大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第172話 スゥ達、マリンフォードに到着

 

 

 ルフィ達の到着を待たずして、その『戦争』は始まっていた。

 

 

「お前の父親は……“海賊王”ゴールド・ロジャーだ!!」

 

 

 海軍本部元帥・仏のセンゴクにより、エースが“海賊王”ゴールド・ロジャーの実の息子であることが暴露され……同時に、たとえ白ひげとの全面戦争になってでも『海賊王』の血脈を絶つという、海軍の大義が示される。

 

 

「俺の愛する息子は……無事なんだろうな……!?」

 

 

 それにまるで『望むところだ』と応えるように、『白ひげ海賊団』とその傘下の海賊団の大船団が出現。

 総大将である“白ひげ”エドワード・ニューゲートと共に、エースを救出するため、マリンフォードへ進軍。迎え撃つ『海軍本部』及び『王下七武海』の連合軍と激突する。

 

 新世界でもその名を知られる大物達が、大将青キジが海を凍らせて作り出したフィールドに次々飛び降り、まさしく『全面戦争』と呼ぶにふさわしい戦いを繰り広げていく。

 

 白ひげ海賊団傘下の『リトル・オーズJr』が力ずくで戦線を突破し、広場へ続くルートを切り開くも……畳みかけるような『王下七武海』の強烈な攻撃にさらされ、エースまでその手が届くことなく力尽き、その場に倒れる。

 

 続けてこちらも傘下の海賊、“氷の魔女”ホワイティベイが砕氷船で氷もろとも海軍の防御壁を破壊し、オーズが切り開いた個所から見て反対側にもう一つ、突破口を作り上げた。

 

 刻一刻と変わっていく戦場を注視しながら的確に指示を出していく元帥・センゴク。

 

 その口から、頃合いと判断したことで『作戦開始』を告げる通信が各位へと届けられる。

 暗号交じりのそれは、偶然聞くことができた幾人かの海賊達には、ほとんど意味の分からないものではあったが……唯一分かった『エースの処刑を早める』という一点だけでも、彼らにとっては聞き捨てならない内容だった。

 

 ……しかし、それを聞いて焦って行動を起こしたのは……白ひげ海賊団だけではなかった。

 

 

 

 ―――あぁああぁぁああぁぁ~~~!!

 

 

 

 気の抜けるようなそんな声と共に……空から2隻の軍艦が落ちてきた。

 

「……え?」

 

 処刑台にいるがゆえに、その戦場の全景を見渡すことができたエースにも、当然その光景は見えていて。

 

 2隻の軍艦が落下し……湾内に()()()()着地、あるいは着水する瞬間……その甲板に、よく知った顔がいるのが……やけによく見えていた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.スゥ

 

 一応こうなるとわかってはいたものの、実際に巻き込まれてみるとびびるな……

 

 いきなりとんでもない大きさの波が立ったかと思ったら、それにいい感じに攫われて……何十m、いや何百mあるんだってくらいの高さにまで軍艦ごと持っていかれた。

 そして、その波が崩れるよりも早く……パキィン、と乾いた音を立てて、波が全て凍り付いた。

 

 下を見れば、そこにはもう既に『戦争』が始まっていて……『海軍本部』と『王下七武海』と、『白ひげ海賊団』の大軍勢が衝突している光景が。

 それに続けて、海軍の通信で『エースの処刑を速める』という情報が回ってきたので……『急ぐぞ!』ということで船底を捕らえていた氷を、イワさんの『ウインク』で破壊。

 

 しかし、坂状になっている側を滑り降りるつもりが、誤って反対側の『反り立つ壁』状態の方に2隻とも落下してしまった。

 原作だと、ちょうど赤犬の火山弾が氷を溶かしていた個所に落下してどうにか助かるんだが……今2隻いるので、下手するとどっちか片方氷にたたきつけられてどんがらがっしゃーん! ……みたいなことになりかねない。それはよろしくない。

 

 なので、

 

「しょーがないな……『天津羽衣(アマツハゴロモ)』!!」

 

 2つの船体に絡みつくように大量かつ巨大な『紙』を出し、それで風を受けて空気抵抗で大幅に減速させる。即興のパラシュートみたいなもんだ。

 軍艦2隻はとんでもない大質量だけど……『メルヴィユ』に比べたら軽い軽い。楽勝楽勝。

 

 しかも、動かすんじゃなくて減速でいいんだから楽なもんだ。

 

 墜落目前でではあるけど、問題ない速度まで下がった2隻は……片方は水面にざぶん、と、もう片方は氷上にごとり、と、それぞれ無事に着水&着地。

 

 当然ながら、突然空から軍艦が、しかも2隻も降ってくるという怪奇現象を目の前にした戦場全体からの驚愕の視線が集中することになる。

 そして一瞬後には……彼らは、別な理由でもっかい驚愕することになるんだけども。

 

「よ、よかった……氷の上にたたきつけられるかと思った……」

 

「ナイスだぜ、文豪の姐さん!」

 

「終わってみりゃあ都合のいいこった。海を渡って移動する手間が省けたってもんだぜ!」

 

 

「エース~~!! やっと会えたァ!! 助けに来たぞ~~!!」

 

「ルフィ!?」

 

 

「おい、何だあの軍艦……何だあの面子は!?」

 

「ジンベエにクロコダイル……革命軍のイワンコフまで!」

 

「それに何だあの、美女2人に……子供!? メイド!?」

 

「いやそれよりたくさんの変態も乗ってる……どういう集団だ!?」

 

「インペルダウンの脱獄囚達だ! 過去に名をはせた危険な海賊達……何百人いやがるんだ!?」

 

「囚人……それでか…………え、変態もか!?」

 

「そっちは知らん!」

 

 思い思いに動揺してるのが伝わってきて何とも面白い。

 囚人達はともかく、変態(ニューカマー)が大挙して押し寄せてくる光景は、さすがに海軍の皆様にも意味不明に映って面食らうようだ。

 

 ……あと何気にさっき言われた『美女』って、うぬぼれじゃなければ私達のことだと思うんだが……2人、か。私と、多分……ビューティ。

 ということは、ブルーメは『子供』枠に入ったか。一番年上なのに。

 

 そんな視線にさらされながらも、当然、私達はそれにビビるわけでも全然なく……。

 

「さすがは総戦力! 半端じゃなっシブルね!」

 

「間に合ってよかった……エースさん、オヤジさんも……絶対に死なせやせんぞ!」

 

「さて、白ひげは……あそこだな。わかりやすい場所にいてくれて助かる」

 

「ぎゃはははは!! 世界よ覚悟しろ!」

 

「流れでついてきてしまったが……本当に地獄のような戦場だガネ。あんな場所に突っ込んだら死ぬ未来しか見えんぞ……」

 

「弱気になってんじゃないわよーう! ここまで来たら意地ってもんを見せてやらにゃあ、男も女もオカマもあったもんじゃナッスィンッ! 腹決めなさいMr.3!」

 

「“火拳のエース”、見える位置にゃいるが……相当距離あんな。しかもあの数の海兵……」

 

「中将、大将、元帥……その他高級将校勢ぞろい。見た目どころの距離ではないのですよ、これは……さて、どう攻めたものか」

 

「無策で突っ込んでも100%犬死じゃな。レオナ、お主迂闊に動くでないぞ。この戦場……わしらにとっては本来まだまだ早すぎるステージじゃ」

 

「わかってるって……空気がピリピリしてる。こんなやばい空間初めてだ……スカイピアの何百倍も危なくて、でっかくて……だめだ、何て言ったらいいかわかんね」

 

「とはいえ、折角来といて後ろの方で震えてましたじゃ何しに来たのかわからないし……まあ何よりもまずは、どういう感じで動くかだけど……お母さん、どうする?」

 

「さて、どうしようかな……むやみやたらに乱戦に突っ込んでもできることは限られるし、『白ひげ海賊団』の邪魔になっちゃう。それに……この地形……軍艦の配置……」

 

 見た感じ、おそらく海軍側の作戦は、原作通りだとは思うけど……

 となれば、このまま展開が進むのを黙って見ているってのも面白くないな。

 

 確認がてら……ちょっくら暗躍でもしてみますかね。

 

「スズ、レオナ、アリス……それにビューティもブルーメも。皆よく聞いて。まずは……」

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.三人称

 

 白ひげ海賊団と、その傘下の海賊団で既に役者は揃ったかに思われていたその戦場。

 そこに現れたのは、大監獄インペルダウンからの脱獄者達という、まさかの第三勢力。

 

 戦力として巨大な者達が揃ってはいるものの、『到底まとまった目的があるとは思えない』という中将ガープの見立て通り、その足並みはお世辞にも揃っているとはいいがたいものだった。

 

 麦わらのルフィを筆頭に、処刑される『火拳のエース』を救出せんとする者。

 クロコダイルを筆頭に、この戦争に乗じて『白ひげ』の首をとろうと画策する者。

 自身の目的がどう、というよりも、目的がある誰かを助けることを目的に据えている者。

 目的こそ一応あるものの、なんか全体的にノリと勢いで来てしまった者。

 

 それによって、白ひげに襲い掛かる者や、エース救出に走り出す者がバラバラに動きだし、海兵も白ひげ海賊団も、それらへの対応の必要にも迫られて……戦場は一層混沌としていく。

 

 その中でルフィは、エースの救出を狙って一直線に処刑台へと走る。

 

 当然、その道を阻み、脱獄囚達の主犯でもあるルフィを討ち取ろうと海兵達が襲ってくるが、イワンコフをはじめとした協力者達の助けもあり、妨害をものともせず、進んでいく。

 

 

「来るな、ルフィ~~!!」

 

 

 それこそ、他ならぬエース本人からの『自分を助けに来るな』という叫び声であっても、

 

 

「俺は!! 弟だ!!」

 

 

 ルフィの決意を、いささかも揺るがすことはできない。

 

 それを受けてかどうかはわからないが、元帥・センゴクの口から、その場にいる者達を驚愕させるもう1つの事実が告げられる。

 エースを生んだ直後に母親が死んだことで、両親は両方とも他界している。いるはずもない『弟』という言葉の、その意味も含めて。

 

 

「その男もまた、未来の『有害因子』! 幼い頃、エースと共に育った義兄弟であり、その血筋は……」

 

 

「“革命家ドラゴン”の、実の息子だ!!」

 

 

 驚愕の中、次にルフィの行く手を阻むべく現れたのは、彼にとっても『東の海』からも因縁の相手だった。

 

「お前の能力じゃ……俺には勝てねェ!!」

 

 体を煙に変える『モクモクの実』の能力者……本部准将となった『白猟のスモーカー』。

 自身の武器である打撃が利かない上、『海楼石』の仕込まれた十手で、ゴムの体を含めたこちらの力を封じてくる相手に、ルフィも苦戦するが……その最中、攻撃をさばいてかわしながら、はっとしてルフィはズボンのポケットに手を入れる。

 

「そうだ……これ!」

 

「……?」

 

 取り出したのは、何枚かの紙だった。

 ルフィはそれを、効かないとは理解しつつも、スモーカーの体を殴って散らして強引に隙を作ると……また再生しつつある彼目掛けてなげつけた。

 

 目の前でひらひらと舞うそれを見て、何のつもりだと顔をしかめるスモーカーだったが……次の瞬間、何かの模様が描かれたような見た目のただの紙だったはずのそれが、突然、見たこともない怪人に姿を変えた。

 しかもその、2枚の紙から生まれた、2体の怪人――『切神(キリガミ)』という名のそれらは、ルフィを庇ってスモーカーの前に立ちはだかる。

 

 困惑しつつも、なぎ倒してルフィを確保しようと前に進み出るスモーカーだったが……突き出す拳も十手も容易くさばかれ、弾かれる。

 しかも、その刃のような腕が突き出された瞬間、ぞくりとした寒気を覚えたスモーカーがとっさに身をひねってかわすと……かわしきれなかったわき腹に、ちっ、と刃がかすって衝撃が感じられ……わずかに切れて血が流れた。

 

「っ……!? 『煙』の俺に攻撃を……何だこいつら!?」

 

「ホントだ、ケムリンにも攻撃が当たる……すげえ! じゃ、悪い! 後よろしく頼む!」

 

「!? 待て麦わら……くそっ!? 邪魔を……!」

 

 追おうとするスモーカーだが、2体の『切神』はそれを許さず立ちはだかって、両手の刃で切り付けてくる。

 その動きは、集中して対応しなければ防御も回避も容易ではないほどに速く、鋭い。当たればただでは済まないとわかっている以上、注意を割かないわけにはいかず……その間に、あっという間にルフィの姿は見えなくなってしまった。

 

「はぁ……はぁ……またスゥに助けられちまった。急がねェと……!」

 

 ここに到着する前……船の上で、スゥに『ヤバくなったら使って。『自然系(ロギア)』の相手にも攻撃が当たるし盾にもなれるから』と言われて、何枚か渡された『切神』。

 この戦争においても強力な切り札になるそれらの、まだポケットに何枚か残っている感触を確かめながら、ルフィは走る。

 

 一方で、切神への対処にてこずるスモーカーの前で……一瞬の隙をついて、切神の背後から飛びかかる細身の影がいた。

 スモーカーもよく知るその女性……ヒナは、その腕をラリアットの要領で『通過』させ、『オリオリの実』の能力で拘束する。鉄の錠に変わったそれが動きを封じ込めるが……

 

 ―――ビキビキ……バキンッ!

 

 ものの数秒で、鉄の錠を腕力で破壊し、またこちらを睨みつけてくる。

 

「……!? 私の禁縛(ロック)を破壊するなんて……スモーカー君、こいつらは何なの!?」

 

「知らん! 麦わらが変な紙を投げつけてきたと思ったら、それがこいつらに変わった……何かの能力かも知れねえが、俺が知っている中には……」

 

「……『紙』……!? そうか……それなら、多分私に心当たりがあるわ。全く、また厄介な真似をしてくれたみたいね、『海賊文豪』……!!」

 

 言ってみれば、スモーカーにとってのルフィと同じく……ヒナにとっても、ある種因縁の相手と言っていい存在。

 また、スモーカーにとっても知らない相手ではないその名を聞いて、彼もはっとする。

 

「あの女か……そういやさっき、軍艦で『麦わら』と一緒に来ていた……」

 

 しかしそこまで言って、ふと疑問に思う。

 

「そういや、その『海賊文豪』はどこに行った? さっきから姿を見ねえな……」

 

「……私も、戦いながら探しているんだけど……どこにもいないのよ。かといって、彼女がこんな場面で大人しくしているとも思えないし……嫌な予感がするわ。ヒナ不穏……!」

 

 ああしてこの場に現れた以上……絶対に何か企んでいる。絶対に何かをやらかす。

 そう考えて警戒しているヒナの予想は、実のところ当たっており……その結果を彼女が、そして海軍が目の当たりにすることになるのは……もう少しだけ後の話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ちなみに、

 

 

 

「スモーカー大佐とヒナ大佐だ!」

 

「いや違うって、スモーカー『准将』だよ。こないだほら、アラバスタの一件で昇進して……」

 

「ああ、そうだったな……でもやっぱり、あの2人が並ぶと絵になるよな」

 

「そうだな……こないだ発売になった『アレ』の新刊思い出すわ」

 

「俺も。それぞれが1人じゃ勝てない強敵に、文句言いながらも力を合わせて立ち向かうシーンめっちゃ熱かった」

 

「めっちゃわかる。……写真撮ったら怒られるかな?」

 

「バカ、戦争中だよ、流石にやめとけ!」

 

「でもこんな構図あといつ見られるか……最近ヒナ大佐、ことさらにスモーカー准将避けてるし」

 

「やっぱ照れ臭いんだろうな……ひょっとしてやっぱり、噂通りあの2人現実でも……」

 

「き、気になる……」

 

「……思い切って後で聞いてみるか?」

 

「よせ。それやって本気で蹴っ飛ばされて基地の二階の窓からフライアウェイした俺の同期の話するか?」

 

「真偽がどうあれ、個人のプライベートの範囲だよ。俺達はあくまで何も言わずに見守ろうぜ」

 

 

 

「……ヒナ不穏!」

 

「何だいきなり、どうした」

 

 先程からの『嫌な予感』の一部が『コレ』に由来するものであることを、彼女は知らない。

 知らぬが仏、でもあるかもしれないが。

 

 

 

 

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