大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回は……最初の方にちょっとダイジェストっぽく拷問風景がありますが……そこまできつくはない、かな?
★★★は今回ないです。

それと、何人か新キャラが出てきます。

第156話、どうぞ。



第156話 スゥの囚人生活(新たな出会い)

 

 

 さらにしばらく経って……他にも様々な拷問を体験させられることになった。

 

 閉め切った部屋の中で、ひたすら大音量の音を聞かされ続けたり、

 

 眠ろうとするたびに起こされて、何十時間も眠らせてもらえなかったり、

 

 腕じゃなく指で縛られて拘束されて、そのまま指がちぎれそうな痛みの中で過ごしたり、

 

 ひたすら地面を掘って、その堀った地面を埋め戻して……というのを繰り返したり、

 

 腕を縛られて三角木馬に座らされたり(エロい拷問のイメージあるかもしれないが、普通に食い込んで滅茶苦茶痛い)、その状態で肩から抑えつけられてもっと食い込まされたり、

 

 光源が何もない真っ暗な部屋で、何時間も何も刺激を与えられずに放置されたり、

 

 拷問や処刑で死んだ囚人達の死体の片づけや、拷問具の掃除をさせられたりもした。

 

 また、それまでにもあった拷問のバージョンアップ版を受けることもあった。

 鞭打ちなら、もっと痛い鞭で叩かれたり、背中だけじゃなくお尻も打たれるようになったり(必然的に拷問前には下の衣服も剥ぎ取られることに。全裸である)。

 宙吊りでは、吊り下げている最中に、熱湯をかけられたり引っぱたかれたり。

 

 色々と食らって……それでも何とか耐え続けた。

 

 直接的な痛みや苦しみの拷問も、心を抉ってくる系の拷問も入り混じり……体にも生傷が絶えない日々。拷問されている最中はもちろん、その後解放された後もまだ苦しいのが続く。

 最近では、丸1日挟んだ休息日の後にも、傷は治らず、痛みや疲れは抜けきらず……それらを引きずったまま次の拷問を受ける……なんてこともざらになった。

 

 こんな日々が、まだまだこの先も続くんだろうな、と思って、覚悟と諦めの混じった中で過ごしていたんだが……

 

 

(……気のせいかな、最近……少し体が楽になったような……?)

 

 

 どうも様子が違ってきた……みたい?

 

 いや、心も体も相変わらず痛くて苦しいんだけど……前みたいに耐え切れなくて泣き叫ぶほどの感じじゃなくなってきたというか……我慢できるようになってきたというか……。

 痛いのは変わらないんだけど、それを押し殺して、耐えられるようになってきた。悲鳴を上げずに飲み込んで、あるいは切り離して、表に出さない……という感じに。

 

 耐えたからと言って拷問そのものが楽になるわけでもないし、むしろ悲鳴がない、小さいことを不満に思ったサディちゃんに『我慢しちゃダメよ!』なんて言われて、より激しく打たれたりするし……いいことなのかというとぶっちゃけ微妙かもしれないが。

 

 ただそれだけなら、絶え間なく受け続ける苦痛に、心と体が図らずも鍛えられて、慣れてきたのかな、程度に思って終わりだったかもしれないが……加えて最近、

 

(傷の治りが早いし、痛みや炎症が引くのも早くなった……気がする)

 

 正確に時間やら期間を測ったわけじゃないんで、あくまで『気がする』程度なんだが……そう感じる。

 これは……慣れたからどうこう、ってなるもんじゃないよね、人体の構造上。

 

 訓練やら何やらを繰り返すうちに体が変わるのは、まあよくあることだ。

 素振りをするうちに手の皮膚が硬く、分厚くなったりとか、その手の変化は普通に起こる。

 

 けど、そういうので『怪我しにくくなる』ことはあっても、『怪我が早く治る』ようになるって……あんまり聞いたことない気が。

 ワンピース世界だと、それすら『慣れ』で起きるもんなのか?

 

 それとも、ただ単に鍛えられて怪我しにくくなって……見た目は同じでも前よりは軽傷で済んでいる、とか。

 それで結果的に早く痛みが引いて、傷も早く治ってるように見えてるだけ、とか。

 

 ……それとも……

 

(この数々の『拷問』が刺激になって……また私の体の中に眠ってる『超人』の因子が目覚め始めている、とか……?)

 

 ありそうなのが怖い所だ……その手の分野じゃ、私の『ママ』は相応以上の権威だったらしいし……実際、パパとの訓練やら何やらの中でそういう兆しは一部見られてたし。

 

 仮にその予想が当たっていて、また私の体が、大きく作り替えられようとしているとなると……

 

(怪我の功名、不幸中の幸い……なのかもしれないけど、いいことばかりじゃないな。体質が急激に変わると、その段階でその分エネルギー消費するっけ……。体が頑丈になるだけならまだしも、よりによってこんな時にそれは、まずい……)

 

 うだるような暑さの中で……汗を袖で拭って吹きながら、私はそう思った。

 

 拷問を加えてもまだ意見を変えない私に業を煮やしたのか……ついこの間、閉じ込めておく牢屋が変わった。

 レベル2『猛獣地獄』から……レベル3『飢餓地獄』に。

 

 もともと私の懸賞金額は五千万オーバーだったので、本来の扱いに戻ったってことにはなるんだけど……水も食料も最低限でこの暑さは……きつい。牢屋の中で過ごすこと自体が拷問になる。

 周囲にいる、ガリガリに痩せて……というか、干からびかけているようにしか見えない囚人達の様子を見れば、そんな生活を続けた結果どうなるのかってことは……嫌でもわかる。

 

 このまま行くと……成長するどころか、痩せて体力も落ちていっちゃうな……。

 それこそ、マリージョアで1年近く過ごして、その間鍛錬できなくて……がくっと体力が落ちてしまったあの時以上にひどいことになりかねない。

 

 それどころか、体が要求してくる栄養の量に対して供給が足りな過ぎて、栄養失調で体を壊したり……最悪死ぬことになったり……冗談じゃなくありえてしまう。

 

 ……いっそ一旦、成長する形じゃなくて、より省エネで済むように体が変わってくれたりすれば助かるんだが……。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 苦痛が増す形になった、レベル2からレベル3への引っ越しだったけど……それとは別に変わったこともある。人間関係だ。

 牢屋が変わったんだから、ある意味当たり前ではあるが……同じ房に入っている囚人の顔ぶれも変わったので。

 

 と言っても、このフロアの囚人達って基本、熱さと飢餓で体力も気力も奪われてるから、あまり話すこととかないし、そもそも他人に関わろうとしないんだが……そんな中にも、例外はいた。

 いい意味でも、悪い意味でも。

 

 

「あたたたた……ったく、獄卒の奴ら、相変わらず手加減ってもんを知らねーんだから……」

 

「同感なのです……あー、疲れた……」

 

 

 なんてことを考えていると、牢屋の扉が開き、相部屋の女囚2人が拷問から帰ってきた。

 

 1人は、背が高くて割としっかりした体格で……深い青色のショートヘアの女性。

 

 もう1人は、薄紫色の、腰くらいまであるロングヘアの……(見た目は)少女。

 

 それぞれ、牢屋の中に入ってすぐ、私が既に帰ってきていることに気付いて――言い忘れてたけど、私も今日は拷問の日で、さっき帰ってきたところだ――『お』と反応した。

 そして、適当な場所に座り込み、息をつく。

 

「よっこらせっと。今日はスゥは早かったんだな……2人とも、何だった? あたいは鞭」

 

「私は緊縛なのです。途中で熱湯ぶっかけ付き」

 

「うげっ……このフロアに入れられてる上にさらに熱いやつって……最悪のコンボじゃん。大変だったなブルーメ」

 

「……熱湯はともかく、私は体は軽いから、緊縛はそこまでつらくないのですよ。ビューティの鞭の方が私は痛くて嫌です。……スゥは?」

 

「私は……今日は、水責め」

 

 と、私が言うと、大小で対照的な2人……ビューティとブルーメは、びっくりしたような視線を私の方に向けてきた。

 いや、驚愕だけじゃなく……羨望も視線に乗ってるな。

 

「マジで!? うわ、うらやましい……涼める上に水飲み放題じゃん! なんだよ私がそっちがよかったな~!」

 

「いや、そんなにいいもんじゃなかったって……相変わらず沈められるの肩から上だけだし、お腹の中パンパンになるまで飲まされるし……そんでその後お腹殴られて、上からも下からも出させられて、笑いものにされるまでがセットだよ。そのせいでぐちょぐちょになるし、その後の着替えも男の獄卒達の前でさせられるし……」

 

「でも実際、レベル3の囚人に水責めは完全にご褒美ですよ……私もそっちがよかったのです」

 

「だよなー……見られて笑われるくらいどうってことないだろ、減るもんじゃないし」

 

 2人して、つらい拷問だったと言っても、けろっとしてそんなことを言う。

 

 この2人は、私がこの『レベル3』に引っ越した後にこの牢屋で同室になった女囚であり……そのままなんとなくというか、自然と打ち解けて仲良くなった……仲間だ。

 前にいた『レベル2』の部屋では、聞けば色々教えてくれたりはしたものの、一線引いてあまり深くかかわらないようにしようとしてる感じが強かったからな。こういう風に気安く話して、楽に付き合える友達っぽい関係は、精神的にゆとりができるのでありがたい。

 

 それぞれの見た目は、さっき言った通りとして……

 

 ビューティは、話した感じからわかるかもしれないけど、さっぱりした竹を割ったような性格。口調も男っぽくて気風がよくて、姉御肌って感じ。

 監獄の中でつらい拷問にさらされ続けても、弱音一つも言わない強い女性だ。

 

 それだけじゃなく……この監獄では本当に珍しいことではあるんだけど、他の囚人に対しても気配りをしたり、弱ってる者を心配したりするやさしさ、面倒見の良さも持ってる。そういう意味でも、強くて頼れる姉御肌、って感じだな。

 

 もっとも、そういうのは『甘い』と言われてあざ笑われたり、偽善者ぶってると軽蔑されたりすることが多いんだけど……そういうのも含めて気にせずけろっとしている。

 人として大きい、っていうのかもね。こういうの。

 

 器だけじゃなくて体も大きいけど。何せ、私より頭1つ分以上は上だ。

 私、190cmくらいだから……2mは確実に超えてるな。

 それに、身長以外の部分もあちこちご立派に大きい。それでいて、きちんとしまる部分はしまっていて、くびれもできているという健康的なボディだ。

 

 んで、もう1人……ブルーメは、ビューティとは対照的に、小柄でクールな感じ。

 普通にしゃべるし、無口、ってわけじゃないんだけど……表情とかあんまり変わらないし、声に抑揚もあんまりないので、静かな印象を受ける。あと、いつも半開きで眠そうな目してるし。

 ビューティと並んで話してると余計にそう見えてしまう。対比で。

 

 さっき言った通り身長は低く、たぶん150cmあるかないか。ここでもビューティとは対照的で……小さいし、ぺったん娘だ。

 腕も足も細いし、いかにも不健康というか……弱弱しそうな感じ。

 

 ……そう見えるんだが、見た目よりも心身ともに意外とタフなのには驚かされた。きつい拷問を受けても割とけろっとしてるし、悲鳴とかもほとんど上げない。

 

 ……単にそういう感情の表現というか、リアクションが薄いだけの可能性もあるけど。

 一応、つらいとは感じてるそうだし……本人談。

 

 そんな2人も、この『インペルダウン』にいることからわかるように……一応、世間では犯罪者として扱われている立場の人である。

 というか、2人とも海賊である。一応、だが。

 

 というか、この2人の名前に聞き覚えのある人もいるんじゃないかな?

 何せ、前に女ヶ島での雑談の中でちらっと出てきた、『世界美女・美少女海賊ランキング』の中に入ってた2人だからね。

 まさか、こんな場所でお目にかかることになるとは……私もびっくりしたよ。

 

 フローズン・ビューティ。通称“冬空の料理人”。懸賞金額5900万ベリー。

 『世界美女・美少女海賊ランキング』第9位。

 

 ヴァレリー・ブルーメ。通称“霧の海の亡霊”。懸賞金額1億600万ベリー。

 『世界美女・美少女海賊ランキング』第5位。

 

 ちなみに私は懸賞金額7600万ベリーで、ランキング第7位です。

 懸賞金額もランキングも、ビューティには勝ったが、ブルーメには負けてます。

 金額はどうでもいいけど……ランキングの方はちょっと地味に悔しい、かも。

 

 まあ……儚げでかわいらしい、お人形さんみたいな魅力には……私みたいな結構色々雑な女じゃ勝てなかったってことかね……。

 

 この2人に関する説明は、ざっくりとしたところでこのあたりにしておく。

 他にも色々とあるんだけどね、話すことは。2人が海賊になったバックグラウンドとか、捕まってこの監獄に来ることになった経緯とか。

 後は……特にブルーメの方は、どうして『億越え』の大物なのにも関わらず、レベル4や5じゃなくてこのフロアにいるのかとか……そのへんも。

 

 機会があったら語ることにしよう。

 

 

 

 ……それと、さっき私がこういったのを覚えているだろうか。

 『いい意味でも悪い意味でも』出会いがあった……と。

 

 『いい意味で』の方は、もう言うまでもないと思うけど……今話した2人のことだ。

 楽な感じで話すことができて、心にゆとりを与えてくれる。2人も、そう思って私やもう1人と接してくれてるようだし。

 

 ……では、『悪い意味で』の方は何かというと、だ。

 

 ……ちらっと、わからない程度に一瞬だけ、牢屋の外を見る。

 

 

 

(……今日もこっち見てるなー……)

 

(相手にすんなよスゥ。あーいうのは少しでも構ってやると調子に乗ってぐいぐい来るからな)

 

(そうじゃなくてもゲスいこと考えてるのがまるわかりなのです)

 

 レベル2でもそうだったんだけど、牢屋自体は男女別になっていても、フロア自体は分けられていなくて……見える場所に男性囚人達が入っている牢屋がある。

 そしてそこに入っている囚人達は、まあ欲望に正直な『ぐへへ』って感じの視線を向けてくるわけだ。

 

 しかし、このレベル3では、生命維持で精いっぱいで性欲すら引っ込むレベルの暑さのせいで、そういう視線はほとんどない。

 女の体にあれこれする体力も気力ももうない感じ。

 

 ……しかし、そんな『飢餓地獄』の中でも、1人……いかにもって感じのねっとりとした視線を向けてくる男性囚人がいるんだよね。

 

 斜め前の牢屋の中にいる、中年の囚人なんだが……見た目一発の印象が、なんともまあ……醜い。

 もっと言うと、気持ち悪い、の方が正確かもしれない。

 

 紫色の髪のぼさぼさの頭、無精ひげ、しわだらけでシミだらけの顔、口元には常に薄笑いを浮かべている……とまあ、なんとも気持ち悪い外見の中年オヤジである。

 ……というかむしろ、おやぢである。

 

 どこで調達してきたのか、タオルのような手ぬぐいのようなぼろ布を首にかけていて……その視線はまっすぐ、この牢屋に入っている私達に向いている。

 話しかけては来ず、見ているだけなんだが……それだけでもぶっちゃけ気持ち悪い。

 

 『見聞色』に乗って漂ってくる気配が、完全にそういう気配一色に染まってるから。

 

 ……気づかれないくらいのわずかな時間しか視線を向けなかったはずなのに、まるでこっちの視線に気づいたように――実際気づいたのかもしれない――その瞬間にやりと笑みが深くなった。

 ぺろりと舌を出して唇をなめ……うわあダメダメ、気持ち悪い一層。

 

 思わずぶるっと身震いしつつ、私はその男性囚人……懸賞金額5000万ベリーの海賊・キサックから視線を外し、努めて考えないようにしつつ……おしゃべりに戻った。

 

 

 

 この時の私は、まだ……夢にも思っていなかった。

 

 視線にすら嫌悪感を感じてしまう、このキサックという囚人と、思いもかけない形で関わり合いになるということを。

 

 そしてその時に、私に……

 いや、この牢にいる私達3人全員にとって、とてつもなく重要な役割を担ってくることになる、ということを……。

 

 まさかこの時、私が予想できるはずもなかった。

 

 

 

 




というわけで、以前、第73話でのちょいネタ『美女・美少女海賊ランキング』で名前だけ出てきたうちの2人……『ミス・ブルーメ』と『フローズン・ビューティ』がここに来て登場。

さらに、なんかもう1人変なのも登場。

この先どう絡んできますやら……こうご期待。
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