大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第160話 スゥとアリス inインペルダウン

 

 

 ……つまりこういうことだ。

 

 私が赤犬によって捕まった、という連絡を受け取った段階で……このアリスは、私の『大丈夫だから軽率なことはしないで待ってて』というメッセージをガン無視して、即で動きだしていた。

 無論、私の救出のために。

 

 海賊キサックは、アリスが『性別』『美醜』『色素』『肌や髪の質』などの様々な要素を、リバリバの実の能力で『逆転』させて調整して作り出した仮の姿だった。

 それを使ってわざと逮捕されることでインペルダウンに収監され、私を助け出そうとして機会をうかがっていた……らしい。

 

 しかもこの姿は、今回の潜入のためだけに作ったわけではなく……もっとずっと前から使っている姿だったというから驚きだ。

 

 ここ最近、アリスがちょくちょく『メルヴィユ』から外に出かけていたのは……なんと、その周辺の海で海賊行為をやるためだった。

 といっても、堅気に手は出したりせず、襲うのは奴隷商や悪徳商人とかだけだが。

 

 あとその他にも違法行為を適度に色々と。裏取引とか。

 

 その時に使う仮の姿として、この『キサック』を使っていたらしい。

 

 既に海軍にも目をつけられていて、アリスだってことがばれないまま、『キサック』に個別に5000万ベリーもの懸賞金かかっているというから驚きだ。どんだけやってたんだよ、その活動……?

 え、何、パパから許可は貰ってた? 社会勉強の一環として? ……あの人はもー……。

 

「そんでこうして、ようやくお母さんと再会できた、ってわけ」

 

「……スゥ、子供いたのですか?」

 

「知らんかったな……いやまあ、年齢考えりゃ別に不思議でもないのかもしれないけど……あれ? でもお前『未経験』だって前に言ってたような……」

 

 そんなことをブルーメとビューティは言ってくるが……私はそれに答えるよりも、目の前にいる娘に何を言ったらいいのか……未だにごちゃごちゃに混乱した頭で考えていた。

 

「アリスあんた……どんだけ無茶苦茶なことを……! 大丈夫だから待ってろって言ったのに!」

 

 流石に今回ばかりは、『よくできたね、えらいえらい!』なんて笑顔で褒めてあげるわけにはいかない……!

 

 私自身、このインペルダウンでは、痛みから恥辱までいろいろと経験させられて、思いっっきり苦しんでいたからわかる……この子がどれだけ危険なことをしていたのか。

 いや危険というか、ここに入っていたという時点で、相当に苦しい思いを既にしていたはずだ。

 

 監獄に入る時の『地獄のぬるま湯』に始まり……色々な種類の拷問。絶え間なく続く苦痛と屈辱の日々。

 しかもいたのがレベル3だから……水も食料もほとんど与えられずじまいだったはずだし。

 

 さらに、男性囚人には特に荒々しい奴も多いと聞くから、乱闘とかに巻き込まれていた可能性だって……海楼石の手錠をかけられてたから、抵抗だってろくにできなかっただろうし……

 

「大丈夫だよ……ボクの出身地忘れた? 痛いのも苦しいのも、恥ずかしいのも、お腹が減って喉が渇くのも全然慣れてて平気だったから。そんなことより、お母さんを見つけられるかどうか、どうやって助け出そうか……ってそればっかり考えてたよ。色々準備はしてたんだけどさ」

 

「全然何一つ大丈夫じゃないじゃない……! どれだけ不確かな、ほぼノープランな状態でこんな地獄に自分から飛び込んできてるの!? ここに入ってきたからって私に会えるとは限らないし、会えたところで逃げるなんてどうやって……自分がどれだけ危険なことしてたか、あんたわかってるの!? 死んでたかもしれなかったんだよ!?」

 

「そうだね……拷問、実際かなり苦しかったし……やばいこれいつまでもつかな、って割といつも思ってたよ。……お母さんはもっと長い期間これに耐えて、しかも女囚特有の恥ずかしい系の拷問まで受けてたんだよね……ホントすごいよ。……ごめん、早く助けられなくて」

 

「謝る部分が違うでしょうが! まずあんたこんな危険な……」

 

「違わないよ」

 

 しかしアリスは、スゥの言葉を途中で遮って言った。

 

「そこは違わない。……もちろん、無茶な潜入してお母さんに心配かけたのは……まあ悪いとは思ってるし、実際、見積が甘い部分もいっぱいあった。でも、助けに来たこと自体は、間違ったことをしたとは思ってないし、後悔も何もしてない。そうしない選択肢なんて、ボクにはなかった」

 

「……死ぬかもしれなかったんだよ……!?」

 

「それが?」

 

「……っ……!?」

 

「敵の……政府や海軍の懐に潜り込むんだ、危険なのも、死ぬかもしれないのも、当然覚悟の上だったよ。……それでも、お母さんを助けないなんて選択は、ボクにはありえなかった。この世界で一番大切な人だもん……命くらい迷わず、いくらだってかけるし…………お母さんと別れるくらいなら、置いて行かれるくらいなら……迷わず一緒に死ぬよ、ボクは」

 

 口元は笑ってるけど、目は笑ってない。

 アリスを『娘』にしてから今まで、見たこともないほどに真剣な目で……真正面から私の目を見て、アリスはそう言い切った。

 

 ……どうしよう。こんなこと言う娘……親として絶対に叱らなきゃいけないのに……。

 

 私、今……嬉しいって思っちゃってる。このバカ娘のこと、誇らしいって思っちゃってる。

 

「もし、ボクのこの考え方がバカだって、間違ってるって思うんなら……親の心子知らずな親不孝者だと思うなら、責任もってちゃんと教育し直してね」

 

「わかってるよ……母親舐めんな。この先何年かかっても、きちんと教育してあげるから」

 

「ふふっ、りょーかい!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「報告します獄卒長! レベル5の軍隊ウルフの異常発生による騒動、収束しました! ウルフ達の数を正常値近くまで間引きする作業も完了しています! ただ……作業に当たっていた囚人達は……全滅のようです。その……件の3人も含めて……」

 

「ん~~~何ですってえ!? そんな……確かなの!? 死体はきちんと確認したの!?」

 

「いえ、死体は……そもそも今回の死体は全てウルフ達に食い荒らされていて、原形を留めているものが1つも残っておらず……どれが誰の死体かもわからない有様でして。あの状況では、海楼石の手錠で弱っている能力者の囚人が逃げ出すのは不可能ではと……」

 

「そ、そんな……そんなことって……! せっかくの許可が……! 『晒しもの』の向こう側が……悲鳴がぁあ……!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 『ネタばらし』も終わったところで、私達は再び、アリスについて歩き出した。

 道中、色々と雑談を挟みながら。

 

「じゃあ、スゥの実の娘……ってわけじゃなかったのですね。そういえばあまり似てないのです」

 

「能力者なんだろ? でも、キサックに変装中はもともとの能力とか使うわけにもいかない、というか海楼石で使えないだろうに……取り調べとか大丈夫だったのか? よく誤魔化せたな」

 

「そのへんは我慢して乗り切ったんだよ。能力者だけど能力が使えない点は……『SMILE』の失敗だってことでごまかした。それなら、使える能力がないのに海楼石で力が抜けてもおかしくないでしょ?」

 

「それってたしか、裏ルートで出回ってるっていう『人造悪魔の実』だよな? たしか、能力を得られる確率は10分の1くらいで、失敗すると他の表情を失って笑うことしかできなくなる……」

 

「そ。だからいつも演技でニヤニヤしてればそれで誤魔化せたんだ」

 

「……拷問ってことは、相応の苦痛を伴っていたと思うのですが……その間も笑う以外できなかったのでしょう? 不可能では?」

 

「そこは我慢して笑い続けたよ。気合で何とかした」

 

「根性論!? 無茶苦茶な……」

 

「どんな忍耐力だよ……」

 

「私ら3人より圧倒的に化け物なのですよ……メンタルも演技力も表情筋も……」

 

 ほんとすげーな、アリス……

 非加盟国のスラム出身で――ああいや出身は違うんだっけか――確かに三姉妹の中で一番、苦痛その他に耐性はあるんだろうけど……

 

 私自身、痛くて苦しくて恥ずかしくて、何度も泣きじゃくってしまったからよく知ってる、あの過酷な拷問の数々を、気合ひとつで笑顔のまま耐えきっただと……!?

 

「とはいえ……流石に何度か綻んじゃったことはあって、『まずい』ってなったんだけどさ。でも元々この笑顔オンリーの症状って、『失敗』の結果じゃない? だからそれ自体も不安定で、よっぽどの苦痛の中でなら他の感情も出てくるんじゃないか、って看守とかも勝手に納得してたよ。もっと苦しければもっと取り戻すんじゃないかって、むしろノリノリでさらに激しくしてきたりさ」

 

 軽い感じで言ってるけど、壮絶なことされてる……

 辛かっただろうに、こんな風にあっけらかんと……全くもう、うちの子はホントに……

 

「それに、悪いことばかりじゃなかったしね……たまにだけど、恥辱の拷問を受けた女性囚人達が引き回してこられたりして、目の保養にもなったし……。お母さんがそうされてた時は、流石に悔しくて可哀そうで悲しかったけど……それでも体は正直に反応しちゃって……はぁ、男ってホントに不便な体だよね。興奮してるの一発でばれちゃうんだもん」

 

「……そういや『キサック』の時、見事にズボン変形させてたな……そのせいで余計視線が気持ち悪かったんだよな」

 

「でも……あれ? アリスさん、あなた女ですよね? キサックにはあくまで変装……変身していただけで。なのに女性の裸に興奮するって……え?」

 

「あー……気を付けてねビューティ、ブルーメ。この子、どっちもイけるから」

 

「「え゛!?」」

 

 ぎょっとして後ずさりする2人。

 

 それを聞いていたアリスは、にひひ、と笑って……しかしその後、2人をからかうのではなく、私に声をかけてきた。

 

「そーだお母さん? ボク、今回結構頑張ったよね? ちょっとくらいご褒美もらってもいいと思うんだけど……いいかな? あんな手紙をよこしてボクらを心配させたお詫びも兼ねてさ」

 

「ご褒美……? あんたねえ、こんな無茶して……まあでも、今こうして助けようとしてくれてるし……手紙の方は多少その通りというか、仕方ない部分もあるか……。わかったよ、でもご褒美って一体何が欲しいゅむぐっ!?」

 

 了承の意思を示した……その瞬間。

 

 私はアリスに、顔をガシッと両手でつかまれて固定され……唇を奪われた。

 

「「「……!?!?」」」

 

 

 ―――ちゅうぅぅにゅるじゅるむにゅじゅるるるずずずじゅるレロレロずびゅむちゅちゅぱにゅるずずずむにゅぐにゅずずしゅるるちゅぱずずじゅるずず――――っ!!

 

 

 何の音だよ!? ってツッコミたくなるくらいに激しい……いや本当に何が起こってるのかわからない謎サウンドが聞こえてくる。主に私の口の中から。

 困惑しているままに私は、アリスに舌を入れられて口の中を端から端まで味わわれて、唾液を吸い取られて流し込まれて等価交換からの舌と舌の絡み合いが待って待ってマジで待って!

 

 アリスあんた何やって、ちょ、こんな女同士で……っていうか親子で!

 当然のように舌まで入れてくるし、なんかちょっと気持ちいいんだけど……!

 

 そのままたっぷり1分くらいそれが続いて……

 

 ぷはっ、という音と共に、私とアリスの口は離れた。

 でろん、と唾液が糸を引いていた。あんだけ濃厚にくっつきゃ当たり前だが。

 

 その瞬間私は……がくり、と膝から崩れ落ちてしまった。

 

 こ、腰が抜けた……キスだけでこんな……初めてだぞこんなんなったの……!

 アリス、上手い……と言っていいのかわからんけど、どれだけのテクニックを……ていうか明らかになれてる感じだったんだが!? どこで覚えたこんなテク! 昔やってた『お仕事』か!?

 

 ……それとも……さっきアリス、『キサック』の姿で海賊行為『その他色々』やってたって言ってたな……おい、一体ナニをしていた!?

 

 まだ力が入らない私の体を倒れないように支えながら、アリスはぺろりと唇をなめて、

 

「ふふっ……まあ、今回はこのくらいで勘弁してあげる」

 

 ……これ、勘弁したって言えるのか……?

 私、息も絶え絶えなんですけど。海楼石の手錠より脱力しちゃってるんですけど!?

 

 ブルーメとビューティ見ろよ! あまりの超展開にめっちゃ怯えてガタガタ震えてるじゃん! お互いに抱き合って、理解できないものを見る目でこっち見てるじゃん!

 軍隊ウルフよりよっぽど怖い怪物が身近にいたって気づいて戦慄してるじゃん! なんだったらキサックとか目じゃないくらいに怖がってるじゃん!

 

 いつの間にこんなモンスターに育ってたんだよお前……色んな意味で……。

 これでもきちんと親としてあんた達のこと見てたつもりだけど、全然知らなかったぞ……。

 

 やばいコレ……。いや、前々からそういう子だとはわかってたけど……コレ絶対、冗談でも私がOK出しちゃったら、本気で私のこと襲ってくるぞ、性的に。

 性転換したアリスにベッドに連れ込まれて、あらゆる初めてを奪われて、アリスのものにされて、10か月後に子供を生む未来が見える……。

 

 なお、その子供は孫でもある。……何だこの謎文章。

 

 

 

 その後しばらく私の体には力が戻らなかったので、ビューティが抱えて運んでくれた。

 

 そのままさらに少し歩き……通路の途中でアリスが立ち止まる。

 

 一見すると特に何もないように見える通路の一角なんだけど……アリスがそこに張り巡らされている配管の1つを引っ張ると……なんとそれが壁ごと音もなく剥がれてこっちに開いた。

 すげえ……こんなん、知ってなきゃ絶対に気づけない。壁がドアで、配管がドアノブになってるんだ。

 

 そこにそのまま入っていき、きちんと扉を閉めて……ほとんど暗闇になってしまうが、遠くの方にぼんやり明かりが見える。

 それ目指して歩いていくと、そこにはまた扉があった。さっきの隠し扉とは違う、普通のドア。

 

 そして、そのドアノブに手をかけるアリスだが……すぐにはそれを開かず、もったいつけるようにこっちに一度視線を寄こして、ニヤリと笑う。

 

「さて……それじゃあお母さん、ブルーメさんとビューティさんも……ようこそ、この大監獄にあるはずのない……囚人達の楽園へ……!」

 

 そして、バン! と一気に扉を開くと、その瞬間……!

 

 

 ―――パンパンパンパンパンパァン!!

 

 

「「「ウェルッ……カマ―――!!」」」

 

 

 銃声……ではもちろんなく、鳴り響いたのは……歓迎のクラッカーの音。

 舞い散る紙吹雪、降り注ぐ紙テープ。

 

 何というかこう……画期的な格好をした、無数の変態……もとい、『新人類(ニューカマー)』達。

 

 漂ってくるお酒や料理のおいしそうな匂い。

 

 天井に『いや付け過ぎだろ』ってくらいに何個も密集して取り付けられたミラーボール。

 

 奥の方で割れるくす玉、中から広がる『ウェルカ()!!』の垂れ幕。

 

 目の前に広がる……なんかもう全てがうるさい光景。

 情報過多で私達3人の脳が混乱する中――たぶんこうなるだろうとわかっていた私でさえも――奥のステージに、ぬっと大きな人影が現れたかと思うと……

 

「とうっ!」

 

 掛け声と共に大ジャンプし……私達の目の前に着地。

 それは……身長の半分近くを顔面が占める、変態達の中でもひときわインパクトの大きな大男……いや、大新人類(ニューカマー)だった。

 

 ワンピース原作において、インペルダウン編最大クラスのキーキャラクター。

 人呼んで『奇跡の人』。カマバッカ王国女王(永久欠番)にして、革命軍の幹部。

 

 

 キング・オブ・ニューカマー……エンポリオ・イワンコフ。

 

 

「ンフフフフ……ようこそ、3人の新たなるキャンディ達! ここはインペルダウンレベル5.5番地……囚人達の秘密の花園……ア―――ッ、『ニューカマーランド』!!

 

 

「「「ヒ―――ハ―――!!」」」

 

 

 

 

 

 ……だめだ、こうくるとはわかってたけどテンションついていけねー……

 

 でもまあ、助かったのは……助かった、か。

 

 

 

 




【どうでもいい設定】

細かい設定ですが、やたらスゥの拷問展開に時間がかかってた理由の一つがこれだったりします(作者の趣味だけではなかった)。

キサックに化けたアリスがわざと捕まってインペルダウンに護送されて収監されて……ってのにやっぱ数日は短いかな、と思ったので。
強引ですが、そこの都合も合わせてました。
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