいきなり出てきた『ルプー』他のメイド達は、様々な動物や、それ以外の何かが『人造ヒトヒトの実』を食べた存在でした。
他の姉妹達については、今後本編で描写する予定でおります。

なお、ルプーの元種族である『キル・ラビ』と、ナーベの『辻斬りイタチ』は、映画版『ストロングワールド』でメルヴィユに本当に生息して登場している動物です。
ソリュシャンの『アメーバ』は本作独自ですが。

今後ともよろしくです。
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