大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第164話 スゥとルフィ inインペルダウン

 

 

Side.三人称

 

 ルフィの海底監獄侵入を手助けした後、ハンコックは監獄署長・マゼラン達の案内で『レベル6』に降り、一応の名目だった『“火拳のエース”を一目見る』を済ませた。

 その際、一言エースにあることを伝えた後、来た道を戻って監獄の出口へと向かっていくわけだが……その道中、

 

「して、マゼランとやら……先ほど聞いた話は真か? 『海賊文豪』が……既に死亡しているというのは」

 

「ええ、本当です。つい先日、獄中である事故が発生しまして……故あって詳しく言うわけにはいかないのですが……こちらとしても想定外のことでした」

 

 ハンコックから見て、マゼランは嘘を言っているようには見えなかった。

 実際、マゼランを含め、監獄に勤める職員たちは、スゥ達のことを死んだと思っている。『レベル5』で起きた、過剰繫殖した軍隊ウルフによる食害事件に巻き込まれて、他の囚人や看守達もろとも食い殺されてしまった、と。

 

 死体は見つかっていないが、それは問題視されていない。

 そんなことが問題にならないくらいに……事件現場は、凄惨としか言えない状態だった。ウルフ達によって食い荒らされた死体は、元の人数が何人いたのかも、どこからどこまでが誰だったのかもわからないくらいに損壊して散らばっていた。

 事前に知っていなければ、これが人だったとはわからないほどに『破片』になってしまっているものも数多くあり……日々凄惨な拷問や処刑を見慣れているインペルダウン職員達でも、さすがに気分を悪くする者が続出したという。

 

 政府によって『拷問して心を折り、政府に協力することを確約させろ』と指示を受けていた囚人を――しかもスゥだけでなく、同様の状況下にあった他の2名までも――死亡させてしまったことについて、政府からマゼランは色々と言われていた。

 最終的には『敵になる事態を防げたのならば良しとする』との判断を受け、また海軍のセンゴク元帥からも『不幸な事故だった』と理解が得られたことで問題にはならなかったが、こたえる説教だったのか、思い出してマゼランはため息をついていた。

 

 その一方でハンコックは、どうやら彼らは嘘を言っている『つもりはない』ようだということを察しつつも……服の下に隠しているスゥのビブルカードを触る。

 かさっ、と音を立てて……確かにそこにある感触が指に触れた。

 

(何があって死んだことになっているのかは見当もつかぬが……まあ無事ならばよい。やはり不要な心配であったな。おそらく脱獄したのではなく、まだ中に……どこかに隠れているのだとは思うが……)

 

 ルフィを監獄に連れて入る直前に確かめたビブルカードの動きを思い出すハンコック。あの時、スゥのビブルカードは、スゥ本人がインペルダウンの中にいることを示すように、下へ下へ行こうとしていた。

 

(確か、スゥもルフィとは既知だったのじゃったな。願わくば、何かあった時にルフィの力になってほしいとは思うが……)

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.スゥ

 

 わかっちゃいたが……ルフィの侵入以降、事態はものすごいスピードで進んでいった。

 

 ルフィは『暴れない』というハンコックとの約束というか忠告を早々と投げ捨て――まあこれについては彼1人のせいとは言えない部分もあるが――大暴れしながら階を下へ下へと降りていく。

 

 レベル1でバギーを、レベル2でMr.3を、そしてレベル3でボンちゃんを解放して味方を次々増やし、

 途中、レベル2の主である猛獣『スフィンクス』や、獄卒獣『ミノタウロス』を倒し、看守達や獄卒達を蹴散らして、破竹の勢いで進んでいった。

 

 モニターで観戦しているニューカマー達は、それはもう大盛り上がり。

 私達も、端っこの方でだけど見させてもらってた。ビューティお手製のサンドイッチ片手に。

 

 しかし、レベル4に来たところで、監獄署長マゼランと遭遇し……ただではやられず一矢報いはしたものの、『毒竜』をはじめとしたいくつもの毒に侵され……倒れてしまう。

 その後、『放っておいても死ぬが邪魔だろう』とのマゼランの指示で、レベル5に行くことに。

 

 レベル5には監視設備はないため、そこから先はわからないけど……原作通りならこの後、ボンちゃんが命がけでルフィを助け、救いを求めて『奇跡の人イワさん』を探してレベル5をさまよい続ける……その途中で倒れるはず。

 

 そして原作では、そこをイナズマに助けられて『ニューカマーランド』へ連れてこられるわけだが……今回は私が行った。

 ルフィとボンちゃん、両方にとって共通の友人だし、個人的な感情としても放っとけないので。

 

 無意識に『覇王色』を使ってだろう。無数の狼の真ん中で気絶してる2人を見つけて、ニューカマーランドへ運んだ。

 その途中でルフィが意識を取り戻し、

 

「……あれ、ここ……どこだ……!? 俺……! スゥ……!?」

 

「あ、よかった……ルフィ、ちゃんと生きてた」

 

 目はかろうじて見えるみたい。声も出せるか。

 それでも……息も絶え絶えだな。毒の進行はどんどん進んでるみたいだ。

 

「何で……たしか、捕まったって……でも、手錠とか……ねェな……? っ、がふっ……!」

 

「あーいい、いい、しゃべるなルフィ。毒でつらいでしょ、全身凍傷になりかけだし」

 

「あぐ、ゥゥウ……! 頼む、スゥ……助けて……!」

 

「わかってるってば。ちゃんと助け……」

 

 

 

「ボンちゃんの、こと……助けてくれ……! 手当、して……友達、なんだ……!」

 

 

 

「…………」

 

 あー、うん。あんたはそういう奴だったね。

 自分より先に友達や仲間。自分が死にかけだろうが何だろうが、おかまいなし。何を捨てても、何を敵に回しても、そればっかりまず頭に考える。

 

 いつだって自分に正直で、正しいと思ったこと、やりたいと思ったことをやる。気に入らないと思ったことは許さないしさせないし、一度決めたら誰に何を言われてもそれを曲げない。

 

 そんなあんただからこそ、『麦わらの一味』の仲間達が一緒についてきて、敵だったボンちゃん達とも仲良くなって、ハンコックは惚れ込んで……

 そして、『原作』を知ってる私でさえ、『こいつ助けてあげたい』なんて思っちゃうんだろうな。

 

「頼む、スゥ……!」

 

「……安心しなって。ちゃんと2人とも助けるから。じゃなきゃハンコックにあわす顔もないしね」

 

 

 

 その後、『ニューカマーランド』に到着して……ルフィは原作通り、イワさんが『治癒ホルモン』で荒療治を開始。

 ボンちゃんはそこそこ重症ではあったものの、普通の治療で何とかなる範囲だったので、ささっと私達で手当てしてしまった。

 

 そこからしばし、空き時間だ。

 ボンちゃんが起きるまで……特に何もやること、やれることがない。

 

 なので私は、この後起こるであろう騒動に備えるため、食堂でがっつり食べて腹ごしらえをした後……自室に戻って諸々の最終確認を済ませた。

 

 そして今は、精神集中の時間。

 以前、あるマンガで見た方法をリアルでやってみている。

 

 右手に『七星剣』を持ち……その、剣の腹の平らな部分に、半分くらいまで水の入ったワイングラスを乗せる。

 

 そこから剣を振り上げる勢いで、ワイングラスを真上に放り投げ……

 

 

 ―――キィン!

 

 

 それを剣で、壊れないようにはじく。

 グラスはただのガラスなので、ちょっとでも力加減や刃の角度をミスると、簡単に砕けて……中の水が散らばってしまう。

 

 

 ―――キィン! キィン! キンキンキン! キキン! キキキキキキ…………

 

 

 そうならないように、弾かれて飛ぶグラスの傾きやら何やらも見極めた上で、ミリ単位以下の正確さで剣を動かし、床に落ちないように、弾き続けて浮かせ続け……

 

 

 ―――――キィン!

 

 

 最後に、弾いたグラスを剣の腹に乗せて受け止める。

 

 成功。ワイングラスには欠けやひびの1つもなく、水も一滴もこぼれていない。

 

 今ので10回連続成功である。……我ながら、ぶっとんだ曲芸ができるようになったもんだ。

 動体視力、動きの正確さ、力加減……どれをとっても今までより格段にレベルアップしてる。

 

(ひょっとしてこれも……原作でゾロとかが言ってた、『何一つ斬らない剣』の1つの形なのかな? いやでも、あれは何というか……刀に意思を伝える的な、随分スピリチュアルな話だった気も……まあいいか)

 

 なんてことを考えてたら、横からひょい、と手が伸びて来て……刃の上に乗っていたグラスを取ってしまった。

 そして、その中身の水をくいっと飲み干すアリス。何やってんのあんた?

 

「ぷはぁ~……うーん、お母さんの神業のご利益が込められてるせいか美味しいね」

 

「間違いなく錯覚だよおバカ。どしたの? ひょっとしてボンちゃん起きた?」

 

「ご明察。それでイワさんから言われて呼びに来たんだよ。これからここの説明とかするけど、顔見知りなんだからいた方がいいんじゃないかって」

 

「なるほどね……了解。このまますぐ行くよ」

 

「タオル要る? 汗の始末……かいてないか」

 

 うん。運動じゃなくてあくまで精神統一の時間だったからね。

 この程度じゃ全然汗なんかかかない。心を穏やかに保つことができていたからか、緊張して手汗を書くことすらなかった。

 

「……ところでさ、お母さん」

 

「? 何、アリス?」

 

「お母さん……これから何かする気でしょ?」

 

「!」

 

 不意にというか、何の前触れもなく……あっさりアリスがそう言い当ててきた。

 

 ……いや、まあ、こんな風に精神統一なんかして、割と物々しい雰囲気出してたからな……カンが鋭いこの子なら、察せちゃってもおかしくないか。

 

 加えて、現在治療中のルフィの存在も、どうやらその根拠の一つになったみたいで……

 

「『麦わらのルフィ』……お母さんの知り合いで、空島でレオナがお世話になったんだってね。今、レベル6に収監中の『火拳のエース』と兄弟で、彼を助けるために進入してきた……タイミングからして、手引きしたのはハンコックさんかな? お母さんも、助けるつもりだったりする?」

 

「……状況次第だけど、そうかもね。ま、ここは楽しいけど……監獄の中であることには変わりないからさ。チャンスがあれば外に出るつもりでは、もともといたし。……いつまでもスズやレオナを寂しがらせておくわけにはいかないでしょ?」

 

「にひひひひ、そうだね!」

 

 とりあえず、そう言っておく。

 ちょっとごまかすような感じになっちゃうけど、結果は同じだからね……多分。

 

「言うまでもないけど、もちろんお母さんが行くならボクも行くからね? 一緒に脱獄しよ」

 

「その時はちゃんと連れてくよ、安心しな。こんなとこにあんただけ置いてくわけないでしょ」

 

 というか、もう半日もしないうちに多分、ニューカマーランドほぼ総動員クラスの大暴動起こるからね。自ら望んで残らない限りは、一緒に大暴れすることになるさ。

 

「さて、じゃあボンちゃんのとこ行くか。拾ってからおよそ10時間か……随分寝てたな。まあ、結構な重傷だったし、無理もないか」

 

 原作でもこのくらい寝てたっけ?

 壁の時計を見てちらっとそう考えつつ、私はボンちゃんのところへ向かった。

 

 

 

 そこからまた、とんとん拍子に話は進む。

 中身が同じだから……ダイジェストっぽくなるけど許してね。

 

 再会したボンちゃんとひとしきり互いの無事を喜び合った後――すでにルフィの容態を見て、イワさんからの『奇跡なめんじゃないよォ!』は済んでた――私もイワさんと一緒になって、ボンちゃんに諸々の説明。

 この『ニューカマーランド』の成り立ちとか、レベル5と6の間にあるとか……後は、エースの処刑までにはルフィの復活は間に合わないだろう、っていう見込みとか。

 

 そして、ボンちゃんは1人、毒と戦うルフィをひたすら応援し……

 

 最初は呆れと共に見ていたニューカマー達も、いつしか一緒に応援し始めていた。

 

 なお、私も途中から一緒にそれに加わった。ルフィを応援したいのもあったし、応援してるボンちゃんのことも、同じくらい応援したかったから。

 

 その際、ボンちゃんや皆みたいに、応援団っぽいやり方じゃ代わり映えしないな、と思って……アリスの発案で、アリスやブルーメやビューティ、それに、有志の女性型ニューカマー達十数人と一緒に、チアガールやった。

 ボンボン両手に持って、ミニスカートにへそ出しルックで。

 

 ……着替えてから自分の年齢を思い出してちょっとアレな気分になったけど、努めて気にしないようにして踊った。

 

 振付なんて事前に決めてなかったので、全然適当だったけど……思い思いにそれっぽい動きで。開脚ジャンプとかパンチラフロントハイキックとかCの字ジャンプとか(名前全然知らん)。

 あと、肩に乗って段々になって組体操っぽいのもやった。

 

 

 

 そして、

 

 

 

「ん治ったァ~~~!!」

 

 

 

 復・活ッ!

 

 モンキー・D・ルフィ復活ッ!

 モンキー・D・ルフィ復活ッ!

 モンキー・D・ルフィ復活ッ!

 モンキー・D・ルフィ復活ッ!

 モンキー・D・ルフィ復活ッ!

 

 たった1日足らずで毒を克服し、その後、ニューカマーランド数日分の食料を平らげて吸収し……死の運命を見事蹴っ飛ばしてみせた。

 

 正直、奇跡の復活やらボンちゃんの友情のエールやら……知っていても見ていて感動モノだったので、すごい今心にジーンと来てます。

 それに伴って、私今、熱が……この心動かされる感動のままに、ペンを走らせて執筆したくてたまらない感じの熱が今、心の中に! ここ数年なかったくらいの燃料投下キタコレ!!

 

 ……でも、残念ながら……本当に残念ながら、ここからしばらくその暇はないんだなあ……!

 

 今もうすでに、エース処刑当日の午前8時半過ぎくらいだ。

 ここから、ほんの6時間。処刑執行時刻の午後3時までの間に……怒涛の勢いで事態が動き……そして、どんな形にであれ、全てが終わる。

 

 原作通りなら、エースも白ひげも死に、ルフィは心に深い傷を負うことになるが……果たしてこの世界では…………っと!?

 

「あ、スゥもありがとう! おかげで生きられた!」

 

 いきなり目の前にずいっと現れて言ってきたルフィにびっくりさせられる。今さっきまで死にかけてたとは思えないくらいの軽快さだな。動きも、表情……というか、感情も。

 

「あははは……いいっていいって、気にすんなそんなの。それよか……治ったって言っても、まだ疲れは抜けてないでしょ。命は拾ったわけだし、ちゃんと休まないと……」

 

 まあ、何て返ってくるかは予想できるけど、一応言っておく。……見るからにフラフラで、足もよく見ると膝のあたり笑ってるし。

 こんな状態で今から戦いに行くって、語弊を恐れずに言うけど……正気の沙汰じゃないな。

 

 けど、やはりというかルフィは、ぶんぶん首を横に振って、

 

「そんな時間ねえよ! だいぶ時間食った……俺、エースを助けに行かなきゃいけないんだ! ……でもここ、どこだ? どこ行きゃエースに会えるんだ?」

 

 むしろ今の私の言葉のせいで、即座に頭がエース救出に切り替わった。

 エースのビブルカードを取り出し、現在地を確認する。まだ下の方にいるっぽいな。護送前か。

 

「スゥ! 頼んでばっかで悪いんだけど……ボンちゃんのこと見ててくれ! 俺、エースを助けたら、後でちゃんと迎えに来るから、それまで……あと、できればエースの居場所教えてくれ。っていうかここどこだ? レベル何だ?」

 

「多い多い、質問が一度に多い。落ち着きなって、エースは逃げな……いや、逃げるってか連行されるかもたもたしてたら。うん、ガチで時間ないな」

 

「行く前に、はい、麦わらさん。帽子と服」

 

「あ、ありがとう! ……誰だかわかんねえけど!」

 

 あ、その子、私の娘です。一番下の。

 

 こんな時でもアリスは平常運転で、ルフィの生着替えをニヤニヤ笑いながら見てた。

 そんなにバキバキじゃないけど、ルフィもちゃんと腹筋も割れてそこそこいい体してるもんね。

 

 ……でもそいつ狙うとハンコックと敵対することになるからやめな。

 せいぜい目の保養程度にとどめておくように。

 

 そしてその後、ルフィが雑談から口を滑らせたことで……

 

 

 

「父ちゃん!!!?」

 

 

 

 そのとんでもない出自が明らかになり……そのまま、ルフィの父親……モンキー・D・ドラゴンへの義理でイワさんがルフィに協力することに。

 そして、エース救出後に一緒に脱獄を試みることになったため、『共に行きたい者は死を覚悟し、戦闘準備をして待機』とニューカマーランドの全員に通達。

 

 もちろん私もこれに参加するわけだが……

 

 

(ちょっとここからは、私は独自のシナリオで動かせてもらうとしますかね……)

 

 

 さて、じゃあ……原作改変の時間だ。

 

 

 

 




えー……感想欄でいくつかご指摘いただいてましたが……シリュウが投獄されるシーンを入れてませんでした、すいません。
一応、設定としてはスゥ収監後のどっかのタイミングで収監されて、今現在レベル6にいます。原作通り。

もしかしたら今後どこか修正して入れるかも。

今後ともよろしくです。
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