大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第163話 スゥと最後の休息、そして……

 

 

 来るべき時に向けて、『準備』は着々と進んでいる。

 

 牢獄生活で鈍った体も、トレーニングで元に戻った。

 いやむしろ、前より強くなった……と思う。

 

 ここ最近起こっていた、『超人の因子』の活性化のおかげで……そんなに見た目に差はないものの、数段パワーアップしてるからな、私の体。

 ビューティが作ってくれた数々のデカ盛りメニューは、余すことなく私の血肉になりました。

 

 むしろ、パワーアップした体のスペックを正確に把握してコントロールするための練習が必要だったくらいだもの。

 

 この前試しにやってみたら、デコピン1発(覇気なし)で鉄製の剣をへし折れたし、鉄製の鎖を腕力で引きちぎれた。

 さらに、にわか知識でなんとなくやってみた『剃』と『嵐脚』が成功した。

 『月歩』もできたけど、私自力で飛べるので出番はぶっちゃけない、かも。

 

 そしてこないだなんか、食事してる最中に、金属のフォークの先をバキッとかみ砕いちゃったりしたし……。

 え、腕力とか脚力以外も上がってんの? ってびっくりしたよ。

 

 それでもまあ、ちょっと練習したら、今まで通りの日常生活を送るのに問題ない程度に力の加減はすぐに覚えられたけど。

 

 そんな感じで体づくりはすこぶる順調に進んでいる、というかもう完了気味なわけだが……同時に私は、脱獄するときに世話になるであろう、新しい武器の慣らしも行っていた。

 今の今まで、体内に収納していた、呪われた聖剣……『七星剣』を。

 

 もともと私が使ってたのは、ハンコックにもらった名刀『浮雲』なわけだが……アレ、行方不明になっちゃったからさ……。

 赤犬と戦った後、着てる服ごと、荷物全部没収されちゃったから――まあもともと、大体の荷物や貴重品は体内に収納してるから別にいいが――多分、『浮雲』も没収された。

 壊れてなければ、どこかに保管されてると思うけど……どうだろうな……。

 

 たしかパパ、脱獄する時に、保管されてた愛剣2本を強奪して逃げたんだっけ?

 なら、『浮雲』もこのインペルダウンのどこかに保管されてるのかな? ……余裕があったら探して、できれば回収したい。思い入れもあるし。

 

 が、それがなかった時のために……いやそれ以前に、戦い始めの時点で丸腰じゃあまりに危険で無謀だ。

 だから、代わりの武器が必要だって思い至って……その時だった。

 

 まるで、私の中から語り掛けてくるような感覚があって……同時に私は、この『七星剣』の存在を思い出したのだ。

 

 取り出して手に持って見ると、かつて経験した、『呪い』の……剣から発せられる謎なエネルギーが、精神に干渉してくるような感覚がまたあった。

 しかし、今回のは前と違って、いやな感じはしなかった。

 

 なので、思い切ってそれを受け入れてみると……

 

 ……その瞬間、言葉も介さずに、いろいろなことを理解した。

 

 かつて『七星剣』が味わった孤独、苦悩、絶望、諦観。

 どこまでも愚直に『力』であろうとしたがために引き起こされた、数々の悲劇。

 それが原因で『呪われた剣』扱いされ、閉ざされた闇の中で、心を閉ざした日々。

 

 そして、いつの間にかまた日の当たる場所に出て……久しく見なかった、暖かい幸せな日常を目にすることができた幸せ。

 それをもたらしてくれた者……私を、そしてその日常を、平和を、今度こそ守りたいと思う……その強い意志。

 

 ……とまあ、そのあたりまで一気に頭の中に流れ込んできたもんで……ちょっとフリーズするくらいにびっくりした。

 

 しかし、不思議とすんなりそれを受け入れることができたし、同時に理解もできた。

 いつだったか夢で見た、あの不思議な女の子が……この『七星剣』そのものだったんだと。

 あの頃からずっと、私の力になろうとしてくれていたんだと。

 

 そして私は、それを受け入れた。

 

 慣らしのために何度も『七星剣』を手にもってトレーニングを行い、同時進行で剣との……あの女の子との『対話』を行った。

 ……なんかフィーリングだけど、そうした方がいい気がしたのだ。

 

 対話の方法は、前に某オサレバトルマンガで書かれていた、『刃禅』という方法を採用した。

 胡坐を組んでそこに刀を載せ、刀一つに意識を絞る、という奴。

 

 より集中できるように、原作でルフィが入れられていた部屋を貸してもらって、そこでやった。

 一人になれるし、静かで誰もいない場所は、そういうのに都合がいい。

 

 単純な肉体鍛錬と並行して、やれるだけのことはやったつもりだ。

 

 どう成果が出るか、何ができるようになったかは……後は、本番を御覧じろ、ってことで。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そんなある日のこと。

 

 ニューカマーランドにはお風呂もある。

 それも、1つだけじゃなくて何個もある。

 

 ここにいるニューカマー達ってほら、基本、『性別を超越した存在』だから……普通に混浴で皆一緒に入るらしいんだよね。男も女も、元男も元女も。

 

 ただ、ニューカマーだから裸なんて見ても見られても気にしないって人もいれば、さすがに風呂は異性と一緒に入るのは……って人もいる。

 なので、そういう人用にいくつも用途別のお風呂があるのだ。

 

 なお、混浴の方では、(体が)男性と女性のニューカマーがそれぞれオールヌードで普通に一緒に入浴して、仲良く湯船で歌とか歌ったり、酒飲んだりしてる……らしい。

 私は入ったことないので見たことないが、アリスが教えてくれた。いやあんたは普通に入ってんのかい。

 何? フル〇ンの男性がアレを揺らしながら歌って踊って、同じ空間で一糸まとわぬ美女がたゆんたゆんを揺らしながら踊ってる光景は感動的だったって? ああそうかいよかったな。

 

 

 

 そんで今私は、普通の女湯の方に入浴中。

 しかも、偶然だろうけど……私、アリス。ブルーメ、ビューティという、仲間内4人で貸し切り状態である。 

 

 特に何の気なしに雑談とかしてたんだけど……その流れで、私達それぞれの過去、みたいなのをぽつぽつ話すことになったりした。

 そこで思いがけず、ブルーメとビューティ、2人の過去を知ることができた。

 

 ……牢屋にいた時は、そんな雰囲気じゃないし余裕もなかったから、そういう話にはならなかったんだよね。

 

 

 

 ブルーメは元々、とある海賊団に所属していた……らしい。

 といっても、構成員だったというよりは、無理やり働かされていた感じが強そうだ。ちょうど、原作序盤も序盤のコビーみたいな感じか?

 

 小さい頃……それこそ、自分でも覚えていないくらいの昔に『悪魔の実』を食べたブルーメは、その時すでに海賊船に乗せられていた。

 

 『霧人間』であるという彼女の力は、広範囲に霧を発生させて敵の目をくらませたり、追ってくる海軍を迷わせて逃げ切るのに非常に都合がよかったからだろうな。重宝されていたそうだ。

 

 しかも、うっすら記憶にある限りだと……オークションみたいなところに立たされた記憶と、周りをシャボン玉が飛び交っていた記憶があるそうで……え、あそこの人間屋(ヒューマンショップ)? 売られたの? 売られて買われたの?

 しかも、シャボンディ諸島ってことは……海軍黙認で売られたわけだな……。

 

 この頃の彼女は、普段は海楼石の足枷をつけられて監禁され、能力が必要になる時だけそれを外されて利用され……というのを繰り返していた。

 日常的に虐待され、きっちり反抗の意思を奪われて、いいように使われていた。

 

 しかしある時、そんな生活に耐えきれなくなったブルーメは、ひそかに反抗の意思を取り戻していき……足枷が外されると同時に自分の体を霧に変えて逃亡した。

 

 追いかけようとしてくる海賊達の船は、これまで敵船をそうしていたように霧で迷わせた。

 後になってから聞いた話だと。その船は迷走した挙句に、氷山か何かに激突して沈没したらしい。図らずも、ブルーメへの追っ手はそれ以上かかることはなくなった。

 

 そしてブルーメは、近くにあった島に居を構えると……誰にも会いたくないと思い、島の周囲を霧で囲み、誰も寄せ付けないようにした。

 

 けど、さすがに何か食べたり飲んだりしなきゃ生きていけないので……そこを通る海賊船とかを時々襲って、物資や食料を調達していたそうだ。

 

 その中で、海軍とも戦うことになったこともあるそう。

 当時のブルーメには、海賊も海軍も『静かに暮らしたいのに邪魔してくる敵』くらいの認識しか持ててなかったし、そもそも人と関わること自体あんまり好きじゃなかったらしいから。

 

 しばらく同じ島で暮らしていると、噂が広まって海軍がどんどんやってくるようになってしまうので、定期的に別な島に移ったりしながら……その移った先の島でも霧を張って……

 その繰り返しで、実に彼女は20年以上もの間生きてきた。

 

 さすがに成長していくうちに、ある程度は人付き合いの術とかは学んで、できるようになったようだけど……島、あるいは船にこもって他者と関わろうとしない、っていう点だけは、何十年経っても変わらなかった。

 

 それに加えて……これはもともとの彼女の体質らしいんだけど、彼女、いつまで経っても見た目が少女のまま変わらない。

 そのせいで、『霧の海の中から現れる、10年経っても20年経っても顔や姿がほとんど変わらない少女がいる』……っていう、ホラーみたいな意味でも有名になった。

 それゆえに着いた異名が、『霧の海の亡霊』なのだ。

 

 最近、その霧の防御を強引に突破されてしまい、拠点にしていた島になだれ込んできた海兵達によってとらえられ、ここに入れられた……と言ってた。

 

 ここまでが、ブルーメの過去話。

 

 

 

 続いてビューティの過去話に移ります。

 

 ビューティはもともと、世界政府非加盟の貧困国の出身だった。

 以前行った、アリスと出会った国と同じような感じだと思う。

 

 しかも、その島は『冬島』だった。

 ドラム島とかみたいに、極端に年中寒い島ってわけではなかったみたいだが……それでももしかしたら、アリスの時の島以上に過酷な環境だったのかも。

 

 スラム街に生きる孤児達のグループにいて、そのまとめ役みたいな感じだったビューティは、小さい弟や妹達(血は繋がってない)の面倒を見ていた。

 

 幸いにも自然は豊かだったらしいので、毎日皆で海で魚を取ったり、山で獣を狩ったりして食料を手に入れ、それらで飢えをしのいでいた。

 

 そして、スラムには当時、元料理人だったっていう人が暮らしていたらしく……その人に分け前を渡すことで、料理を作ってもらっていたそうだ。

 その元料理人の人が病気になって亡くなってしまうまで、その生活は続いた。

 

 『門前の小僧習わぬ経を読む』って奴なのか、その頃にはビューティは、その人の料理を横で見て学び取っていて……料理の腕を身に着けていた。

 それを生かして、そこからはビューティが食材を料理して孤児達に食べさせていた。そんな生活を、ずっと続けてきた。

 

 固い絆で結ばれたその孤児グループは、そのままスラム街の1つの勢力として成長していき……いつしかメンバーも増え、相応に力もつけて、そこらの不良とかチンピラ程度じゃ手出しできないくらいの規模になった。

 傍から見れば、いつの間にかギャングの一団が生まれてたみたいに思われていた……らしい。

 

 もっとも、ビューティからすれば、放っておけない弟妹達がそこにいたから、全員まとめて面倒を見ていただけ。特別なことをしているつもりは全くなかった。

 そんな感じで、皆に毎日食事を作ってあげていた。まともな家なんてないし、あってもグループ全員が入れるような大きな家じゃないから……寒い外で。冬島の空の下で。

 彼女の異名……『冬空の料理人』は、恐らくここから来ている。

 

 しかし、不良やチンピラの代わりに、今度は国の軍隊や、もっと大きな本格的なギャングとかの組織から目を付けられるようになってしまった。

 

 とうとう国にいられなくなったビューティ達は、国を捨てて海に出た。

 後ろ盾も何もない子供達の組織じゃ、まともな商売なんてできないから……非合法な商品でもなんでも取り扱う、仲買人みたいな感じで活動してお金を稼いでいた。

 

 時には奴隷すら扱ったが、シャボンディ諸島とかによくいる連中みたいに、罪もない一般人や、魚人や人魚を攫って売るようなことはしなかった。

 主に犯罪者や、同業の人攫い集団を返り討ちにして、賞金首以外を『お前らも同じようなことやってたし仕方ないよね』的に売り飛ばしてたそうだ。

 

 そんな感じで、割と順調に……なんならまださらに仲間も増やしていった。

 そういう仕事をやってると、自分達みたいな孤児を保護する機会も多いらしくて……ビューティってば優しいから、そういうの見捨てずに受け入れちゃってさ。

 

 しかしある時、返り討ちにした中に、運悪く権力と繋がりのある連中が含まれていた。

 あらぬ濡れ衣を着せられて追われる身になり、頭目であるビューティは指名手配され、その一団はまとめて一括りで海賊扱いに。

 それでもなんとかやっていた。開き直って海賊団として活動し……それまで助け続けていた人達の支援もあって、元々は子供達のグループだとは思えないくらいに力強く抵抗し続けて。

 

 だが、ある時ついに、どうしようもないレベルの敵に補足され、追い詰められ……ビューティは仲間を逃がすために1人、囮ないし殿(しんがり)を引き受けて戦い、捕まった。

 

 そうして、投獄され……私達と出会い、今に至る、と。

 

 

 

 ……そんな感じで2人の過去を聞き、あとわざわざ説明は省くけど私の過去も話したわけだけど……ここで、そんな2人がどんな名目で指名手配されてるかちょっと確認してみようか。

 

 ブルーメは……『元は別な小物海賊団の構成員だったが、ある時それを裏切り、船長を含め自分以外の船員のほとんどを殺害し脱走。能力で拠点周囲に霧を張り、近くを通る商船や海賊船を襲っていた、めったに人前に姿を見せないミステリアスな女海賊』。

 

 ビューティは、『元々は非加盟国の小規模なギャング組織の頭目。そのまま海に出て『人攫い屋』も兼ねた闇の仲買人(ブローカー)になり、その後もさらに規模を拡大。加盟国の商船に手を出したことで海賊として指名手配、逮捕。ならず者の集団を率いるカリスマを持った危険人物』。

 

 ……ほぼほぼ濡れ衣じゃん……。

 

 ブルーメはまあ、割と真実含まれてるけど、状況考えれば情状酌量の余地もありそうなもんだし……都合よくきちんと細かい情報捻じ曲げてる。

 そもそも彼女が海賊になるきっかけになった人身売買、黙認したよね……?

 

 ビューティに至っては罪状から何から権力が思いっきり悪いことしてるじゃん。子供達というか、弟妹達を守って支えて行こうとしていただけなのに……問題組織扱いされるだけならまだしも、ギャングって……海賊って……ほんとにあいつら……。

 

 しかも、これが一番驚いたんだけど……なんとブルーメもビューティも、私と同じように『その力を政府のために使え』って勧誘受けてたんだってさ。

 ブルーメは霧を操って敵をかく乱し、広範囲で戦闘を有利に運ぶことができる力を買われて。

 ビューティは集団を統率するセンスを生かして、政府に反抗的、あるいは潜在的に危険な集団をまとめ上げて間接的に無力化する人員として。

 

 言っても仕方ないし、『政府に歩み寄られてるのか』って思われて距離ができるのも嫌だったこともあって、お互いに黙ってたことなんだけど……まさか3人とも、そういう意味でも同じ立ち位置だったなんてな……。

 ……同じ牢屋に入れられたのも、偶然じゃなかったのかな?

 

 とりあえず言えることは……

 

「政府ってホントクソな」

 

「「ほんそれ」」

 

 溜息をつきながら、お風呂の中に頭までつかってボコボコと泡を吐き出すビューティ。

 能力者だから、同じことはできない(溺れるし)けど、私らもなんかそんな話してたら脱力してしまって、ぐでーっとしてお湯につかっていた。

 

 己の都合で濡れ衣着せて指名手配して、また己の都合で味方に引き入れようとして、それを断られたからって拷問して意見を変えさせようとして……誠意の『せ』の字もない。

 そこらの海賊の方がよっぽど人間らしい有情なことやってんじゃないかとすら思うわ。

 

 基本的に『自分達がやること=正しいこと』っていう大前提の下で動いてるから、後からそれを一部、あるいは全部ひっくり返して真逆のことを言い始めても、何一つ悪びれることもなくけろっとしてんだよな……。

 しかもそれで反論したら『お前らが悪い』。そしてそれをどうにかするためなら何をしてもいい。

 

 ……うん、やっぱ海賊よりタチ悪いわ。仁義の欠片もあったもんじゃない。

 

「こんなやり方でよく800年も世界を治め続けて来たもんだ……そこだけはむしろ逆に尊敬するわ。能力だけだけど」

 

「それだけじゃないというのを抜きにしても、やってることがそこらの海賊と同じか、それ以上に悪辣なのです……」

 

「多分いっぱいいるよな、あたい達と同じような感じで海賊に『された』奴……それに対して何も思わずに海軍に狩らせて、あるいは利用して……か」

 

 こんなもん、協力したところでどこで切り捨てられるかわからんし……不要になったらまた適当に濡れ衣着せてポイ、なんてこともあり得る。

 その『ポイ』の先も、また監獄(ここ)に放り込むか、あるいは適当な場所ないし相手に売り飛ばすか……何にしてもろくな結末じゃないのは間違いない。

 

 やっぱ、首を縦に振らなくて正解だった。

 そうしみじみ痛感して……私達はまたため息をついた。

 

「そのくせ自分達の思い通りにならない者には容赦しない……多分私達、あのまま拒否貫いてたら……もっとひどいことされてたんだろうね。『言うこと聞きます』って言うまで」

 

「……あったもんな、まだあたいらがやられてない拷問。色々と……」

 

「あんまり思い出したくないですけどね……」

 

 思い出してげんなりする私達に……さすがに横から見てたアリスも『うわあ……』って感じの表情になってた。

 

「……大変だったね、お母さん達……。よかったね、これ以上酷いことになる前に助かって」

 

「ホントにね。もしかしたらこの先、もっとひどい拷問とか受けることになったかもしれないと考えると……うん、やばかったな」

 

「……それなんだけどさ……」

 

なぜか言いよどむアリス。

 

「今だから言うけどさ……連中、特に獄卒長のサディちゃんが中心になってだけど……実はお母さん達がここに来た日の翌日から、やばい拷問始める予定してたみたいなんだよね」

 

「やばい拷問?」

 

「うん、エロいやつ」

 

「「「っ!?」」」

 

 驚いてびくっと震えてしまい、ばしゃっと波を立てる私達3人。

 え……アリス、それマジで言ってる!?

 

 というか、『さらし者』やら『引き回し』やら、色々既にやられてたあの時点よりももっとひどいこととなると……

 

「マジだよ。獄内の通信でそういう準備が進められてた。拷問に『使う』男性囚人の用意とかね。ご丁寧に精力剤や興奮剤まで投与して……。間一髪だったね」

 

「完全にアレじゃねーか! ……さすがにちょっと震えるわ、そんなこと聞かされたら」

 

「私達、タッチの差で助かってたのですね……」

 

「うん……いくら何でも、女としてそういう目に遭うのは……割と覚悟してたとはいえ、一生モノの傷になってたと思うし……地獄だったな……」

 

 さすがにそこまで生々しい『経験』はしたくないよ……取材扱いするにも限度ってある。

 いやまあもしかしたら、『やられちゃったもんはもう気にしても仕方ない』とか言って開き直ってたかもしれんが、それでもそうならなくてホントによかった。ホッとしてる。

 

「……ボクもさすがにそれだけはダメだって思って、あの日、多少強引にでも母さんを助けようと思って、『キサック』の姿でレベル5に行ってたんだよ。そしたら予想外の事態になって……それを上手く利用して、混乱の最中に接触できた」

 

「そうだったの……いや、ホントありがとアリス。おかげで……ホントありがと」

 

 なんかもう感極まって、隣に座ってるアリスを抱きしめる。

 

 裸と裸でくっついてるわけなので、いつものアリスならこれ幸いとあちこち触って来るか、反射的に性転換してしまいそうなもんだが……今私の腕の中で、アリスは『えへへ』と無邪気そうに、嬉しそうに笑っているだけだった。

 こういう場面では純粋に思ってくれる、かわいい子なんだよな。

 

 ブルーメやビューティも、『何かお礼しないと』なんて言ってた。

 私も何かきちんと考えないとだなー……と思いながら、アリスの頭をなでてあげていた―――

 

 

 ―――その時だった。

 

 

「……ん?」

 

 

 それに気づいた私は、反射的にばっと上を向いた。

 いきなりの動きに、アリス達がびっくりしてきょとんとしていたけど、私は何も言わずに……今感じ取ったそれが、気のせいじゃないことを確かめていた。

 

 これは……まさか……!

 

「……? どうかしたの、お母さん?」

 

「……ハンコックが上にいる」

 

「「「え!?」」」

 

 間違いない。

 私の体内のビブルカードの反応でわかる。今、ハンコックが……ほとんど『真上』に来てる。

 

「ハンコックって……『王下七武海』の1人の……」

 

「“海賊女帝”かよ!? そんな大物が何でここに……!?」

 

「インペルダウンに『七武海』が……しかも、よりによってこの時期に? 何でまた……?」

 

 当然というか、3人は困惑しているけど……私には、それが何を意味するのかがわかっていた。

 

 このタイミングで、ハンコックがここに来たということは……彼女は、1人で来たわけじゃない。

 恐らくは、そのマントの中に……彼女の愛しい人を隠してきているはずだ。

 

 と、いうことは……

 

(……とうとう、始まる……!)

 

 主人公(ルフィ)が、来た。

 

 そして、ここからわずかな期間のうちに……怒涛の勢いで物語は展開していくはずだ。

 侵入、脱獄、そして……『頂上戦争』へ。

 

 つまり……ようやく私も、『準備』の時間を終えて……暴れる時が来たってことだ……!

 

 

 

 




Q.スゥはともかく、ビューティやブルーメまで政府に目つけられて勧誘されてるのってちょっと無理やりじゃない? そこまで影響力高そうな感じには見えないけど。

A.これについては政府は、実験的な意味も込めてやってます。
 スゥを政府の『広告塔』として使う案は以前からあったのですが、『海賊だけど利用価値のある奴って結構いるし他にも利用できねえかな』とか調子こいて考えた政府が、試験的に色々試してみている段階です。
 作中には出てきていませんが、ブルーメとビューティだけじゃなく他にも色々と声をかけてす。メルヴィユ編で海軍が使った『内通者』の拡大版みたいなもんで、それを常設して運用するつもりだったようです。
 試験的にやってみてある程度使えそうなら、正式に政府の方針として今後も継続。ダメそうなら関係者ごとサクッと始末して証拠隠滅しつつなかったことに。
 なお、場合によっては成功しても都合悪ければ始末される模様。
 ビューティとブルーメは見た目もいいし能力も有用なので『できれば使いたい』という感覚で勧誘されてました。ブルーメはそのまま能力を作戦利用するため、ビューティは非加盟国とかの孤児を集めて面倒見させて、最終的に政府のために働くよう思想教育込みで育てさせる的な使い方をするつもりだったようです(どこかで聞いた話ですね)。
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