大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第2章 割と順調な新人作家編
第15話 スゥ14歳、賞金稼ぎ


 

 

 『偉大なる航路(グランドライン)』、前半の海。

 そのさらに中盤あたりに位置する、とある海域。

 

「何をしてる!? 相手はたった1人だぞ!」

 

「し、しかし船長……あ、あの小娘、強すぎます! 皆、ほとんど一撃でノされちまって……」

 

「動きも速くて、銃も何も当たらねえ……畜生、何なんだよこいつ!?」

 

「しかもあんなオモチャで俺達を……くそっ、バカにしてんのかこいつ!」

 

 洋上に浮かぶ一隻の海賊船。

 その甲板で、乗組員たる海賊達は、決死の戦いに身を投じていた。

 

 少し前にやってきた襲撃者は、たった1人。

 しかも、見た目はどう見てもか弱い少女にしか見えず、海賊達からすれば『馬鹿な獲物が自分からやってきた』という程度の認識だった。

 

 捕まえて売り飛ばして金に換えてもいいし、退屈な洋上生活に潤いを持たせるために自分達で『使う』のもいいだろう。船員達の頭はとっくに、この哀れな少女をこれからどう使うかに向いていた。

 

 だから彼らには、想像できるはずもなかった。

 今の、この……その少女1人に、海賊団そのものが壊滅させられかけているなどという、悪夢のような状況を。

 

 最初に、少女を捕まえようとうかつに近づいた1人が、手を触れようとした瞬間に叩き伏せられた。

 

 その光景に『え?』と虚を突かれた時に少女はさらに動き、手元がぶれて見えるほどの速さで、手近にいた数人を薙ぎ払って吹き飛ばした。

 このあたりでようやく、船員達も、考えていたような『美味しい』状況ではないことに気づいたのだが……既に色々と遅かったのに加え、そもそも気づいてもたいして状況は変わらない。

 

 そもそもな話、彼らでは油断していようがしていまいが、その乗り込んできた少女……スゥをどうにかすることなどできなかったからだ。

 

 この船の船長は、『鉄腕のブレイム』と呼ばれる海賊だ。

 3mを超える身長と筋骨隆々の肉体からもわかる通り、力自慢のパワータイプで、両腕に装着している金属製の手甲を武器として、力任せに敵を殴り倒すスタイルで戦ってきた。『鉄腕』の名は、その装備と戦い方から名付けられたものだった。

 

 懸賞金額も初頭手配から順調に上がり続け、わずかな期間で現在の3600万ベリーに。これからもどんどん上がり続け、自分は海賊として一気に高みへ上り続けるのだと疑わなかった。

 

 だからこそ、目の前で自分がまとめ上げてきた一味が、まだ成人もしていないような小さな少女に蹂躙されているのを見て、ブレイムは冷静ではいられなかった。

 

「何なんだこのガキ、俺の手下どもがこんなにも簡単に……」

 

 前後左右からサーベルで斬りつけ、あるいは撃ち抜こうと発砲するも、彼女はこともなげに余裕をもって全ての攻撃をかわして見せ、あるいはその『武器』で受け止める。

 そして、ほんのわずかな隙を見逃さずに鋭く踏み込んで、一撃で仕留めていく。

 

「しかも、何なんだ一体そのオモチャは!? そんなもんを武器にして……俺達を馬鹿にしてんのか!?」

 

「いや、別にそんなつもりはないんだけど。ただ、使いやすいから使ってるだけで」

 

 そう言いながらまた1人なぎ倒して気絶させ、スゥは見せつけるように、くるくるとその武器を回してみせる。

 見た目一発、およそ武器とは思えない……1本の『傘』を。

 

 布やビニール製の傘ではない。木の骨組みに紙を張って作られた、いわゆる『番傘』だ。

 

 普通に考えて、そんなものを戦いの場で武器にする者などいないし、いたとしてもまともな戦いになるはずもない。

 せいぜい、子供のチャンバラごっこならなんとか使えるか、という程度。

 

 そのはずなのに、そんな『オモチャ』を振りぬいた一撃で、大の大人が何人も、何十人ももう沈められている。涼しい顔で、見るからに細腕の少女によって。

 これが悪夢でなくて何だというのか。

 

「これ使うと手加減がしやすいからね。賞金首は基本、生け捕りにしてしょっぴいた方が喜ばれるし、場合によっては受け取る金額が減っちゃうからさ」

 

「てめえ、賞金稼ぎだったのか……くそが、なめんじゃねえぞ! この『鉄腕』……てめえみてえなしょんべん臭いガキにやられるほど、弱かねえんだよ!」

 

 ウオォォオオォッ!! と自らを鼓舞するように咆哮しながら突っ込んできて、トレードマークである鋼鉄の手甲を振りかぶるブレイム。

 全体重を乗せて繰り出した拳は、まっすぐ少女の顔面目掛けて飛ぶ。

 

 その小さなかわいらしい頭を粉砕し、頭蓋骨ごと木っ端微塵にするつもりで突き出した一撃は……軌道上に割り込まされた番傘によって、あっさりと受け止められた。

 木と紙でできているとは到底思えない、ガキン、という金属質な音を立てて……わずかに変形すらさせることもできずに。

 

 驚愕するブレイムだが、直後にスゥはその勢いを殺しきらずに、後ろに受け流すような形で回避すると、返す刀で番傘を振りぬき、ブレイムの胴体を勢いよく薙ぎ払う。

 

 これも、番傘で殴ったとは思えないほどの凶悪な音、そして威力。

 あまりの衝撃に、肺の中の空気がほとんど全部抜けてしまったような感覚にブレイムは陥った。

 

 体が『く』の字に折れ曲がり、甲板に放り出されて倒れこむ。内臓が傷ついたのか、口の中に鉄臭い味が広がっていた。

 

「お、さすがは3000万越え、気絶まではしてないか……私もまだまだ未熟だな」

 

「がはっ……こ、の……バケモノがっ……!」

 

 甚大なダメージを受けながらもどうにか立ち上がろうとするブレイム。

 それにとどめを刺そうと、すたすたと歩いて近寄っていくスゥ。

 

 船員達は『船長を守れ!』と次々に襲い掛かるが、さっきまでと全く同じで、よけられ、受け止められ、返り討ちに遭って沈んでいくだけ。

 

 離れたところから銃で狙うものもいたが、こちらもまるで効果なし。

 回避されるなんてのはまだいい方で、広げた番傘にまるで雨粒のように止められてしまったり、ひょい、とスゥが体を翻したことで、その向こうにいた味方にあたってしまいさえする。

 

 弾切れで隙を見せたところを、スゥがまるでゴルフでもやるように、そのへんに転がっている船員をフルスイング&ショットしてぶつけて来た。

 激突し、仲間(ボール)もろとも海に叩き落される末路をたどった。

 

 

 

 そして、あまりにも一方的な蹂躙はその後数分続き、

 

 気付けば、船長ブレイムとスゥ以外に動く物がいなくなった甲板の上。

 

「くそ……ついてねえ。何でこんな化け物がこんなところに……一体何者なんだてめえ」

 

「私が何者かなんてどうでもいいし、いつどこにいようが私の勝手でしょ。ついでに言えば、いつどこで何に出くわすかなんて、そりゃわかったもんじゃないよ。この『偉大なる航路』じゃさ」

 

「あぁ、そうだな……そのとおりだよ……くそっ」

 

 悪態をつきながら……『鉄腕のブレイム』は力尽き、あおむけにどう、と倒れこんだ。

 1発目を叩き込んだ腹に加えて、腕と脳天にも打撲痕があり、都合3発で抵抗する力を全て刈り取られて意識を手放した。

 

 一味壊滅に加え、いともたやすく3600万の首を仕留めてみせたスゥは、番傘を背中のホルダーに収納すると、ポーチから携帯用の拘束具を取り出し、手早くブレイムに装着させる。

 

 

 続けてスゥが、自分の腕のあたりに手をやると……突如、かなり大きなサイズの巻紙が現れる。まるで、腕から生えてきたかのように。

 

 広げると1人の体を軽く乗せられるくらいの大きさになったそれは、まるで魔法の絨毯か何かのようにその場にふわっと浮いて待機している。

 その上にスゥは、気絶したブレイムを、そして、船から回収しておいた諸々の戦利品を乗せる。

 

 そしてスゥが歩き出すと、紙は空中を浮遊したまま、彼女に付き従うようについてきた。

 

 そのまま、スゥは乗ってきた船に乗り込むと、進路を確認して船を出した。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 どうも皆さんごきげんよう、14歳になったスゥです。もうすぐ15歳だけど。

 

 今ちょうど、手ごろな賞金首を見つけたのでサクッと狩ったとこです。これから最寄りの海軍基地に引き渡しに行きます。

 

 普段、冒険やら執筆やらをメインに過ごしている私だけど、生活費その他目当てにこうして賞金稼ぎをやることも多い。

 特に誰を追って海を渡って探して、っていう感じじゃなく、たまたま近場に手ごろなのがいたら狩りにいく、って感じだけど。

 

 修行は欠かさず続けているので、だいぶ強くなれた。

 今ではこんな風に、3000万~4000万程度の賞金首なら、余裕を持って狩れるようになったし。

 

 もちろん、剣術とかの基礎トレも重要だし続けてるけど……なんといってもここまで強くなれたのは、『覇気』を習得できたことがやはり大きいと思う。

 

 実はあの漂流生活の後、いつの間にか使えるようになってたんだよね。

 

 うろ覚えだけど、覇気ってのは本来、長期の鍛錬で少しずつ身につけていくものではあるんだけど……生死の淵をさまよったり、極限的な状況に置かれた時なんかに、急激に覚醒が進むことがある、っていう設定があった気がする。

 

 私にとって、あの漂流生活がまさにそんな感じの『極限状況』だったんだろう。生きるか死ぬかの状況に置かれたことで、強引に『覇気』がたたき起こされた感じか。

 

 そういえば、あの時……私、まだ到底海賊船なんか肉眼では見えないはずの距離で――しかも栄養不足で目がかすんで耳もよく聞こえない状態で――海賊船の接近を察知できたっけ。

 あの時すでに、『見聞色の覇気』が目覚めていたんだと思う。

 

 その後すぐに、体力が戻った後の鍛錬の時に『武装色の覇気』も使えるようになった。

 手に持った刃物が、うっすらとだけど黒く染まった時は、感動してしまったのを覚えてる。

 

 それ以降、トレーニングの際はいつも、意識して『覇気』を鍛えるようにしてきた。

 おかげで、こんな風に基礎戦闘力が底上げされる形で爆上がりしたわけだ。

 

 それに加えて、最近よく使っている武器についてだけど……さっきの海賊船でも大活躍した、この『番傘』が最近の私のメインだ。

 普通に紙と木でできた傘なんだけど、こんなんでも『覇気』をまとわせれば金属以上の攻撃力と強度を発揮できる。ぶん殴って気絶させたり、銃弾を弾くくらい朝飯前だ。

 

 あとコレ地味に重要かもしれない部分なんだけど、番傘って『紙』でできてるじゃん?

 そして私、『パサパサの実』の紙人間じゃん?

 

 気のせいかもしれないんだけどさ、私、紙でできたものを武器として使う時、何か微妙に、普通の武器より上手く使えるような気がするんだよね。

 加えてその性能も、『覇気』の分を差し引いても上がってるように感じている。

 

 攻撃力を上げる方向にも、逆に、殺さないよう絶妙に手加減する方向にも。

 海賊船で言った通り、『使いやすい』んだ。上手く言えないというか、そうとしか言えないが。

 

 なお、一応この番傘には、柄の内部に刃が仕込まれていて、引き抜けば普通の剣として使えるような仕込み武器になっている。あんまり出番はないけど。

 さすがに単純な強度的には、元から硬くて頑丈な金属の刃に『覇気』をまとわせた方が攻防力も上がるし、番傘にはできない『切断』という攻撃もできるからな。必要に応じて、だ。

 

 ちなみに、さらっと流してしまったけど、あの漂流生活の中で手に入れたもう一つの力……『パサパサの実』の能力について。

 これも、ここ1年ほど鍛え上げて、いろいろできることが増えてきた。

 

 今回の戦闘では出番はなかったけど、もうちょっと敵が手強かったりした場合には、もちろん戦闘でその力を使うこともある。

 

 今日のところはまあ、こんな風に輸送手段として使うにとどまってるけども。

 見た感じは魔法の絨毯である。紙だけど。

 

 戦闘でどんなふうに使うかについては、また出番が来た時にでも紹介しよう。

 

 さて、後は進路がずれないかどうか適宜確認しつつ、目的地に着くのを待つだけなので……その間に、今回の『戦利品』の確認を行うことにしよう。

 

 『鉄腕』の身柄と一緒に海賊船から頂戴したのは、大きく2つ。

 1つは、彼らが持っていた財宝。略奪後に換金していなかったのか、それとも貯蓄のつもりだったのかは知らないが、結構な量のそれをいただくことができた。

 

 この世界では、海賊相手なら何をしようが罪にはならない。こんな風に、襲撃してお宝をちょうだいしようとも。

 懸賞金も含めればかなりの金額になるだろう。いつもながらボロい商売だ。

 

 まあその分危険も大きいし、油断すると死ぬか、死ぬよりひどい目に遭うけどね。

 特に私、女だし。見た目もそこそこいいし。

 

 まあでも、これは別にいいや、適当に後で換金でもしよう。

 

 もう1つの方の戦利品。私にとってはこっちがメインだ。

 

 船長室で見つけた、さっきの『鉄腕海賊団』の航海日誌。

 意外と几帳面なもので、『鉄腕』がきちんと毎日あった出来事をまとめていたようで、彼らがどんな冒険をしてここに至ったのかを知ることができる。

 

 過酷極まる『偉大なる航路』に関する情報源としても普通に有用だけど……私にとってはそれよりも、こういうものを読むことで、他人の冒険の『経験』を追体験することができるのが大きい。

 文面から得ることができる、単なる知識のみではあるものの、『こういうものがある』『こんな島が存在する』と知れるというだけで心が躍る。

 

 時間はたっぷりある。1ページ、1文字たりとも残さず読んで、糧にさせてもらうとしよう。

 もしかしたら、これで読んで得た知識が、今後私が『作家』として書く何かの本に出てくるかもしれないね。

 

 

 

 

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