大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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関連タグを一部追加しました。

・原作生存キャラ死亡
・R17.9

2つ目に関しては若干遅い気もしますが…(汗)


第157話 スゥの囚人生活(女囚3人)

 

 

 偶然なのか、それとも狙ってそうしてるのかわからないけど……私達3人が入っている牢屋は、それからしばらく経っても、新しく囚人が入ってくることはなかった。

 私とビューティ、ブルーメの3人だけの生活が続く。拷問されて、休んで、愚痴を言い合っておしゃべりして……そんな繰り返しの日々だ。

 

 相変わらずカラカラに乾いて熱いここの環境はきついけど……精神的にだいぶ楽なおかげで、今のところ乗り切れている。

 

 心配だった栄養不足で痩せてしまうことも、少しずつ体重が落ちてる気はするものの……意外とそんなに変わらないで体を保てている。

 『超人』云々の関係で特に、体の変化に伴ってエネルギーが必要になるんじゃないか、それで逆に栄養失調で死にかねないんじゃないか……って心配してたけど、それも起こる気配はない。

 

 ……むしろ、当初私が『そうなったらいいな』と言ってたような……少しの食料・ないし栄養で体の機能を保てるというか、省エネな駆動がなされているような気すらする。

 どういうことだろう……今回の『成長』はそういう方向だったのか? それとも……私が『そうなったらいいな』って思ったから、体がそれに応えたのか? あるいは、そうしないと命の危機だって体が悟ったから、とか……

 

 ……考えても答えは出ないが、まあ好都合には変わりない。

 体を壊すことも、過度に瘦せることもなく、ひとまず耐えられている……それだけで十分だ。

 

 ……それともう1つ、もうほとんど四六時中、って感じでこっちを見ていて、ねっとりとした視線を送ってくるあの男……キサックだけども。

 時々あいつ自身も拷問に連れ出されるし、夜はさすがに眠るようだから、本当に常に見られてるってわけじゃないが……相変わらず、こっちを見続けている。

 

 見る以外は何もせず、話しかけてくることもない……って部分も相変わらずだ。気持ち悪く感じる点以外は、特に何も害はない……と言えなくもない。少なくとも、今は。

 

 ただ、囚人服のズボンの前の部分が時折、しっかり変形してテント張ってるのを何度も見ているので……頭の中はあくまでそういう妄想やら欲望が渦巻いているようだ、というのも確かだ。

 だから、あいつに対しての警戒心や――間にそれぞれの部屋の鉄格子があるとはいえ――嫌悪感が消えることは、まずないだろう。

 これについては、私達3人に共通の認識だ。

 

 それと……拷問の内容にも、また変化があった。

 

 ただでさえ今、熱くてかなわない環境に置かれてひーひー言ってるところだってのに……毎回じゃないにせよ、もっと熱いところに連れていかれるパターンが出てきたのである。

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.三人称

 

「ぎゃあぁあぁああぁ―――っ!」」

 

「熱い……熱ちいよぉっ……!」

 

「やめて、もう……助けてくれぇ……」

 

「畜生……苦しい、内臓が焼ける……っ!?」

 

 レベル4『焦熱地獄』。

 

 フロア全体が巨大な鉄窯になっており、レベル3と比較してなお圧倒的な熱さが立ち込めているそこでは、ただ牢屋の中で黙っているだけでも苦痛。

 肺が焼かれそうな感覚ゆえに呼吸すらままならないのに加え、熱を使ったあらゆる種類の責め苦が行われ、囚人達を苦しめている。

 

 真っ赤に熱した鉄の棒を押し付けられる者。

 炎の上に宙づりにされ、動けない状態で下から火であぶられる者。

 煮えたぎる『血の池』に突き落とされて沈む者。

 吹き上がる灼熱の蒸気に身をさらされる者。

 

 さらには、このフロアをそのような地獄の環境に保つため、絶えず火にくべられている燃料の薪を運ぶこともまた、拷問を兼ねた囚人達の仕事。

 

 挙句、場所によっては身に着けている鉄製あるいは海楼石製の手錠すら、熱をもってそれ自体が苦痛になってしまいすらした。

 

 囚人達の悲鳴と絶叫が響き渡り、ただそこにいるだけで死ぬよりも苦しい、と口をそろえて皆が言う、まさに『地獄』の名がふさわしいフロアだった。

 

 そんなフロアに、姿を見せることで囚人達を威圧する見回りも兼ねて……監獄署長・マゼランは様子を見に訪れていた。

 今、収容している囚人達の中でも、ある理由で特に注意しなければならない者達の、現状を目で見て把握しておくために。

 

「ここか……様子はどうだ、ハンニャバル?」

 

「はっ! さっさと署長の座を開けてくだ……あ、間違えましたすいません。お疲れ様です署長! 本日も万時滞りなく、トラブルもなく進んでおりマッシュ!」

 

「ひどいぞお前、その間違え方。どうやったらそんな……はぁ、まあいい。……あそこにいる3人だな?」

 

「あ、はい。ただいま、灼熱の拷問の最中でありマッシュ」

 

 ハンニャバルとマゼラン、それに、マゼランのお供をしてきた副看守長ドミノが見上げる先には……空中にある巨大な金網のような造形物と、その上に乗せられている囚人達という図が見えた。

 

 『網』といってもその()は大きく、しかも場所によって大きさが違う。

 全体でみると大きな長方形……というか、ハンモックのような形になっているその網は、端の方に行くほど目は大きく、中心に行くほど目は小さく、細かくなっている。

 

 目が小さい場所でも人1人がギリギリ通れてしまえそうなくらいの大きさはあるが、大きい場所では、大の男が数人ゆうにすり抜けてしまいそうな大きさだ。

 すなわち、場所によって『落ちやすさ』は違うものの……立つにしろ座るにしろ、きちんとその金網に捕まっていなければ、足を滑らせてその目を通り抜けて、簡単に下に落ちてしまう。

 

 下には煮えたぎる『血の池』があり、落ちればさらに過酷な……命すら落としかねない地獄。

 しかも、そこから立ち上る熱と蒸気が、金網の上にいる囚人達を苦しめている上……流れる汗で手足が滑り、しっかりつかんで落ちないようにする……ということ自体ままならない。

 おまけにその金網自体も相応に熱されており、囚人達に苦痛を与える始末だ。

 

 囚人達は少しでも落ちる可能性を減らすため、網の目が細かい中心を目指して殺到し……場所を争って押しのけ合い、突き飛ばし合い、場所を確保して誰にも譲らんと争い続けている。

 何人もの囚人が、悲鳴を残しながら場所取り合戦に敗れ、落下していく。

 

 ただ中には。ほとんどの囚人が中心に殺到しているのを利用して、逆に網の目の大きい端の方に陣通り、危険ではあるがしっかりとつかまっていることで難を逃れる囚人達もいた。

 

 スゥ、ブルーメ、ビューティの3人も、本日はその中に含まれている。

 そして、マゼラン達が視察に来たのも……彼女達3人だ。

 

 既に書類で知っている事実ではあるが、1人1人の罪状などのプロフィールについて、資料をめくりながらドミノが読み上げていく。

 

「囚人番号D0472。ベネルディ・トート・スゥ。通称『海賊文豪』。超人系『パサパサの実』の紙人間。元々は賞金稼ぎだったのですが、政府が禁じている分野の闇取引に手を出し指名手配。作家としていくつもの著作を裏表のルートで出版しており、世界中にファンが存在し、それらに対して多大な影響力を持つことから、政府が『扇動者』として存在を危惧しているインフルエンサー」

 

「囚人番号D0400。ヴァレリー・ブルーメ。通称『霧の海の亡霊』。自然系『キリキリの実』の霧人間。元は別な小物海賊団の構成員でしたが、ある時それを裏切り、船長を含め自分以外の船員のほとんどを殺害し脱走。能力で拠点周囲に霧を張り、近くを通る商船や海賊船を襲っていました」

 

「囚人番号C9939 フローズン・ビューティ。通称『冬空の料理人』。彼女は能力者ではありません。元々は非加盟国で小規模なギャング組織の頭目として活動していましたが、そのまま海に出て『人攫い屋』も兼ねた闇の仲買人(ブローカー)になります。加盟国の商船に手を出したことで海賊として指名手配され、その後逮捕。高い統率力と組織運営力、人心掌握力を持つ危険人物」

 

「全員、見目の麗しさに反して凶悪な面子ですね……美人だけど」

 

「見た目に惑わされるな……ここにいる以上は、他の連中と変わりない、いち囚人にすぎん。……もっとも、それは彼女達の反応次第、というところもあるがな」

 

「はい。3人とも、今政府および海軍が実施を検討しているとある計画の候補者ですね。特に『海賊文豪』については、現時点で既に非常に重要度が高い囚人として、直接の勧誘にまで至っています。……依然として、返事は芳しくありませんが」

 

「まだ首を縦には振らんか……強情なことだ。その意思さえあれば、すぐにでもこの地獄から解放されるというのに」

 

「サディちゃん……獄卒長は、その方が楽しいからいいと言っていますが」

 

「全く……まあ、きちんとやることをやっているなら何でも構わん。……だがドミノ、シリュウにだけはくれぐれも注意しろ。……最近、これまで以上に奴の横暴が目に余るようになってきた。……あの3人が奴の標的にならないようにな。囚人ではあるが、重要度が高い奴らだ」

 

「はっ、心得ております」

 

 そんな会話を交わすマゼラン達の視線の先……網の端の方にいることで場所取り合戦に巻き込まれずにいるスゥ達は……紐と紐が交わって『十』の字になっている部分に陣取り、少しでも安定を確保した状態で座る。

 その状態で、下から吹き上がってくる高熱の蒸気に、だらだらと汗を流して耐え続けていた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「熱いのです……」

 

「熱いって言うから熱いんだ、黙って耐えろブルーメ。言っても何も変わんねーんだからよ」

 

「わーお、根性論……でも実際ビューティの言う通りなんだよね。終わるまで我慢する以外にやることないし……あーもう、貴重な水分がどんどん出ていっちゃう……」

 

「サウナ入るなら水分補給もさせろよなー……血の池の水でもいいから飲みたくなってくるぜ」

 

「やめといたほうがいいのです。あの謎液体……水じゃなくてどっちかというと油ですから。しかも取り替えたりも全然してないから、囚人達の血とか汗とか普通に混ざってるのですよ」

 

「うっわ、絶対落ちたくない……落ちたら苦しいのはもちろんだけど病気になりそうじゃん。……っていうかそんなこと言われたら、この蒸気も変な臭いがするような気が……」

 

「そーか? ……別に何の匂いもしないけど」

 

「匂い嗅いでる余裕も普通はないのですよ……熱くて。……ダメ、もー限界なのです」

 

 会話の途中、ふいにそう言ったブルーメ。

 すると、おもむろに自分が着ている服を脱ぎだし……そのままあっという間に裸になってしまった。

 幼児体型ではあるが、きれいな色白の肌が――あちこちに拷問の痕と思しきものもいくつかみられるものの――上から下まであらわになってしまう。

 

「ちょっ、ブルーメ!? 何してんの!?」

 

「熱くてもう耐えられないのです……汗もべとべとで気持ち悪いし……この方がちょっとだけましなのです」

 

「いや、だからってそんな……ここ普通に周りから見えるし男の囚人や看守も……」

 

 

「うおぉ!? 何だあの女囚人、脱いでるぞ!?」

 

「さらし者の刑か? いやでも、あんなところで……あそこって『地獄のサウナ』だよな?」

 

「体型お子ちゃまでつるぺただけど、見た目はかわいいじゃねーか……へへっ」

 

「くそっ、蒸気で顔も体もよく見えねえぞ……おい看守! ちょっと火ィ消せよ! それか血の池に蓋しやがれ!」

 

 

 案の定、周りにいる……といっても、スゥ達がいるのは刑場の中なので、一番近い牢屋からでもそれなりに離れてはいるが……囚人達が騒ぎ出す。

 

 しかしそんなことはお構いなしに、少しだけ楽になったと言わんばかりに、ふぅ、と息をついているブルーメ。

 

 一応、下半身……足の付け根部分については、脱いだ服をかけて隠してはいるものの、それ以外は丸見えである。さらに言えば、下から見ればその隠している部分も見えてしまうだろうから……下の通路で作業をしている看守や獄卒達には丸見えだ。

 

「こんなつるぺたの寂しい体でよければ、好きなだけ見てろ、なのです。どーせあいつらも頭がゆだるか、その後の拷問ですぐ忘れるのですよ。……あー、まだ熱い」

 

 へっ、と笑ってそんなことを言い……鼻で笑いすらするブルーメ。

 

 それを聞いて……すぐそばにいたビューティも、

 

「……それもそうか。別に減るもんでもなし……」

 

 そう言って服を脱ぎ始める。同じように裸になり……ブルーメと違って、女性らしく膨らんだグラマラスな体があらわになった。

 同じように股間の部分は服で隠し、胸は脱いだズボンを素早く巻いて隠した。……大きさが大きさなので、ほとんど先端くらいしか隠せていないが。

 

「ちょっ、ビューティまで……」

 

「ふぅ……あー気持ちいい。けっこう違うなコレ脱ぐだけでも」

 

「そーでしょ? 汗でまとわりつく不快感がなくなるし、かいた汗も流れ落ちてくれるのですよ。熱も服の中にこもらなくなるし、蒸気やばいから乾燥の心配もないのです」

 

 周囲から聞こえる野太い歓声が、さらに大きくなる。

 

 それが耳に届いたのか、少しだけ不快そうにするものの……たった一枚でも脱いだことでやや楽になったのか、表情はすぐに緩んで息をつく。

 遠くからでも、男性囚人達の刺さるような視線は届いているが、もう気にならないようだった。

 

 2人が開き直って裸になってしまう中、最後に残ったスゥは……2人とも、多少ではあるが楽な様子になったのを見て……苦しさと羞恥心の間で揺れ動いている様子だった。

 

(……ええい、ままよ! 赤信号みんなで渡れば怖くない!)

 

 しかし最終的には……彼女もまた開き直ることを決めたようだった。

 

 勢いよく上の服も下の服も脱ぐ。形のいい胸がぶるんっ、と飛び出してあらわになり、隠されていた秘部も、わずかな時間ではあるが丸見えになる。

 すぐにビューティと同じように、上着で股間を、ズボンで胸を隠すが、それでもやはり、大部分の肌色が見えている光景は、ポルノグラフと見間違うような官能的・蠱惑的な光景だった。

 

 それでもかなり楽になったのか、『あ゛ぁー……』と声を漏らして表情を楽そうにし、足をぶらぶらと揺らしてリラックスした様子を見せる。

 

 3人もの美女・美少女のストリップショーを前にして、囚人達の興奮は最高潮になっていた。

 下で見ている看守や獄卒達も、歓声こそ上げないものの、視線を放せずじっと見ている者から、咳払いをしながらもチラチラとみている者までいる。

 

 ほとんどがズボンを変形させていて、歩きづらそうに前かがみになっている者も多くいた。その看守達の様子を見て、おかしそうに笑っている囚人達もいた。

 なお、ズボンが変形しているのは囚人達も同じだが、こちらは隠そうともしていない。

 

 なお少数だが、中には『あの熱さの中であのリラックスは地味にすげえな』と感心している様子の囚人や看守も混じっていた。

 

「ま、わかっちゃいたけどすごい視線……さすがに恥ずかしいね」

 

「あたいはあんまし気にならねーな、もう。もともとガキ共の面倒とか見て、風呂とか一緒に入ってたから、裸見られんのもよく考えたら慣れてるわ」

 

「へー……さらし者の拷問とかも平気な感じ?」

 

「まーな。見られるだけで何も他にされねーし。気にしなきゃ休憩と同じだぜ。……さすがにトイレに行けなくて垂れ流しにしなきゃいけないのは恥ずいけど」

 

「私も平気なのですよ。外じゃまず性的な視線なんて向けられないのに、男連中が私ごときの裸や放尿シーンでおっ勃ててるの見ると、むしろ勝った気分になるのです」

 

「それもなんかアレな感じするけど……」

 

「まーでも、男からしたら金払ってみるようなもんだし……ちょっとくらい金とっても許されるんじゃね? 自分で言うのもなんだけど、あたい達、結構見れる見た目してるだろ」

 

「お金より食料と水が欲しいのです」

 

「それは私も同感……まあ絶対無理だろうけどさ」

 

「こんな美少女のヌード見られる機会なんてシャバでもそうそうないのです。そのくらいの価値はあると思うのですよ」

 

「美少女ってブルーメ、お前38だろ。むしろあたい達の中で一番年上じゃねーか」

 

「私34でビューティ29だから、見た目とまるっきり逆なんだよね、私らの年齢比較。ブルーメがビューティより10歳近く上だって聞いた時は戦慄したわ」

 

「あたいも最初、小さな女の子だと思って、ひもじそうにしてるの見て食料わけてやったんだけど……その後カミングアウトされてびっくりしたわ。上目遣いで物欲しそうにして騙しやがって」

 

「確信犯だったことは認めるし、その後さすがに罪悪感あったから謝ったじゃないですか……。外の世界でも、このつるぺた幼児体型を最大限生かしていかないと色々大変だったから、もう半分癖みたいなものだったのですよ」

 

「まーまー、アレがきっかけになって上手いこと打ち解けた感じもあるじゃん、私ら」

 

「そうだけどなんか釈然としねー……」

 

「だいたい男なんてどいつもこいつも見た目しか見てねーのですよ。現に視線の9割はビューティとスゥのボンキュッボンに向いてるし。私に向けられるのは一部の紳士と特殊性癖の連中なのです。……催してきました。ここでおしっこしちゃっていいですかね」

 

「血の池にまた1つ変なもの混ぜようとすんな」

 

「羞恥心捨てすぎるのも限度あるよブルーメ……下の方に沈んで苦しんでる人もかわいそうだし」

 

「むしろ一部の人間にはご褒美だから問題ないのです…………っ……ふぅ」

 

「生々しいわ……ってオイ!? ……こいつマジでやりやがった」

 

「うっわあ……しかも超気持ちよさそうだし」

 

 拷問とは思えないくらいにリラックスして雑談する3人。

 もうほとんど、周囲の視線も何も気になっていない様子だった。

 

 

 

「ブヒャー! たまんねー!」

 

「いきなり脱ぎ始めた時は驚いたけど、最高のショーだぜ! ヒューヒュー!」

 

「おいおいこっち向けよ姉ちゃん達! 邪魔だよその服とってもっとよく見せろォ!」

 

「見てるだけで生殺しだぜ畜生……ヤりてえ……!」

 

「金払ってもそうそう抱けねえぜあんな上玉……」

 

「そいつらよこせ看守共ォ! そしたら俺達何も暴れもせずに大人しくしててやるよ。そいつらが壊れるまでだけどなァ!」

 

 

 

 囚人とはいえ、人の視線がある前ではしたない。

 3人の様子を下から見ているドミノは、同じ女としてそう思い、サングラスの奥から蔑んだ視線を向けていた。

 

 同時に、下品な歓声を上げる囚人達はもちろん、看守や獄卒達も前かがみになったりガン見しているのを見て、ため息をつく。

 

「まったく、見るに堪えませんね。職員達も情けない……ねえ署長」

 

「ブヒャー! たまんねー!」

 

「………………」

 

 若干の頭痛を覚えるドミノ。

 この監獄署長も、地獄の親玉と言われて恐れられて久しいが、普段は割とノリの軽い部分がある男だったことを思い出して、というか目の当たりにしていた。

 

 もっとも……あの3人は、一部では美女・美少女海賊の代表格として名前が挙がるくらいの美貌であるのは確かなので、ある意味無理もない光景なのか、と思いもしたが。

 

 ……しかしそんな中で、ふと気になったことがあった。

 

 こういう場面では、普段からそうだが、署長以上にノリが軽くてバカ騒ぎにも参加することの多い男が、やけに静かだな、と。

 同じように歓声を上げるか、あるいは騒ぎに乗じて『オラ署長の座を明け渡せー!』と何の関係もない暴言を飛ばすくらいはやるのに、と。

 

 不思議に思って横を見ると……

 

「……副署長? いかがなさいました?」

 

 スゥ達3人を見上げながら、なぜか顔を青くしているハンニャバルの姿がそこにあった。

 

 ちょうど同じタイミングで、ふと下を見下ろしたスゥがこちらに視線をよこし……ハンニャバルと目が合った。

 

「あれ、マゼランいる。ハンニャバルとドミノも」

 

「マジで? あ、ホントだ……視察にでも来てんのかな?」

 

「……おしっこあっちに飛ばしてやればよかったですかね? ……もうちょっと出せないかな」

 

「やめなさい」

 

「ガキか」

 

 もっとも、スゥの方はただこっちを見ただけで、別に視線が合ったという意識も何もなかったようだが……その瞬間、ハンニャバルは一層顔を青くしていた。

 

「ふ……副署長?」

 

「っ……い、いや、何でもない……すまないドミノ、気分が悪い……少し休む」

 

「は、はあ……お気をつけて」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 その場を後にしたハンニャバルは、同じ『レベル4』の中でも、断熱壁で区切られていてかなり気温が低い職員用スペースにくると……休憩スペースの椅子に腰を下ろして息をついた。

 彼自身、普段の自分であれば喝采モノの光景だったことは認識していたが……

 

「……何だ、この胸騒ぎは……恋!? いや、絶対ないな……気分がひどく悪い……」

 

 仮病でもなんでもなく、冷や汗が止まらなかった。

 しかも、理由がわからない。

 

 下からスゥ達の裸を見上げて……いや、それよりも前だ。

 スゥ達が服を着ている状態の時から……何だか気分がすぐれなかった。

 

 なぜなんだと困惑しながらも、深呼吸して呼吸を落ち着けて…………ふと、

 

 

「…………あっ」

 

 

 ふいに、ある光景がその脳裏をよぎった。

 

 それは……今から20年も前のこと。当時から勤めていた、このインペルダウンでの……というか、見習いとして勤務を始めてすぐの頃のことだった。

 

 

 

『俺の剣を知らねェか? 『桜十』に『木枯らし』……名剣だ』

 

『おめェらにゃあ悪いが、ここは出て行かせてもらう……』

 

『足はいらねェんだ……やるよ』

 

『2年間……世話になったな』

 

 

『マゼラン副署長~~! シキいました助けてェ~~!!』

 

 

 

「……なぜ、今、あんな昔のことを……?」

 

 20年前……史上唯一の脱獄者『金獅子のシキ』を前にしたときの記憶。

 スゥと同じように、あの時も……天井近くの梁の部分に座るシキを、自分は見上げていた。

 

 スゥと目を合わせた瞬間……ハンニャバルの中で、あの時の恐怖がフラッシュバックした。

 

 その理由はしかし、何一つ思い当たるものはなく……やはり不明のままだったが。

 

 

 

 このしばらく後になってから、ある事実が明かされるまで……ハンニャバルはそれを知ることはできなかった。

 

 

 

 






ここ最近感想欄とかで指摘を多くいただくのですが、本作の中では、原作の正確な時間通りにイベントを進めることはあまり意識してないです……展開でやりたいこと最重視ですごく適当に書いてます。

期間が限られていること自体が展開的に重要(例:全面戦争秒読みのアラバスタ直前あたり)な場面ならともかく、あまりそのあたり遵守しすぎて展開が狭まっても……と思いますし、このへんの柔軟さも二次創作の醍醐味だと思ってます。

前に一度調べてみた感じだと、原作そのものは『RTAかよ』ってくらいのハイペースみたいですが……アニオリとか、劇場版とかの例もありますし、そのくらいは展開次第でゆがむもんでしょ、と開き直ってます。

どうしても違和感ある、って方がいらっしゃいましたらすいません。

今後とも拙作をよろしくお願いします。

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