大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第165話 スゥ、脱獄開始

 

 

Side.三人称

 

 イワンコフの『治癒ホルモン』と『テンションホルモン』で、強引ながらも戦えるように復活を果たしたルフィは、イワンコフとイナズマと共に、エースが収容されているレベル6へ突入。

 

 しかし、既にそこにはエースの姿はなく……わずかな差で、護送されてしまった後だった。

 

 そのまま監獄側の作戦でレベル6に閉じ込められてしまうも、元七武海・クロコダイルと七武海・海侠のジンベエを牢から解放して戦力に加え、これを脱出。

 当初の予定通りレベル5に集合し、ニューカマーランド全域から集まった脱獄希望の同志達と共に、この監獄を強引に、力技で突破して脱獄するために動き出す。

 

 やることは単純。暴動を起こし、看守室を襲撃して鍵を奪う。

 それを使い、レベル5から上の囚人達を立て続けに開放していき、戦力を増やして暴動をどんどん大きくし……その数を頼みに監獄の防備を突破する。それだけだ。

 

 それでも、脱獄に成功する者は決して多くない。多くの者は途中で倒れ……捕まればひどい拷問を受けることになる。

 それを覚悟しつつ、囚人達は本当の自由を求めて武器を取る。

 

「この大監獄に! 未だかつてナッシブルな大パニッカブルを起こサーブルのよ!!」

 

「「「ウオオォォオオォ~~~ッ!!」」」

 

 囚人(キャンディ)達の咆哮を聞きながら……イワンコフはふと、あることに気づく。

 

「……? そういえば、文豪ガールはどこ? いないようだけど……」

 

 割と最近『ニューカマーランド』に入ってきた、スゥと……それに、よく見ればブルーメの姿もそこにないことに気づく。

 まさか残るつもりなのか、と首をかしげるイワンコフに、アリスとビューティが答える。

 

「ああ、スゥなら……」

 

「お母さんなら、ちょっとやることがあるって先に行きました。ブルーメさんも一緒に。後で合流するから先に行ってください、だそうです」

 

「ん~~~こっちも自由かッ! ヒーハー!」

 

「しかし、ルフィ君達と一緒に行ってはいなかったようだが……」

 

 先程『じゃ俺先行く!』とだけ言って、ジンベエとクロコダイルを連れて、一足先にレベル4に登って行ってしまったルフィのことを思い出して言うイナズマ。

 あの時いたのは3人だけで、スゥとブルーメはいなかった。それとは少しタイミングをずらして行ったのだろうか?

 

 首をかしげるイナズマだが、考えても答えは出ないし時間はない。

 ひとまず、イワンコフ達と共に、ルフィ達3人を追いかける形で……レベル4を目指すことにした。ニューカマーランドの仲間達と、解放して戦力に加えた、レベル5の囚人達と共に。

 

 

 

 そしてその頃、そのスゥはというと……

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ルフィ達がレベル4で暴動を起こしたのと時を同じくして、レベル2でも暴動が起きていた。

 

 レベル1の囚人“道化のバギー”と、レベル2の囚人ギャルディーノ……通称“Mr.3”がレベル2の牢屋を解放し、囚人達が暴れ出したのである。

 レベル4の暴動鎮圧のため、レベル2の戦力がほとんど移動して出払ってしまったのを見計らっての『キックオフ』だった。

 

 さらに、エースを海軍に引き渡した直後……監獄の正面入り口に、王下七武海“黒ひげ”こと、マーシャル・D・ティーチとその仲間達が到着し、襲撃。守りを突破して強引に監獄に侵入した。

 ちょうど、エース護送のための軍艦がいなくなり、またマゼランも中に戻っていってしまった……悪い意味で絶妙なタイミングの出来事だった。

 

 それらの報告が副署長・ハンニャバルの元に一度に入り、対応しきれずパニックになって泡を吹いていた時……エース護送の任を終えたばかりのマゼランから、電伝虫で連絡が入る。

 

『聞こえるか、ハンニャバル!』

 

「し、署長!? い、今どちらに!?」

 

『レベル2だ。報告はこちらも聞いている……このフロアのバカ共は俺がすぐに鎮圧する。心配はいらん。正面入口の“黒ひげ”は……意図は全くわからんが、もう手は打った。苦肉の策だが……シリュウを解放して鎮圧に当たらせる』

 

「し、シリュウ看守長をですか!? そ、それは……いやしかし、看守長であれば確実ですね」

 

『ああ……このフロアも時間はかけん。大急ぎで終わらせて……俺もレベル4へ向かう。それまで防衛を任せる。残る全戦力を投入して構わん。俺が行くまで……持ちこたえろ!』

 

「っ……っっ……!! 了解しました、署長ォ! この命に変えましても!」

 

 

 

 通話の向こうで、ハンニャバルが……珍しく本当に真剣に職務を全うする決意を固めていたのを悟りつつ……監獄署長マゼランは、通話を終えて電伝虫の受話器を置く。

 そして、『さて……』と、目の前に立っている囚人達に向き直った。

 

「聞いての通りだ。俺の部下が命がけで時間を稼いでくれることになった……俺はなんとしても、その覚悟を無駄にしないために、レベル4へ急行せねばならん」

 

 いや、正確には……目の前にいる1人の囚人に、だろうか。

 

 暴動発生の知らせを聞いたマゼランは、元々はハンニャバルに連絡する前に、速攻でレベル2の暴動を毒で鎮圧し、それから『こっちは終わった』という連絡を一緒に入れるつもりだった。

 

 実際、彼の実力をもってすれば、レベル2程度の囚人達は全く脅威にならないため、ほんの数分もあれば暴動の鎮圧は可能だった。

 全員を1人残らず行動不能に、というのならさすがに難しいかもしれないが……適度に毒をばらまき、通路に毒ガスを散布した上で、毒の塊で出入り口をふさぎ、逃げ場をなくしてしまえば……ほどなくしてそこにいた囚人達は、全員動けなくなって終わりである。

 

 そのくらいなら、瞬く間に終えて、ハンニャバルを安心させるいい報告ができるはずだった。

 

 ……想定外の邪魔さえ入らなければ、だが。

 

 マゼランが今立っている、レベル2の大きく開けたホールのような場所。

 そこには見える範囲だけでも何百人という数の囚人達がひしめき合って……冷や汗をかいていた。

 

 暴動を起こしたはいいものの、数分もしないうちに地獄の親玉が姿を現し、その体から立ち上る毒ガスと毒の龍を前にして絶望していた。

 しかし、直後に現れた1人の囚人が、突風を起こして毒ガスをまとめて吹き飛ばした上、毒竜(ヒドラ)も容易く斬り裂いてみせたことで、何が何だかわからないうちに助けられていた。

 

 その姿に、マゼランも同じように驚きつつ……何度か毒による攻撃を繰り返した。

 しかし、その全てに対応され、防がれた。

 

 一筋縄ではいかない、少なくともすぐには片付かないことを悟り……先にハンニャバルへの報告を済ませることとした。

 何の思惑なのか、目の前の人物と囚人達はそれを待ってくれた。

 もっとも……その他大勢の囚人達(バギーとMr.3含む)は、ただ単に、向かい合う両者の間に入る勇気などなかったからかもしれないが。

 

「一応聞いておこう。大人しく捕まるつもりはないか……“海賊文豪”?」

 

「もちろん……ない!

 

 ばっさりと一言で切って捨てる……スゥ。

 

 背中に紙の翼を生やし、その手に翡翠色の剣を持った彼女は……挑発かあるいは宣戦布告とでもいうように、その切っ先をマゼランに向けて持ち、突き付けた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.スゥ

 

 言うまでもないことだが、このインペルダウンからの脱獄において、一番の障害になるのは……監獄署長マゼランの存在である。

 一発攻撃を当てれば確定で猛毒状態&行動不能になるという、その能力の凶悪さゆえに、どれだけ人数を多くしても、脱獄チームはギリギリの戦いを強いられることになった。

 

 原作では、バギー達が解放してた面子も合わせて、レベル5からレベル1の囚人達を片っ端から解放していったはず。数百人か、あるいは数千人になってたかもしれない。

 それが確か、脱獄成功したのは……200人くらいだっけ? そこまで減ったっていうのは……正に脅威の制圧力だ。

 

 もちろん、看守達や獄卒達、それにブルゴリや獄卒獣によってやられた連中もいるだろうが……大半はマゼランだと思う。

 

 それこそ、明言はされていないにせよ……クロコダイルすらこいつを恐れて、戦うのは避けていたくらいだ。

 毒そのものが凶悪なのはもちろんとして……こいつの毒、『液体』だからな。『砂』が固まっちゃうから水分が弱点なクロコダイルは、相性が悪いって言うのもあると思う。

 アラバスタ編でも、ルフィと戦う時、水だけじゃなく血でも固まってダメージくらってたし。

 

 コイツがいるかいないかで、脱獄成功の難易度が大きく変わる。

 そしてそれは……『その先』の難易度にも関わってくる、と思う。戦力的な意味で。

 

 なので私は、ここらで一丁、特大の原作ブレイクをぶちかますことにした。

 

 

 ここで私が……マゼランを、倒す。

 

 

 というわけで私は今、レベル2にいる。

 

 囚人達の開放があるから、イワさん達はレベル4から順々に上がっていくけど……私は、物資調達用の抜け道(少人数しか通れない)を通ってレベル2に直で来た。

 そして、ちょっと『やること』をやった後……ちょうどいいタイミングで、バギーとMr.3主催の暴動が勃発。

 

 それを鎮圧するためにマゼランがやってきたので、そこに参上しました……というのが現状だ。

 

 あとついでに言うなら……今の私の服は、もちろん、チアガールのままではない。ちゃんと着替えてきました。

 ……さすがにパンチラ上等のミニスカートにへそ出しルックで戦うのは……ね?

 

 今着てるのは……これも戦闘服っていうか、『ニューカマーランド』にあったコスプレ衣装っぽい奴の1つなんだけど――そもそもこういうのどこで調達して来るんだろ? お手製?――一応それなりに頑丈で、なおかつ動きやすい奴を選んだ。

 

 

 ……けど今になって、『童貞を殺す服(コレ)』はさすがになかったかなー、と、ちょっとだけ思っている。

 

 

 背中丸出しのセーターとか、露出多すぎる奴じゃなくて……白いブラウスに黒いハイウエストのスカートの奴である。元祖・童貞を殺す服(たぶん)。

 

 いや、選んでる時間なくて……一番マシなのがこれだったんだよホントに。

 誤算だった。事前に目をつけてた他の衣装……軍服っぽいのとか他にもあったんだけど、今日に限って全部他のニューカマー達に借りられて着られちゃっててさ……。

 ほら、あの人達その日の気分で服とか被り物変えて歌って踊るから……。

 

 結果、出発直前にアリスに襲われそうになった上――あんたどっちも『初めて』じゃないだろ――なんか今も囚人達や、マゼランの後ろの看守達から変な注目を浴びているような……い、いや気にするな。今はこれから始まる戦いに集中するんだ。

 余計なことを考えていていい相手じゃない。それは確かなんだから。

 

 そのマゼランは、はぁ……とため息をつきながら、

 

「ならば仕方がない。俺もここのボスとして、職責を果たさねばならん。この事態だ……手加減してもらえるなどと思ってはいまいな?」

 

 言いながら、全身から毒液を分泌していくマゼラン。

 触れればそれだけで致命傷となる鎧をまとい……今さっき私が斬った『毒竜』も、もう一度作り上げる。

 

「本当に残念だ。この監獄に勤めてそれなりに長いが……自分の“推し”を手にかけることになるのは、さすがに初めての経験だ」

 

「私も……(コレ)でファンサービスをすることになるのは初めてかもね。墓前に供えるのは……脱獄後に出す新刊でいい?」

 

「ほざくな、犯罪者……貴様らは1人足りともここから出さん! まずは貴様からだ“海賊文豪”……インペルダウン監獄署長の権限において、この場にて刑を執行する!!」

 

 直後、毒の龍が鎌首をもたげて襲い掛かり……同時に私も、紙の翼を羽ばたかせて飛翔した。

 

 

 

 




今回の脱獄編でスゥに着せる候補だったのは、

1.童貞を殺す服
2.チアガール(ルフィ応援時から着替えない)
3.チャイナドレス(ハンコック風)
4.『SUGOI DEKAI』シャツ

以上4つでした。
悩んだ結果、なんとなく1に決めました。
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