大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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えー、連絡します。

タイトルからわかると思いますが、今回から徐々に主人公が酷い目に遭っていきます。
そういうのは苦手な人はご注意ください。

え、もう結構ひどい目に遭ってないかって? ははは、序の口序の口。

とはいえ、そういう展開は苦手、読みたくない! っていう人もいるかと思いますので……多少工夫させていただくことにしました。

参考までに、そういうシーンが始まるちょっと前に、
★★★ ← こういうのを置いておきます。

一応、この部分以降読まなくてもストーリーは何とかつながるように書く……と思いますので、苦手な方は読み飛ばすための目印にでもどうぞ。

では、第154話、始まります。


第154話 スゥの囚人生活(拷問の始まり)

 

 

 

 インペルダウンに入ってから、しばらく経ったわけだが……どうやら監獄側は、一向に『うん』と言わない私にしびれを切らしたか……甘やかすのをやめたらしい。

 

 今日の朝、突然それは起こった。

 

 私達のいる牢屋と、猛獣達が跋扈する通路を隔てている鉄格子が……『ガコン、ガラガラガラ……』なんていう駆動音と共に、シャッターよろしく上の方に引っ込んだ。

 それを見て、囚人達は顔を青くしつつも……何が起こったのかはすぐに悟る。

 

 このフロア名物の拷問の1つ……『命がけの引っ越し』だ。

 

 今までは、『訳ありの囚人』である私がいるおかげで、実施の対象になっていなかったこの牢屋で……初めてそれが実施された。

 

 幸いと言っていいのか、私達はすぐに動いて通路を走り……すぐ近くにあった『空の牢屋』に逃げ込むことができた。牢屋にいた囚人達の、誰も欠けることなく。

 

 大した距離を走ったわけじゃなかったけど、皆息切れしていた。

 私も……そこまででもないけど、少しだけ息が乱れた。

 ……単なる肉体的な疲労じゃなくて、緊張感や恐怖がそうさせるんだろうな。

 

 しばらくすると、看守がやってきて……私達の牢屋に、改めて鍵をかけた。

 私達を閉じ込めるその『ガチャリ』というその音は……しかし、不思議と『危険なエリアと確実に隔絶された音』として……私達を安心させた。

 

 その後、少し考えてみて……今回、私がいるこの牢屋にも『引っ越し』が実施されたということの意味は、すぐに理解できた。

 私だけじゃなく、他の囚人達もだ。皆、私がいるおかげでこの房にはそれがないんだって、知っていたからね。

 

「馬鹿だねあんた……何を『提案』されてたのか知らないけど、おとなしく頷いときゃいいものを……」

 

 少し年の行った感じの女囚が、呆れたようにそう言ってきた。

 

 私が政府に、あるいは監獄に何かを『提案』されていたことも、それに私が一向に頷かなかったことも、彼女は知っている。

 

 そりゃまあ、たびたび牢屋の前に来た看守が『考え直す気になったか?』なんて聞いてくるし……なんとなくでも察するよね。

 そのたびに私、断ってそっぽ向いてて……苛立ちと呆れが混じったような表情で、毎度看守達が帰っていく、というのも見てただろうし。

 

 それが何度も続いて……ただ牢屋越しの恐怖や、色々なものを見せる恐怖じゃらちが明かない、と判断された。

 だから、私が『訳ありの囚人』であっても構わず……今回、『引っ越し』は起きた。

 

 いくら脅しても『うん』と言わない私に業を煮やして、監獄側が次の段階に進んだ……と、皆が察していた。

 同時に、この牢屋ももう安全とは言えないんだろうな、ということも。

 

「これからあんた、きつい目にあうことになるよ。あちこち連れ回されて脅されるだけじゃない、あんたに何かを『うん』と言わせるために、監獄の奴らは何だってするだろうね……もともとここはそういう場所で、あたしら囚人は、そういう扱いが当たり前なんだから」

 

 

 

「そういうこと……♪ ん~~~、物分かりのいい囚人がお仲間にいてよかったわね。自分の今の立ち位置が、よくわかったんじゃないかしら?」

 

 

 

 と、話の途中でそんな声が割り込んできて……同室の囚人達が、ぎょっとして外を見る。

 

 鉄格子の外に、1人の背の高い女が立っていた。

 

 伸ばした前髪で目が隠れている、若い女性。角みたいに見える頭飾りと、全身ピンク色の露出の高い装束が特徴的だ。スタイルもいいのですごく煽情的に見える。

 手には三又槍を持っていて、薄く笑みを浮かべている。

 

 前髪で目は見えないのに、不思議と、じっとこちらを……私を見ていることがわかった。

 

 コイツ知ってる。確か、原作にも出てた……えーと……

 

「っ……獄卒長のサディだ……!」

 

「何でここに……!?」

 

「お黙りっ! ん~~~! 『サディちゃん』とお呼びっ!」

 

 言いながら、どこからか取り出した鞭をピシャアン! と振るって床を打つ。

 その音を聞いて、あるいは鞭の威力に、びくっと震える囚人達。

 

 そうだ、サディちゃんだ。インペルダウン編で出てきたキャラの中でも、色々と強烈というか。個性的なキャラだったからよく覚えてる。

 ……肩書がぱっと出てこなかったけど。

 

 スタイルもよくて色っぽい服装なのに、男の囚人達がエロい視線を向けず、恐怖の視線を向けているところを見ると……欲望が引っ込むくらいに恐れられているんだろうというのがわかる。

 もちろん女囚達もそれは同じで、鉄格子1つ隔てているにも関わらず、震えているものも少なくない……という有様だった。

 

 自分で自己紹介の時に『拷問大好きサディちゃん』なんて言うくらいだし……見た目そのままって感じで、人を痛めつけるのと、その悲鳴を聞くのが好きな性格なんだっけな。

 

 ……で、そんなサディちゃんがここに来たってことは……あんまり考えたくはないけど……

 

「さて……囚人番号D0472、ベネルディ・トート・スゥ……外に出なさい」

 

 やっぱり……用があるのは私か。

 

 同室の女囚達から、驚きや哀れみの入り混じった視線が向けられる。

 彼女達も、なぜサディちゃんがここに来たのか、そして、これから何をするつもりなのかを理解したらしい。

 

 その視線の中で、私はすっと立ち上がり……室内に入ってきた、サディちゃんの部下と思しき獄卒達に、両サイドから腕を掴まれ、外に連れ出される。

 

 ……どうでもいいことだけど、ぴしっとして職員然とした服を着て、帽子をかぶり、サングラスで目を隠して、主に銃で武装しているのが『看守』。

 目出し帽みたいな黒い覆面をかぶり、主に三又の槍で武装している、ガラの悪い感じの見た目の連中が『獄卒』であるようだ。なんか、見てて覚えた。

 

 ドミノの部下が『看守』で、サディちゃんの部下が『獄卒』。

 今回、私を連行しているのが『獄卒』なのも、そういう理由なわけだな。

 

 そして、役割としては……『看守』はインペルダウン内部の様々な雑事をこなすものらしい。

 監獄内部の見回り、囚人達の見張りはもちろん、事務作業とか外部との通信とか、色々と。

 何かトラブルが起こった際には、それらに主に対応するのも『看守』の仕事だ。

 

 対して『獄卒』は、主に囚人達に苦痛を与えるのが仕事。

 私はスルーしちゃったけど、レベル1『紅蓮地獄』で囚人達を追い回したり、その他色々な拷問の場で責め苦を与える担当をしているのがこの『獄卒』達だ。

 仕事の範囲はせいぜいそれに関係する事柄の雑用、くらいのものらしいけど、何かあった時には『看守』と協力してトラブル鎮圧等にあたることもあるみたい。

 

 以前一度、囚人達が集団で……といっても10人かそこら程度だけど、連行されている最中に暴れ出したことがあったんだけど、その時は看守と獄卒が協力して戦ってたし。

 その後すぐ『ブルゴリ』が出動して、全員鎮圧させられてたけど。

 

 まあ『看守』も『獄卒』も、あくまで『戦闘』は職務じゃなく、それぞれ決められた作業に従事するもので……戦うのは必要に迫られた非常時だけ、って感じだな。

 むしろそのへんは、『ブルゴリ』とか武力行使担当の戦力が担っていると見た。

 

 ……なんで延々そんなこと話し続けてるのかって?

 

 仕方ないじゃん、だって、そうでもして気を紛らわせてないと……

 

 

「ンフフフフ……ん~~~! 楽しい時間にしましょうね、『海賊文豪』ちゃん? お姉さんがじっくり、たっぷり、かわいがって……いやん♪ 感じさせて、あ・げ・る♪」

 

 

 ……これから起こることを想像しちゃって、さすがに怖いからさ……。

 

 『感じさせる』って……ああ、『苦痛を』ですね、わかります。

 テンション高いし……気合入ってんなあ。あー、今から陰鬱だよ。

 

 色々な『知識』や『経験』を得ることにひたすら貪欲で、何でもかんでも経験資料にしてしまう、そういう意味で何でもありかつ雑食な……ある意味お得な性格。

 

 そんな自覚のある私だけど……さすがにこんな経験は歓迎できないな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拷問場所の中の一角。

 そこに連れてこられた私は……まず最初に、上半身の衣服をはぎとられていた。

 

 その状態で、手錠の鎖を、拷問場の設備……天井からぶら下がっている鎖に接続する形でセットされたかと思うと、ガラガラガラ……と音を立てて、それが巻き取られる。

 当然、腕もそのまま上に引っ張られて……天井から吊り下げられる形にされる。足がどうにか地面についているというような、ギリギリの高さだ。

 

 トップレスのまま腕の自由を奪われ、何も隠せない状態にされ……上半身が丸見えになって拘束されている私の背後に、機嫌よさそうにサディちゃんが立つ。

 

 そして、前置きも何もないままに……ひゅん、と空を切るような音がして、

 

 

 ―――スパァン!!

 

 

「痛っ―――たぁ……っ!?」

 

 

 背中に走る、強烈な痛み。

 まるで、刃物で切られたんじゃないかと錯覚するくらいの、鋭い痛みだった。

 

 まさに『身を切るような』……って言葉がまんま当てはまる、と思ってしまう感覚だった。

 本当に切れているんじゃないかとすら思う。そのくらいに痛い。

 

 ぶっちゃけ、予想を軽く超えてきた……覚悟してたよりずっと痛い。声を我慢できなかった。

 

 思わず、ビクンっ! と体が跳ねてしまい……手錠の鎖がガシャン、と音を立てる。

 しかし当然、その程度ではびくともしないので……固定されている私の手首が無駄に痛く感じるだけに終わった。

 

 痛みのあまり、一瞬呼吸を忘れていた私の体が、数秒時間をおいてそれを思い出したように、激しく酸素を催促してきた。

 まるで全力疾走した後みたいに、大きく息を吸って、吐いて……を繰り返す。

 

 それと同時に、どっと体中に汗がにじんできたのが分かった。冷や汗か、脂汗か……両方かもしれないな。

 危機を感じた時に出る『冷や汗』。苦痛を感じた時に出る『脂汗』。……今の私、どっちもあてはまってるもん。

 

(やばい……たった1回でこれとか……拷問なめてた……)

 

「んん~~~! いいわっ、その悲鳴(スクリーム)! 海賊界でも屈指の美女として知られる『海賊文豪』の悲鳴……なんて甘美ッ! ああん、たまらない……もっと聞かせ……て!」

 

 

 ―――スパァン!

 

 

「……っ……ぐ、ぅ……!?」

 

 

 今度は悲鳴も出なかった。

 体の横側、背中から脇腹のあたりにかけて……肉が抉れたんじゃないかってくらいの痛みと衝撃が走って……また息が止まって、しかも体が声の出し方を忘れた感じ。

 

 目の端に涙が浮かんだのが自分でも分かった。……仕方ないよね、生理反応だこんなもん。

 

 ……色々と経験して、厳しい訓練も積んで……痛みなんてそれなりに耐性付いたし、拷問も我慢できるだろうと、そう思ってたんだけどなあ……。

 

 海楼石の手錠のせいで、『紙』になって受け流せないのはもちろんとして……彼女が使っている『鞭』という武器は、とりわけ『痛み』を与えるのに優れている武器だ。

 しかもそれを、拷問大好きで、拷問に慣れている……つまりは、いかに相手に効率よく苦痛を与えるか……という専門家であるサディちゃんは、それはもう上手く使いこなす。

 

 知識不足もいい所だった私の予想なんて、軽くぶっちぎった苦痛を叩き込んでくる。

 

 おまけに、

 

「いやん、ダメよそんな風に我慢しちゃ! もっとちゃんと悲鳴を、ん~~聞かせなさいッ!」

 

 

 ―――スパァン!

 ―――スパァン!

 ―――スパァン!

 

 

 この性格である。

 

「ぐ……ぎっ……!?」

 

 我慢してるんじゃないよ……声も出せないんだよ……!

 なんかよくわかんないけど、体がびっくりして、気道を空気が通って行かないんだよ!

 

 酸欠なのかそれ以外の理由かわからないけど、目の前がチカチカする!

 

「いっ、ん……ぅあぁあぁっ!!」

 

「ん~~~!! そうよ、ベリーグッド! その悲鳴、ん~~~♪ 癖になりそう! 美しい女性はやっぱり悲鳴も美しいわっ!」

 

 1分も経っていない間に、何回鞭を振るわれたか……

 早々と息も絶え絶えになった私は、頬を涙が伝うのを感じながら……どうにか首を動かして自分の体を見る。

 

 我ながら胸が大きくて、ちょっと下側が見えづらいが……色白の肌の端っこの方に、赤々としたミミズ腫れのような痕ができていた。

 さっきの、脇腹まで鞭の一撃が届いたあたりだ。うわぁ……痛そう。

 

 ……いや、痛いんだけどさ実際。現在進行形で。

 

 ……わざわざ服を脱がされた理由が分かった。

 こんなん服の上から食らったら、ズタボロになって一回で服がダメになるもの。確実に。

 

 ていうか、まだ全然序盤だと思うんだが……結構精神的に来てるぞ……思ったより弱いな私。

 

 戦闘中の怪我とかなら、戦いの最中で昂ってアドレナリンとか出てるから、ある程度我慢できるんだろうけど……こんな風に、抵抗を許されない状態で一方的に嬲られるのって、きついんだな……初めて知ったよ。

 

 兵士とかが訓練の一環として、対尋問訓練とか受ける必要がある理由が分かった気がする。

 いい経験になった。……そう思うことにする。

 

 叩かれたのは背中とその周辺だけなのに、体中にガタガタ震えが広がってしまっている私に……サディちゃんはさらに絶望的な言葉を投げかけてくる。

 

「もっともっとたくさん、た~くさん聞かせてちょうだい、あなたのかわいい悲鳴を! 大丈夫……昼食の時間までん~~~、まだまだたっぷりあるわ!」

 

 ……おかしいな、私の記憶が確かなら……さっき朝ごはん食べたばかりだったと思うんだが。

 

 その後すぐに『引っ越し』があって……その分しばらく時間が経っていたとしても、たぶん1時間も経ってはいないだろう。

 その後ほどなくしてサディちゃんが来て、ここに連れてこられたから……

 

 この部屋に時計ないからわかんないけど、今多分、まだ9時前……

 昼食は12時とかそれ以降として……

 

(嘘でしょ……あと3時間これが続くの……!?)

 

「ゆっくり、たっぷりかわいがって……あぁん、やめてぇんそんな不意打ち! いいわ、その顔! 怯えて震えるその表情……すごくいいっ!」

 

 ……顔に出ていたらしい。

 悶絶する勢いでサディちゃんが喜び、舌なめずりしていた。

 

 そして、もう辛抱溜まらんとでも言うように……手に持った鞭を振りかぶりながら、またゆっくりと後ろに回る。

 ……しかし、すぐには衝撃は来ず……たっぷり時間をおいて、あの空を切る音がして、

 

 ―――スパァン!

 

 また1つ、私の背中に傷が刻まれた。

 

「ぅっ……あぁあぁぁあ―――っ!!」

 

 痛みを受けるのに、体が慣れてきたんだろうか。

 今度はあまり息が詰まらずに、すんなりと悲鳴に変わった。

 

 後ろでまた、よくもまあ飽きもせずサディちゃんが喜んでいるのがわかった。

 

「はぁん、たまらない……ああそうだ、言い忘れてたわ。スゥちゃんは拷問初心者だから、特別に今はまだ、あまり痛くない鞭を使ってあげてるの。見た目はすっごく赤くなっちゃってるけど……痕もほとんど残らず治ると思うから安心しなさい」

 

「……!? 嘘、でしょ……これで……!?」

 

「嘘じゃないわ! もう、疑うなんて悪い子ねっ!」

 

 ―――スパァン!

 

「あぁっ……あ、ぎぁあっ!?」

 

「はふぅ~~♪ ふふっ、この鞭でその悲鳴なら……もっと痛い鞭を使ってあげたら、どんな声を聞かせてくれるのかしら……♪」

 

「……っ……!?」

 

「まだしばらくはコレで行く予定だけど……もしあなたが、この先もずっとずっと、強情を張り続けるのなら……その機会も、あるかも……ねッ!!」

 

 ―――スパァン!

 

 

 

 ……こんな経験を、私はあと何度耐えればいいんだろう。

 

 今日だけでは間違いなく終わらないし、鞭打ちだけでも間違いなくないだろう。

 どれだけ長い間、私はこういう……『苦痛』のプロが与える責め苦を受け続けることになるんだろう。

 

 それを考えると、目の前が暗くなる気がして……

 

 

 ―――スパァン!!

 

 

「あぁあ―――っ!?」

 

 

 ……しかし、それすら許されなかった。

 

 

 

 

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